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冬でも温暖な沖縄でゴルフを。沖縄県らが「インバウンド・ゴルフツーリズムセミナー」実施

2016年11月29日 実施

沖縄コンベンションセンターで行なわれた「インバウンド・ゴルフツーリズムセミナー」

 沖縄県とOCVB(沖縄観光コンベンションビューロー)、日本ゴルフツーリズム推進協会の共催による「インバウンド・ゴルフツーリズムセミナー」が、沖縄コンベンションセンター会議室で11月29日に実施された。

 冬でも温暖な沖縄県は、冬季にゴルフを目的に訪れる観光客が多い。ゴルフツーリズムは世界的に成長が見込まれる市場であり、取り組みが遅れている日本においても積極的に取り組んでいく必要があるのではないか。そうした点をテーマに経済効果なども含めて講演が行なわれた。

 共催者からの挨拶として、沖縄県 文化観光スポーツ部 部長の前田光幸氏は、「インバウンドの増加とゴルフが冬場の重要メニューであることから、受け入れ環境を整備し機運を高めていきたい」と語った。

 同じく共催者である日本ゴルフツーリズム推進協会 会長の白石武博氏は、「ゴルフツーリズムは5、6年前から取り組んでおり、1年前に協会を設立。世界では大きなマーケットがある。沖縄は質の高い顧客を獲得できる可能性がある」と語った。

 来賓として登壇した内閣府沖縄総合事務局 運輸部企画室 室長の小柳美枝子氏は、「沖縄は冬でも薄着でプレイできて、海を見ながらプレイできるなど多様なコースがある。富裕層中心に可能性が高い」と期待を述べた。

沖縄県 文化観光スポーツ部 部長 前田光幸氏
一般社団法人日本ゴルフツーリズム推進協会 会長 白石武博氏
内閣府沖縄総合事務局 運輸部企画室 室長 小柳美枝子氏

 引き続き、共催者のOCVBから、現在の取り組みについて発表があった。

 海外からゴルフ客について課題となっているのはマナーの面。考え方、文化、行動などの違いで摩擦がある。対策として、ゴルフ場でのエチケット・マナーを呼びかけるポスターを制作。英語、中国語(繁体字・簡体字)、韓国語での表記を加え、イラストを使ったやわらかい雰囲気。休憩室などに掲示している。

 ゴルフ客向けのカードも制作。沖縄の写真を使い、スコアが書き込めるようになっている携帯性のよいものに仕上げている。

 また、外国客を受け入れている施設に対して翻訳支援事業を実施。パンフレット、メニュー、Webサイトなどの翻訳について費用の一部を助成しているとのこと。

OCVBはポスターやカードなどを作成してゴルフ場でのマナー喚起に取り組んでいる
株式会社カヌチャベイリゾート セールス&マーケティング部 次長 高良元栄氏

 続いて、カヌチャリゾートの高良元栄氏からインバウンド取組事例の紹介があった。同社は、沖縄本島北部においてゴルフ場と宿泊施設を併設した大型リゾートを運営している。

 宿泊も伴うゴルフプレイをすること、例えば3日滞在の場合は3日間とも同所を利用すること(他施設の例では日によってコースを変えることが多い)、追加ラウンドにより利用客の少ない時間帯も利用してもらえるなどのメリットがある一方で、支払いや時間の遅れ、キャンセルについての意識の甘さなどで困った事例もあるとのこと。

 要望として、現地語と日本語のできるスタッフを連れてきてほしいことを挙げた。同時に、受け入れ側でも言語対応は強化していきたいとした。マナーについては、トイレの使い方に習慣の違いで困ることもあるが、張り紙などで対応しているとのこと。

 ゴルフ客の実績は2015年度は12月、1月、2月がピーク期で、インバウンドの比率はそれぞれ11%、14%、17.5%であった。2015年1月には1067名で比率は22%と過去最高の実績を記録したとのこと。

株式会社野村総合研究所 社会システムコンサルティング部 上席研究員 北村倫夫氏。日本ゴルフツーリズム推進協会の監事も務める

 基調講演は、野村総合研究所 社会システムコンサルティング部 上席研究員の北村倫夫氏が登壇。「日本のインバウンド・ゴルフツーリズムの経済効果と推進戦略」をテーマに講演した。

 ゴルフ人口は世界的に減少しており、日本も減少しているが、IAGTO(International Association of Glof Tour Operators:ゴルフツーリズム産業の世界的な事業者団体)の会員数は増加している。日本は世界で2番目にゴルフ場の多い地区(1位はアメリカ)。それらの観点から、日本においてもゴルフツーリズムの市場は高いポテンシャルを持っているとの見解だ。

 しかしながら日本はゴルフツーリズムの波に乗れていない。ゴルフ場の数は多いが、世界からゴルフのプレイ場としての認知度が低い。アジアでは、タイ、ベトナム、中国などが人気が高く、「ゴルフデスティネーション・オブ・ザ・イヤー」で優れた場所として賞を獲得している。

 その理由として、ゴルフ場と宿泊施設が一体となってリゾート地を形成している立地や、中心市街地からのアクセスのよいことなどが挙げられ、広報プロモーション、品質管理活動がしっかりしているのだそう。

 日本ではゴルフツアーオペレーターが足りないという。例えば、ゴルフツーリズムのさかんな欧州では、特化したWebサイトがあり希望の条件を入力していくとそれに沿ったツアーを抽出しててくれるサービスがある。

 旅行会社が個別にツアーを設定していても、総合的に検索できなければ獲得可能な顧客を逃してしまう。

グラフなどを多用した資料で紹介

 そんななか、北海道と三重県ではゴルフツーリズムの振興を進めている。今年は北海道で、日本初となるゴルフツーリズムコンベンションを開催した。

 世界に目を向けると、AGTC(アジア・ゴルフツーリズム・コンベンション)、IGTM(インターナショナル・ゴルフツーリズム・マート)といった国際ゴルフコンベンションが行なわれており、AGTCは2018年あるいは2019年に日本での開催を希望しているとのこと(すでに三重県が立候補している)。

一般社団法人日本ゴルフツーリズム推進協会 事務局長 中澤龍氏

 インバウンドのゴルフツーリズムは、ゴルフのみに特化せず他地域の観光と組み合わせるなど幅広い戦略が可能になる。現在でも韓国や台湾、中国などからのゴルフ客は増えているが、今後欧米やオーストラリアなどからの誘客も期待できる。

 前述のIGTMには、2016年11月14日からスペイン・マヨルカ島で開催されたIGTM 2016に日本ブースも出展。日本ゴルフツーリズム推進協会の中澤龍氏からその報告もなされた。

 セラー489団体、バイヤー283団体が参加し、メディアも合わせて全1000名ほどが訪れた。来場者からの反応で、やはり日本はまだ知名度が低いことを感じたという。プレイフィーの質問や行程モデルなどを聞かれ、好感触を得たとのこと。

現地で撮影した写真やムービーなども披露し、盛り上がりを伝えた

 沖縄県には冬場はゴルフ客が多い実感は得ていたが、まだまだ限られた顧客層にとどまっているとのこと。外国人客が順調に増えていることもあり、ゴルフ&リゾートのアピールを積極的に行なっていく価値はありそうだ。