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「DISCOVER WEST連携協議会」事務局長インタビュー。復興キャンペーン「がんばろう!西日本」について聞く。JR西日本と中国5県が観光振興でスクラム

DISCOVER WEST連携協議会で事務局長を務める西日本旅客鉄道株式会社の内山興氏に話を聞いた。奥に見えるのは大阪駅に掲示してある「がんばろう!西日本」キャンペーンのPRビジュアル

 JR西日本(西日本旅客鉄道)が、中国地方や瀬戸内地方の観光促進キャンペーンとして実施している「DISCOVER WEST」。中国地方や瀬戸内地方の観光名所を紹介するテレビCMや、国内JR各社のターミナル駅などに掲出してあるポスターで、目にしたことがある人も多いだろう。そして、DISCOVER WESTキャンペーンを発端として、JR西日本と中国5県がスクラムを組み、キャンペーンを発信していくために発足したのが「DISCOVER WEST連携協議会」だ。

 今回はDISCOVER WEST連携協議会で事務局長を務める、JR西日本 営業本部 観光開発担当課長の内山興氏に、これまでの取り組みや今後の展望などを聞いた。

西日本旅客鉄道株式会社 営業本部 観光開発担当課長 内山興氏

JR西日本と中国5県がスクラムを組み、魅力を掘り起こす

 JR西日本が「DISCOVER WEST」キャンペーンを実施する契機となったのは、2003年の東海道新幹線品川駅の開業だった。もともとJR西日本では、発足した1987年4月以降、地域密着型経営ということで、近畿や中国地方を大きなマーケットと考え、そのなかで観光客の流動を中心とした取り組みを行なっていた。しかし、東海道新幹線品川駅の開業に伴い、新幹線の列車本数が飛躍的に増えるとともに、のぞみ号の定着によって首都圏から中国地方への到達時間も3時間前後へと短縮された。そこで、首都圏を中心として中国・瀬戸内地方へ、より多くの観光客を呼び込もうとして始まった観光促進キャンペーンが「DISCOVER WEST」だった。

 このDISCOVER WESTキャンペーンが発端となり、「着地開発を地域と一緒にやっていく」という方針のもと、JR西日本と鳥取県、島根県、岡山県、広島県、山口県の中国5県が連携して観光地づくりや情報発信を行なうことを目的として2006年に発足したのが「DISCOVER WEST連携協議会」である。

「より着地側でスクラムを組んで、中国・瀬戸内地方にどういった魅力的な観光素材があるのかを掘り起こし、発信するために、キャンペーンを煮詰めていこうということで、2006年に改めて中国5県の知事にJR西日本の呼びかけで集まっていただいて、大々的に首都圏を中心にキャンペーンしていこうということでできあがったのが、DISCOVER WEST連携協議会でした」と、協議会発足を振り返った。

JR西日本と鳥取県、島根県、岡山県、広島県、山口県の中国5県が連携して観光地づくりや情報発信を行なうことを目的として「DISCOVER WEST連携協議会」が2006年に発足した

 DISCOVER WEST連携協議会の取り組みは、どちらかというと地域の資源に着目したソフト面の開発が中心だという。例えば、実際に訪れてみて印象に強く残るような、それまで知られていなかった観光地を掘り起こしたり、地域のめずらしい食べ物を取り上げたりといったものだ。

 中国5県の地元の人たちと連携して各種整備を行なっており、JR西日本では駅前から気軽に観光タクシーが利用できるサービス「駅から観タクン」や、「駅からハイキング」としてガイド付きのハイキングコースを整備するといった取り組みを行なってきた。

 そのなかでJR西日本は、各地域への送客や全国へ情報発信を行なうという役割も担っており、内山氏はその調整を主に担当しているそうだ。例えば、新たに掘り起こし・開発した観光地に観光客を呼び込むために、旅行会社と協力して旅行商品を開発し、メディアを利用したプロモーション活動のための調整を行なっているという。そういったなかで特に力を入れているのが、各地域との取りまとめだという。

「近年大事になっているのが“周遊”です。各県が単独で観光地をプロモーションしたり情報発信したりするのではなくて、県境を意識せず、県をまたいで連携して魅力を発信するのが重要です。ただ、県は組織上、県をまたいだ取り組みは難しいのです。そこで我々がその間をうまく取り持って、県や地域をまたいだ開発を行なうとともに、魅力を発信できるように努力しています」と、横断的な観光振興への役割について語った。

新たに掘り起こし・開発した観光地に観光客を呼び込むために、旅行会社と協力して旅行商品を開発し、メディアを利用したプロモーション活動のための調整を行なっているという

