井上孝司の「鉄道旅行のヒント」
「後続の遅れで時間調整」はどこまで許せる? 列車の遅延と接続待ち・接続の崩壊
2024年11月27日 06:00
遅延と接続待ち
1本の列車でA地点からB地点に移動するだけの行程であれば、その列車が時刻どおりに走ってくれるかどうかだけが問題になる。ところが多くの場合には、複数の列車を乗り継ぐ行程になる。そこで、先に乗った列車が遅延すれば、その後の行程にも影響がおよぶ。
特に近年では、系統分割、つまり1本の長距離列車にする代わりに、区間ごとに短区間の列車に分ける形が増えているので、それらを乗り継ごうとすると遅延は大問題になる。
乗り継ぎ元となる列車が遅れたときに、乗り継ぎ先となる列車が所定時刻で発車してしまえば、そこで乗り継ぎは崩壊する。
複数の列車を乗り継ぐ場合、乗り継ぎの崩壊がさらなる乗り継ぎの崩壊を呼ぶこともある。筆者がスウェーデンで遭遇したケースでは、1本目の列車が39分遅れた結果として次々に乗り継ぎが崩壊して、最後には2時間を超える遅れに拡大した。
そこで登場するのが「接続待ち」。つまり、乗り継ぎ元となる列車が遅れたときに、乗り継ぎ先となる列車が出発を待ってくれるというやつである。
乗り継ぎ元の列車が遅れたときに「これから車掌が車内を回りますので、○○にお乗り継ぎのお客さまはお知らせください」と放送がかかることがある。逆に、乗り継ぎ先の列車で「○○列車からのお客さまを待つため、発車が遅れます」と放送がかかることもある。
これがうまくいけば乗り継ぎの崩壊は避けられるが、遅延の波及という問題がある。接続待ちに起因する遅延が、その先でさらなる接続待ちを呼んでしまうからだ。
例えば、東海道・山陽新幹線の上り列車が博多や小倉や岡山で、遅れた在来線特急のために接続待ちを行なえば、その先に影響がおよぶ。新幹線は走っているエリアが広いだけに、影響がおよぶ範囲も広い。
そこで極端な話、「九州で発生した遅延に起因する接続待ちのために、東京駅から出る在来線の列車が接続待ちをします」となれば、待たされる側の乗客は果たして納得してくれるか。
接続待ちには限界がある
新幹線でも在来線でも、ダイヤを組む際には、若干の余裕時間を盛り込んである。だから、その範囲であれば所定時刻に戻せる。しかし余裕時間を超える遅延が生じれば、簡単には取り返せない。
だから大抵の場合、「○○分までの遅れなら待つ、それを過ぎたら切る」という判断をする。そのための基準はあらかじめ定められているのが一般的。基準を超える遅れが生じて所定の乗り継ぎができなければ、後続列車へのご案内、とするわけだ。
ところが、その後続列車がないと話が難しくなる。筆者が実際に見たケースでは、旭川を20時06分に出る稚内行き「サロベツ3号」が、実際には21時20分に出発した事例がある。
これは、札幌から来る「ライラック」と「サロベツ」が接続するダイヤになっていて、その「ライラック」が札幌付近の大雪が原因で遅れたため。
「サロベツ3号」は旭川から出る稚内行きの最終だから、接続を切るわけにはいかなかったのだ。運行に関する指示を出す輸送指令は、遅延の状況や、遅らせた場合の影響の度合を勘案して、接続待ちをするか、接続を切るかを決めている。
利用者としてできることは
列車の運行本数がそれなりに多くあれば、乗り継ぎスケジュールに余裕を持たせて「ギリギリではなく1本落とす」手がある。ダイヤを組む際に、余裕時間を盛り込むのと似た話ではある。しかし、運行本数が少なければどうにもならない。
すると、遅延や輸送障害が発生したときに、いかにして代替手段を迅速に決めて手を打つか、という話になる。最悪なのは、乗っている列車が本線上で止まってしまった場合で、これはもう、動き出して最寄りの駅に到着するまで身動きがとれない。
いったん代替手段の利用が可能な状況になれば、別の交通機関を探してそちらに移動するとか、予約が必要なものは直ちに予約を入れるとかいう話になる。ときには、あきらめてもう1泊ということもあり得るだろう。
ネット予約の普及は、こういうときに威力を発揮する。ただし、交通機関の空席にしても宿泊施設の空室にしても、数に限りがあるから先手必勝である。
すると、行程を立案する段階で、代替になりそうな鉄道路線、バス路線、航空便といったものについて、思いつく範囲で調べておくのがよい。全区間でなくても、「ここで乗り継ぎが崩壊したら致命的」という、いわばクリティカルパスとなる部分で、代替手段の検討はしておきたい。
そんなときに、紙の時刻表の冒頭に載っている索引地図は役に立つ(こともある)。JRも民鉄も、一部のバス路線も載っているからだ。後の方のページには航空時刻表も載っている。