旅レポ
晩秋のシドニーで、音楽と光の祭典「Vivid Sidney 2016」を堪能してきた
プロジェクションマッピングなど技術を駆使したアートが多数
2016年6月22日 00:00
シドニーで、毎年5月から6月にかけての晩秋の時期に開催されている「Vivid Sidney」。筆者は、Vivid Sidneyに協賛しているIntelが開催したプレス向けツアーに参加してきた。2016年のVivid Sidneyで最大の見どころとなったのは、本誌でも紹介した、ドローン100機による光のアート「Drone 100」だったが、それ以外にもさまざまな見どころがあったので、ここではそれらを紹介していく。
オペラハウスをキャンバスにオーストラリアの自然や歴史を描く
Vivid Sidneyは2009年より開催されている、最新テクノロジーを駆使した、光や音楽と芸術との融合を目的としたイベントだ。秋から冬にかけて減少する観光客を呼び込む目的で始まったそうで、当初こそ数千人が参加する規模のイベントだったが、年々規模が拡大し、2015年には参加者が170万人を超えるなど、オーストラリアを代表する非常に大きなイベントへと成長している。
イベントは、シドニー港付近のベイエリアを中心として、シドニー中心街など広い範囲でさまざまなアート作品を展示していた。そういったなかで、特に注目を集めていたのが、なんといってもオペラハウスのライトアップだ。毎年行なわれているものだそうだが、オペラハウスの壁面に、複数のアーティストが製作した映像をプロジェクションマッピングで投影してライトアップするというもの。
映像の内容は、オーストラリア特有の植物や生き物、オーストラリア先住民族のアボリジニの歴史や文化など、オーストラリアの自然や歴史を題材としている。アボリジニが使っていた文字や壁画を取り入れたり、カンガルーなどのオーストラリア特有の動物が登場したりするなど、とても神秘的だった。作品は6人のアーティストが製作し、映像が1周するのに約80分かかるそうで、まさに超大作となっていた。
昼は、白いタイルが海辺に映える印象のオペラハウスだが、夜はその姿を大きく変え、多くの観客を魅了していたのが印象的だった。
PCで顔を取り込み海上のウォータースクリーンに投影
シドニー港のダーリングハーバー地区に用意されていたのは「Eyes on the Harbour」というもの。こちらでは、噴水を使った作品で、高さ25mまで水を噴射できる噴水とレーザーなどの照明を駆使し、音楽に合わせて踊る噴水ショーが行なわれた。
また、中央付近には「Laser-Dragon Water-Theater」と呼ばれる水のスクリーンを用意。勢いよく水を噴射して高さ20mの水のスクリーンを作り、レーザーで映像を投影できるようになっており、さまざまな映像を投影することで、水上シアターとして楽しめるようになっていた。
このEyes on the Harbourでは、あらかじめ用意された映像を投影するだけでなく、観客参加型のイベントも用意されていた。それは、Intelの3Dカメラ「RealSense 3Dカメラ」を搭載するオールインワンPCを利用して観客の顔を取り込み、顔に海賊やお姫様、動物などのデジタルペイントを施して短い動画を作り、その動画をLaser-Dragon Water-Theaterに投影するというもの。
最近では、スマートフォンのカメラアプリにも同様の機能が用意されることが増えているが、こちらはRealSense 3Dカメラで顔を立体的に取り込むため、顔を横に向けたり表情を変えても破綻なくデジタルペイントが施される点が、大きな特徴となっている。事前に用意された映像を楽しむだけでなく、その場で観客が参加して作った映像を楽しめるというインタラクティブ要素を加えることで、より観客を魅了するイベントになっていると感じた。
遊歩道に用意された、RealSense 3Dカメラ搭載PCを設置したブースには、大勢の観客が列を作り、顔を取り込んで楽しむとともに、自分の顔がLaser-Dragon Water-Theaterに表示されると、歓声あげて喜ぶ姿が多く見られた。
ライブの映像や音楽が楽しめるオブジェ
オペラハウス前の広場には、「Sound Cells」というオブジェが3基設置されていた。このオブジェは、3Dプリンタを用いて、使用済みペットボトルをリサイクルして作られたという雲のようなシェルを備え、内部にLED照明と高音質スピーカー、そして床に映像を投影するプロジェクターを内蔵。
そして、オペラハウスのホールで開催されたライブ音声をスピーカーから再生するとともに、ライブの模様を撮影した映像をプロジェクターで表示。さらに、内蔵のLED照明を音楽に合わせて光らせることで、ライブ会場に居合わせているかのような雰囲気を楽しめるようになっていた。オーストラリア生まれの音楽プロデューサーのTa-ku氏と、映像アーティストのSam Price氏が手がけたものだという。
このオブジェは、オペラハウス内のスタジオ「Intel Broadcast Studio」と光ケーブルで接続され、スタジオで実際に撮影された音声や映像を転送し再生。オブジェの近くでは、身体に響く低音の効いたサウンドで、LED照明のライティングと合わせて、オペラハウスの外に居ながら、オペラハウスのライブ会場にいるかのような感覚が体感できた。音楽に合わせて踊る観客も見られ、周囲の雰囲気を大いに盛り上げていた。
ハーバーブリッジや行き交うフェリーもライトアップ
シドニー港にかかる橋「ハーバーブリッジ」は、オペラハウスを望む面にLED照明が取り付けられ、鮮やかにライトアップ。しかも、ハーバーブリッジのLED照明は、Intel製プロセッサ搭載の大型タブレットを操作して、観客が発色や点滅などのパターンを自由に変更できるようになっているという。今回は時間がなく、タブレットを操作して実際に橋のライティングを変更することは体験できなかったが、周囲から眺めているだけでも、刻々と発色や点滅タイミングなどが変わる様子を確認できた。
また、ハーバーブリッジだけでなく、シドニー港を行き交うフェリーや、港を囲む建物も鮮やかにライトアップされていた。目に見える範囲内のほぼすべてがライトアップされる様子は、非常に華やかさを感じるとともに、ここまでやるのかと驚かされた。