井上孝司の「鉄道旅行のヒント」

携行品には定位置とルールを。旅先での忘れ物やなくし物を回避するコツ

こんな具合に、きっぷを入れるのにちょうどよいスペースがバッグに付いていると便利だ

 国内旅行・海外旅行を問わず、「旅慣れている人は荷物がコンパクト」とは、よく言われる話。その理由は、旅先において何が必要で何が必要でないか、の見きわめが進むからだ。それだけでなく、携行品のパッキングやハンドリングにも経験の違いが出る。

モノによって、それぞれ入れる場所を固定する

 以前に、「紙のきっぷをなくさないようにするには」という話に少し触れた。それとも関連する話だが、携行品の紛失を防いだり、必要なものをサッと取り出せるようにしたりするには、「何をどこに入れるかを決めておいて厳守する」必要があるというのが筆者の考えだ。

 例えば、携帯電話やスマートフォンは、サッと取り出したいモノの筆頭であろうし、カメラも同様だろう。カメラの予備バッテリやモバイルバッテリ、USBケーブルの類も、荷物の奥深くに埋もれていたのでは具合がよくない。日焼け止め、ハンドクリーム、リップクリームの類も出番が多い。

バッグのサイドポケットにスマートフォンを入れておくと取り出しやすいが、抜き取られやすいとか、落としやすいとかいった難点もあるので、判断は難しいところ

 余談だが、FeliCa非対応のスマートフォンを使用している場合には、スマートフォンを手帳型ケースに入れて、そのケースに交通系ICカードを入れておくと、ある種の代用品として使える。もちろん、チャージは手作業で行なわなければならないが。

 話をもとに戻して。重要なのは、「入れる場所を固定しておくこと」「使ったらただちにもとの場所に戻すこと」。これが、携行品の紛失や混乱を防ぐ際の鉄則だ。鉄道旅行できっぷをなくしたら惨事であるし、海外旅行ならパスポートをなくすと大変なことになる。

バッグ類の選択にも影響が

 そうなると、実はバッグ類の選択にも影響が出てくる。今時の旅行は、単に着替えと洗面道具(と、女性の皆さんなら化粧品か)ぐらいを持ち歩けば済むというものではないことが多い。各種ガジェットを筆頭とする小間物がいろいろ加わったからだ。

 しかも世の中の「スマホ依存」が進んだことで、スマートフォンなしでは不便を感じることも多い。最近の典型的な事例だと、「全国旅行支援」のクーポンが紙ではなく電子クーポン主体になった件がある。きっぷのチケットレス化も浸透しつつあるし、飛行機を利用する場合もしかり。

 多様な携行品があるならば、それに合った収容・携行手段が必要になる。単に大きなスペースがガバッとあるだけでは、そのなかでさまざまなモノが入り乱れて、わけが分からないことになる。しかも旅行の荷物というやつは、日を重ねるにつれてなぜか大きくなるのだ(特に長期の海外旅行において、ありがち)。

 筆者がカメラバッグを常用している主な理由は、カメラとラップトップが "商売道具" であり、携行が不可欠だからという事情が大きい。しかし、それだけではない。カメラバッグは小間物の収納に気を使った作りになっていることが多く、旅行の荷物を持ち歩くのに向いているという理由も大きい。それに、なかの仕切りを自由に付け替えられるから、中身に合わせた最適化がしやすい。

筆者愛用のカメラ用バックパック「エアポート・エッセンシャルズ」の内部構成。カメラやレンズは入れていない状態だが、予備のバッテリやメモリカード、USBケーブルの類はバッグに常備してある。常備するだけでなく、入れる場所を変えないことが重要
こちらは別のショルダーバッグ。カメラ本体、標準ズーム、広角ズーム、望遠ズーム、フラッシュを入れる想定で中仕切りの位置を決めてある。つまり、どのレンズがどこに入るかも決まっている

 ちなみに、カメラバッグの形態で双璧となるのは「バックパック」と「ショルダーバッグ」だが、いずれも一長一短がある。中身をパッと出し入れするにはショルダーバッグの方が有利だが、片方の肩に負担がかかりやすい。すると、荷物の嵩や重量が増えたときにはバックパックが有利だが、中身をパッと出し入れするには不利だ。

 1つの解決策は、国内線の機内持ち込み可能サイズのバックパックに、サブで小さなショルダーバッグを組み合わせて、頻繁に出し入れするモノを後者に入れる手であろうか。

用が済んだものは、前夜のうちにどんどんパッキング

 普通の観光旅行ではめずらしいことになりそうだが、気合いの入った鉄道旅行では往々にして発生するのが「早起き」。ことに乗りつぶしを企てていると、時間は貴重だから寝坊などしていられない。すると、朝の早い時間から、ときには宿泊施設の朝食が始まるよりも早い時間から動き出すことがある。

 そうなると、起き出したらただちに出動できるぐらいの備えがほしい。起き出してから慌てて荷物をパッキングするのでは、適切な収容場所を選んでいる余裕がなくなるから、あとで「あれはどこに入れたっけ?」ということになりやすい。また、忘れ物を作る原因にもなる。

神戸市内の某所にて。投宿すると「店開き」は必然だが、出発する際の片付けが大変になってしまう
こちらは高知市内の某所にて。出発直前まで残るのはラップトップにスマートフォン、それ以外はすべてバックパックに収まった状態

 では、どうすればよいか。前夜のうちから、用が済んだものはどんどん荷物に入れてしまうのだ。もちろん「可能な範囲で」というただし書き付きだが、これができるだけでも楽になるし、忘れ物のリスクも減る。そしてなにより、前夜のうちに落ち着いて荷物を定位置に収納していけば、あとで「どこに入れたっけ?」問題を回避しやすくなる。