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第14回観光立国タウンミーティング、沖縄で初開催
海洋リゾート、MICEに期待もブランド作り、インフラなどに課題
2017年7月25日 16:47
- 2017年7月18日 開催
2013年(平成25年)度から行なわれている「観光立国タウンミーティング」の第14回が、OCVB(沖縄観光コンベンションビューロー)と日観振(日本観光振興協会)の共催で、7月18日に沖縄で開催された。沖縄で開催されるのはこれが初めて。
同会にはJNTO(日本政府観光局)理事の松山良一氏、JATA(日本旅行業協会)会長の田川博己氏も出席するとあって、県内の旅行業界から多くの関係者が聴講に訪れた。
まず主催者の挨拶が行なわれた。日観振 理事長の久保成人氏は、「14回目となる今回、沖縄で初めて開催することができ、日本の観光を牽引する2人をお招きすることができた。
日本は2020年に外国人観光客4000万人を目標として、順調に増えている。そのなかにおいて沖縄は好立地で観光資源も豊富。また、ツーリズムEXPOジャパンを2020年に沖縄で開催する予定だ。我々もDMOなどのノウハウも提供しながら沖縄の観光振興に協力していきたい」と挨拶した。
続いてOCVB 会長の平良朝敬氏は、「沖縄県は昨年、過去最高の観光客数を達成した。インバウンドが伸びて経済も成長しており、観光立県としての責任も感じている。今回は沖縄初開催であり、日観振、JNTO、JATAの三者が一同に会するまたとない機会を持つことができた。沖縄の観光業界の一層の発展につながることを祈念する」と述べた。
来賓として登壇した沖縄県 副知事の富川盛武氏は、「今年3月には観光収入1.1兆円、観光客数1200万人に上方修正。ソフトパワーを発揮し、誘客のプロモーション展開にもスケール感とスピード感を持って取り組んでいきたい。業界を牽引する皆さまから、よき提言をいただけることと期待している」と語った。
続いて、「沖縄観光への提言」をテーマにトークセッションが行なわれた。先に登壇したのはJNTO 理事長の松山良一氏。
「大阪万博の翌年1971年、初めてアウトバウンドがインバウンドを上回った。2015年は45年ぶりにインバウンドがアウトバウンドを上回り逆転した。円安の影響もあるが、日本に対する関心が高まったことが大きい。これはJNTOが継続して取り組んできたプロモーションの成果ではないか。またアジアの中間層にゆとりができ旅行人口が増えたことも挙げられる。
2013年にインバウンド1000万人を目標に観光産業が一つになった。LCCやクルーズの増便でキャパも拡大している。訪日外国人客による観光収入は、自動車、化学製品の輸出額に次いで3番目に多い市場になっている。また、観光名目のGDPは約24兆円で、これは建設業と同じくらいである。これらのことから、観光は日本の基幹産業の1つとなり得る。外国人から見た日本はブランドイメージがよい。JNTOが目指すのは『いつか行きたい日本』を『今行きたい日本』にすることだ。
観光先進国を目指すために柱が3つある。1つは地方の観光資源を磨き上げること。2つ目は観光産業を革新して基幹産業にすること。3つ目は外国人客が不自由なく動き回れる環境の整備。
地方創生と質の高い観光を実現させるために、デジタルマーケティングを本格導入し、Webサイトやブロガーを活用して地方への誘客を図る。来てもらった場所が儲かる仕組みを作ることが大事。今後期待が持てるのは、国際会議などのMICE、そして富裕層の誘客だ。
課題としては、まず意識改革が挙げられる。外国人を積極的に受け入れること、そして笑顔で迎えること。日本人は外国人を見ると目をそむけてしまう傾向があるようだ。また『稼ぐ観光産業への脱皮』を目指し、裾野を広げること。そして観光産業の労働生産性を向上すること。
沖縄の外国人客は東アジアが9割を占める。2次アクセスも含めたアクセスの問題、外国語表示の不足などが旅行者から上がっている。単なる物見遊山に終わらず、ストーリー性のある旅を提供すること。それには外国人客の目線で考える必要がある。世界には旅行人口が2億人いるといわれている。そのなかからどんな人に来てもらいたいのかターゲットを絞り、取り組んでいくとよい。
沖縄の一番の魅力である『ビーチ』も、単体でなくビーチと何かを組み合わせるとよい。よくいわれるのは、沖縄にはビーチはあるがリゾートはないということ。ビーチと文化、エコツーリズム、平和学習など、組み合わせることで沖縄ブランドを確立していけるのではないか」と述べ、沖縄の持つよいイメージをブランドとして固めることが必要だとした。
続いてJATA会長の田川博己氏が登壇した。「沖縄県は順調に観光客数が増えているが、弱点もある。2次アクセスが脆弱なこと。滞在日数が少ないこと。また、夜に楽しめるエンタテイメントが不足していること。世界を見ると、リゾートと呼ばれる場所は夜も楽しめる。
