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インド人が絶賛する「船カレー」とは? 大型客船「ゲンティン ドリーム」でシンガポール発着クルーズの味覚を堪能する(その1)
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- ゲンティンクルーズライン
2018年2月23日 00:00
客船「ゲンティン ドリーム」は、総トン数15万695トン、全長335mという、アジア海域で就役しているクルーズ船としては最大級の規模を誇る。誇れるのはその規模だけでない。客船のホスピタリティを示す指標としてよく使われる「乗員1人あたりの船客数」は、乗員1人に対して船客約1.7人と、これもアジア海域のクルーズ船では最も高い値を示している。
ドイツのマイヤー・ヴェルフト造船所で2016年11月に就役したゲンティン ドリームは、2017年11月まで香港発着のクルーズ航路に就航していたが、姉妹船「ワールド ドリーム」の就役と香港発着航路の就航に合わせて、シンガポール発着のクルーズ航路に就航した。
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シンガポールは、航空路のハブとして日本でも知る人が多いが、クルーズ船の発着基点としても栄えている。2003年からは新しい客船ターミナルとしてマリーナベイ・クルーズセンター・シンガポールの運用を開始して、最近数を増やしてきた総トン数10万トンを超える大型客船の接岸にも対応したことで、今後も利用する客船の増加が見込まれている。
「そんなシンガポール発着のクルーズなんですが、香港発着とは雰囲気が違ってこれがまたおもしろいんですよ」と言うのは、ゲンティン ドリームとワールド ドリームを運航するゲンティンクルーズラインの日本オフィススタッフ、ARFKさんだ。
「シンガポール発着のクルーズ船は船内の雰囲気がそんなに違いますか」
「ええ、まず乗船されている船客の国籍がバラエティ豊か」
「バラエティ豊か」
「なかでもインドの皆さんが多いせいか、陽気で楽しい雰囲気でして」
「陽気なインド人がいっぱい」
「そんなインドの皆さんに船のビュッフェで用意するカレーが美味しいと好評で」
「船のカレーにインド人が美味しいと」
これだけでもう口の中が唾液で“たっぷたっぷ”の私にARFKさんは止めの一撃を加えた。
「ゲンティン ドリームの寄港先にちょっと変わったところがありまして」
「変わったところ」
「スラバヤってご存じですか? 日本では知る人が少ないようですが」
「スラバヤ!」
スラバヤってあのスラバヤ沖海戦のスラバヤですか! スラバヤ海戦といえばうんぬんかんぬん、と軍艦オタクのアクセラレーションブーストがオンになるのを危うく抑えることができた私はえらい。観光地として知る人は少ないかもしれないが、日本人にとってスラバヤは決して無縁の地名ではない。古くはオランダ軍、そして、日本海軍が基地を構えていた地でもある。しかし、現代日本のネットワーク世界において、スラバヤの観光情報は本当にわずかしか出てこない。その地を訪れることができるとは。しかも船で。
手始めにゲンティン ドリームの入港シーンで興奮する
というわけで、1月下旬の土曜日深夜というか日曜日未明というか、シンガポールに係留するゲンティン ドリームに向かう私がいた。
このゲンティン ドリーム、ゲンティンクルーズラインが運航するプレミアムクルーズブランド「ドリームクルーズ」の1隻目として2016年秋に就航しており、このほか同社はカジュアルブランドの「スタークルーズ」、ラグジュアリーブランドの「クリスタルクルーズ」をアジアを中心に展開している。
ゲンティン ドリームは現在、シンガポール発着のクルーズとして週末2泊3日クルーズと、シンガポールからマレー半島西岸を北上してポートクラン、ペナン、そしてプーケットとメジャーな観光地に寄港する5泊6日のクルーズ、そして同じく5泊6日ながら、反対の南東に向かってジャワ海を渡り、ジャワ島東部のスラバヤ、そして日本でもメジャーなバリ島ながら、国際空港があって世界中から観光客が訪れる南部地域ではなく、陸路からはアクセスする人が少ない北部地域にある小さな港「チェルカンバワン」に寄港する航路を提供している(そのほか、タイやマレー半島を巡る2泊3日のクルーズもある)。
