【イベントレポート】ツーリズムEXPOジャパン2016

日本旅行業協会が「旅行業界研究講座」を開催

2016年9月22日~25日 開催

 JATA(日本旅行業協会)は2016年9月23日、東京ビッグサイトで開催された「ツーリズムEXPOジャパン」において産学連携フォーラムの一環として「旅行業界研究講座」を開催、就職活動中の学生を中心に約300名が参加した。沖縄ツーリストの代表取締役会長である東良和氏や100年以上の歴史を持つイギリスのサリー大学で教授を務めるグラハム・ミラー氏、日本旅行業協会の広報室長である矢嶋敏朗氏が講演を行なった。本講では、東氏、そして矢嶋氏の講演の模様をお伝えする。

沖縄ツーリスト株式会社 代表取締役会長 東良和氏

 沖縄ツーリストの東氏はまず、「観光は21世紀最大の産業で成長産業である」としたうえで、「観光産業の一翼を担っている旅行産業が成長の波に乗っていけるかは各社の戦略、各社の社員の考え方次第」だと説明した。その意図について、「市場をどこに求めるかが重要。少子高齢社会で人口も減少している日本では、訪日旅行が地域産業を支える、または地方創生の鍵になってくる。それを頭に入れておいてほしい」と語った。

 続けて昨年の訪日外国人が1973万人だったこと、海外からの観光客数のランキングでは世界で16番目であることに触れ、「Jリーグで言えばJ2くらい。J1には入り切れていないのが本音のところ」と述べた。そのうえで旅行会社の仕事について、国内市場向けに国内旅行と海外旅行、そして海外市場向けには訪日旅行と日本以外の第三国への旅行や観光があるとする。このなかで、まだまだ騒がれていないが各旅行会社で対応するための準備を進めているのが、海外市場向けの第三国への旅行、つまり、外国人向けに日本以外の土地への旅行商品を販売することだとした。

 東氏は、海外市場向けの第三国への旅行について「一見、日本の旅行会社には関係なさそうだが、みなさんが旅行業界に入って10年、20年すると、当たり前のように行なわれるようになることを分かってほしい」と語った。その理由として、世界全体の旅行マーケットは171兆円と極めて巨大であることを挙げた。

東氏は外国人客に日本以外の第三国の旅行を販売することが今後重要になるとした
世界の旅行業界の市場規模は171兆円

 個人的な意見だと断りつつ、これから成功する人材として「未来のことを当事者としてイメージし、それに向かって準備することのできる人」「市場を外に見出す人、自ら考え行動する人」とした。その背景には「EUが5億人、ASEANが6億人。そういったマーケットを自分たちのものだと考え行動する」ということがこれから求められると説明した。そして最後に、「準備なき者には偶然さえも微笑まない」というフランスの化学者であるルイ・パスツールの言葉を紹介して講演を締めくくった。

東氏が語る、これから求められ成功する人材の条件
日本旅行業協会 広報室長 矢嶋敏朗氏

 JATAの矢嶋氏は、日本における旅行業の現状について話した。現在、旅行業界に所属する会社は1万社あると紹介したうえで、最近になって事業の内容が大きく変わりつつあるとした。その例として挙げられたのが、1兆円を超える売上高を誇るJTBグループで、「最近では出版系やイベント、文化交流産業など、旅行会社という枠組みから超越しています」としたうえで、参加者の多数を占めた就職活動中の学生に対し、「それぞれの企業の事業をしっかり理解したうえで、そこでなにをしたいのかを明確にして臨んでほしい」とアドバイスした。

JTBグループの事業。ニーズが多様化し、旅行会社の事業内容も大きく変わっているとした
トラベル産業の事業の変革。成長ゾーンには、eビジネスや訪日旅行に加え、MICEやBTMといったビジネス向けの商品が位置する

 旅行市場における、インターネット取引の割合についても言及し、「現状は7割程度が店頭販売ですが、今後はインターネットでの予約や購入が増えてくる」との認識を示した。ただし、「修学旅行や甲子園の5000人の応援旅行をネットで申し込むことはないでしょう。その意味で使い分けだと思います。インターネットは脅威だと言っていますが、Yahoo!やGoogleはライバルではなく共存しなくてはいけない」と語った。

インターネット取引は伸びているが、バスや新幹線においてはまだまだオフライン(電話や店頭販売)の割合が大きい。ただ今後はインターネットが伸びると予測する

 旅行業界の今後伸びる領域について、eビジネスやMICE(国際会議など、ビジネスにかかわる多数の人数が移動する行事)、出張手配などのBTM、そして訪日旅行を挙げる。ただ大きな伸びはなくても国内旅行や一般団体旅行、教育旅行といったコア事業は残るとしたうえで「行きたい会社、やりたい仕事を改めて考えてほしい」とした。

 この後、JTB首都圏や近畿日本ツーリスト、読売旅行、エヌオーイー、そして日本旅行から入社3年目の若手社員が登壇、現状の仕事内容を紹介したり、会場からの質問に答えたりした。

旅行会社の若手社員として登壇した株式会社JTB首都圏の重田涼花さん
近畿日本ツーリスト株式会社の皆川拓也さん
株式会社読売旅行の野田嘉さん
株式会社エヌオーイーの滝口明宏さん
株式会社日本旅行の水本彩乃さん