ツーリズムEXPOジャパンやテレビCMなどで首都圏にアピール

 DISCOVER WEST連携協議会の一員として、JR西日本の重要な役割の一つとなっているのが、中国地方や瀬戸内地方の魅力を全国に知ってもらうプロモーション活動だ。内山氏によると、そのなかで力を入れているのが、旅行会社と連携し、より魅力的な旅行商品を作っていく部分だという。そのために、旅行会社で旅行ルートを作る担当者とコミュニケーションを取りつつ、地域の関係者とも力を合わせて、よりよい旅行商品の開発に力を入れている。

 また、一般向けのプロモーション活動も同様だ。JR西日本では、仲間由紀恵さん、中条あやみさんや伊藤蘭さんを起用したテレビCMを製作し、放映しているが、そのテレビCMでもどの地域を取り上げるかという部分が重要になってくると内山氏は指摘する。最近では、瀬戸内海の「直島」や岡山県の海沿いの地域の撮影ポイント、JR西日本が運行している寝台列車「TWILIGHT EXPRESS 瑞風」が立ち寄る観光地の一つであり、鳥取市内にある国の重要文化財に指定されている洋風建築「仁風閣」を取り上げて発信したそうだ。

JR西日本が運行する寝台列車「TWILIGHT EXPRESS 瑞風」

 そして、毎年秋に東京で開催している「ツーリズムEXPOジャパン」への参加も、重要なプロモーション活動の一環として取り組んでいる。

 2018年9月に行なわれたツーリズムEXPOジャパン2018では、DISCOVER WEST連携協議会とワンダフルセトウチ(岡山県の両備グループを事務局とし瀬戸内圏内の自治体が集結した連合体)が共同でブースを展開し、ブースグランプリの準グランプリを獲得するという快挙を果たしている。

 この、ツーリズムEXPOジャパンへの取り組みは、「首都圏の方々に身体(五感)をもって疑似体験していただく、ということを主眼にして展開」しているとのことで、例えば、ブース内で中国地方の伝統工芸品を実際に作って楽しむという体験を提供。今年のブースでは、石見銀山で銀を採ることをイメージできる体験などが行なわれた。また、伝統芸能に触れてもらうために、島根県西部と広島県北西部の伝統芸能として受け継がれている「石見神楽」の演舞もあり、来場者を大いに楽しませた。

 そういったなか、現在プロモーションとして力を入れているのが、瀬戸内地方だそうで、「これまで瀬戸内から連想されるのは、さび色の海や夕焼け、島々の美しさや、そこに残る素朴な生活などです。ただ、そういった島々に行きたい、美しい写真を撮影したいと思っても、観光客が現地に行くまでの整備がなされていないと気が付きました。また、インバウンドに向けたキラーコンテンツとしても、瀬戸内地方は注目されています。そこで、2018年4月に発表した中期経営計画で“せとうちパレットプロジェクト”と名付けて、地域の方々と連携しながら着地開発を進めるとともに、2次アクセスとしてバスやタクシーだけでなく船も含めて新たなルートを作ろうとしています」と内山氏は語る。

石見銀山で銀を取ることをイメージできる体験コーナー
TWILIGHT EXPRESS 瑞風の乗務員が瑞風の魅力を説明
ブース内のステージではJR西日本 岡山支社のキャラクター「くまなく・たびにゃん」が登場

 また、内山氏は、TWILIGHT EXPRESS 瑞風の山陰側の立ち寄り観光地開発を以前担当していたそうだ。そのなかで、山陰地方を含めて中国地方には知られていない、外国人観光客にも受ける観光地がたくさんあると気が付いたという。そういった場所に光を当て整備していく、ということも含めて作られたのがTWILIGHT EXPRESS 瑞風の立ち寄り観光地で、立ち寄り駅から専用のバスに乗り換えて観光を楽しんでいただいている。現在、瀬戸内地方で本土から離島へと向かう縦のルートの航路が中心となっているが、観光客が離島を便利に周遊できる横のルートを新規に開発するなど取り組みを行なっていきたいそうだ。

ツーリズムEXPOジャパン2018のブースで展開された、TWILIGHT EXPRESS 瑞風やハローキティ新幹線をPRする展示
ツーリズムEXPOジャパン2018の中国5県のブースでは、山口みかんジュースの試飲、倉敷マスキングテープの缶バッチ体験、岡山備前焼ろくろ体験などが実施されていた

JRグループ一丸となって、西日本地域の復興を後押し

 西日本を襲った平成30年7月豪雨では、想定を遥かに超える雨によって、甚大な被害が発生し、JR西日本管内の鉄道路線も大きな被害を被った。現在では、JR西日本管轄の路線では、呉線など一部で復旧作業が続いているものの、中国地方のほとんどの観光地ではすでに受け入れ体制が整っており、山陽新幹線や在来線も含めて、問題なくアクセスできる状況になっている。

