旅レポ
空間を上手に活用したJALの新ビジネスクラス用シート「SKY SUITE III」に乗ってタイへ出張してきた
ボーイング 777-200ER型機に搭載された新シートでSUPER GTレース取材へ
2016年11月10日 08:59
日本航空(JAL)は近年シートの充実に力を入れている。ビジネスクラスだけでなく、プレミアムエコノミー、エコノミークラスのシートも新しいシートの導入を進め、乗客からの評判も上々だと聞く。今回筆者はタイに出張で出かける際にJALの新ビジネスクラスシート「SKY SUITE III」を体験するチャンスを得たので、ビジネストラベラーの視点での感想などをお届けしていきたい。
SKY SUITE IIIはスペースに限りがある機内で、フルフラット状態にしたときに2つのシートが上下で交差する形の配置になるなど、空間をうまく使いながらフルフラットシートを実現する仕組みが採用されている。1-2-1配列のSKY SUITE IIIでは、すべてのシートが通路からアクセスすることが可能ながら、シート数を極力減らさずに利用者に快適性を提供することを実現している。今回は、その最大の特徴である中央2列のうち、進行方向左側に配置され、下側になる座席番号「4D」シートの体験をしてきた。
ビジネストラベラーにとって大事なことは定時到着と疲れないこと
以前、別の記事でも触れたが筆者は普段「トラベル Watch」の僚誌となる「PC Watch」や「Car Watch」などでデジタル機器や半導体記事などのIT関連記事を執筆することをビジネスとしている。IT関連のメーカーの本拠地は欧米や中国・台湾などの海外にあることが多く、取材活動を海外で行なうために日常的に国際線のフライトを利用して移動する。1年のうちの1/3ぐらいはホテル暮らしというビジネストラベラーの1人だ。
そうしたビジネストラベラーにとって、フライトを選ぶ際に重要視していることが2つある。1つは予定どおりに到着できる、航空業界風に言えば定時運航率が高いエアラインを選ぶということだ。
飛行機という乗り物はその性格上、天候などの影響を受けやすく、どうしても定時に到着できなかったり、最悪の場合は翌日になってしまうということもないとは言えない。天候などでは致し方ないが、機材の問題だったり、クルーのストライキなどにより定時運航率があまり高くないエアラインは、確率的に定時に着かない可能性が高まるので、ビジネス利用ではできるだけ避けたいところだ。
航空業界の場合は、その指標となる「定時到着率」などの数字が公開されており、それを参考にしたいところ。なお、今回利用するJALは、米国FlightStatsが公開した定時到着率で主要航空会社では世界第1位になるなど、定時運航率が高い評価を受けているエアラインだ(詳しくは同社のWebサイトなどを参照)。
もう1つはフライト時の快適性で、現地に着いてから即仕事ということも少なくないため、できるだけ疲れないようにして、現地に着いたらばりばり活動できるようにと心掛けている。このため、予算の都合でエコノミークラスに乗る場合には、マイレージプログラムの上級会員の資格を持っているエアラインをできるだけ選び、少しでも快適に過ごせるようにと考えている。もちろんビジネスクラスに乗れる予算があれば、そちらを選びたいのは言うまでもないところだ。
ビジネスクラスの“おもてなし”はチェックインカウンターから。プライオリティタグなどのサービスもうれしい
ビジネスクラスの“おもてなし”は、乗客が空港のチェックインカウンターに着いた際から始まっている。この点はどのエアラインでも同じだが、空港にあるチェックインカウンターは、エコノミークラスの列とは別に、ビジネスクラスのラインが用意されており、すっとチェックインできるのはうれしいところ。
今回利用する羽田~バンコク線を飛んでいるJL31便も同様で、羽田空港国際線ターミナルのJALのチェックインカウンターに、ビジネスクラス専用のカウンターが用意されている。なお、JALの場合はほかにも、JGC(JALグローバルクラブ)会員向け、ファーストクラス向けなどが用意されている。
チェックインすると、ボーディングパスが発行されるほか、荷物にタグを付けてもらう。このときにビジネスクラスであれば、プライオリティのタグも一緒に付けてもらえる。このプライオリティのタグは航空会社独自のもので、ファーストクラスやビジネスクラスといった上級クラスに登場している乗客、またはマイレージプログラムの上級会員向けに提供しているサービスとなる。
