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ANA、2014年から始めたMPL訓練で誕生した副操縦士1期生8名が乗務開始

1期生、中川雄介氏のブリーフィングからフライトまでを公開

2017年5月26日 実施

ANAのMPL訓練1期生の中川雄介氏(右)と、機長の小島敏裕氏(左)

 ANA(全日本空輸)は5月26日、2014年に導入した新訓練方式によって8名の副操縦士が誕生し、順次乗務を開始していることを公表した。同日、その1期生の中川雄介氏が乗務にあたる様子を羽田空港で取材した。

 新訓練方式は、「MPL(Multi-crew Pilot License、准定期運送用操縦士資格)」取得のために始められたもの。従来は、1人乗り小型機の機長業務から始めてさまざまなライセンスを取得、訓練期間に約36カ月ほど要していたところを、MPL訓練では初期段階から2人乗り(機長と副操縦士)航空機の操縦士育成を前提としている点で異なる。訓練期間が約27~30カ月と短縮されることに加え、機長との連携を早期からじっくりと学ぶことができ、副操縦士の効果的な育成が行なえるという。

 MPLの制度は2006年にICAO(国際民間航空機関)で規定され、日本では2011年に法制化、2012年から施行している。なお、JAL(日本航空)もMPL訓練を導入しており、この3月に1期生が初フライトを迎えた様子は本誌でもお伝えした。

フライト前のブリーフィングの様子

 ANAのMPL訓練プログラムの基礎訓練は、ルフトハンザ航空の100%子会社である「Lufthansa Aviation Training」(旧Lufthansa Flight Training)に委託している。訓練生はまずドイツ・ブレーメンでGround School(座学)を修め、米国アリゾナ州フェニックスでシミュレータや単発機の操縦を学ぶCore Phase、再びブレーメンで小型ジェットの操縦を学ぶBasic Phaseを経て、MPLの学科試験を受験する。

 訓練の後半は日本で行なわれ、シミュレータなどのIntermediate Phase、実機によるAdvanced Phaseを修了すれば晴れてMPLを取得。実機でのOJT(On the Job Training、職場内研修/職場内教育)に移る。

 なお、ANAのMPL訓練は現在9期生56名まで(1期生含む)進んでおり、すべてボーイング 777型機の副操縦士として訓練を受けている。中川氏は2012年4月入社で、2年ほど貨物事業室での地上勤務を経て、2014年9月からMPL訓練を開始。2017年5月に副操縦士の発令を受けた。

中川氏が乗務したNH257便

 この日、中川氏が乗務したのは羽田14時10分発~福岡16時00分着のNH257便。13時から機長の小島敏裕氏とともに同社事務所内でブリーフィングを実施、13時40分ごろに外観検査を始め、14時11分にブロックアウト、プッシュバックを開始し、14時27分に離陸した。パイロット(運航乗務員)2名、CA(客室乗務員)9名、乗客296名(幼児6名)だった。

 余談だが、当初は取材当日(5月26日)が中川氏の初フライトとなるはずだったが、急遽5月22日のNH996便(那覇~羽田線)に乗務することとなり、本日は2日目のフライトだった。機長とのブリーフィング後、取材陣からコメントを求められた中川氏は、「訓練で鍛えていただいたので、心の準備はできていました」とこの日も非常に落ち着いていた。MPL訓練1期生ということで前例がなかったことについては、「分からないことはすべて自分たちで調べる必要がありましたが、それが逆に強みになっていると思います」とコメント。どんな操縦士になりたいかという質問に対しては、「よい意味で目立たない存在であること。仕事を淡々と正確にこなせることが大事」と理想像を語った。

フライトまでの様子を追った。トーイングカーが機体に近づいていく
接続完了
カーゴハッチが開き、貨物の搬入が始まる
中川氏が機体の外観チェックを開始
機体の端から端まで目視して歩く
59番スポット
中川氏は再び操縦室へ
搭乗が始まる
ブロックアウト
コックピットから手を振ってくれた
プッシュバック
滑走路へ向かう