旅レポ

グルメ、景色、歴史をまとめて味わう山口県1泊2日の旅(その7)

日本ジオパークに認定されたカルスト台地「秋吉台」や天然記念物「秋芳洞」

 山口県が同県の魅力を伝えるべく実施したプレスツアーのレポート。今回は1泊2日ツアーの最後に訪れた美祢市の「秋吉台」と「秋芳洞」を紹介する。

 2008年に美祢郡の美東町と秋芳町が合併してできた美祢市に広がる、日本最大級のカルスト台地で……と説明の途中だが、念のため「美祢」は「みね」と読む。同市の担当者によれば、“弥”に似てるから「みや」市と呼んでしまう人も多いそうだ……と書くと余計に混乱を生むかも知れないので念押ししておく。「みね」市である。

 その美祢市に広がる秋吉台は、元々は海のサンゴ礁として生まれ、長い時間をかけて石灰石の台地として形成された。多くのエリアが国定公園に認定されており、その一部は天然記念物にも指定されている。さらに2005年には地下水系群がラムサール条約登録湿地に、2015年9月には西方の大嶺炭田までを含むエリアが「Mine秋吉台」として日本ジオパークに認定された。

 そうした独特の風景が認められているだけでなく、それを維持する取り組みも積極的に行なわれたことから、長きにわたって観光地として愛され続けている土地だ。

 秋吉台とひとくくりに表現されるが、見どころとなるスポットは非常に多い。記事末に紹介したURLから好みの観光スポットを探してほしいが、移動にはクルマがあると便利だ。秋吉台へ行くにも、レンタカーが手軽だ。山口空港からは幹線道路を伝ってほぼ真北に進めばよいし、新幹線の新山口駅からは駅にほど近い中国自動車道 小郡IC(インターチェンジ)から美祢東JCT(ジャンクション)を経由して小郡萩道路へ入り、秋吉台ICで降りればよい。

 記者はツアー行程の関係で、北側の萩市方面から秋吉台に入ったが、このルートもお勧めだ。秋吉台といえば、日本最大級と言われる鍾乳洞「秋芳洞」で知られ、同地を初めて訪れるなら、まずはここに向かう人が多いだろう。この秋芳洞は秋吉台の南寄りにあり、飛行機や新幹線を使って同地に来た人には大変ありがたい立地なのだが、実はカルスト台地が広がるのはその北側なのだ。

 この北側からアクセスした結果、カルスト台地のなかをクルマで走り抜け「秋吉台に来た」という気分が最高に高まった状態で秋芳洞へ到達できたのである。もちろん空港や駅からわざわざ北側に行く必要はないが、数泊の旅程であれば、山陰寄りの観光地を先に見てから秋吉台に向かうルートもありだと思う。

秋芳洞正面口

 さて、今回のツアーでも、その秋芳洞を訪れるのが同地での最大の目的となった。秋吉台にはいくつかの鍾乳洞、洞窟があるが、そのなかでも最大のものが秋芳洞だ。内部は約1km。自然が生み出した不思議な造形が数多くあり、30分以上かけてゆっくり見学することをお勧めしたい。

 秋芳洞には、南側の「秋芳洞正面口」、洞の途中にある「エレベータ口」、北側の「秋芳洞黒谷口」という3カ所の入退場口があり、どこからでも出入りできる。今回は南側にある秋芳洞観光センターに寄って、そのまま徒歩で秋芳洞正面口に向かい、エレベータ口から出るルートを通った。

 ちなみに今回はエレベータ口付近までクルマを回送してもらったが、レンタカーなどで訪れた場合は当然ながら入場した場所まで戻る必要があるので、そのぶんの所要時間も見込んでおく必要がある。土日祝日(7月20日~8月31日は毎日)には、黒谷口~正面口を結ぶ循環バスが運行されているので活用したい。

秋芳洞正面口へと続く道には土産物屋などが並ぶ観光地らしい風景。台湾の野柳地質公園との学術交流提携を記念した「クィーンズ・ヘッド」のモニュメントが置かれていた
現在の美祢市に縁のある施設などをモチーフにした象形文字アート。奈良の大仏の洞、国会議事堂の床や暖炉の石、SLに使われた石炭など、古来から近代にかけて同地で産出されたものが使われてきた

 秋芳洞の観覧料は大人(高校生以上)が1200円、中学生が950円、小学生が600円。当日中は途中の入退場もできる。例えば、途中のエレベータ口で一度出たり、黒谷口で一度外の空気を吸って再び秋芳洞を通って正面口に戻ったりすることもできるわけだ。

 秋芳洞は中に入るまでも印象的な風景だった。正面口から林を数分歩くと鍾乳洞が見えてくるが、そこの滝壺の水だけが青く染まっていた。おそらく石灰岩混じりの水が溜まって違った色に見えるのだろう。観光ガイドなどでよく見る風景ではあるのだが、実際に目にすると自然が生み出す色彩の不思議さに感動する。

 鍾乳洞の内部は言わずもがなだ。どこの鍾乳洞でも、どういう変遷を経たらこんな形が作られるのか不思議な造形が見られるが、秋芳洞はその1つ1つの規模が大きく迫力がある。内部の空間もとにかく広い。

 また、中は年間をとおして17℃程度とのことで、冬に行けば暖を取れ、夏に行けば涼を取れる場所でもある。独特の湿度の高さも印象に残るだろう。

正面口から秋芳洞へ向かう
秋芳洞への入り口手前。鍾乳洞から流れ出てきた滝の水が溜まったところだけが青く染まっている。自然が作り出す不思議な色彩だ
秋芳洞内はとにかく広く、スケールがデカい。随所に見どころがあるので、説明を見ながらゆっくりと観賞することをお勧めしたい

カルスト地形を眺望できる展望台、2月21日には山焼きも

 さて、先述のとおり今回はエレベータ口から秋芳洞を抜けたが、ここから300mほど歩いたところが、このツアー最後の訪問地である。それが「秋吉台カルスト展望台」だ。秋芳洞のエリアの北側に広がるカルスト地形を見渡せる展望台で、秋芳洞見物の際には、ぜひ立ち寄りたい場所だ。

 草の間から顔を見せる石灰岩や、ドリーネと呼ばれる石灰岩地帯特有の窪みなど、カルスト地形の独特の起伏を存分に味わえる。

秋芳洞のエレベータ口から300mほどのところに秋吉台カルスト展望台がある
展望台からカルスト地形の起伏を眺望できる

 この秋吉台には遊歩道が整備されており、カルスト地形に咲く花々を楽しみながらノンビリとトレッキングを楽しめるコースや、最近では自然の維持に配慮しつつトレイルランニング(トレラン)を楽しめることもアピールしている。

 また、秋吉台では“草原”を維持する目的で行なう山焼き「野火の祭典」を毎年2月の第3日曜日に実施している。今年はそれが2月21日に行なわれる。この風景一面が火に包まれるとは想像を絶するが、年に1度しかない機会に訪れてみるのもよいだろう。

 さて、7回にわたってお伝えしてきた山口県プレスツアーのレポートは以上である。海の幸や歴史の名所、秋吉台といった定番の観光だけでなく、ジビエや竹細工など不勉強にも知らなかった山口県の魅力を存分に味わった。もちろん、まだ見ぬ魅力もたくさんあるだろう。2月の山焼きはもちろん、暖かくなる時期に向けて旅先の候補に入れてみてはいかがだろうか。

最後に秋吉台カルスト展望台からの眺めをパノラマでお伝えして締めとしたい

編集部:多和田新也