一般的に国際線の航空機に乗客の荷物をカーゴ室に入れる場合には、コンテナに入れて搭載するのだが、その場合にこのプライオリティのタグがある場合には、比較的最初に取り出すコンテナに入れてもらえるので、到着後にターンテーブルで待っていると最初の方に荷物が出てくるのだ。先ほど述べたとおり、ビジネストラベラーに大事なことは“疲れない”ことであるから、延々とターンテーブルから荷物が出てこない……ということもなく、すっと荷物が出てくるのは本当にありがたい。
なお、今回はタイの取材に同行するカメラマンも一緒にチェックインしたのだが、機材が入った荷物には「取扱注意」のタグを貼ってもらえた。ただ、このタグは中の荷物が壊れないことを保証するものではないので、その点は注意したい。このタグの意味はあくまで“できるだけ丁寧にお願いします”ということを作業員の方に示すことを意味するものなので、壊れてほしくないものは手荷物にして機内に持ち込むべきだ。
今回のフライトでは、エコノミークラスが満席に近い状態だったこともあり、エコノミーのチェックイン列はかなり並んでいた。それを横目に、まったく並んでいなかったビジネスクラス用の列でチェックインできたのは大変ありがたく、節約できた時間で編集者から届いた「緊急に作業してほしい!!」メールに返信できた。時間を有効に使える、ビジネストラベラーにとっては重要な要素だ。
ビジネスクラスではJALのサクララウンジを利用できる。有名な「JAL特製ビーフカレー」を忘れずに
チェックインし手荷物検査を通過し、出国審査を通過したあとは、ゲートへ向かう前にラウンジへ行った。JALの場合、ラウンジは2種類あり、1つは「サクララウンジ」、もう1つが「ファーストクラスラウンジ」となる。サクララウンジがビジネスクラスの乗客用、ファーストクラスラウンジがファーストクラスの乗客用となる。
なお、サクララウンジは2カ所にあり、1つは112番ゲート近くの向かいにあるファーストクラスラウンジと同じ場所にあるサクララウンジ、もう1つが114番ゲート近くの向かいにある「サクララウンジ・スカイビュー」となる。
112番ゲート向かいのJALのラウンジは、ファーストクラスラウンジとサクララウンジともに入り口は共通で、右に行くとファーストクラスラウンジ、左に行くとサクララウンジという構成になっている。サクラクラスラウンジは、入るとまずクロークがある。このクロークは鍵をかけて荷物を預けられる形になっており、上着やカバンなどを預け、楽な状態でラウンジでゆっくり過ごすといいだろう。
ラウンジの特徴は、どこのエアラインでもそうだが、食事や飲料が無料で、かつハイクオリティなものが用意されていることだ。食事にはいろいろ一家言を持つ日本人が乗客の中心ということもあり、日本のエアラインはラウンジの食事や飲料に力を入れている。
JALももちろんかなり充実しており、ご飯や味噌汁などの主食や、各種のおかずなど非常に充実したメニューが提供されている。特に朝早い便などであれば、自宅で朝食を食べてこないでも、ここでほとんど済ませることができるだろう。筆者のお勧めは、多くのJALユーザーに愛されている“JAL特製ビーフカレー”だ。以前はこのJAL特製ビーフカレーは、サクララウンジでは昼食、夕食メニューとしてだけ提供されていたのだが、2016年4月1日以降は羽田空港、成田空港の国際線のサクララウンジで営業時間中終日食べられるようになっている(別記事参照)。
もう1つのサクララウンジ・スカイビューは、その名のとおりラウンジから飛び交う飛行機を見続けることができる、眺望がウリのラウンジとなる。また、場所は114番ゲートの向かいあたりにあり、140番台のゲートを利用する場合には、こちらの方が近いの便利だ。今回のフライトでは、ゲートが146番ゲートだったため、このサクララウンジ・スカイビューにも行ってみた。
基本的にスカイビューラウンジも112番ゲート近くのサクララウンジとサービス(フード、ドリンクなど)は同等だが、国際線ターミナルの端に位置しており、かつ5階という高い位置にあるので、眺望が非常にいいことが特徴だ。ビジネスユーザーにとってラウンジに望むのものは、使いやすい机、椅子、そして電源にWi-Fiだと思うが、それらはもちろん揃っており、プラスアルファで眺望がある。これがスカイビューラウンジのメリットだ。
