JALふるさとアンバサダー/応援隊に聞く地域愛
世界最古の舞台芸術「能」でJALふるさとアンバサダーがおもてなし。知ってから見る観客巻き込み型とは?
2023年12月1日 06:00
全国各地に拠点を持つJALは、地域活性化の取り組みを継続的に実施してきており(現在は「JALふるさとプロジェクト」)、2020年8月には社内公募で選ばれた客室乗務員が現地に移住して、それぞれの地域での取り組みを推進する「JALふるさとアンバサダー」を発足しているほか、同12月には乗務しながら地域活性化に携わる「JALふるさと応援隊」を任命している。故郷や縁のある地域に対して、客室乗務員として培ってきた知見を活かした商品開発や地域課題の解決などを展開する狙いがある。
今回お話を聞いたのは、京都支店で能楽体験ツアーに携わるJALふるさとアンバサダーの山本めぐ美さん。
――取り組みについて教えてください。
皆さまは「能」をご覧になったことはございますか?
小学生のころに課外授業で見たことがある、という方もいらっしゃるのではないでしょうか。しかしながらそのあとには「よく理解できずに終わった」「そもそも能ってなんなの?」との感想が続く方が多いのかもしれません。かくいう私もその一人でした。
京都市内に位置する日本航空のオフィス付近には能楽堂が点在しています。ほとんどが外観はごくごく普通の日本家屋で、周辺の景観にすっかりなじんでいます。玄関先の看板がなければ「能楽堂」とは気付かないかもしれません。
「能」は現存する世界最古の舞台芸術です。
第1回ユネスコ無形文化遺産にも登録されており、その歴史は600年以上にもおよびます。一見普通の日本家屋のなかで果たしてどのような世界が繰り広げられているのか、そもそも能とはいったい何なのか、今回は私が垣間見た一部を皆さまにご紹介いたします。
――この取り組みにはどのように関わっているのでしょうか。
今回ご紹介させていただく「河村能舞台」は京都御所の北側エリアに位置しています。付近には同志社大学の今出川キャンパスがあり、平日は学生の往来で賑わっています。こちらも一見普通の住宅ですが、一歩玄関をくぐると、松の木が描かれた立派な舞台が目に飛び込んできます。テレビや神社などで一度はご覧になったことがあるのではないでしょうか。
河村能舞台では未来へ能を伝えていくため「能楽おもしろ講座」を開催しています。河村純子さんが能について分かりやすく、そしてタイトルどおりおもしろく、関西弁を交えながらレクチャーしてくださいます。歴史はもちろん、能装束、能面、打楽器の説明に加え、例えば「なぜ能舞台には松の木が描かれているのか」「舞台上にある柱にはどのような役目があるのか」という至るところに隠された仕掛けをするすると紐解いてくださいます。
このように事前に十分な予備知識を蓄えたうえで能を鑑賞することで、誰一人置いていかれることのない「観客巻き込み型の能舞台」となっています。口コミなどで評判を呼び、修学旅行生などこれまで57万人以上の方が体験されています。
今回10月下旬に特別開催された「インバウンド向け能楽体験ナイトツアー」にて、お客さまへおもてなしをさせていただく機会をいただきました。集まったスタッフは全員が京都に縁のあるJALスタッフです。
玄関でのお出迎えから始まり、お座席へのご案内、お茶とおしぼりの提供、写真撮影のお手伝い、終演後のお見送りなど、特別かつ贅沢な空間での大変貴重な経験でした。
――今後の展開・展望について教えてください。
今回のツアーには、アメリカ、ドイツ、スペインなどさまざまな国からお客さまが参加してくださいました。皆さまが日本文化に大いに関心をお持ちで、河村さんのお話に熱心に耳を傾けていらっしゃる姿が印象的でした(今回は同時通訳の方がいらっしゃいましたが、普段は河村さんが英語でご説明なさいます)。
その光景に日本人として誇らしく感じつつも、私自身日本の歴史や伝統について無知であることを改めて実感しました。「能」をはじめとして、京都には歴史を感じることができる場所、伝統や文化を体験できる場所が多くあり、十分な知識をもってすればより深く楽しむことができます。私自身見聞を深めながら、引き続き皆さまに京都の魅力をお伝えしていきたいと思います。
――旅行者に向けてメッセージをお願いします。
河村さんはお話のなかで「続けていくことが大事、未来へとつなげていくことが大切」とおっしゃっていました。京都には日本文化や伝統芸能など古きよきものへリスペクトの心を持ちながら、未来へ紡いでいくことに尽力されている方が多くいらっしゃいます。今回ご紹介した「河村能舞台」もその一つです。京都で「能」を知り、学び、体験するという旅はいかがでしょうか。皆さまのお越しをお待ちしております。