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首都高、1号羽田線の更新や横浜環状北線の開通に向けた港北IC出口の切替など2015年度年の取り組みと今後の施策を説明

定例記者会見より

2015年10月22日 開催

首都高速道路株式会社 代表取締役社長 菅原秀夫氏

 首都高(首都高速道路)は、10月22日に都内で会見を開き、代表取締役社長 菅原秀夫氏が1号羽田線の更新や横浜環状北線の開通に向けた港北IC出口の切替など、2015年度年の取り組みと今後の施策を説明した。

 冒頭の挨拶で菅原氏は、「おかげさまで首都高は、10月1日で民営化10周年を迎えることができました。この間、首都圏3環状のなかで最初の全通となる中央環状線が開通しました。中央環状線の内側の交通量5%減、渋滞5割減と大きな効果を上げております。ネットワーク整備や渋滞対策、交通安全対策に取り組んで参りました。他にも社宅を活用した不動産の賃貸事業や飲食事業、海外事業といった新事業も展開してまいりました。今後は構造物の高齢化対策として大規模更新や大規模修繕を確実に進めていきます。また、利用具合に応じた公平な料金体系の実施、管理主体を越えたシームレスな料金体系の実現を目指した首都圏の新たな料金体系をパブリックコメントを通じて国民の皆様からご意見を募集しました。2016年4月からの導入を目指して関係者と調整し、万全の備えで進めてまいります。今後とも、民営化の目的である“有利子債務の確実な返済”“必要な道路を早期かつ少ない国民の負担で建設する”“民間ノウハウによる多様なサービスの提供”に取り組んでいきたいと思います」と述べ、さらに以下の内容について説明を行なった。

・7号小松川線の復旧及び塗装工事再開状況
・大規模更新事業の今後の予定
・「首都高快適走行ビジョン」の策定から半年の取り組み
・横浜環状北線の開通に向けた第三京浜道路(上り)港北IC出口の切替
・技術とノウハウを生かした知的財産権の活用状況
・「ハイウェイテクノフェア2015」への出展に関して
・環境への取組み
・技術コンサルティング事業の受注状況等
・質の高いサービスの提供を目指した「改善」の取組み
・6月~9月の通行台数の推移

7号小松川線の復旧及び塗装工事再開状況

 2月16日に7号小松川線の高架下の塗装工事中に発生した火災に関して、恒久的な復旧工事を7月上旬に着手。橋桁の補強、ケーブルラックなどの付属物の恒久復旧をそれぞれ8月上旬、10月中旬までに完了。今回の事故の再発防止策として、「首都高速道路の塗装塗替え工事による火災事故再発防止委員会(3月30日開催)」にて策定された中間とりまとめに基づき、以下のような管理体制の強化と脱出・避難のための処置を実施した。

1.本社技術部内に工事安全推進課を新設し、火災安全を総括的に管理。また、同課に10月1日付けで火災予防の専門家(東京消防庁OB)を配置。
2.火災安全に関する担当者として、東京東局等に「工事火災安全管理担当」、「工事火災安全監督担当」を配置
3.複数の現場を定期的に巡回指導する危険物等担当管理員、現場に常駐監視員を新規に配置

7号小松川線の復旧及び塗装工事再開状況
塗装工事の再開状況について
火災発生時に脱出・避難のための処置
大規模更新事業の今後の予定

 首都高速1号 東品川桟橋・鮫洲埋立部の更新に関しては、8月5日付で土木工事の契約を締結済み。2015年度内の工事着手に向け、現在、東京モノレールなど関係機関と協議中。

 多数の亀裂が見つかっている、首都高速1号 高速大師橋の架け替え工事は現在、東京都と川崎市に都市計画変更手続きを申請しているところ。2016度早期に工事契約手続きを開始する予定。

 首都高速3号 池尻~三軒茶屋間の更新と付加車線増設に関しては、東京都に都市計画変更手続きを申請中。2020年東京五輪後の更新工事着手に向け、2016度以降、地下構造物の補強工事を先行して実施予定。地下構造物は、東急田園都市線と一体になっており、列車の運行していない深夜に工事を行なう。地下構造物に鉄筋を入れて補強する。

首都高速1号 東品川桟橋・鮫洲埋立部の更新に関して
首都高速1号 高速大師橋の架け替え工事に関して
首都高速3号 池尻~三軒茶屋間の更新と付加車線増設に関して
首都高速道路における更新計画の一覧
「首都高快適走行ビジョン」の策定から半年の取り組み

 2月に、既存の道路の機能を最大限発揮させるための渋滞対策や快適走行の施策を総合的にまとめた「首都高快適走行ビジョン」を策定し、様々な取組みを実施している。4つのプランに基づき各種対策を行っているが、ここでは策定から半年の取組みとして、特にエスコートライトと渋滞予想カレンダーを中心に紹介する。

