井上孝司の「鉄道旅行のヒント」
鉄道旅でバス・フェリー・レンタカーを活かすには? ほかの交通機関も組み合わせてみる
2023年11月1日 06:00
高速バスが活きる阪神~徳島みたいな例
例えば、大阪や神戸と徳島の間を行き来する場合。鉄道だけ使って行き来しようとすると、新幹線で岡山まで行って、快速「マリンライナー」で高松に、さらに特急「うずしお」で徳島に(あるいはこれらの逆方向)と、逆コの字形の大移動が必要になる。
ところが、神戸淡路鳴門自動車道を通ってショートカットする高速バスがあり、こちらの方が速くて安い。だから、新幹線で新神戸まで行って高速バスに乗り継いで徳島入りしたことがある。鉄道にこだわりたい場合には、JRグループの高速バスもある。
高速バスというと気になるのは渋滞の影響だが、渋滞しやすい都市部を避ける観点からすると、大阪発着よりも神戸発着の方が確実性が高いかもしれない。
この高速バスのポイントは、途中の明石海峡大橋北詰に設けられた、高速舞子バス停にある。このバス停は、JR山陽本線の舞子駅や山陽電鉄の舞子公園駅と隣接しており、10分もあれば乗り換えができる。そのため、明石・加古川・姫路あたりからの利便性も高い。
これを利用して、「午前中は徳島近辺で高徳線の撮影、高速バスで移動して午後は兵庫県内で加古川線の撮影」というスケジュールを組んだことがある。
高速バスのバス停と鉄道のリンクが成立する事例としては、舞子以外に阪急京都線の西山天王山駅がある。また、東名高速の江田バス停は、東急田園都市線の江田駅やあざみ野駅から徒歩圏内にある。
首都圏でも、アクアライン経由の高速バスが最短経路をショートカットしてしまうため、千葉経由で大回りする内房線・外房線は分がわるい状況になっている。ただ、アクアラインといえば週末の渋滞が恒例行事になっているので、そこにバスで突っ込むのは遅延リスクが大きそうだ。
航路でショートカットする
実は、徳島や内房線に共通するショートカットの手段として、「船」がある。
内房線の浜金谷駅と東京湾フェリーの金谷港乗り場は、500mぐらいしか離れていない。反対側の久里浜港乗り場も、JR横須賀線の久里浜駅や京浜急行の京急久里浜駅からバスで行ける。
徳島は、南海フェリーで和歌山との間を行き来できる。これは、和歌山県内と徳島の間を行き来するのであれば、現実味のある選択肢といえる。昔は、大阪と徳島の間を行き来する際にも重宝されていたルートだが、明石海峡ルートができた今となっては、いささか分がわるい。
東日本と比較すると、西日本、とりわけ中国・四国・九州地方は航路の選択肢が多い。例えば、松山と広島・呉の間を行き来するなら、最短経路を取れる船が一番速い。同じ愛媛県内の八幡浜と、別府あるいは臼杵を結ぶフェリーを使って、九州と行き来することもできる。
筆者が乗りつぶしで活用したことがあるのが、熊本と島原を結ぶ航路。熊本側は駅から遠くて少々不便だが、島原側は島原鉄道の終点、島原港駅のすぐそばだ。そこで、朝一番のフェリーで島原に渡って島原鉄道に乗った。ただし熊本側ではフェリーターミナルまでの足がなく、タクシーを使った。
紙の大判時刻表なら、鉄道に加えて高速バスや航路の情報も載っている。ことに航路は冒頭の索引地図にも載っているから、探しやすい。たまには違うモードを利用してみるのも、気分が変わってよいかもしれない。
駅レンタカーを組み合わせて現地の足を確保
自由度と機動力の高さではクルマが一番。しかし遠方になると、自走で行くのは時間がかかるし、疲れる。それに最近ではガソリンが高い。
そこでJRグループの「レール&レンタカーきっぷ」が登場する。片道、往復、連続のいずれかの乗車券について、営業キロが201km以上の鉄道利用が必須、かつ、利用できるレンタカーはJR駅レンタカーに限られる。その代わり、一部の例外を除いて乗車券と特急券の両方が割引になる利点は大きい。
特に新幹線の駅でレンタカーを借り出す場合には、目的地が遠方になるほどに「割引」と「スピード」の両方でメリットが出てくる。「のぞみ」「みずほ」の特急料金が割引対象外なのは残念だが。
利用の際には、まず、駅レンタカーのWebサイトで「レール&レンタカー予約」を選択してクルマを確保する。そこで発行される予約番号を使って、駅の「みどりの窓口」で「レール&レンタカーの発券をお願いします」といって乗車券と特急券を購入する流れ。
この「レール&レンタカーきっぷ」は、遠隔地に撮影旅行に出るような場面で重宝している。ただし最近、「みどりの窓口」の閉鎖が相次いでいるので、いささか使いづらくなってきている感はある。
なお、いわゆる「おトクなきっぷ」、あるいはJR東日本の「えきねっと」でも、商品によっては駅レンタカーの割引を受けられる場合がある。