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ANAグループ、2016年度2回目の定例会見。50機目のボーイング 787型機の受領などに言及

2016年8月9日 実施

定例会見場では、50機目の受領を8月16日に予定しているボーイング 787型機のモデルプレーンが展示され、50機目を記念した特別塗装も施されていた

 ANA(全日本空輸)は8月9日、東京都港区の本社にて2016年度2回目となる定例会見を開いた。

ANAホールディングス株式会社 代表取締役社長 片野坂真哉氏

 冒頭、ANAホールディングスの代表取締役社長 片野坂真哉氏は、8月3日に行なわれたANAグループの2017年3月期 第1四半期の決算について述べた。

 全体としては、国際線旅客やLCC事業で前期を上回る収入を達成したが、厳しい競争環境が続いている貨物事業、平成28年熊本地震、欧州テロの影響を大きく受けた旅行事業、爆買いが落ち着いた商社事業で減収となり、連結ベースとしての営業収入は4044億円で、94億円の減収と概要を説明。

 収益ベースでは地震の影響を受けた国内旅客事業、市況の影響を受けた国際貨物事業に加え、主力の台湾線で競争が激しさを増しているLCC事業(バニラエア)などから、営業利益は141億円で、26億円の営業減益。しかしながら年度計画では、バニラエアを含む航空事業全体で営業利益ベースで計画を上回っており、予期せぬ事象が相次いだなかでは健闘と言えるのではないかと話した。

 第2四半期の見通しは、今夏は国内旅行、日本発の海外旅行は好調、訪日外国人旅客の動きも堅調であり、旅行需要や商社事業を含めて、ANAグループ全体で増収につなげていきたい。コスト構造改革も、年度計画の250億円という目標に対して順調に進捗しており、これからも手を緩めることなく、売上高1兆8100億円、営業利益1450億円の達成を確実なものにするために取り組んでいきたいと語った。

 また、リオデジャネイロオリンピック・パラリンピックが開幕したことに触れ、ANAグループからはANA所属の横尾千里選手が女子7人制ラグビーに、ANAウィングフェローズ・ヴイ王子所属の津川拓也選手がパラリンピック大会の水泳に出場。ANAグループとしても応援していると話した。

 日本政府は2020年の訪日外国人4000万人、旅行消費額8兆円などの目標を掲げているが、2020年の東京大会の成功、そして4000万人、その先の6000万人への目標達成に、ANAグループとしても着実な貢献が求められていると認識。2020年に向けては現在、国や関係自治体との間で首都圏空港での発着枠の拡大に向けた検討が進められているが、ANAグループとしては首都圏の国際線の成長を戦略の中核に据えており、その前提となる空港機能の強化については、今後も関係各位の理解と協力が不可欠であるとした。

 ANAとしてもすべての航空機の安全運航に万全を期すことはもちろん、低騒音機材への更新など、グループを挙げて取り組み、ANAの現行の中期経営戦略のゴールでもある2020年に向けて、「引き続き攻めのスピード経営を実践していきたい」と語った。

 2012年当時、再生を図る日本航空(JAL)に国土交通省が示した、いわゆる「8.10ペーパー」の期限が2016年度で終了することについて質問があったが、競争環境が今後も是正されない場合には、格差是正を求めていく基本方針に変わりはないと答えた。

 羽田空港の発着枠の傾斜配分があったことなどに対しては一程度の効果があったとし、これに感謝し、評価をしているとしながらも、第1四半期の決算で見ても、営業利益でANAが3%台に対し、JALは7%台と差があり、この差が毎期、毎年度蓄積されていることは、格差の是正が完全ではない表われの1つではないかとの考えを示した。今後も是正は必要と考えており、8.10ペーパーの期限終了後も当局に働きかけていきたいと述べた。

全日本空輸株式会社 代表取締役社長 篠辺修氏

 続いてANAの代表取締役社長 篠辺修氏から航空事業について説明があった。

 第1四半期の売上高は3508億円で63億円ほど減収、営業利益は126億円で26億円ほどの減収となった。国内旅客事業については、業務渡航は全般に堅調だったが、一般旅客渡航は不調。割り引きのプロモーション運賃を積極的に展開したが、地震の影響、羽田空港での他社のエンジントラブルによる閉鎖等々のマイナスを取り返しきれなかったという印象だとした。

 第2四半期の見通しは、地震の影響はおそらく10億円程度の減収要素として残るものの、6月から始まった「九州ふっこう割」等々による需要喚起が順調のため、地震のマイナス影響は第2四半期中に一区切りつき、旅客事業は夏頃には前年並みに回復できるのではと期待を寄せた。

 国際線旅客事業も業務渡航は全般に堅調だったが、一般旅客渡航はテロの影響が日本発路線には見られ、ブリュッセル線では60%に届くかどうかというところで、まだ回復したとは言い切れないとした。

 一方の訪日需要については、2015年度の伸びと比べるとだいぶ低くなっているが、増加基調に変わりはないので、このまましばらくは推移すると見ている。2015年夏以降、エアライン各社とも中国線の供給を増やしたことで競争が激化、供給がやや過多になり、人民元安もあり、日本から見て単価が落ち、全体としては収入減となったと見ている。ただ、好調な推移に変わりはなく、第2四半期では予約状況からも需要の伸びが見られ、よい状況が続くのではと説明した。

 貨物事業については市況そのものがよくなく、日本発着は前年並み。単価が低い状況のため、サーチャージの影響もあり、円高もありと、国際貨物の収入は目減りしている。第2四半期も需給バランスに大きな変化はないことが見込まれ、需給の調整計画を立てているが、供給を絞っていく方向で、7月5日からはユナイテッド航空とのジョイントベンチャーもスタートしているので、そこも含めて収入の下支えをしていきたいとした。

 ボーイング 787型機の50機目の受領を8月16日に予定していることにも言及。特別塗装も施される50機目は787-9型機の受領であり、これで787-8型機が36機、787-9型機が14機で50機。ボーイングからもシアトルでのセレモニーの提案を受けているとのこと。2017年の2月には成田~メキシコシティ線の就航を予定しているが、機材は航続距離が長い787-8型機で検討を進めていると話した。

 最後にオリンピック・パラリンピックにも触れ、リオデジャネイロ大会にもANAスタッフを派遣しており、状況を調査し、2020年の東京大会に向けてグローバルカスタマー化を進め、障がい者が安心して利用できるよう、空港設備、機内とも、ユニバーサルデザインの導入を進めていきたいとした。