2月に、既存の道路の機能を最大限発揮させるための渋滞対策や快適走行の施策を総合的にまとめた「首都高快適走行ビジョン」を策定し、4つのプランに基づき各種対策を行っている

 エスコートライトは、上り勾配における無意識の速度低下を防ぐ対策として、進行方向に60km/hの速さで光を流す装置。これによる走行速度の上昇により、運用直前直後の比較では、設置区間の最大通過台数が設置前よりも約3%上昇し、渋滞損失時間が約1割減少した。なお、設置区間の最大通過台数は、エスコートライト設置以来、上昇効果が継続しており整備効果が確認できたことから、中央環状線の内回り 千住新橋付近と、同じく中野長者橋付近に設置する予定。

 渋滞予想カレンダーは、非混雑時の利用を促すために作成してWebページ(http://www.shutoko.jp/ss/trafficcalendar/)に掲載している。2015年度上半期は、お盆前とシルバーウィーク前の金曜日が特に渋滞が多いと予想し、実際にお盆前が上半期1位、シルバーウィーク前が上半期2位の渋滞の多さとなった。下半期については、2016年3月までのカレンダーを作成し、年末や年度末の平日の渋滞が特に多いと予想している。また、PA(パーキングエリア)でも、渋滞予想カレンダーを配布する予定。

 他にも、中野長者橋付近は右車線に車両が集中し、速度が低下しているため、左車線の利用を促進するための看板や路面標識の設置を行なっている。さらに、池尻・三軒茶屋出入口間の改良や板橋・熊野町JCT(ジャンクション)間の改良、堀切・小菅JCT間の改良、5号池袋線の混雑時に、外環を利用した川口線などへの迂回を促進するためのチラシの作成などを行なっている。

エスコートライトの設置により、設置区間の最大通過台数が設置前よりも約3%上昇し、渋滞損失時間が約1割減少
渋滞予想カレンダーは、非混雑時の利用を促すために作成してWebページに掲載している
他にも看板や標識の設置、JCTの改良、迂回促進の告知活動などを行なっている
横浜環状北線の開通に向けた第三京浜道路(上り)港北IC出口の切替

 横浜環状北線の2016年度本線完成に向け、第三京浜道路と接続するJCTを形成するために、港北lCを段階的に切替える工事を実施中。この切替工事はNEXCO東日本に委託し、3段階に分けて出入口を切替予定。第1段階は11月2日0時に実施。第2段階は2016年の夏、第3段階は2016年の冬にそれぞれ実施する予定。

横浜環状北線の2016年度本線完成に向け、第三京浜道路と接続するJCTを形成するために、港北lCを段階的に切替える工事を実施中
第1段階は11月2日0時に実施。第2段階は2016年の夏、第3段階は2016年の冬にそれぞれ実施する予定
技術とノウハウを生かした知的財産権の活用状況

 事業の効率的な運営と、技術やノウハウを活かした事業領域の拡大を図る目的から、知的財産の開発推進、適切な管理、および活用促進を図っている。2015年度の上半期までの知的財産権保有状況は、特許権52件、意匠権7件、実用新案権2件であり、2015度上半期は新たに特許権5件、意匠権1件を取得した。

 2014年度は、保有する知的財産権のうち特許権7件、意匠権3件、実用新案権2件より実施料収入を得た。なお、出願中の知的財産権については、特許権5件について実施料収入を得た。実施料収入は、2012年度に初めて支出を上回り、2013年、2014年度も継続して実施料収入が支出を上回っている。

知的財産権保有数のグラフ
2014年度の実施料収入を得た知的財産権

 実際に首都高で生まれて活用されている技術の例として以下の4つを紹介する。

・道路床版の下面に連続補強繊維を格子状に配置し、樹脂を含浸して接着する「道路床版の補強方法」

・トンネル内の配線を支持するケーブルハンガー「電気ケーブル架設用支持具」

・ナットと一体化されたスプリングの特性により緩み・脱落を防止したナットと、クリップ金具を一体化したクリップナット。板状のものを合わせる際に使用する。

・バリアフリーの観点から、トイレ紙巻器に片手でトイレットペーパーをカットできる機能を付加した「片手で切れるトイレ紙巻器」。鉄道の駅舎のトイレなどにも採用実績がある