ゲンティン ドリームは、毎週金曜日の夜に週末2泊3日クルーズに出港して日曜日の朝に帰港したあとは、その日の18時には5泊6日のクルーズ(マレー半島航路とジャワ海航路は基本週替わり)に出港する。
なお、4月からのシンガポール発着クルーズは、2泊3日の「シンガポール週末クルーズ」と、ポートクランに寄港する2泊3日の「マレーシアクルーズ」、プーケットに1日近く停泊する3泊4日の「タイクルーズ」、今回参加したスラバヤとチェルカンバワンを巡る5泊6日の「インドネシアクルーズ」に加えて、マレー半島に沿って北上し、レダン島、サムイのビーチリゾートに寄港してレムチャバンを経由、シンガポールへ戻る5泊6日の「マレーシア・タイクルーズ」を設定する。さらに6月からは、レダン島からサムイではなくシアヌークビルに向かい、レムチャバン、シンガポールとたどる5泊6日の「マレーシア・カンボジア・タイクルーズ」の新コースも用意する。
North South LineのMarina South Pier駅ができてマリーナベイクルーズセンターまで約800m、徒歩約10分となったので、シンガポールのチャンギ国際空港からゲンティン ドリームが係留しているマリーナベイクルーズセンターまではMRTを利用できなくもない。しかし、所要時間が1時間を超えることと、途中、チャンギ空港から乗ってきたEast West LineからRaffles Place駅でNorth South Lineに乗り換えなければならないことと、Marina South Pier駅からマリーナベイクルーズセンターまでは屋根のない歩道を歩くことになるので、天候によってはなかなかに厳しい。タクシーは、料金が30シンガポールドル(約2400円、1シンガポールドル=約80円換算)前後とMRTの2.4シンガポールドル(約192円)と比べると高いが、所要時間約30分で、乗ってしまえばそのまま目的地まで到着する。
なお、タクシーで移動する場合、運転手さんに行き先を「マリーナベイ、(このあと大きな声ではっきりと)クルーズ! センター!」と伝えるようにしたい。それでも運転手さんは「ああん? マリーナベイ、サンズ?」と聞き返してくるので、「ノー! クルーズ!! センター!!」としつこく主張しよう。でないと、結構な確率でシンガポールの名所、マリーナベイサンズに連れていかれてしまう。
日本を深夜に出立する航空便を使うと、朝の6時ごろにチャンギ空港に到着する。空港で朝ご飯をすませて一休みしてから9時ごろタクシーでマリーナベイクルーズセンターに向かうと「おもしろい」光景に遭遇できるチャンスがある。それは……
「おー! ゲンティン ドリームが入港してくる!」
週末2泊3日クルーズから戻ってきたゲンティン ドリームは、10時接岸を目指してマリーナベイクルーズセンターに向かってくる。全長335mと戦艦大和を超える大きさのゲンティン ドリームの姿が遠くに小さく、しかし、その特徴たるハルペイントのおかげで目立つ船影が少しずつ近付いてきて徐々に大きくなってくることで、ゲンティン ドリームの大きさが体感できるという、結構興奮するイベントとなるはずだ(航空機にしても船舶にしても「着陸」「着岸」はおもしろい)。
入港するゲンティン ドリームの姿を楽しめるスポットは、着岸する岸壁が東側ならマリーナベイクルーズセンターを出て右側、西側なら左側にある“地元の人が釣りをしている辺り”だ。なお、左側のエリアは海に突き出た防波堤の突端まで釣り人がいたりするが、さすがにそこは危険なので、「陸地」でゲンティン ドリームの姿を楽しみたい。
パレス等級専用ラウンジに潜入してみた
ゲンティン ドリームの入港シーンを堪能したら、乗船手続き開始までは「待ち時間」となる。建屋の外はクルマの往来も激しいし、外は暑いし、乗船手続きを取るまでは入れるエリアも限られているので、建物2階(乗船ターミナルはマリーナベイクルーズセンターの2階。タクシーも2階の車寄せに直接到着する。1階は下船した船客のエリア)の待合エリアにあるベンチを確保して涼んでいるのがよいだろう(ちょっと近場で観光を、という選択肢もあるが、それはまた別の機会に)。
乗船手続きがスタートしたら、混雑を避けるためにすぐ手続きをすませておきたい。ここでは、手順1:乗船チェックインをしてクルーズカードを受け取り、手順2:(任意で)手荷物を預け、手順3:乗船グループカードを受領、手順4:手荷物検査を受けることになる。