観光の市場は成熟していると思われているが、実は観光庁ができてまだ約10年。未成熟である。海外のリゾート地域は投資先行で環境が充実している。沖縄は、おもてなしだけで終わっていて創造的なことができていない。
観光先進国は、日常的に外国人旅行者をもてなして異文化交流が育まれている。そのための取り組みとして、まず農業、水産業、畜産業と観光業が連携し、食材の知名度を向上させて観光消費額を上げること。また、離島観光、周遊観光を促進すること。本島だけで終わってしまうことが多いが、クルーズなどを利用して奄美から西表まで含めた大きなエリアでの観光を作ること。ソフト、ハード面では、外国語表記の充実やIT端末への対応。さらに、ターゲットの国や地域を定めてブランディングをしていくことなどが挙げられる。
沖縄ならではのコンテンツを活用して、まだまだ魅力あるツーリズムが作れる。MICEやDMOなどへの取り組みも必要だ。実は2000年サミットのときに沖縄がMICE市場になると期待した。しかし9.11でそのイメージが消えてしまった。今後、施設や体制作りも含め、この市場については強調したい」と述べ、2000年サミットで確立できそうだった沖縄のMICE市場に注力することを明らかにした。
続いて行なわれたパネルディスカッションのテーマは「世界から選ばれる国際リゾート地 沖縄になるために」。パネリストは、松山良一氏、田川博己氏に加え、トリップアドバイザー 代表取締役の牧野友衛氏、沖縄県 文化観光スポーツ部 部長の嘉手苅孝夫氏が登壇。コーディネーターは、琉球放送 報道制作局 専任局次長の比嘉俊次氏が務めた。
最初に牧野氏から、トリップアドバイザーのデータから見る沖縄と海外のリゾートとの比較が述べられた。「海外からの沖縄の閲覧数は増えており、2015年にはプラス73%、2016年にはプラス26%になっている。どのような国・地域から閲覧されているかというと、1位が台湾、2位が香港、そしてアメリカ、韓国と続く。ちなみに日本全体だとアメリカからの閲覧が一番多い。
沖縄と同時に見られている国は、韓国、タイ、ベトナムなどのリゾートが多い。特にベトナムのダナンは、日本人が一番見ている。バリ島はオーストラリア、アメリカ、中国、日本が多く、ドイツ、フランス、ロシアなどのヨーロッパからの閲覧もある。沖縄は、これらヨーロッパからの閲覧がない。バリ島やプーケットはヨーロッパでの認知度が高い。
平均宿泊日数は、プーケットは6日、バリ島は4日なのに対し、沖縄は2日ほど。海外のリゾートはオールインクルーシブで長期滞在が多い傾向にある」と解説。
これを受けて田川氏は、「海洋リゾートは滞在型でないといけない。ヨーロッパから東南アジアへはチャーター便で行っている。沖縄にもチャーター便が呼べないか。800万人という数は、定期便だけで呼べる数ではない。沖縄は、呼びやすい位置にあるのではないか」と意見を述べた。
松山氏が「沖縄には観光資源が豊富にある。手付かずの自然もある。課題は、これらがうまく活かされていないこと」と話すと、嘉手苅氏が「もちろん本土(沖縄県外)で商品化してもらって航空会社が送り込んでくれているのだが、それは沖縄に観光資源があるからこそではないか」と答えた。
沖縄のブランディングについては、田川氏が「我々が海外に旅行するとき、『カリブ海』『地中海』『バルト海』など、エリアで呼ぶ。沖縄は『沖縄海』とは呼ばない。沖縄はエリアで捉えられてなく点で見られているのではないか。海外の人にどのように呼んでもらうか考えてはどうか」と提案。
松山氏からは、「沖縄の何をメインのイメージにするか。単にキャッチコピーやロゴを作るだけではダメ。沖縄で何をしたいのか、何をイメージするのか確立したほうがよい」との意見があった。
滞在日数の少なさの解決案については、長期間で来ている人の意見をもっと聞くべきなどの意見が上がった。また、日数を伸ばすだけでなく、そのなかでいかに消費を上げてもらうかも大事だとの意見も。
今後MICEのマーケットに期待するという意見については、そのためにアクセスやインフラ面での整備が必要と課題が上がった。2020年には沖縄にMICE施設が完成予定で、既存のコンベンションセンターや万国津梁館も活かしたいと嘉手苅氏。7月25日にはMICEネットワークを立ち上げるとの報告もあった。
田川氏からは「IR(統合型リゾート)は沖縄にこそ作るべき」との意見も。2020年のツーリズムEXPOジャパンは、海洋リゾートアピールのチャンスと期待の言葉も上がった。
タウンミーティング終了後には、主催者、登壇者が揃って記者会見を行なった。沖縄が今後すべきことについては、松山氏から「沖縄にはすばらしい素材がたくさんあり、沖縄自身が優先順位を決めること、リゾート作りには投資が必要」などの回答があった。また田川氏からは、「海洋の活かし方として、ヨットハーバーがあればいいのにと思っている。大きなヨットレースの誘致など可能性が広がる。今は海洋スポーツ分野の開発が遅れている」などの提言があった。それを実現するためには規制についての議論も必要だとも。最近増えている民泊について、安心・安全を確保することや既存のホテルと競合せず共存するべきなどと述べられた。