なお、仕事に疲れたら、一番奥の部屋にいくと、フットレストつきの椅子も用意されており、そこに座ってぼーっと飛行機を眺めていると、仕事の疲れも癒やすことができるだろう。なお、さらにその眺望ルームの隣には外は見えないがマッサージチェアも用意されている。PCのキーボード入力で肩がこってきたなぁと感じたらそこにいって揉まれれば、物理的な疲れも癒やすことができるだろう。
疲れない、降りやすい、とても快適だったSKY SUITE III
搭乗時刻になれば、ゲートに行って搭乗になる。JAL国際線の搭乗は、搭乗に手助けを必要とするハンディキャップを持っている乗客と小さな子供連れのファミリーによる優先搭乗が行なわれ、そのあと(ファーストクラスがあれば、ファーストクラスだが、今回のフライトはファーストクラスはない機材)ビジネスクラスおよびマイレージの上級会員、その後にエコノミークラスという順番で搭乗が行なわれる。
今回はビジネスクラスに搭乗するので、優先搭乗を除けば一番最初に搭乗できる。ビジネスクラスの場合は、荷物を収納するスペースなどに余裕があるので、エコノミークラスのようにできるだけ早く搭乗したいというニーズは少ないこともあり、最近ではラウンジでゆっくり過ごしてから搭乗する乗客も少なくないとのこと。もちろんその場合でも、エコノミークラスとは別の列で機内に入ることができるので、余裕を持って搭乗できるのはうれしいところだ。
今回利用するJL31便は、機材としてボーイング 777-200ER型機を使用している。ボーイング 777-200ER型機は、ボーイング 777の最初モデルであるボーイング 777-200型機の航続距離を伸ばしたモデルで、日本の航空会社ではアジアなどの中距離路線で採用されていることが多い。JAL SKY SUITE 777と名付けられたJALのボーイング 777-200ER型機は、JALのWebサイトの時刻表上では「SS2」と記され、ビジネスクラス、プレミアムエコノミークラス、エコノミークラスの3クラス構成となっている。
このSS2のビジネスクラスに導入されているシートがSKY SUITE IIIと呼ばれる最新のビジネスクラスシートになる。このSKY SUITE IIIの特徴は、空間方向を上手に使うことで、すべてのシートが通路からアクセス可能になっているのに、フルフラットシートを実現していることだ。
最近はビジネスクラスでもフルフラットシートであることは珍しくなくなっているのだが、できるだけ多くのシートを配置するために、中央が3列になって、真ん中のシートは通路からアクセスするのが難しいという配置になっている場合も少なくない。機内という限られたスペースでフルフラットシートを実現するには結局そうしないといけないのだが、中央になってしまった場合は、通路に出るのに左右の別の乗客を起こさないと出ることができない場合があるというのは課題となっていた。筆者も以前そうしたビジネスクラスに乗ったことがあるが、やはり左右の別の乗客を起こすのもわるいなと感じてしまい、トイレに行きたくなっても我慢していたことをよく覚えている。
そうした問題を解決するために、SKY SUITE IIIは中央を2列とした1-2-1のシート配置で全席通路アクセスを実現。中央席を工夫することで3列にしたのと同じような席数を確保することに成功している。具体的には前後のピッチを3列よりも詰めることに成功しているのだ。なぜそれが実現可能なのかと言えば、フルフラットにしたときに、中央2列の左右の席が上下に交わるように配置されており、飛行機の前方に向かって左側の席(D列)が下側に、前方に向かって右側の席(G列)が上になるようにシートの構造が工夫されているのだ。
今回は4Dに座ってみた。飛行機が巡航高度に達したあとで、フルフラットにしてみたが、確かに、右側に用意されているパネルを利用して操作すると、椅子がどんどん沈み込んでいき、かなり床面に近い状態でフルフラットになった。実際に何度かフルフラットにして感じたのは、外に出やすいなということだった。
床面に近いので、ベッドから降りるというよりは、布団から出る感じで通路アクセスできる。また、座って左側にモノを入れるスペースがあるのだが、これを上げることができるので、フルフラットにしたときには、これが仕切りのようになって、近くを人が通っても視線を遮ってくれる。非常によく考えて作られているなというのが率直な感想だ。
もちろん、フルフラットにしていなくても、シートはゆったりとしている。シートをフルフラットにしていないときは、どちらのシートも高さは同じで、シートが低くなるのはあくまでフルフラットにしているときだけだ。
