旅レポ

晩秋のシドニーで、音楽と光の祭典「Vivid Sidney 2016」を堪能してきた

プロジェクションマッピングなど技術を駆使したアートが多数

おなじみのシドニーの名所、オペラハウス。昼は、白い帆を張った船のようなイメージだ

 シドニーで、毎年5月から6月にかけての晩秋の時期に開催されている「Vivid Sidney」。筆者は、Vivid Sidneyに協賛しているIntelが開催したプレス向けツアーに参加してきた。2016年のVivid Sidneyで最大の見どころとなったのは、本誌でも紹介した、ドローン100機による光のアート「Drone 100」だったが、それ以外にもさまざまな見どころがあったので、ここではそれらを紹介していく。

オペラハウスをキャンバスにオーストラリアの自然や歴史を描く

 Vivid Sidneyは2009年より開催されている、最新テクノロジーを駆使した、光や音楽と芸術との融合を目的としたイベントだ。秋から冬にかけて減少する観光客を呼び込む目的で始まったそうで、当初こそ数千人が参加する規模のイベントだったが、年々規模が拡大し、2015年には参加者が170万人を超えるなど、オーストラリアを代表する非常に大きなイベントへと成長している。

 イベントは、シドニー港付近のベイエリアを中心として、シドニー中心街など広い範囲でさまざまなアート作品を展示していた。そういったなかで、特に注目を集めていたのが、なんといってもオペラハウスのライトアップだ。毎年行なわれているものだそうだが、オペラハウスの壁面に、複数のアーティストが製作した映像をプロジェクションマッピングで投影してライトアップするというもの。

 映像の内容は、オーストラリア特有の植物や生き物、オーストラリア先住民族のアボリジニの歴史や文化など、オーストラリアの自然や歴史を題材としている。アボリジニが使っていた文字や壁画を取り入れたり、カンガルーなどのオーストラリア特有の動物が登場したりするなど、とても神秘的だった。作品は6人のアーティストが製作し、映像が1周するのに約80分かかるそうで、まさに超大作となっていた。

 昼は、白いタイルが海辺に映える印象のオペラハウスだが、夜はその姿を大きく変え、多くの観客を魅了していたのが印象的だった。

こちらがVivid Sidney期間中の夜のオペラハウス。オーストラリアの自然や、アボリジニの文化、歴史を題材とした映像を、プロジェクションマッピングで投影しライトアップされた
6人のアーティストが、アボリジニの壁画や文字、文化などを取り入れた80分にも及ぶ映像を投影
オーストラリア特有の生き物をモチーフとした映像も用意されていた
オペラハウスのプロジェクションマッピングの様子

PCで顔を取り込み海上のウォータースクリーンに投影

 シドニー港のダーリングハーバー地区に用意されていたのは「Eyes on the Harbour」というもの。こちらでは、噴水を使った作品で、高さ25mまで水を噴射できる噴水とレーザーなどの照明を駆使し、音楽に合わせて踊る噴水ショーが行なわれた。

 また、中央付近には「Laser-Dragon Water-Theater」と呼ばれる水のスクリーンを用意。勢いよく水を噴射して高さ20mの水のスクリーンを作り、レーザーで映像を投影できるようになっており、さまざまな映像を投影することで、水上シアターとして楽しめるようになっていた。

 このEyes on the Harbourでは、あらかじめ用意された映像を投影するだけでなく、観客参加型のイベントも用意されていた。それは、Intelの3Dカメラ「RealSense 3Dカメラ」を搭載するオールインワンPCを利用して観客の顔を取り込み、顔に海賊やお姫様、動物などのデジタルペイントを施して短い動画を作り、その動画をLaser-Dragon Water-Theaterに投影するというもの。

 最近では、スマートフォンのカメラアプリにも同様の機能が用意されることが増えているが、こちらはRealSense 3Dカメラで顔を立体的に取り込むため、顔を横に向けたり表情を変えても破綻なくデジタルペイントが施される点が、大きな特徴となっている。事前に用意された映像を楽しむだけでなく、その場で観客が参加して作った映像を楽しめるというインタラクティブ要素を加えることで、より観客を魅了するイベントになっていると感じた。

 遊歩道に用意された、RealSense 3Dカメラ搭載PCを設置したブースには、大勢の観客が列を作り、顔を取り込んで楽しむとともに、自分の顔がLaser-Dragon Water-Theaterに表示されると、歓声あげて喜ぶ姿が多く見られた。

ダーリングハーバー地区で行なわれた「Eyes on the Harbour」。踊る噴水やレーザーなどを利用した、音楽と光、水のショーだ
Eyes on the Harbourに用意された「Laser-Dragon Water-Theater」。水でスクリーンを作り、レーザーで映像を投影
Eyes on the Harbourでは、観客の顔をPCで取り込んでLaser-Dragon Water-Theaterに投影する、参加型のイベントも行なわれた
こちらが観客の顔を取り込むPCが設置されていたブース
画面上部にIntelの3Dカメラ「RealSense 3Dカメラ」を搭載する、HP製のオールインワンPCを利用していた
PC前に座った観客の顔をRealSense 3Dカメラを利用し3次元で取り込み、デジタルペイントをリアルタイムで施す
3Dで顔を取り込むことで、頭を動かしてもデジタルペイントが破綻なく追従。これで5秒ほどの動画を作成し、Laser-Dragon Water-Theaterに投影
PCで取り込んだ観客がLaser-Dragon Water-Theaterに投影される様子