乗船チェックインとクルーズカードの受け取りは対人カウンターだけではなく、自動チェックイン機も利用できる。空港のチェックインと違って慣れないマシンなのでとまどうかもしれないが、サポートスタッフがそばに控えているのと、操作そのものはパスポートを読み取らせるだけで、あとは表示内容が正しいかどうか確認してタップするだけでよい。預けた手荷物は夕方までには自分が使う船室の入り口まで船員が運んでくれる。乗船グループは、出国手続きと乗船ブリッジでの混雑を避けるため、チェックインした順で分けたグループのこと。このグループに対して乗船の案内があるまで待合ホールで待機することになる。
乗船時間が近付くにつれて、航海をともにする船客たちが集まってくる。シンガポール発着航路を利用する船客の国籍は幅広く、近隣のシンガポール、マレー、インドネシアとともに、いや、その存在感としてはそれらの国々を上回るほどに多くのインドの皆さんが航海をともにする。インドの人は、総じて明るく陽気で待合ホールの広い区間が「わわーん!」と響くほどに、にぎやかだ。「うっひゃー! なんかテンション上がるー!」となってくるが、ドリームクルーズでは上級等級「パレス」(スイートカテゴリー船室の総称。2017年まではドリームパレスと呼んでいた)を利用する船客を対象に、静かにくつろいで乗船を待てる専用ラウンジを用意している。なお、このラウンジを利用できる船客は、一番最初に乗船を開始できる「優先乗船グループ」となる恩恵もある。
乗船が始まると。乗船グループごとに出国手続きを行ない、乗船ブリッジを渡ってゲンティン ドリームに乗り込む。なお、このとき、乗船ブリッジの途中にあるカウンターでパスポートを船に預けることになる(2泊3日の週末クルーズでは預けない)。複数の国に寄港する国際航路の船旅が初めての場合、パスポートを船に預けるのに驚くかもしれない。これは、寄港地における入出国手続きを短時間ですませるためのもので、国際航路の船旅独特の手続きだ。こうして、ボートデッキ(8デッキ)にある乗船ゲートでクルーズカードに記録されている船客データの認証が終われば、「ウェルカムアボード!」の声とともにゲンティン ドリームの船客として6日間の船上生活がスタートする。
上級等級「パレス」船客の優待サービスをチェックする
その昔、客船は等級制で船室と船客を分けていて、それぞれの等級で利用できる区画やサービスが分かれていた。現代の客船は、その多くで等級制を廃止してすべての船客が船の施設を自由に使えるようにしている。ただ、船によっては上級等級を設けて、その船客専用のエリアやサービスを用意する場合がある。ドリームクルーズも「ゲンティン ドリーム」「ワールド ドリーム」で上級等級「パレス」を設けて、専用のエリアとサービスを提供している。先ほど紹介した乗船における専用ラウンジと優先乗船もそのサービスの1つだ。
パレスで用意している船室はすべてスイート仕様になっている。その種類は最上等級の「PALACE VILLA」(2017年までの名称はGarden Penthouse)から順に「PALACE PENTHOUSE」(同じくDream Excutive Suite)「PALECE DELUXE SUITE」(同じくDream Deluxe Suite)「PALACE SUITE」がある。PALACE VILLAは2つの寝室と専用ジャクジーを備えた中庭式オープンテラス、そして、屋上テラスも備えた最上等級の船室だ。なかにはヤマハ製コンパクトタイプのグランドピアノ「GB1K」とカウンターを備えたバーエリアも用意してある。価格を抑えた「PALACE SUITE」は、ワンルームタイプだが、床面積37m 2 、バルコニー床面積も5m 2 と、通常タイプの船室と比べると広く、カーテンで寝室とリビングを区切ることが可能だ。
これらパレス等級では、船内に専用のレストランにラウンジ、そして、プールにジャグジー、サンデッキ、カフェ、さらにはトレーニングジムにスパも備えている。専用施設だけでなく、専用サービスも充実している。