道路床版の下面に連続補強繊維を格子状に配置し、樹脂を含浸して接着する「道路床版の補強方法」など
トイレ紙巻器に片手でトイレットペーパーをカットできる機能を付加した「片手で切れるトイレ紙巻器」
トンネル内の配線を支持するケーブルハンガー「電気ケーブル架設用支持具」
ナットと一体化されたスプリングの特性により緩み・脱落を防止したナットと、クリップ金具を一体化したクリップナット
バリアフリーの観点から、トイレ紙巻器に片手でトイレットペーパーをカットできる機能を付加した「片手で切れるトイレ紙巻器」
「ハイウェイテクノフェア2015」への出展に関して

 11月25日~26日に東京ビッグサイトにて開催される「ハイウェイテクノフェア2015」に出展を予定。「可視化装置を活用した電波環境調査」など、点検診断技術及び維持管理手法を幅広く紹介していくほか、会社設立10周年についてもPRを実施する。

「ハイウェイテクノフェア2015」にて、「可視化装置を活用した電波環境調査」など、点検診断技術及び維持管理手法を幅広く紹介していくほか、会社設立10周年についてもPRを実施
環境への取組み

 環境への取組みとして、環境イベントを実施。9月18日に実施した、「見沼たんぼ首都高ビオトープ『かい掘り&エコスタック作り』」は、見沼たんぼに昔から生息する在来種の保護・増加を図るために、池の水を抜いてアメリカザリガニなどの外来水生動物を捕獲する活動。「エコスタック作り」として間伐した樹木を積み上げ、昆虫のすみかを作成した。

 9月26日~27日の「首都高環境フェアinお台場」では、クルマが通り抜けると音楽を奏でる仕掛けをした中央環状線の木製模型「首都高スムーズシンフォニー」などを使い、首都高のネットワーク整備効果による環境負荷軽減に関する効果を紹介した。

 また、10月6日には、「おおはし里の杜『稲刈り体験』」を実施。地域の小学生による稲作体験を行なった。

環境への取組みとして、環境イベントを3件実施
技術コンサルティング事業の受注状況等

 技術コンサルティング事業の受注状況としては、2015年度の国内に関しては、土木分野では橋梁の点検、補修・補強設計等を25件受注。建築分野では建物耐震診断を16件受注した。また、橋梁の維持管理技術に関する勉強会を6月16日に実施。

 同じく海外に関しては、JlCA発注のベトナム「建設事業における積算管理、契約管理及び品質・安全管理向上プロジェクト」など5件を受注。9月末時点で40カ国から約190名の要人や技術者の視察・研修の受入を実施している。また、7月にタイ タマサート大学と技術協力覚書を締結。アジア地域の大学とは初めての締結となった。

国内外の技術コンサルティング事業の受注状況
質の高いサービスの提供を目指した「改善」の取組み

 ホームページに設けている「グリーンポスト」や電話での問い合わせ窓口「首都高お客様センター」「お客様満足度調査」など通じて、頂いた意見を基に改善を実施している。「グリーンポスト」は年間で約1000件、「首都高お客様センター」には年間で約2300件の声が寄せられている。2015年4月~7月は、施設などの改善要望に関する意見に基づき171件の改善を実施した。

2015年4月~7月は、施設などの改善要望に関する意見に基づき171件の改善を実施
改善事例の一覧
中央環状線(内回り)から東名方面への大橋JCT手前の分岐案内を分かりやすくするため、情報板にJCT案内表示を可能としさらに案内看板を2個所に設置
都心環状線(内回り)本線走行中の車両へ、2号目黒線(上り)からの右側合流に対する注意喚起を強化するため、既設標識や路面表示に加えて、「右合流あり ゆずりあい」の看板を追加
4号新宿線(上り)新宿入口から中央道方面へ行けない旨の案内をより分かりやすくするため、新宿入口手前に「中央道方面側道へ」案内を設置するとともに、既設の街路案内板も改良し、中央道方面の経路選択が側道であることを分りやすくした
大井JCT内における、1号羽田線(上り)方面と中央環状線(外回り)方面への案内をよりわかり易くするため、分岐手前の案内看板に「山手トンネル」の表示を追加
羽田入口から1号羽田線(下り)へ安全に合流できるように、本線上の合流手前で本線を走行する車両に対して右側入口からの合流車があることを注意喚起する看板を設置
6月~9月の通行台数の推移

 2015年6月~9月は、2014年同月比に比べ、101.9%~103.3%と通行台数が増えている。

2015年6月~9月の通行台数の推移
記者会見で飾られたパネル

 記者会見の会場には、首都高10年間の取り組みをまとめたパネルが展示された。

首都高速道路株式会社の設立10周年を記念した年表
首都高のネットワークに関する説明
首都高の事業紹介
PAの利便性向上に関して
新技術の紹介
快適走行の実現に関して
ITSの活用に関して
高速道路の安全、安心への取組み
首都高の更新事業
コスト・工程意識の向上に関して
経営全般の説明

(編集部:柴田 進)