ライブの映像や音楽が楽しめるオブジェ

 オペラハウス前の広場には、「Sound Cells」というオブジェが3基設置されていた。このオブジェは、3Dプリンタを用いて、使用済みペットボトルをリサイクルして作られたという雲のようなシェルを備え、内部にLED照明と高音質スピーカー、そして床に映像を投影するプロジェクターを内蔵。

 そして、オペラハウスのホールで開催されたライブ音声をスピーカーから再生するとともに、ライブの模様を撮影した映像をプロジェクターで表示。さらに、内蔵のLED照明を音楽に合わせて光らせることで、ライブ会場に居合わせているかのような雰囲気を楽しめるようになっていた。オーストラリア生まれの音楽プロデューサーのTa-ku氏と、映像アーティストのSam Price氏が手がけたものだという。

 このオブジェは、オペラハウス内のスタジオ「Intel Broadcast Studio」と光ケーブルで接続され、スタジオで実際に撮影された音声や映像を転送し再生。オブジェの近くでは、身体に響く低音の効いたサウンドで、LED照明のライティングと合わせて、オペラハウスの外に居ながら、オペラハウスのライブ会場にいるかのような感覚が体感できた。音楽に合わせて踊る観客も見られ、周囲の雰囲気を大いに盛り上げていた。

オペラハウス前に設置された「Sound Cells」
3Dプリンタで作られたシェル内に高音質スピーカーとLED照明、プロジェクターを内蔵。音楽や映像に合わせてLED照明が鮮やかに輝く
床に、オペラハウスで開催されたライブの様子などを投影
オペラハウス内の「Intel Broadcast Studio」。こちらから、ライブを撮影した映像と音声をSound Cellsに光ケーブルで転送し再生
Sound Cellsが音楽を再生している様子

ハーバーブリッジや行き交うフェリーもライトアップ

 シドニー港にかかる橋「ハーバーブリッジ」は、オペラハウスを望む面にLED照明が取り付けられ、鮮やかにライトアップ。しかも、ハーバーブリッジのLED照明は、Intel製プロセッサ搭載の大型タブレットを操作して、観客が発色や点滅などのパターンを自由に変更できるようになっているという。今回は時間がなく、タブレットを操作して実際に橋のライティングを変更することは体験できなかったが、周囲から眺めているだけでも、刻々と発色や点滅タイミングなどが変わる様子を確認できた。

 また、ハーバーブリッジだけでなく、シドニー港を行き交うフェリーや、港を囲む建物も鮮やかにライトアップされていた。目に見える範囲内のほぼすべてがライトアップされる様子は、非常に華やかさを感じるとともに、ここまでやるのかと驚かされた。

ライトアップされたハーバーブリッジ。側面にLED照明が取り付けられ、Intel製プロセッサ搭載の大型タブレットで観客が発色や点滅パターンなどを自由に変更できる
シドニー港を行き交うフェリーもライトアップ
シドニー港を囲む建物もライトアップされ、華やかな雰囲気となっていた
こちらは、プロジェクションマッピングでライトアップされたシドニー現代美術館
ハーバーブリッジのライトアップの様子

シドニー市街地にもさまざまな作品が

 Vivid Sidneyの作品展示やライトアップは、オペラハウスのあるシドニー港を中心として行なわれていたが、シドニー市街地でもさまざまな作品を展示され、建物のライトアップも多く行なわれていた。ここからは、そういった作品やライトアップの様子を写真でまとめて紹介する。

湾を囲む遊歩道はLED照明でライトアップ
LED照明で作られた光のトンネル
内部は自由に通り抜け可能。記念撮影をする観客でごった返していた
花の形をした照明を利用
遊歩道横の芝生は虹色にライトアップされていた
公園の木々もライトアップ
門柱にはプロジェクションマッピング
港の遊歩道に設置されていたアート作品「U-Tube」。チューブを触ったり動かすと色が変わる
港の横にある「カスタムハウス」も、毎年プロジェクションマッピングでライトアップされる。今年は「Sydney Hidden Stories」という題名の子供向け映像を展開
昼間のカスタムハウス。夜とは異なり、歴史を感じる建造物だ
こちらはシドニー中心街の様子。夜空に向かって光の柱が伸びていた
アート作品「Fountain」。光で噴水を表現している
こちらは「8Bits+8Bytes」。黎明期のテレビゲームをモチーフとした作品
中心街の建物もライトアップされ、大いに盛り上がっていた

平澤寿康

うどん県生まれ。僚誌PC Watchなど、IT系の執筆を中心に活動。旅&乗りもの&おいしいもの好きで、特に旅先でおいしいものを食べるのに目がない。ただし、うどんにはかなりうるさい。