井上孝司の「鉄道旅行のヒント」
新幹線と在来線で異なる可動柵(ホームドア)の開閉
2023年7月5日 06:00
今回は、鉄道を利用するうえで直接的に役に立つ種類の話ではなく、「へえ、そうなんだ」に属する話を。
近年、都市部の電車では可動式ホーム柵(いわゆるホームドア)を設置する事例が目立つようになった。会社によっては、すでに全駅に設置済みというところもある。一方、新幹線でも可動柵(なぜか新幹線ではこう呼ぶ)を設置する駅が増えている。特に、いわゆる整備新幹線では一部の駅を除いて標準装備だ。
在来線は車両の側扉開閉と連携するのが普通
利用者の視点からすると意識することはないし、する必要もないのだが。在来線で使われている可動式ホーム柵は、車両が備える側扉の開閉と連携して開閉する方式が一般的だ。なお、ここでいう在来線とは、新幹線以外のすべてを指す。
列車が駅に到着すると、車掌は停止位置が間違っていないことを確認してから、「車掌スイッチ」を操作して側扉の開扉操作をする。すると、それと連動する形でホームに設置されている可動式ホーム柵も扉を開く。
出発の際には、車掌は乗降が完了したことを確認してから、車掌スイッチを操作して側扉の閉扉操作をする。すると、それと連動する形で可動式ホーム柵も扉を閉める。
JR東日本の可動式ホーム柵設置駅では、ホームの屋根から、この連携状態を示す装置がぶら下がっている。「連携」「ラッシュ」「分離」の3種類がある。
通常は「連携」。これは開閉いずれも車両側の車掌スイッチ操作に連動する。
「ラッシュ」では、連動するのは扉を開けるときだけ。発車の際には、車掌は車掌スイッチを操作して車両側の扉だけを閉める。それとは別に、駅係員がホーム側に設置されている操作盤を用いて、可動式ホーム柵の扉を閉める。
「分離」はいうまでもなく、開閉のいずれも車両と可動式ホーム柵が連動しない。車掌は車両側の扉だけ、駅係員は可動式ホーム柵だけ、それぞれ別個に開閉操作を行なう。
新幹線は駅係員が可動柵を開閉する
ところが、新幹線ではこの辺の要領が大きく異なる。しかも、路線や区間によっても相違がある。いずれにも共通するのは、車両側との連携機能がまったくないところだ。
東海道新幹線の場合、列車が到着すると駅係員が安全を確認したうえで、操作盤のスイッチを操作して可動柵の扉を開く。車掌はそれを確認したうえで、車両側の扉を開く(だから、必ず可動柵が先に開き始める)。
出発の際には、駅係員は乗降が終わったことを確認してから、操作盤のスイッチを操作して乗降終了合図を出す。この操作により、可動柵の閉扉も行なわれる。車掌はそれを受けて別途、車両側の扉を閉める。
山陽新幹線では新神戸、岡山、広島の各駅に可動柵があるが、これは列車が進入してくると自動的に可動柵を開くところが、東海道新幹線との相違点。発車時の操作は東海道新幹線の可動柵と同じだ。
東北新幹線・北海道新幹線も駅係員が開閉しているが、発車時の乗降終了合図と可動柵の閉扉操作を別個に行なうところが違う。まず乗降終了合図を出して、それを止めたら可動柵を閉める。車掌は、乗降終了合図を受けて車両側の扉を閉める。北陸新幹線のうち、飯山駅と上越妙高駅もこの方式。
同じ北陸新幹線でも、糸魚川以西のJR西日本区間では、東海道新幹線と同じ手順を用いている。
ややこしいことに、同じ北陸新幹線でも安中榛名、軽井沢、佐久平、上田の4駅では、発車時の操作に違いがある。よそでは可動柵と車両側の側扉の両方が閉まらなければ列車は出発しないが、この4駅だけは出発時に、車両側の側扉だけを閉める。可動柵は列車が走り去ったあとも開いており、取り残しがないことを確認してから初めて閉められる。
九州新幹線と西九州新幹線はどうか。駅係員がホーム上に常駐している駅では、東海道新幹線と同じ手順。ところが、駅係員が常駐していない駅では、車掌がリモコンで開閉している。開ける方も閉める方も、可動柵が先、車両側の扉が後だ。
こうしたオペレーションの違いは2021年に集中的に調べて回ったのだが、会社や路線によって意外なほど違いがあるので驚いたものだ。