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経済交流・発展を目的とした「ルクセンブルク・日本 ビジネスフォーラム」開催。ルクセンブルク大公が祝辞

観光、物流、デジタル、宇宙などさまざまな分野のセミナーを実施

2017年11月27日 開催

ルクセンブルク・日本 ビジネスフォーラムのオープニングセッションで祝辞を述べる、アンリ・ルクセンブルク大公

 ルクセンブルク商業会議所、ルクセンブルク経済省、在日ルクセンブルク大公国大使館、ルクセンブルク貿易投資事務所(東京)は11月27日、東京都内のホテルにおいて、ルクセンブルクと日本の経済交流・発展を目的とした「ルクセンブルク・日本 ビジネスフォーラム」を開催した。

 本ビジネスフォーラムは、ルクセンブルグ大公国 大公および同妃の国賓訪問行事の一環として開催されたもので、オープニングセッションには、アンリ・ルクセンブルグ大公とアレクサンドラ王女も臨席。オープニングセッションの冒頭では、アンリ・ルクセンブルク大公殿下が次のように祝辞を述べた。

「本日は、皆さんをルクセンブルク・日本 ビジネスフォーラムにお迎えできることを、心よりうれしく思います。今回の国賓としての訪日は、日本とルクセンブルクの外交樹立90周年を祝すにあたって、大切な節目となるでしょう。

 日本とルクセンブルクの絆は、非常に素晴らしいものです。今回の訪問でも、日本の皇室と我が王室との素晴らしい関係を証明でき、両国の強いパートナーシップが特別なものだと認識しております。また、日本の文化には常に魅了されております。伝統とモダンが共存していることに感銘を受けておりますし、日本のイノベーション力も高く評価しております。

 日本とルクセンブルクは地理的に離れていて、人口構造も異なっていますが、共通の価値観や利害を共有しています。日本と同じように、ルクセンブルクはオープン経済を標榜しております。西欧の中心地にありますし、欧州連合のゲートウェイともなっています。そして、今回のフォーラムに80社の企業が同伴してくれたことは、日本経済に対して我が国の企業がいかに関心を持っているかを示すものです。

 こんにちのような変化の激しい時代において、競争相手に一歩先んじるためには、国際的に多様化や多角化を進めていかなければなりません。ユニークな活動をしないと、経済や雇用を持続し、環境を保全できません。近年ルクセンブルクは、野心的な研究開発の枠組みを、大学や公的な研究期間、民間企業などと手を結んで構築しました。そういったなか、日本とルクセンブルクとの間でもさまざまな取り組みが進められています。例えば教育、医学、一般的なイノベーション分野などで取り組みが進められています。

 今回の私の訪日、およびその後にわたっても、これまでになかったようなシナジーが生み出されることでしょう。それによって、お互いの進化を促進するような取り組みが始まるでしょう。そして、今回のフォーラムはまたとない機会ですので、新しい協力分野を模索していただけると幸いです。既存のネットワークは緊密ですが、その絆をさらに強化できることでしょう」

ルクセンブルク商工会議所と日本商工会議所が経済協力や相互支援などで調印

 続いて、日本経済団体連合会(経団連)ヨーロッパ地域委員長の佐藤義男氏が登壇し、ビジネスフォーラム開催について挨拶を行なった。そのなかで佐藤氏は、日本とEUとの間で包括的な経済連携協定(EPA)の締結で大筋合意したことを取り上げ、「EPA締結の意味はきわめて大きく、世界に対して力強く前向きなメッセージを発信することになる」と、強い期待感を述べるとともに、早期の批准、発効を実現すべく、ルクセンブルク政府や経済界に協力を求めた。

 また、日本貿易振興機構 副理事長の赤星康氏は、ビジネスフォーラムでのテーマの一つになっている観光分野について取り上げ、観光立国を目指し、年々訪日外国人観光客が増加している日本の状況を説明しながら、「日本とルクセンブルクが経験を共有しあうことも、よい取り組みになる」と、観光分野での連携強化についての期待感を述べた。

ビジネスフォーラム開催について祝辞を述べる、一般社団法人日本経済団体連合会 ヨーロッパ地域委員長 佐藤義男氏
同じく祝辞を述べる、独立行政法人 日本貿易振興機構 副理事長 赤星康氏

 さらに、ルクセンブルク 副首相兼経済大臣のエティエンヌ・シュナイダー氏と、ルクセンブルク 財務大臣のピエール・グラメーニャ氏による基調講演も行なった。

 シュナイダー氏によると、2017年には日本とルクセンブルクの間の貿易額が2倍に増加し、日本はルクセンブルクのアジアにおける最大の貿易相手国だという。しかし、まだ双方に投資の余地が大きく残されていると指摘。そういったなかで、宇宙開発やデジタル化などを柱として挙げ、さらなる両国間の連携を期待すると述べた。

 また、ここ数年ルクセンブルクを訪れる日本人観光客が劇的に増えていることや、11月27日から12月17日の期間限定で、ルクセンブルクの食や文化を体験できるルクセンブルク政府公認のポップアップ・カフェ「ルクセンブルク・カフェ」が日本橋浜町の「Hama House」でオープンすることなどを紹介しつつ、「この機会にルクセンブルクの魅力に触れ、ルクセンブルクにぜひ足を運んでほしい」と述べた。