実際6時間のフライトでは、2時間映画を見て、2時間PCで仕事をし、2時間フルフラットで寝てみた感想としては、どの状態でも快適でまったく疲れなかったということだ。特にこの日は仕事が終わらなくて、ほとんど寝ていない状況で空港に向かうことになったので、2時間フルフラットシートで睡眠を取ったら大分疲れが取れて助かった。
なお、ビジネスユーザーには重要な電源も用意されている。PC用の100-240Vに対応したユニバーサルAC電源と、USB電源の2つが用意されており、1つでパソコンを充電しながらもう1つでスマートフォンを充電するという使い方が可能だ。
このほかにも、ちょっとした小物(例えば、巡航高度後に達してから使うヘッドフォンなど)を入れておく、小物入れも用意されており、その裏には鏡もついているので、到着前にお化粧などを直したいという女性にも便利だろう。また、隣の席の乗客とのプライバシーを守るための小さな仕切りも用意されており、隣の乗客が他人であれば出したままにしておき、隣が家族や恋人などであれば仕切りを収納したりすれば、コミュニケーションを取りやすいだろう。
帰りは有償の当日アップグレードを利用してプレミアムエコノミーを利用
なお、今回は帰りのフライト(JL34便)にエコノミークラスを予約していたのだが、空港でプレミアムエコノミーへの有償アップグレードを募集していたので、3500タイバーツ(約1万円)で試してみることにした。この有償アップグレードは、当日プレミアムエコノミーが空いている場合に制度的に行なわれているもので、JALのWebサイトでも価格などが公開されている。この当日有償アップグレードの場合は、プレミアムエコノミークラスの特典の1つであるラウンジ利用や受託手荷物のプライオリティ扱いはできないことと、マイレージの加算率が元のクラスベースになることが、元々のプレミアムエコノミーの料金で購入した場合とは異なるが、機内では同じシートが利用できるので、より快適に過ごすことができる。空きがある場合には空港などで募集しているので、チェックインカウンターで確認してみるといいだろう。
SS2を使用したJL34便のプレミアムエコノミーのシートは2-4-2という設定で、エコノミークラスの3-4-2よりも1列少ないため、エコノミークラスに比べて1cmほど横幅(通常のエコノミークラスが47cm、プレミアムエコノミーは48cm)が広くなっている。わずか1cmということなかれ、それが長時間となれば全然違ってくる。さらに、前後ピッチに関しては107cmとなっており、エコノミークラスの84~87cmに比べてゆったりと取られている。さらにフットレストや前の席の背もたれが倒れてこないリクライニング構造、全席PC用電源装備など、なかなかよくできている。
エコノミーとついているが、(横幅を除けば)米国の航空会社が国内線で運用しているファーストぐらいのシートだと表現すればよいだろうか。帰りのJL34便は現地を22時頃に出発して、羽田に午前6時前に到着する夜行便なのだが、こちらも快適に過ごすことができた(ほとんどは寝ていたが……)。もちろん、フルフラットになるビジネスクラスのシートにはかなわないが、エコノミーよりは遙かに快適だと感じた。
今回行き帰りにJALを利用しての感想は、筆者と同じようによく飛行機で飛び回っているビジネストラベラーの友人が言っていた”JALはシートがいいよね”という評価はまさにそのとおりだなということだった。
赤みが残ったステーキがでてきてビックリ
さて、ビジネスクラスの体験に話を戻そう。離陸して巡航高度に達すると、各種の機内サービスが開始される。筆者は普段はあまりお酒は飲まない方なのだが、飛行機に乗ったときにだけは少しだけ飲むことにしている。ビジネスクラスに乗ったときにお願いするのは、シャンパンだ。一番最初にビジネスクラスに乗った北米の航空会社が、ウェルカムドリンクにシャンパンを出していて、ビジネスクラスに乗る=シャンパンを飲むということが紐付いてしまっているからなのだが、今回も最初のドリンクにはシャンパンをお願いした。なお、ドリンクにはシャンパン以外にも、各種のワイン、カクテルなど注文して飲み放題で飲むことができる。ただ、機上は酔いやすいと言われているので、くれぐれも飲み過ぎには注意したいところだ。