まず、船室ごとに専属のスタッフ(欧米ホテルでいうところのバトラー)が付くほか、専用レストランの食事は航海中無料なのに加えて、船内に設けてある有料上級レストランのランチまたはディナーが1日1カ所(今回の5泊6日航海なら航海中5回のランチまたはディナーそれぞれ)無料で利用できるほか、船内バーとラウンジで利用できるプレミアムドリンクパッケージ(バー、ラウンジごとに利用できるメニューを用意して、ソフトドリンク、フレッシュジュースから、カクテル、ビール、ワイン、ジン、ラム、テキーラ、ウイスキー、ブランデー、コニャックの各銘柄をオーダーできる)が提供される。5泊6日航海では、最後の夜にパレス限定のBBQパーティも開催される。
また、船内劇場「ZODIAC THEATER」のショーでは前方席をパレス船客限定としているほか、船内ヴィンテージルームのプライベートディナーや上級レストランのシェフズテーブル(オープンキッチンの前に用意してテーブルでシェフの調理を眺めながら食事ができる限定テーブル)の優先予約が可能だ。さらに、寄港地では専用の市内送迎シャトルサービスも利用できる。
このような優先限定サービスが利用できるパレス等級だが、通常等級と比べるとそれほど価格に違いはない。通常等級で最も一般的な船室になる「BALCONY STATEROOM」と比較して、インドネシアクルーズ5泊6日の場合、4~5万円の追加でPALACE SUITEが利用できる。専用エリアと専用サービス、特に専用レストランと有料上級レストランのディナー、ラウンジとバーのプレミアムドリンクパッケージが付いてくることを考えると、その差額以上のメリットは十分にある。
Palace Restaurantのディナーを体験する
ゲンティン ドリーム(そしてその姉妹船であるワールド ドリーム)は、その大きな船体を活かしてレストランやバー、ラウンジ、カフェ、そして、プールやウォータースライダー、クライミングウォールからロープアスレチックなど、本当に数多くの施設を用意している。なかでもレストラン、バー、ラウンジ、カフェは35店舗も揃えており、その幅広いバリエーションはゲンティン ドリームの大きな訴求ポイントだ。
ゲンティン ドリームのレストランでは、船客すべてが無料(料金がクルーズ費用に含まれている)で利用できるDream Dinning Upper、Dream Dinning Lower(このUppwerとLowerは等級の違いではなく2層デッキにまたがるDream Dinningの上層デッキ部分と下層デッキ部分を指す。同じレストランの2階と1階だが、その雰囲気とメニューが異なるので、ここでは、別のレストランとして扱う)に、ビュッフェスタイルのLidoのほか、有料の上級レストランとしてBistro by Mark Best(シドニーでレビュー評価の高いMarque RestaurantのシェフであるMark Best氏が監修するオージービーフと豪ワインを組み合わせたメニューを提供する)、Silk Road Chinese Restaurant(中華料理レストラン)、UmiUma(鮨バーと海鮮&焼肉鉄板焼きカウンターを備えた和食レストラン)、Blue Lagoon(東南アジアの屋台をイメージしたエスニックレストラン)、HotPot(屋外のデッキに設けた火鍋レストラン)など、「本当に!」(心の底からそう思う)5泊6日の航海でも食べきれないほどに数多くのレストランが揃っている。
その数あるゲンティン ドリームのレストランで「最も格式が高い」となると、やはりパレス等級の船客だけが利用できる「Palace Restaurant」だろう。昔日の「定期航路大型客船全盛期における一等船客専用食堂」を思わせる雰囲気で、三度の食事に加えてアフタヌーンティーや夜食を楽しむことができる。メニューは航海中朝昼晩とすべて異なり、夜は前菜、スープ、メインディッシュ、デザートそれぞれで用意する4種類の料理から選べる。食器も特別にあつらえたもので皿やカップ、お茶を注ぐポットまで、ゲンティン ドリームのハルペイントを手掛けた上海出身の著名デザイナー、ジャッキー・ツアイ氏によるデザインで統一している。カトラリーも、フランスのChristofleブランドをPalace Restaurant専用で用意している。
なお、パレス等級船客のクルーズ料金には、このレストランの食事代も入っているので、三度の食事はすべて無料になる。また、航海中は1日1カ所限定で有料レストランのランチまたはディナーも無料になるので、Bistro by Mark Best、Silk Road Chines Restaurant、Umi Uma、Umi Uma Teppanyakiを日替わりで食べ“渡る”ことも可能だ。うあっ、なんちゅー贅沢な話だ!