 内山氏によると、豪雨被害を受けた直後は、まずは復旧からということで、路線を含めた復旧作業に力を入れてきたそうだ。その努力の甲斐もあって復旧作業は順調に進み、復旧から復興へと軸足を移していこうということになり、8月23日に「がんばろう!西日本」キャンペーンを発表。旅行商品の発売、PR活動の再開など、復興に向けた取り組みとして「がんばろう!西日本」キャンペーンを開始した。

 ただ、その直後に台風21号の影響で関西国際空港が浸水被害を受け、北海道胆振東部地震が発生したことなどで、日本全体が被災ムードに包まれてしまった。「がんばろう!西日本」で作成したポスターは、JRグループ一丸となって西日本を盛り上げていこうと、JRグループ各社が駅などへの掲出を受け入れてくれたそうである。11月以降は本格的に観光客が中国・瀬戸内地域を訪れるようになり、地域の人々の笑顔につながっていってほしいと内山氏は考えている。実際に「ふっこう周遊割」を活用した旅行商品が販売され、首都圏地域でも即完売する商品も出てきているそうで、観光客は順調に増えている。

「がんばろう!西日本」のポスター

 JR西日本では現在、2017年に実施した「山口デスティネーションキャンペーン」のアフターキャンペーンを行なっている。そのアフターキャンペーンでは、2017年に掘り起こした観光資源を定着化させることに力を入れるとともに、2018年が明治維新150年の節目の年ということで、その立役者の一人である高杉晋作に光を当ててキャンペーンを行なっているそうだ。合わせて、「やまぐち幕末ISHINきっぷ」や「ぐるりんパス」といったおトクなきっぷを販売することで、復興を後押ししている。

現在、山口デスティネーションキャンペーン アフターキャンペーンを行なっている

今後は、中国地方の魅力をさらに掘り起こして、日本や海外に発信していきたい

 現時点では災害からの復興が重要だが、内山氏はさらにその先もしっかりと見据えている。まず重要なのは、いかに中国地方のオリジナリティを出していけるか、という点だという。今後、国内観光では地域間競争が激しくなっていくことが予想されるが、中国地方の歴史文化から考えるとまだまだ掘り起こせていない魅力が数多くあり、そういったものを見つけて掘り起こし、新しい魅力を常に出していく努力が不可欠だと考えているという。合わせて、今後さらに拡大していくことが予想される訪日外国人観光客に向けた取り組みも不可欠とした。

 そのなかで、国内だけでなく海外からも注目度の高い瀬戸内を取り上げていくのが今後の流れになるとの見通しを示すとともに、「TWILIGHT EXPRESS 瑞風が立ち寄る観光地のいくつかは、その半数以上が比較的マイナーな観光地や、瑞風が走ることに合わせて作り出されたサービスになっています。それらのなかには、広く一般に展開できるものではないサービスもまだありますが、それがフックとなって裾野を広げていければいいなと考えています」と、TWILIGHT EXPRESS 瑞風の情報発信力を活用して、中国地方に誘客することが重要とした。

 合わせて、TWILIGHT EXPRESS 瑞風の経験をもとに、山陽側・瀬戸内側で新しい立ち寄り観光地を考えたり、マイナーな観光地に光を当てたりしたいとし、中期経営計画で示した“せとうちパレットプロジェクト”などでの掘り起こしに期待しているとした。

 また、現在山陽新幹線で博多駅~新大阪駅間を1日1往復運行している「ハローキティ新幹線」にも注目が集まっている。6月30日の運行開始以降、国内外を問わず年齢、性別に関係なく、広く人気を集めている。また、車内では地域の特産品やグッズを販売しているが、その売り上げも好調だそうだ。

6月30日に運行開始したハローキティ新幹線

 このハローキティ新幹線の1号車「HELLO!PLAZA」では、期間限定でテーマを変えて西日本各地を紹介するという趣向を取り入れており、車内で地域の伝統芸能や観光スポットなどを紹介しているほか、ハローキティグッズをはじめ地域の特産品も販売している。そして、2019年7月から12月にかけては瀬戸内をテーマにする予定で、ハローキティ新幹線の人気を活用しつつ、そこでも瀬戸内の魅力を強く発信していきたいとした。

 最後に内山氏は「今、中国地方が少し元気を落としている状態かもしれませんが、この地域にはまだまだ知られていない資源がたくさんあります。人がたくさん来られることによって、新たな魅力が作られていくかもしれません。そういった意味でも、日本の原風景が残るこの地域を、ぜひ全国の方に訪れていただきたいと思います。そのうえで、世界に向けても地域の皆さんと一緒に発信していきたいと思います」と力強く述べた。この言葉からは、JR西日本としての決意はもちろんのこと、中国5県の地元の人たちが連携し、中国5県の観光地としての魅力が今後さらに高まっていきそうだと感じた。