今回搭乗したJL31便のビジネスクラスは和食、洋食からチョイスができ、洋食はメインが2種類から選ぶことができるようになっていた。今回は洋食のうち、和牛のサーロインステーキを選択した。最初に出てきたのは白身魚のサラダ仕立てにスペイン風のドレッシングがかかったオードブル。それに好きなブレッドを選ぶという前菜だった。オードブルは白身魚をメインにしたサラダという趣で、オイル風味のドレッシングと相まってなかなか美味しかった。それを食べ終わると、メインのステーキになる。
今回一番驚かされたのは、機内食として出てきたステーキにナイフを入れ中を見たときだ。切ってみると、なんと中には赤身の部分が残っており、食べ見ると肉の赤身らしいジューシーな感じが残っていたのだ。言うまでもないことだが、機内では火を使うことができないので、調理は基本的にはできない。このため、空港に隣接した調理場などで調理した食材を1度冷凍するなどして運び込み、乗客に出す前にスチームオーブンなどで温めて出すことになる。従って、こうしたステーキなどでは、言ってみれば“ウェルダン”状態にして出されることがほとんどだ。しかし、今回出されたのは、赤身の部分が残っており(もちろん一度火は通っている)、正直“どうやって調理したの?”と思うようなレベルだったからだ。飛行機の中で、こんなに美味しいステーキが食べられるとは、技術の進化はすごいなと思わざるを得なかった。
また、筆者は選択しなかったが、同行者は和食を選択していた。和食ではお弁当のような前菜のセットの後、メインとなる松阪牛タンシチューと、ご飯、味噌汁が一緒に出された。海外エアラインのビジネスクラスだと、ご飯はあらかじめおにぎりのような形で出されるのが一般的だが、JALの場合はご飯はおひつに入っている状態からCAが1杯1杯お椀に盛ってくれる形になっている。もちろん炊きたてということは難しいが、お弁当状態で出されるよりもふっくらしていて、見た目だけでも美味しそうだと感じた。
大画面で楽しめる機内エンタテイメントシステム
食事が終われば、今度は機内エンタテイメントを楽しんだ。SKY SUITE IIIのシートには17インチの大型モニターがついている。以前のビジネスクラスのシートと言えば、10インチぐらいで大型と言っていたのだが、筆者の場合はビジネスで旅行する場合には常に13インチクラスのノートPCを持ち歩くのが普通なので、“小さいじゃん”といつも思っていて、だいたい自分のPCで持ち込んだ動画などを見ていた。しかし、このSKY SUITE IIIは17インチと、大型で十分すぎるので、素直にこっちを見ることにした。しかも、ちょうど、この夏に最も話題の映画だったと言ってよい映画「シン・ゴジラ」が入っており、それを楽しむことができた。
「シン・ゴジラ」はすでに映画館で見ていたが、もう1度見たいなと思っていたので、まさにいいタイミングで、17インチディスプレイでそれを楽しんでいるとあっという間に時間が過ぎてしまった。欧米の航空会社だと、映画のラインアップがどうしても洋画が強くなりがちなので、ハリウッドよりは邦画が好きな筆者にとっては、このシン・ゴジラに代表されるような邦画が充実しているのはうれしかった。
映画を見終わり、PCを出して仕事をすることにした。そうしたときには機内インターネットを利用することができる。価格は1時間が10.15ドル、3時間が14.40ドル、フライトプラン(フライト中ずっと有効の料金)が18.80ドルとなっている。なお、JALカードで支払った場合にはそれぞれ9.15ドル、12.95ドル、16.80ドルに割り引きされるので、何度も利用する場合にはJALカードを作った方がいいだろう。
最初に出された食事でかなりお腹いっぱいになったのだが、それでも6時間のフライトともなれば、映画を見たり、仕事をしていたりすると、だんだんとお腹は減ってくる。そうしたときには、追加のメニューを楽しむことができる。
軽食として用意されているのは、JAL特製の“そばですかい”(SOBA de Sky)などのカップ麺を注文することができる。だじゃれのセンスはおいておくとして、味はなかなか美味しいなと思ってラベルを見ると、日清食品となっており、それは美味しいわけだと納得できた。
なお、バンコク到着前には軽食としておにぎりとアイスクリームが出される。今回はバンコクに着いたあと、長時間自動車での移動となる予定だったので、ここでお腹をいっぱいにしておいた方がいいと思って、いただくことにした。これで日本の味とは、しばしお別れということで、おにぎりをほおばりながら、タイの予定を確認していると、着陸の準備となり、ほぼ定刻にバンコクのスワンナプーム国際空港に着陸した。
タイではSUPER GTのレースを取材
