【イベントレポート】ツーリズムEXPOジャパン2016

ツアーグランプリ 2016、国土交通大臣賞は阪急交通社の「美しきアルザス地方・ドイツ黒い森と花々の楽園 マイナウ島・ルクセンブルク8日間」が受賞

2016年9月22日~25日 開催

 JATA(日本旅行業協会)は、9月24日にツーリズムEXPOジャパン2016において「ツアーグランプリ 2016」表彰式を開催した。ツアーグランプリ 2016の応募件数は、海外旅行部門が96作品、国内・訪日旅行部門が28作品の合計124作品で、そのなかから各部門賞とともに、最も優秀な作品として国土交通大臣賞が選出された。

 表彰式の冒頭、ツアーグランプリ 2016審査委員を務めた、早稲田大学名誉教授の吉村作治氏が登壇し、次のように挨拶を行なった

挨拶を行なう、早稲田大学名誉教授の吉村作治氏

「私は、ツアーグランプリの審査委員を長く務めてきましたが、考えてみると私の人生も旅まみれといいますか、これまでに182カ国を旅してきました。“人生は旅”とよくいわれますが、まるで遊牧民のように旅をしております。ツアーグランプリには、毎年100を超える作品がノミネートされますが、どれも高いクオリティで素晴らしいと思います。これからもツアーグランプリが続いていくことを祈りたいと思います」。

 以下が、各賞の受賞者。受賞理由とともに紹介していく。

国土交通大臣賞

阪急交通社「美しきアルザス地方・ドイツ黒い森と花々の楽園 マイナウ島・ルクセンブルク8日間」

 リピーターの取り込みに視点を置き、さらに需要の高い、自然、花、珍しいデスティネーション、特別感といった要素がうまく組み込まれている。ヨーロッパ市場の冷え込みという、どの旅行会社も厳しい状況にある中で、市場に受け入れられる新しい道を模索し、ピンチをチャンスに変えられるような工夫を凝らしたツアーを作り上げている点が高く評価された。

受賞の喜びを語る、阪急交通社の黒田亮氏

 受賞した阪急交通社の黒田亮氏は、受賞の喜びを次のように語った。

「このような賞をいただきまして、大変光栄に思っています。また、私たちのツアーに参加いただいた皆さまにお礼申し上げます。ヨーロッパ市場冷え込みのなか、このツアーは王道ではなく、知名度の低い観光地といったところがリピーターの皆さまに支持されまして、参加いただいたことも、光栄に思っています。今後もリピーターの方、その一歩先の方にも満足いただけるツアーを送り出していきたいと思います」。

海外旅行部門 観光庁長官賞

クラブツーリズム「中国・張掖丹霞地貌(ちょうえきたんかちぼう)絶景ハイキング旅5日間」

 最近、その絶景の見事さから脚光を浴びている中国、張掖丹霞地貌。5日間という参加しやすい日程としたうえで、目的を絶景ハイキングに絞り、ほかの観光をあえて加えなかったことにより、デスティネーションの魅力と日程、価格、参加しやすさといったバランスがうまく噛み合ったツアーとなっている点が高く評価された。

国内・訪日旅行部門 観光庁長官賞

ワールド航空サービス「日本旅百景」

 残したい日本の風景や民族文化、伝統芸能などにスポットをあて、有名ではないが魅力のある小さな町や村の文化に触れるという、会社の個性がよく表われた作品となっている。海外旅行には行きづらくなった高齢の顧客の取り込みに成功している点も高く評価された。

海外旅行 SIT部門 グランプリ

ピース・イン・ツアー「カンボジア 村の小学生の子どもたちに体育を教える活動」

 学生ボランティアツアーは近年のトレンドの一つとなっているが、この企画はただボランティア希望の学生を送り込むだけではなく、事前に現地の学校に趣旨を説明し、理解を得られているところを厳選、学生の熱中症など健康にも配慮するなど、サポート面も含め細かなところまで気を配っている点が高く評価された。

海外旅行 シリーズ部門 グランプリ

朝日旅行「世界の名画を訪ねる『美の旅』シリーズ」

 美術に造詣の深い参加者のニーズに応えた旅のシリーズ。自分の趣味のある分野を、自分のペースで楽しめるようになっており、せき立てられず、ほかの人を気にせず美術鑑賞を楽しめるというコンセプトに沿った工夫もなされている。会社の看板商品としてしっかり育ててきた点が高く評価された。

海外旅行 パッケージ旅行部門 グランプリ

ワールド航空サービス「古き良き 新しい町並みと長城 山清水秀 古北水鎮の旅」

 中国でもブレークし始め脚光を浴びている、古北水鎮にスポットを当てた、日本で初めてのツアー。日程的によく研究され、知恵を絞って作られている。現地パートナーとの連携を密にし、情報収集を重ねてきたからこそ、このツアーの導線につながった点が高く評価された。

