トピック
近江の豊かな自然、食文化、歴史を味わい尽くす2日間
日本一の琵琶湖を有する湖国・滋賀県を堪能する旅に行ってきました
2016年8月26日 00:00
日本一大きな湖、琵琶湖を有する滋賀県。湖畔にたたずむとまるで海のように見える。大きな淡水湖が育んだ独自の食文化をはじめ、数々の個性的な滋賀の魅力を堪能すべく滋賀県主催のプレスツアーに参加してきました。
東京からはおよそ3時間ほど、新幹線で西へ向かい京都で在来線に乗り継ぐと滋賀県の草津駅に到着します。日本有数の観光地である京都のすぐお隣だけに、筆者にとってはその存在感は少々薄いように感じていた滋賀県ですが、関東からでも思いのほか近く、しかも独特の魅力にあふれた県であることに気づかされた2日間でした。
琵琶湖にこだわり抜いた個性的な博物館「琵琶湖博物館」
JR草津駅から琵琶湖畔へ車で約20分。最初に訪ねたのは2016年の7月に第1期リニューアルオープンした琵琶湖博物館。今回リニューアルされた水族展示室と展示室の一部を見学しました。
まずは水槽のトンネルをくぐって進んでいきます。このトンネル、ほかの水族館でもよく見られる展示スタイルではありますが、ここ琵琶湖博物館は少々趣が違います。すべて淡水魚なんです。そう、ここは琵琶湖の生態系を見学するトンネルなのです。
滋賀県民にとっては生活に根付いた湖ですから、食用の魚の紹介として市場風に刺身や塩焼きの模型展示、琵琶湖名産の鮒ずしの匂いを体験するコーナー、バー風のカウンターに顕微鏡を並べて琵琶湖の微生物を観察する「Micro Bar」など、あくまで琵琶湖水系の生き物にこだわりを見せた展示が用意されています。また水族展示以外でも琵琶湖の水辺の葦についてや、米の生産が盛んな滋賀県らしい田圃についての展示など、琵琶湖愛、地元愛に溢れたこだわりの展示の一つ一つが興味深く面白い博物館です。
手ぶらでOK! 琵琶湖畔のサイクリングプチ体験
琵琶湖を1周するサイクリングのことを「ビワイチ」と呼ぶそうです。1周200km程度の距離の整備されたサイクリングロードはサイクリストの間でも人気で、1日で走りきる強者もいるようですが多くの人は2日間くらいで走り、周辺の観光地に立ち寄りながら2泊3日程度でサイクリングの旅を楽しむ人もいるようです。アップダウンの少ない湖畔のコースは初心者やサイクリング未経験者にも最適で、湖畔でレンタサイクルを利用して楽しむことも可能です。
今回我々ツアーの一行も琵琶湖畔、琵琶湖大橋にほど近い守山市の「ジャイアントストア びわ湖守山」で少しだけその楽しさを体験させていただきましたが、その気持ちよさは想像以上でした。ここではクロスバイクからハイエンドのロードバイクまで4種のランナップと子供用のマウンテンバイクタイプまでが用意されていますが、今回はクロスバイクを選択しました。
参加者は皆スポーツバイク初体験ということでしたが、いわゆるママチャリとは別次元のスムーズな走行性能に一同ビックリです。ヘルメット等の安全装備、保険、すべてが用意されているので手ぶらで参加できますし、走行前には乗り方の指導もありましたので、穏やかな琵琶湖のコース環境も相まってこれを機にサイクリングでも始めようかな? なんて声も聞こえてきました。
わずかな時間、わずかな距離でしたがそのくらい気持ちのいい体験でした。初めての方にもオススメです。
ビワイチサイクリストを地元食材でサポートする「ビワイチランチ」
琵琶湖の湖畔に佇む総合リゾートホテル「ラフォーレ琵琶湖」。湖と周辺の田園地帯が一望できる12階のレストラン昴ではサイクリスト向けに「ビワイチランチ」が用意されています。
龍谷大学 農学部 食品栄養学科の先生で同校自転車部部長の石原健吾氏の監修による栄養価は、もちろんGI値、疲労回復効果などを総合的に考慮し、なおかつ滋賀の地元食材に徹底的にこだわったランチはサイクリストのみならず近江の味を堪能したい人にもオススメです。
なお、前述のジャイアントストアびわ湖守山もこのホテルの1階部分にあり、レンタルサイクル利用者にはホテルのコインロッカーやお風呂、サウナ、駐車場の割引サービスも用意されているとのことです。
滋賀すなわち近江。近江といえば近江牛です
滋賀の名物は? と聞かれすぐに答えが出ない人もいるでしょう。しかしながら近江牛とか近江商人とか近江の名は案外耳にする機会があるような気がします。そう、知っている人には当たり前のことですが、その近江こそ現在の滋賀県なのです。そう考えると歴史的な名所や美味しいものがいっぱいの県なんだぁ、とあらためて思ってしまう筆者です。
そんな近江の誇る近江ブランドの代表選手、近江牛を今回のツアーではしっかりいただきました。おじゃましたのは明治29年創業と100年以上近江牛の生産から販売を手がける大吉商店が昨年春にオープンさせた直営の農家レストラン「だいきち」です。
そもそも○○牛と地域名のつくブランド牛はどれもなかなか美味しいものですが、ここのお肉の美味しさの特徴はジューシーな肉の旨みとさっぱりとした脂質。食べ始めでスグ気付きます。今回は素材の味をしっかり堪能できる焼肉でいただきましたが、いくら食べても胃がもたれないのでちょっと食べ過ぎに注意です。
