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日本旅行業協会、北方領土の旅行商品造成の可能性を報告

2017年6月期の旅行市場動向調査、夏休みの方面別人気ランキングも

2017年7月20日 開催

日本旅行業協会 理事長 志村格氏

 JATA(日本旅行業協会)は7月20日、都内で定例会見を行ない、6月に実施された北方領土の調査結果の報告と、当日に発表したプレスリリースなどについて説明した。

 前者は「北方四島における共同経済活動に関する官民調査団」として、内閣総理大臣補佐官の長谷川榮一氏を団長に、6月27日から7月1日の5日間行なわれたもので、官民69名が参加。2016年12月、2017年4月の日露首脳会談などで合意した、北方領土における共同経済活動の実施に向けた事前現地調査として行なわれた。

 調査団の内訳は内閣官房、外務省、北海道庁などのほか民間27団体で、観光関係としては加森観光、道東観光開発、鶴雅グループなど北海道に拠点を置く数社、JATAからは理事長の志村格氏が参加。漁業や医療、エネルギー、観光などさまざまな分野の関連施設を訪問し、旅行商品造成の可能性や課題などを探ったという。なお、訪問先は国後、択捉、色丹の3島で、歯舞群島はほぼロシア軍関係者しかいないことから、調査から除外されている。

 志村氏は「戦後60年、北方領土への旅行は禁止されており、元島民による交流のみが続けられていたので、観光客はゼロでした。その点で、今回の調査は画期的な試み」であるとして、北方領土は「火山、温泉、動植物など、手つかずの自然が残されている」「ロシア系の生活文化に触れることができる」という魅力がある一方、「各島へのアクセス手段、宿泊施設、舗装道路が不十分」であることなどを問題点として挙げた。また、元住民の日本的な痕跡もほぼ残っていないという。ただ、単純に(初物という意味で)北方領土に行ってみたいと考える人は多いはずで、温泉や釣り、登山、グランピングなど広い意味でのエコツーリズムの魅力もあると指摘した。

 さらに北方四島の前提として、軍関係者や水産関係者らが生活しているものの、ロシアにとっては観光地でないため、基本的に観光向けの宿泊施設などが存在しない。また、空港はILS(Instrument Landing System:計器着陸装置)が整備されておらず、有視界飛行となるため天候の影響を受けやすい、といった問題もある。以下、志村氏の視察所感をまとめた。

国後島

 国後は8000名ほどが生活する沖縄本島より大きい島で、爺爺岳や羅臼山などの火山を擁し、10くらいの自然散策道を整備している。温泉やカルデラ湖があり、ホオノキ(朴の木)の植生を見ることができる。現在はホテルがなく、レストランも十分にないため、宿泊を伴う旅行は難しい。25室50名収容程度のホテルの建設計画があるものの、投資のパートナーが見付かっておらず、実現するか分からないという。

択捉島

 人口約6000名。北方領土の63%を占める“日本一大きな島”で、真珠湾攻撃の際に日本軍が集結した場所でもある。湖や滝、動植物が豊富にある。島で3割くらいの雇用を生み出している水産加工会社ギドロストロイが建てた20室程度のきちんとしたホテルがあり、料金は1泊1万円から7万円くらい。指臼岳には川に硫黄が流れ込んで、滝が温泉になっている場所があり、脱衣場とバーベキューができるようなスペースも用意されているとのこと。

色丹島

 人口約3000名。断崖や入江があり、変化に富む風景を擁している。ただし道がほとんどなく、目的地へは海岸から直接接近するか、獣道のようなところを通るしかない。実際、視察でもクルマで川を越えるどころか、川を遡っていくようなシーンもあったという。「エコツーリズムというよりはアドベンチャーに近い」という感覚とのこと。宿泊施設はない。

 今後の展望としては、制度的に許されれば面白いデスティネーションになり得るが、入境手続きが国後島でしかできない点やインフラが整備されていない点など課題は多く、その解決は民間が促すというよりは政府が主導するのを待つほかない状況であるという。

日本旅行業協会 広報室 マネージャー 稲葉保子氏

 会見後半では、広報室 マネージャーの稲葉保子氏がプレスリリースに基づく旅行市場動向の調査結果を報告した。

 1つめは2017年6月期の旅行市場動向調査で、現況と先行き(3カ月後/6カ月後)に対するアンケートを実施し、JATA会員など341社から得た回答をもとによい/普通/わるいの分布を景気動向指数(DI=Diffusion Index)に加工したもの。値の範囲は「すべてよい(100)」から「すべてわるい(-100)」で、調査期間は5月22日~6月12日。

 海外旅行は3月期の見通しよりわるいものの、8pt上昇して-20。国内旅行は前期より16pt上昇して2となり、1年半ぶりにプラスへと転じた。訪日旅行は前期より9pt上昇して2となり、回復している。

 方面別に見ると、ヨーロッパへの旅行が8pt上昇して-34となり、半年前の-66から急激に回復している。北朝鮮のミサイル発射の影響で韓国旅行は下落が止まらず、24pt減少して-72と落ち込んでいる。国内では、北海道旅行が前期から21pt増、九州が18pt増、東北が16pt増、近畿が14pt増など、すべての方面が回復基調にある。

夏休み旅行人気ランキング トップ10(海外)
夏休み旅行人気ランキング トップ5(国内)

 もう1つのプレスリリースは夏休み期間中の方面別人気ランキングで、調査対象は先ほどの341社。結果は以下のとおり。

JATAによる「夏休み旅行人気ランキング」(海外)

第1位:ハワイ
第2位:台湾
第3位:グアム
第4位:シンガポール
第5位:ベトナム
第6位:タイ
第7位:オーストラリア
第8位:アメリカ(本土)
第9位:カナダ
第10位:

JATAによる「夏休み旅行人気ランキング」(国内外)

第1位:北海道
第2位:沖縄
第3位:東京(東京ディズニーリゾート含む)
第4位:大阪
第5位:北陸

 対昨年で見るとグアムとシンガポールが入れ換わった程度で、海外・国内とも順位に変動はない。そのほかの変化としては、エアアジアXの関空~ホノルル線就航により、特に若年ファミリー層のハワイ旅行の予約数が増加傾向にあるとしている。