国内・訪日旅行部門 グランプリ

ユーラシア旅行社「五島列島巡礼の旅 4日間」

 熊本震災後の九州応援ツアーの一連商品。平均的な日程を長めに取ることでゆとりを持たせ、五島列島の魅力を十分に、無理なく紹介することに成功している。見込みの1.5倍の集客を得ている点も高く評価された。

日本橋トラベラーズクラブ「チャーター機で行く奥アマゾン“最後の石器人”ヤノマミ族に出会う旅」

 SITの多様さ、奥深さを感じさせる内容となっている。エコツアーとしてゴミを極力出さない、参加者は各自水筒を用意するなど、環境にも配慮した点に好感が持てる。独自の切り口で非常にニッチなツアーを催行できる同社の個性もよく表れた作品として評価された。

海外旅行部門 審査員特別賞

エヌオーイー「ぷら旅シリーズ ~どの日に行っても一人部屋無料19.8万円! ぷら旅で海外旅行~」

 ヨーロッパ需要喚起の価格訴求型商品で、追加料金なく1人部屋が使えるという工夫が、最近の“お一人様”の需要傾向とマッチしている。個人旅行ではなかなか行きにくいニッチな国も含まれ、それらの国々に一人で参加できることなど、非常に興味深い内容となっている点が評価された。

びゅうトラベルサービス「KANTO BUFFET」

 SIT(Special Interest Tour)にターゲットを絞り、きっぷ+アクティビティ、きっぷ+宿泊といったびゅうトラベルサービスらしい商品。訪日客にアクティビティや体験プログラムなどを販売したいサプライヤーの主要な販売チャンネルの一つとなっており、東京に一極集中しがちな訪日客を近隣首都圏へ分散させる試みもなされている点が評価された。

国内・訪日旅行部門 審査員特別賞

朝日旅行「大坂再発見 なにわの渡しウォーク」

 民官共同で作った街興し商品で、地域の魅力発見と素材の掘り起こしにつながっている。“渡し”をテーマに、地域の魅力を再発見させるきっかけにもなっている。ともすれば見落としがちな素材をしっかりと商品化し成功させた点が評価された。

講評を行なう松本大学名誉教授の佐藤康博氏

 全受賞作品の発表を終え、ツアーグランプリ 2016 最終審査員を務めた松本大学名誉教授の佐藤康博氏が登壇し、次のように講評を行なった。

「今年の応募、審査の内容にはいくつかの特徴が見られました。これまで、毎年のように応募数が少ないといってきましたが、今年は合計124件と、2015年よりやや増えました。この傾向が今後続いて増えていけば、審査は難しくなるかもしれませんが、質は上がっていくと思います。今回も、何度か再投票を繰り返しながらここにたどり着いていますが、いわゆるテロや政治には負けないぞ、というような、旅行業界が今できることは何か、というメッセージを出している作品が見られたこと、そしてこれまで海外旅行商品を出されていた方が、目線を国内にも向けてくださるようになったことで、質の高い国内作品が登場してきたことが特徴でした。日本の地方のささやかなお祭りなどをパッケージにするとたくさんの客が集まるんだ、という実績をあげられたり、日数や時間、お金の制約がある海外からのお客さまに、ささやかながら日本を理解する旅が用意されましたが、日本人にとっても大いに参考になる分野と感じました。今後、海外旅行は厳しい状況が続くと言われていますが、人々は旅に出たいと思っています。そのニーズを上手に汲み取った商品を提供していただきたいと思います。2017年は、もっともっとわくわくするような旅の登場を期待します」。

閉会の挨拶を行なう日本旅行業協会 副会長の丸尾和明氏

 最後に、ツアーグランプリ 2016実行委員長で、JATA(日本旅行業協会)副会長の丸尾和明氏が、次のように閉会の挨拶を行ない、表彰式は終了した。

「受賞された皆さま、おめでとうございます。構想力、企画力、実行力といった長年にわたる努力が評価されたものだと思います。ツアーグランプリも今回で23回目です。その時代を反映、また象徴する素晴らしい商品が送り出されてきました。今年は、昨年に比べて1割ほど作品数が増え、海外旅行部門は2割増えました。これは、海外をなんとしても復活するという、旅行業界の強い意志の現れと思います。また、国内・訪日旅行部門で、これまで海外旅行を専門に扱ってこられた会社が、大変優秀な商品を生み出してこられました。これは裏を返しますと、国内には素材の見方、切り口の変え方で、新しい価値を生み出せる、そしてお客さまのニーズに合致する、ということではないかと考えています。旅行業者の価値は、単に足と宿を手配するだけでは決してありません。魅力のある旅、新しい価値のある旅を創造していくというのが、旅行業者の存在価値であり、発展させていく力になります。審査は激戦で、受賞された皆さん以外にも、大変惜しい作品も多くあったと聞いています。これからも、魅力のある、新しい価値のある旅を創造してもらいたいと思います」。