Johnnie Walker Houseでブルーラベルに遭遇
ゲンティン ドリームには、多彩なレストランのほかに、こちらも多種多様なバーとラウンジを揃えている。ユニークなのはそのラインアップで、提供する飲み物の種類ごとにバーを用意しているだけでなく、それぞれが、独自のコンセプトを打ち出している。特に注目したいのが、洋上では初めて、そして、日本にはまだ出店していない「Johnnie Walker House」とオーストラリアで有名なワイナリー「Penfolds」の船内ショーケース「Penfolds Wine Vault」だ。ほかにも、シャンパンに特化した「Bubbles」、カクテルに特化した「MIXT」、さらには、葉巻をたしなめるシガーバー「HUMIDOR CIGAR LOUNGE」まである。
Johnnie Walker Houseでは、「ジョニ黒」ことブラックラベルから、ダブルブラック、ゴールド、プラチナ、そして、1万樽のなかから1樽しか選ばれないという希少なブルーラベルまで揃えるだけでなく、米国に拠点を持つ探検家支援団体「Explorers Club」(日本の同名団体と関係はない)とのコラボレーションで揃えているコレクションラインアップがオーダーできるほか、ほかのJohnnie Walker Houseと同様に、ブレンドのもとになる原酒のサンプルや、エクスクルーシブ・ブレンドなどを並べたショーケースを楽しめる。
Penfolds Wine Vaultは、ショップを兼ねたショーケースという位置付けだ。ただ、Penfolds Wine Vaultの前にはグラス単位で支払うことで数種類のワインが試飲できるマシンも用意してあるほか、船内のレストランやバー、ラウンジで用意したワインリストからPenfoldsのラインアップをオーダーできる。なお、Penfoldsをはじめとして、ワインのオーダーではその多くがボトル単位になるが、ゲンティン ドリームのバーとラウンジではボトルのキープが可能で、かつ、キープしたボトルは、船内すべてのレストラン、バー、ラウンジでオーダーできる。
無料ダイニングなのに格式高い「Upper」と「Lower」
ゲンティン ドリームが備える飲食施設は、パレス等級専用エリアにある施設を除いて、すべての船客が利用できる。それは、有料のレストランやバー、ラウンジ、カフェも同様だ。また、その飲食代金がクルージング料金に含まれているDream Dinning Upperや同Lower、そして、Lidoも当然ながら、すべての船客(これはパレス等級の船客も含む)が利用できる。
通常、大型客船で代金無料のビュッフェスタイルダイニング(ゲンティン ドリームでは「Lido」)は、カジュアルな雰囲気で気軽に利用できる(そこを利用する多くの船客はラフなファッションで食事を楽しんでいる)ことが多いが、ゲンティン ドリームのDream Dinningは、UpperもLowerも上品な内装で落ち着いた雰囲気のなかで食事を楽しめる。Upperには個室も用意している。
Upperは中華料理、Lowerは西洋料理やアジア料理を中心としたメニューで、どちらも朝昼晩それぞれで日替わりの料理を用意する。Upperは朝昼晩ともコースメニューで、夜になると前菜、スープ、メイン4品、デザート2品の計8品が提供されるなど、無料のダイニングとは思えない格上なサービスを利用できる。一方、Lowerはメインディッシュを選べるセミビュッフェスタイルで、夜には肉、シーフード、アジア料理、ベジタリアン向けのなかからメインを選ぶことができる。
東南アジアの屋台のような気軽な雰囲気を持つBlue Lagoonは、そこからデッキに漂うエスニックな香りの“誘因効果”もあって利用する船客が多い。また、船員、特にオフィサークラスが休憩時間に利用することも多いと聞く。そのメニューはシンガポールで代表的な海南鶏飯にサテ、ラクサ、バクテーなど、香辛料が効いた、暑くて湿気の高い赤道直下の洋上でも美味しくいただける料理(と美味しそうな香り)を提供する。
Blue Lagoonでは、深夜の時間帯(23時から1時)に、1皿1杯2シンガポールドル(約160円)で注文できる夜食メニューを用意している。内容はエビの包み揚げや白身魚の入ったおかゆ、マカオチャーハンに手羽先揚げ、そして、シロキクラゲと豆の入ったデザートなどだ(毎日メニューは変わる)。特におかゆは薄く塩味で味付けしたおかゆに、ほっくりとゆでた白身魚がお腹に優しく、夜中の「ちょっと小腹が空いた」ときに適度な満腹感をもたらしてくれる。