今回タイに行ったのは、僚誌Car Watchの仕事で、タイのブリーラムのチャン・インターナショナル・サーキットで開催されたSUPER GT 第7戦 ブリーラム SUPER GT レースを取材するためだった。ブリーラムは、タイの首都であるバンコクから自動車で約400kmの距離にある地方都市。近くに地方空港はあるのだが、フライトの数はあまり多くなく、国際線との接続もよくないので、日本から参加する多くの参加者がバンコクから自動車で6~7時間かけて移動する。今回筆者を含んだCar Watchの取材チームも、バンコクからクルマをチャーターしてブリーラムへ向かうことになった。
ブリーラムで行なわれているSUPER GTのレースは、今年で3年目を迎えることもあり、現地ではイベントとして定着している感がでてきている。ブリーラムの街は非常に小さな街で宿泊施設なども十分ではなく、関係者もモーテルのようなところに泊まっている状況なので、予選が行なわれた土曜日こそあまり観客は多く無かったが、決勝レースが行なわれた日曜日は大観衆でグランドスタンドが埋まって盛況のうちにレースが行なわれた。なお、レースそのものレポートに関しては、Car Watchの記事をご覧いただきたい。
ブリーラムでのレースが終わったあとは、バンコクで行なわれているイベントなどを取材するためバンコクに移動することになった。取材は3日間にわたって行なわれたのだが、帰国日になってようやく自由時間(ただし2時間)を得ることができて、バンコク市内をちょっと観光することができた。
同行者たちには申し訳なかったので、筆者のメインの仕事はIT関連の記事を書くことであるので、やはりそうしたデジタル機器を販売されているショップなどは欠かせられないミッションの1つ。そこで、バンコク市内でそうした市場の1つである“MBK”と呼ばれているショッピングビルに行ってみることにした。
“バンコクの秋葉原”MBKへ
行ってみると、MBKは秋葉原のラジオデパートなどの昔ながらの電気街風の小さなお店が所狭しとお店を出しており、スマートフォンやタブレットを販売していた。販売しているのは新品だけでなく、中古品も含まれているほか、iPhoneの修理をやっているショップなどもあり、“スマートフォンならなんでも揃います”的な場所だった。ただ、現地で話したタイ人の方に話を聞くと、こうした小規模のショップでは偽物が売られていたりすることもあるので、あまりに安すぎるのは要注意とのこと。今回はざっと見て回っただけで特に買い物はしなかった。
面白いと思ったのは、携帯電話ショップで電話番号が貼り出されており、番号が販売されていたこと。しかも、番号により値段が異なっており、タイで縁起がよい数字が入っていると高かったり、そうでないと安かったりするとのこと。日本ではこうした販売方法はとられていないので、これは面白いと感じた。もう少し時間があれば、実際に価格交渉などをしながら、面白いデバイスを買いたいと思ったのだが、フライト時間の関係もあったのでそれは次回以降のお楽しみに。
それが終わったあとは、近くのレストランでタイで最後の夕食を食べることにした。MBKの向かいにあるサイアムスクエアの周辺で、屋台的なお店を探したのだが、微妙に時間が早かったようで、どこのお店もまだ夕飯の販売はしておらず、それは断念して、近くのレストランに行ってみることにした。
行ってみたのは“ソムタムヌア”というレストラン。タイで有名なパパイアサラダ(ソムタム)の人気店で、筆者達が行ったときには並ばずに入れたのだが、帰る頃には行列ができていた。ここで、看板メニューとも言えるソムタム、タイ版鶏肉の唐揚げ、そして餅米の蒸籠入りをオーダーして食べた。
食べ終わると、もう帰国の時刻。そのまま空港へ向かい、前述のとおりJL34便に乗り帰国した。なお、帰りのフライトは、定時どころか定時の前に到着してしまい。午前6時過ぎには荷物も受け取って、空港の外に出ることができた。なお、同行したCar Watchのスタッフは、自宅に荷物を置いて、すぐに出社。そのまま仕事をしたそうだし、筆者も自宅に帰って1時間ほど仮眠して、都内で10時半から行なわれた記者会見に参加して記事を執筆できた。
こうしたスケジュールを組めるのも、定時到着率が高いからこそであり、疲れないシートがあればこそだ。時間を有効に使いたい、移動中はできるだけ疲れないようにしたいというビジネストラベラーあれば、新ビジネスクラスシートであるSKY SUITE IIIを搭載したSS2を1度は試してみるのはいかがだろうか、きっとやめられなくなること請け合いだ。