店主からは“一緒にお出しする地元農家直送野菜と一緒に食べてください、色々組み合わせれば組み合わせるほど美味しく食べられますよ”とのアドバイス。
ひたすら肉だけをガッツリ食べたいと思っていた筆者の心に釘をさすような言葉に半信半疑のままレタス、サンチュ、トマト、シソと合わせて食べるとコレが本当に美味しい。さっぱりしているくせに味はしっかりしているからいくら合わせても全然肉が負けません。色々組み合わせていると、もう手のひらの上で一品料理が完成しているような気分。美味しくて、かつ楽しい時間でした。
締めのデザートはキンキンに冷やした石の器にはいったコールドストーンアイス。石の器の中で混ぜながら食べるスタイルはちょっと石焼ビビンバ風。地元安曇川特産のアドベリーのさわやかさが効いてこちらもかなりサッパリ系。
滋賀には、いや、近江にはこのような個性豊かな近江牛を楽しめるお店が山ほどあり、毎年ガイドブックまで出しているようですので興味のある方は探してみてはいかがでしょう。ちなみに発行は「近江牛」生産・流通推進協議会です。
滋賀県は日本酒天国
琵琶湖に流れ込む周りの山々の地下水が豊富で米作が盛んな土地柄を考えればこの地が日本酒天国となるのは自然の流れです。そんな滋賀県の日本酒の中でもちょっと異端で今回いただいたのが「權座(ごんざ)」です。
蔵元ごとに個性を競い合いさまざまな日本酒を擁する滋賀県ですが、權座はその原料となる米の生産環境が少々変わっているます。このお酒の原料となるお米ですが他の土地と完全に隔離されポッカリと琵琶湖に浮かんだ小さな湖上の飛び地で生産されたお米だけが使われます。この土地の名を權座と呼び、ここ特有の土壌から生まれた渡船という酒米だけで作られる地酒が權座です。それゆえ個性が光る反面、この小さな小さな土地のすべての米をお酒にしても3000本作るのが精一杯という貴重なお酒でもあります。
きっとそんな背景がこの日本酒の個性を際立たせているのでしょう。
琵琶湖に浮かぶ沖島ですごす穏やかな時間
日本一の面積を誇る琵琶湖の最大の島が沖島です。日本においては淡水湖の島で人が住んでいるのはここだけで、世界的に見ても珍しいそうです。港から見ると狭い土地を有効活用すべく多くの家の間口が湖に向け建てられていて立ち並んだ切妻屋根の連続した様は風情があります。
また、上陸しても狭い路地だらけの道を、この島の暮らしを間近に感じながら散策するのはなかなか楽しいものでした。約800年前に7人の武士が流れ着いた時から人が暮らし始めたというこの島の住民の多くが漁業を営んでおり、その街並みの佇まいは残っている明治時代の写真と比べても、今とあまり変わらないとのこと。
港の前で地元の主婦の方たちが鮒ずしを作っている様子を見たり、ブラックバスを混ぜ込んだコロッケを頬張りながら歩いていると、あらためて潮の香りがないことに気付かされます。「あぁ、ここは海じゃないんだ」って。
滋賀県民の心意気を感じる近江商人屋敷めぐり
かつての近江、現在の滋賀県から行商に励み成功を収めた商人は数知れず、現在に至るまで活躍し続ける企業も多いそうです。高島郡(現在の高島市あたり)にその名が由来する百貨店の高島屋をはじめ商社の伊藤忠商事、繊維産業からはワコールや西川産業なども近江から全国そして世界へ飛び出した企業だそうです。
そんな近江商人も日野商人、五個荘商人、八幡商人などとさらに細分化された地域名で呼ばれることも多いそうですが、今回のツアーでは現在の東近江市に位置する五個荘商人の屋敷を巡ってみました。
数ある屋敷の中から今回は外村繁文学館(外村繁邸)、旧 外村宇兵衛家(外村宇兵衛邸)の2箇所を見学。どちらも呉服の問屋、販売で成功した商人で、外村繁はこの家の三男として生まれた小説家の名です。近江商人の考え方を表す代表的な言葉「三方よし(売り手、買い手ともに満足し、そして地域社会にも貢献すべし)」との考えゆえか、非常に立派でありながら成功者の自己顕示欲が建物からはみじんも感られず、非常に端正で不必要な装飾が一切見当たらない清々しさすら感じるものでした。また、町を巡る水路の水を各屋敷内に引き込み、洗い場としても防火用水としても利用できるシステムを完備するなどの合理性も見られます。
歴史的な魅力とともに建築物としての見応えも十分なものでした。なおこの2棟の建物は今秋から始まる朝の連続テレビ小説のロケ地としても利用されているとのことです。
近江商人屋敷めぐりのあとはかつて麻織物商を営んでいた近江商人の屋敷を利用した「近江商人亭」での食事。かつての近江商人の屋敷で庭を見ながらいただく滋賀産の食材をふんだんに使った和食は2日間の旅の締めにふさわしいもので、その味はもちろん、その風情まで堪能させていただきました。
琵琶湖博物館見学から始まり湖畔のサイクリングや沖島めぐりなど琵琶湖と近江の歴史づくしの旅は、派手さはないものの、ほかではなかなか味わえない独特の空気が感じられる2日間でした。関西圏はもちろん東京からも3時間程度とアクセスのよさも魅力ですから手ぶらで行ってレンタサイクルで風を感じながらゆっくり巡るのもよし、自家用車やレンタカーでぐるりと巡っても魅力的であろう滋賀の旅でした。