井上孝司の「鉄道旅行のヒント」
同じ鉄道会社の同名駅なのに外に出るのはナゼ? 乗り換えで外に出る駅・中間改札を通る駅
2023年11月15日 06:00
ときどき例外があるが、異なる鉄道事業者の路線が接続している駅では、いったんラチ外(改札外)に出場して、それから再入場するのが基本である。ところが、同じ事業者の駅同士にもかかわらず、いったんラチ外に出ないと乗り換えができない事例もある。
同じ事業者なのに改札を出て乗り換える
JR東日本、南武線の浜川崎駅と鶴見線の浜川崎駅は、同じ名前の駅だが物理的には別々で、道を隔てて向かい合っている。もともと別々の私鉄だったものを国有化した関係で、こんなことになった。今は無人駅で、Suica簡易改札機が設置されているが、「乗り換えのときにはタッチしないで」というめずらしい但し書きが付いている。
こうした構造を持つ駅は、かつては尼崎、石巻、宇美もあった。しかし、尼崎は福知山線の支線(通称・尼崎港線)の廃止により、石巻は仙石線のホーム移設により、宇美は勝田線の廃止により消滅。JRグループでは浜川崎が唯一の事例となっている。
民鉄における同種の駅として、近鉄の生駒線 王寺駅と田原本線 新王寺駅がある。名前は違うが、駅前広場を隔てて向かい合っており、乗り換えの際にはいったん出場する。これも浜川崎と同様に、もともと別々の会社の路線だった名残。
その田原本線は、反対の終端駅も同じことになっている。こちらは田原本線の西田原本駅と橿原線の田原本駅が、やはり駅前広場を隔てて向かい合っている。
このふたつの組み合わせにおける乗り換えでは、いったんラチ外に出るものの、運賃は通算される。
地下鉄の駅ではいくつも事例がある。複数の路線の接続駅にもかかわらず、諸般の事情から駅を離して設置せざるを得なかったとか、もともと別個の駅だったものが、間に別の路線ができたため、つながってしまった、といった事情による。
東京メトロの場合、こうした駅では自動改札の通路が「出場用」と「乗り換え用」に分かれているので、他線に乗り換えるときにはオレンジ色の筐体を持つ「乗り換え用」を通らなければならない点に注意を要する(磁気券の場合)。
かつて、福岡市営地下鉄空港線の天神駅と七隈線の天神南駅で乗り換えを行なう際にも、同じ仕組みが用いられていた。しかし、これは2023年3月に実現した七隈線の博多駅延伸で解消された。空港線と七隈線の乗り換え駅が博多に変わったためで、こちらはラチ内で行き来ができる。
同一事業者の同一駅構内で乗り換えるのに改札を通る
ひとつ屋根の下にある同じ事業者の駅で、ある路線と別の路線の間を行き来する際に改札を通る事例もある。
例えば、加古川駅、姫路駅、和歌山駅などがある。加古川は山陽本線と加古川線、姫路は山陽本線と播但線・姫新線、和歌山は阪和線・紀勢本線と和歌山線・紀勢本線(和歌山~和歌山市)の間で乗り換える際に、専用の中間改札を通る構造になっている。不正乗車防止のためにこうなったらしい。
これらはあくまで中間改札で、出場時には改めて降車駅の改札を通る。交通系ICカードを利用する場合、中間改札でタッチして通過したあと、降車駅で、もう1回タッチして出場することになる。
つまり、これらの中間改札は、乗り換えの時点で有効な乗車券、あるいは正しい入場記録があるICカードを所持していることを確認するためのもの。かつて東名高速道路などに設けられていた、本線検札所を思わせるものがある。