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清水建設、アクティブリンク、エスシー・マシーナリが道路工事の生産性向上に「配筋アシストロボ」開発
東京外環自動車道 大和田工事で実演
2016年9月6日 22:01
- 2016年9月1日 発表
清水建設、アクティブリンク、エスシー・マシーナリの3社は、重量鉄筋を運ぶ際にアシストする作業支援ロボット「配筋アシストロボ」を共同開発した。主に地下構造物で有効とし、道路のトンネル部分に向いているという。
あくまで“アシスト”をするロボット、職人不足に対応
ロボットの名称には“アシスト”が入っているとおり、自動的に鉄筋を運ぶというものではなく、あくまで職人が鉄筋を運ぶ際の人員を少なくするもの。開発の背景には建設業界における熟練工の大量離職時代を控え、現場での生産性向上は急務というものがある。
現在、重量鉄筋を配置する際は、重さに応じた人員が必要。例えば直径約51mmのD51鉄筋の長さ12mのものは約200kgで、6~7名が必要。それが配筋アシストロボを使うことで、機械操作の1名と、鉄筋の両端に付く2名の合計3名で作業が可能になる。
ロボットの操作も、操作グリップの方向に動くというシンプルなものにしているため、操作の習熟に時間はかからない。配筋を担当する職人がすぐに使うことができるようになっている。
配筋アシストロボは現場に配置されたH型鋼に固定して活用するが、5つに分解でき、1つあたり40~60kgに抑えたため、設置または撤去は3名の作業で約20分で完了する。
配筋アシストロボは、現在、稼働テストの段階で、実際の作業には使っていない。今後は、実証実験を行ない、清水建設の現場への投入を検討する。
重い鉄筋を持つのではなく、まるで持っているかのように操作
発表した9月6日には、東京外環自動車道の工事現場である千葉県市川市の「大和田工事」で説明と実演を行なった。清水建設 土木技術本部 開発機械部 技術開発グループ 課長の大木智明氏によれば、現在は耐震性に強化にともなって、鉄筋コンクリートの中の鉄筋は太く、高密度になり、配筋作業の生産性が落ちているという。
ロボットの開発は国土交通省のi-Construction施策に沿った建設現場の生産性向上を行なっているが、その一環。鉄筋を現場まで運び、配置すべき場所の近くまで移動して設計上の場所に配置する一連の作業のうち、途中まではクレーン等の機械で対応できる。
しかし、大木氏は「最後の鉄筋の位置を決めるときは、一本一本置くときとは、どうしても人力になっていた」と話し、「この人の作業に注目して、楽にしようというのがスタート」と説明した。
そして大木氏は配筋アシストロボはあくまでアシストと強調、「重い鉄筋を持つのではなく、まるで持っているかのように操作すること。自分の手の動きと同調する」ということが特徴とした。
配筋アシストロボの実用化はまだ先。しかし、今後、配筋アシストロボを前提とした工事設計を行なうようになれば、人間の職人が扱える長さやサイズとなっていた鉄筋を長大化することも可能。さらに長い鉄筋とすることで、鉄筋を継ぐ作業を減らすことや、長い鉄筋に最適化した設計によって、全体の工事を効率化するなど、大きな可能性を秘めていることも明らかにした。
東京外環自動車道 大和田工事で実演
配筋アシストロボの実演は、模擬環境を作って行なった。鉄筋束から配筋アシストロボを使って長さ10m、重さ約160kgのD51鉄筋を持ち上げ、場所を移動させ、設計上の場所に鉄筋を配置した。
鉄筋はしなるため、2名の職人が鉄筋の両端に手を添えながら定位置に下げていくと配置完了となる。最後は職人の手により結束線で固定して配筋は完了。
配筋アシストロボの動作は、職人の右腕の動きをスケールアップしてロボット化したもの。人間の右肩、上腕、肘、下腕、手にそれぞれに相当する肩旋回部、第一アーム、肘旋回部、第二アーム、把持部(はじぶ)の5つのパーツと制御盤で構成する。第一アームは持ち上げた鉄筋の旋回に使い、肘旋回部は第二アームの旋回と昇降シリンダーによって上下の動きを実現、把持部で鉄筋をつかんで持ち上げる。操作レバーは旋回に使い、上下動はボタンによって操作する。
なお、旋回にはあまり力を必要としないため、動力と実際の動きにはクラッチが設けられ、アームの旋回中に人間が挟み込まれたとしても、大きな力がかからないようにしている。また、上下動は250kgまでの設計となっているが、それを超える重さの場合は持ち上がらない設計となっているという。