 グラメーニャ氏は、過去6年間駐日大使として駐在していたそうで、冒頭では日本語で挨拶。そして、欧州の経済状況について、政治、経済ともに回復に向かっているとし、「世界はもとより日本の企業にとっても朗報」だと述べた。また、多くの日本企業がルクセンブルクに進出していることも取り上げ、「これはルクセンブルクの状況が良好で、国として魅力がある証拠」と、自信を示した。最後に、金融の分野も含め、日本の企業とさらなるパートナーシップを進めていきたいと述べ、挨拶を終えた。

 最後に、ルクセンブルク商工会議所と、日本商工会議所との間で、貿易や投資、両国の経済協力に関する情報交換、トレードフェアなどのイベント開催時の相互支援などで協力するといった条項を含む覚書の調印式が行なわれ、オープニングセッションは終了した。

基調講演でルクセンブルクの現況を紹介する、ルクセンブルク 副首相兼経済大臣 エティエンヌ・シュナイダー氏
ルクセンブルク 財務大臣のピエール・グラメーニャ氏は、ルクセンブルクおよび欧州の経済状況を説明した
ルクセンブルク商工会議所と、日本商工会議所との間で覚書の調印式が行なわれた

ルクセンブルク観光セミナー

 その後、ビジネスフォーラムのセミナーを開催。そのうちの一つ、観光セミナーでは、ルクセンブルクの観光についての説明が行なわれた。

 セミナーの冒頭、ルクセンブルク経済省 観光担当部長のリッキー・ヴォール氏が挨拶した。ヴォール氏によると、ルクセンブルクの観光産業はGDPの5.1%を占めているそうだが、今後さらに伸ばしていく計画とのことで、まだまだ開拓すべき部分が残されているという。そういったなか、日本からのルクセンブルクへの観光客は大きく伸びており、今後は高品質の観光プログラムを日本の観光客に提供していきたいと述べた。

 続いて、ルクセンブルク・フォー・ツーリズム局長のアンヌ・ホフマン氏によって、ルクセンブルクの魅力が紹介された。ドイツ、フランス、ベルギーに挟まれたルクセンブルクは、欧州の主要都市から短時間でアクセスできるため、手軽に観光できるという。また、首都ルクセンブルク市は、EU設立国の一つとして、ヨーロッパの多くの機関がある近代的な都市であるとともに、市民の70%が外国人とのことで、国際色豊かな近代的な都市として魅力があるという。その一方で、1000年の歴史を誇る要塞都市でもあり、市内には数多くの要塞の建造物が残されており、ルクセンブルク市自体が世界文化遺産として認定されているそうだ。市内のさまざまな場所で要塞の城壁や壮観な景色を楽しめるとのことで、見どころが満載と紹介された。

 また、ルクセンブルク市からクルマで郊外に出ると、豊かな自然も残されているという。豊かな丘陵が広がりハイキングや登山を楽しんだり、ドイツとの国境付近ではクルージングや醸造ワインが楽しめたりする。また、ルクセンブルク南部は過去に鉱業が盛んな地域だったそうで、蒸気機関車などの過去の遺産が残されているそうだ。

 このほか、1955年にニューヨーク近代美術館の開館25周年を記念して開催された「The Family of Man」という写真展で展示された作品がルクセンブルクに寄贈されており、世界記録遺産として認定され、展示されているという。The Family of Manは、日本を含む全世界の多くの国を巡回し、記録的な観客動員を達成したそうだが、展覧会を企画したエドワード・スタイケン氏の出身国がルクセンブルク出身だったことから作品が寄贈されたとのことで、ルクセンブルク北部のクレルヴォーという街で楽しめるという。料理は、ドイツとフランスの影響を受けているそうで、ワインも人気があるそうだ。

 今回の観光セミナーは、国内旅行代理店に向けたもので、観光地などを詳細に紹介するという内容ではなく、現地のホテルやツアーコンダクターなどが集まり、旅行商品の開発につなげるという意味合いの強いものだった。ただ、オープニングセッションでのアンリ・ルクセンブルク大公や、ルクセンブルク 副首相兼経済大臣のエティエンヌ・シュナイダー氏が述べたように、観光にも力を入れるとのことで、今回のセミナー開催と合わせ、今後ルクセンブルクを訪れるツアーが充実するものと考えられる。日本人にとって、ヨーロッパの観光地としてルクセンブルクはまだなじみが少ないかもしれないが、今後は注目度が大きく高まりそうだ。

観光セミナーで挨拶する、ルクセンブルク経済省 観光担当部長のリッキー・ヴォール氏
ルクセンブルク・フォー・ツーリズム局長のアンヌ・ホフマン氏はルクセンブルクの観光の魅力を紹介
ルクセンブルクは、ドイツ、フランス、ベルギーに挟まれた場所に位置している
ルクセンブルクの首都、ルクセンブルク市は、EU設立国のひとつとして多くのヨーロッパ機関があるなど、近代的な都市だ
1000年の歴史のある要塞都市という側面もあり、市内には多くの要塞や城壁が残され、世界文化遺産に認定されている
ルクセンブルク国内には多くの要塞や城があり、観光名所となっている
ルクセンブルク市内にも、このような砲台跡が多く残されているという
クルマで少し郊外に出るだけで、このような自然あふれる景色になる
ドイツ国境付近では、クルージングが楽しめる
ルクセンブルク南部はその昔鉱業が盛んだったそうで、その名残の施設や蒸気機関車などが楽しめる
北部のクレルヴォーには、世界記録遺産として認定されている「The Family of Man」写真展の作品を展示している
ルクセンブルクの食は、隣国ドイツやフランスの影響を強く受けているという
観光で訪れた場合には、ルクセンブルクで醸造されたワインも楽しみたい