井上孝司の「鉄道旅行のヒント」

JR九州のQRチケレスを使ってみた

QRチケレスでは、「JR九州」アプリの画面に表示されるQRコードを自動改札機に読み取らせるのが基本の運用

 JR九州は、9月26日から「QRチケレス」の運用を開始した。これは、「JR九州インターネット列車予約サービス」で予約時に「QR乗車」を選択すると、画面にQRコードを表示する仕組み。それを駅の自動改札機などに読み取らせて通過するため、紙のきっぷを受け取る必要がなくなる。

大分駅で見かけたポスター。チケットレス化すれば、紙のきっぷの受け取りは不要だが、実は紙のきっぷを発券することもできる。

「JR九州」アプリの利用が前提

 本連載では以前に、JR四国の「しこくスマートえきちゃん」(通称スマえき)を紹介した。スマートフォンアプリを用いて乗車券などを購入する仕組みで、画面にはQRコードが表示される。ただし乗務員や駅係員に画面を見せるのが通常の運用で、QRコードは高松、高知、松山の各駅にある専用自動改札でのみ意味を持つ。

 一方、JR九州の「QRチケレス」は逆に、「JR九州」アプリを利用して、自動改札機などにQRコードを読み取らせる運用が基本となる。スクリーンショットや紙への印刷は使えないところは、「スマえき」と共通している。

 予約の手順自体は、特に変わったことはない。概略の流れは以下のようになる。

乗車駅、降車駅、日時、人数などを指定して列車を検索する
表示された候補のなかから、列車とグリーン車・普通車指定席・普通車自由席の別を選択する
「きっぷ選択」で商品を選択する
座席位置を指定する。シートマップからの選択も可能
キモはその次の画面で、「スマホのQRチケット乗車」と「発券してきっぷで乗車」の選択が可能。このあとで支払方法を選択して、最後に予約内容を確認して購入する
購入すると「JR九州」アプリのトップ画面に、予約情報が現われる

 支払の手段としては、クレジットカードに加えてコンビニ・ATM払いも可能。なお、購入に際してWeb会員パスワードの入力が必要となる。また、クレジットカードによっては、SMSで認証用のワンタイムパスワードが飛んでくるが、そこはほかのネット決済を利用する場合と同様である。

乗車と降車

 予約が完了すると、「JR九州」アプリのトップ画面に、予約した列車の情報が現われる。そこで「乗車準備(QR表示・読み込み)」をタップすると、画面にQRコードが現われる仕組み。

 JR九州のQRチケレスでおもしろいのは、いったん購入したあとでも入場前であれば、「QR」と「紙のきっぷ」の切り替えができること。「紙のきっぷを受け取るつもりだったけれど、駅に行ったら行列ができていたのでQRに切り替えて入場する」なんていう運用ができる。

 では、実際に利用してみよう。購入したのは小倉~大分間の特急「ソニック」だが、実はこのときの行程は新鳥栖が起点で、新鳥栖~鳥栖~博多~小倉~大分という内容だった。

 購入した「九州ネットきっぷ」は乗車券と特急券がワンセットだから、小倉~大分間はこれでよい。その範囲から外れる新鳥栖~小倉間は別途、モバイルSuicaで乗車した。その場合、小倉駅で鹿児島本線の普通列車からそのまま「ソニック」に乗り継ぐと、問題が発生する。

 まず、モバイルSuicaの出場処理ができていないし、QRチケレスの方も入場記録がつかない。出場処理ができていないモバイルSuicaにしろ、入場済みになっていないQRチケレスにしろ、自動改札機でエラーが発生するだろう(紙のきっぷでも同じことが起きる)。

 そのため小倉駅ではいったん出場して、改めてスマートフォンの画面にQRコードを表示させて入場する手順を踏んだ。QRチケレスで購入した区間だけで完結する行程なら、こんなめんどうなことは必要ないのだが。

「乗車準備(QR表示・読み込み)」をタップすると、この画面になる。ここで「QR⇔発券」をタップすると、紙のきっぷに切り替えることもできる
QRチケレス対応の自動改札機では、QRコードの読み取り装置が手前に増設されているので、そこで読み取りを行なう
すべての通路がQRチケレス対応というわけではないので、足元の標示に注意。実は自動改札機の色が違っていて、QRチケレス対応なら白っぽいグレーである
自動改札機のディスプレイに「ありがとうございました」の表示が出れば、問題なく通過できたことになる

 なお、改札を通過したあとに表示が「入場前」のままだったので慌てたが、これは「更新」の矢印をタップすれば変化する。入場したら念のために、表示を更新して「入場済」に切り替わったかどうかを確認しよう。目的地で出場した場合も同様で、こちらは「出場済」に切り替わる。

自動改札機を通過したあとで表示を更新して、「入場済」に切り替わった状態
こちらは、目的地に着いて出場したあとで表示を更新した「出場済」の状態

駅によって改札の構成が異なる点に注意

 すべての駅でQRチケレス対応の自動改札機が設置されていれば話は簡単だが、小駅ではSUGOCA用の簡易改札機しかない、あるいはそれすらないこともある。そのためJR九州のQRチケレスでは、駅の改札が以下のように4パターンできた。

 まず、既存の自動改札機にQRチケレス用の読み取り装置を追加した形態。都市部の主要駅はこれである。これなら話は簡単で、QRコードを自動改札機の読み取り装置に読み取らせればよい。なお、QRチケレス対応の自動改札機は一部の通路に限定されている。

 次に、既存の自動改札機はそのままとして、別途、独立したQRチケレス用の簡易改札機を設置した形態。簡易改札機は入場用がラチ外、出場用がラチ内に、それぞれ設置されている。有人駅であれば、簡易改札機にQRコードを読み取らせて入出場の処理を行なったあとで、駅係員に画面を見せて通ることになろう(無人駅では、もちろんそのまま通る)。

新鳥栖駅では、有人通路の脇にQRチケレス対応の簡易改札機を増設した
その簡易改札機はこんな外見で、下の方に読み取り装置がある

 次に、通常型の自動改札機がなく、SUGOCA用の簡易改札機が設置されているところに、QRチケレス用の簡易改札機を追加設置した形態。この場合にも簡易改札機を使用する。

日豊本線の鶴崎駅は、SUGOCA用の簡易改札機とQRチケレス用簡易改札機の組み合わせだった

 最後は、QRチケレス用の簡易改札機がない、あるいは稼動していないときに使用する「ポスター改札」。入出場の処理を行なうためのQRコードが、改札口付近に掲出されている。もちろん、これも入場用と出場用が別々にある。なお、前述の簡易改札機が設置されている駅でも、ポスター改札用のQRコードを併設していた。

「JR九州」アプリでQRコードを表示させると、右下に「ポスター改札」と表示されている。それをタップしてから、スマートフォンのカメラで駅側の入出場処理用QRコードを読み取らせる仕組みだ。

日豊本線の西大分駅は、SUGOCA用の簡易改札機とポスター改札の組み合わせ
入場用ポスター改札をアップで。ここに掲示されているQRコードを読み取らせる仕組み

 こうした事情から、駅によって入出場の操作に違いが生じる。日常的に利用する駅ならいいが、初めて訪れた先の駅では、4パターンのいずれに該当するかを確認して、それに合わせた操作を行なわなければならない。特に「ポスター改札」では追加の操作が必要になるから、ちょっとまごつくかもしれない。

 もっとも、すべての駅に通常型の自動改札機を設置するのは費用がかかり過ぎるので、いたしかたないところはあるのだが。