そして、インドの皆さんが絶賛するLidoの朝ご飯を堪能する
ゲンティン ドリームで、最も多くの船客が利用するレストランとなると、やはり、Lidoだろう。第16デッキ後甲板に全長の4分の1弱の長さと両舷にわたる広大なスペース用意しているビュッフェスタイルのメインダイニングで、すべての船客は1日5回まで無料(食事代はクルージング料金に含まれている)で利用できることもあって、朝、昼、晩、そして、モーニングティータイムとアフタヌーンティータイムと、いつも、多くの船客でにぎわっている。
とにかく、食べて食べて、なんかもう、幸せ過ぎてごめんなさい、という気持ちにもなってくる充実したLidoの食事だが、ゲンティン ドリームでは、それに加えてもう1つの「目玉」がある。それが、冒頭で紹介した「インドの皆さんも絶賛の“船カレー”」だ。シンガポール発着のクルーズだけあって、ゲンティン ドリームにはインドの船客が多い。その事情に合わせて、ゲンティン ドリームのメインダイニングでは、船内新聞の紹介で「Indian Buffet」とアピールするほどにインド料理のメニューが充実しているという。Indian Buffetがインドの船客に好評、とドリームクルーズのスタッフがアピールするほどにだ。
その証言の真偽を確認すべく、「インドの皆さんは朝ごはんの時間が比較的遅め」という事前情報をもとに、モーニング営業時間が終わるギリギリの10時にLidoに突入してみたらっ。
どわわわー! インドの男性ってこんなに声がでかいのね。Lidoにはたくさんのインドの人たちであふれ、そこここで、男たちが大きな声で話しながら、わわーんという雰囲気のなかで、朝からわっしわっしと食べていた。ま、負けそう。
いやいや、このたくさんのインドの皆さんがこぞってうまいというLidoのカレーを食べるまでは、逃げちゃだめだ、と、覚悟を決めて、ビュッフェに並ぶカレーコーナーを索敵する……、が!
「か、カレーじゃない……」
そこには、日本のインド料理店で見慣れている「ポークカレー」とか「ビーフカレー」とか「チキンカレー」とか「マトンカレー」というものはなく、「Idly」(イドリー:米粉の蒸しパン)、「Uttapam」(ウッタパム:米粉と黒レンズ豆の生地で作るお好み焼き)、「Samber」(サンバル:辛酸っぱい豆野菜スープ)、「Poha」(ポハ:米をつぶしたフレーク)、「Paratha」(パラーター:チャパティの生地を延ばして層状にして焼いたもの)、「Vatana Usal」(バタナユサル:グリンピースカレー)、「Sheera」(シーラ:小麦を細かく精製したセモリナを使うデザート)と主に南インドの家庭料理が並ぶ。
とはいえ、インドの家庭料理と分かったのは下船して日本に帰ってきてからのこと。その場では、何がなにやら分からずに、とにかくあるものすべてを皿に乗せて席に戻ってくると、いつのまにか同じテーブルにインドの母娘が座っていた。おお、ならば、彼らの食べ方をまねすればいい! と、落語「本膳」を地でいく見よう見まねで食べてみる。
向かいの母娘は、IdlyをSamberに浸して口に運んだ。早速まねして食べてみると……。
「うめー!」
私の反応を見て腹を抱えて大笑いしている母娘を視野に入れながら、わしわしと食べ続ける。米で作るIdlyはそのまま食べるとちょっと甘みがある固めの蒸しパンのような味だが、酸味と辛みのあるスープのようなSamberに浸して食べると、これがほどよい味になってすいすいお腹に入っていく。Uttapamはそのままむしゃむしゃと、Pohaはそのままサクサクと、Sheeraはそのままパクパクと、辛くてすっぱくて甘くてと、とんでもなく多彩で幅広いインドの家庭料理を堪能した。向かいの母娘に「このインド料理は美味しい?」と聞くと「ええ、毎日食べても毎日美味しいわ」と答える。
インドの皆さんが毎日喜んで楽しそうに食べるLidoのインド家庭料理。いまこの文章を書いていても口の中が唾液でタップタップになっていることを伝えずにはいられない。
ゲンティンクルーズライン
TEL: 03-6403-5188
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