井上孝司の「鉄道旅行のヒント」

時刻表は時々刻々変化する

飛行機のダイヤが変われば、空港連絡バスのダイヤも連動して変動する。鉄道でも、接続や相互乗り入れの関係から、複数の事業者間で連動してダイヤが変わることはよくある

 先日、とある方面にお出かけしたときのこと。最後に、空港に向かうバスの時間を確認したら、手元の計画よりも10分繰り上がっていたことに気付いて焦った。それを逃しても、次のバスで予定のフライトには間に合うが、空港で使える時間は減ってしまう。

時刻が変わるのはダイヤ改正だけ、とは限らない

 筆者は大抵、比較的間際になって計画を立てて手配をする。ところが先日のお出かけは例外で、スケジュールを立ててから実行するまでに3か月ぐらいあった。その間に変更がかかってしまったわけだ。これは鉄道ではなくバスの話だが、鉄道でも、時刻変更がかかることはあるので注意が必要だ。

 かつては、国鉄のダイヤ大改正というと10月に実施することが多かったが、最近のJRグループは3月下旬が通例になっている。JRグループでダイヤを変えると、相互乗り入れや接続の関係もあって民鉄各社にも影響がおよぶので、結果として鉄道業界の多くは3月下旬にダイヤの変更がかかる、という状況になっている。

ダイヤ改正があれば、当然ながら、新しい時刻表の入手が必要になる

 そのダイヤ改正が、スケジュールの立案から実行までの間に挟まると注意を要する。ダイヤ改正の前に立てた旅程が、ダイヤ改正のあとになってみたら使えなくなっている可能性があるからだ。

 指定席をとっていれば、必然的に列車の発着時刻を意識することになるから、まだいい。それと比べると、自由席を利用するとき、あるいは普通列車を利用するときの方が要注意だろう。列車の発着時刻を意識するチャンスが減るからだ。

 新線開業や新たな列車の設定など、大きな変化が発生するイベントがなければ、ダイヤを大きくいじることは少ない。だが、大きな変化がなくても、細かい変動は意外とある。そのせいもあり、例えば「東京から青春18きっぷを使って1日で行ける限界」は往々にして、ダイヤ改正の度に変動する。

 また、2023年3月改正の事例でいうと、石北本線の特急「オホーツク」「大雪」が183系気動車から283系気動車に置き換わったのに合わせて、若干の時刻変更がかかった。

特急「大雪」は2023年3月改正で283系に置き換えられた。それに伴い、若干の時刻変更がかかっている
こちらはダイヤ改正前まで使われていた183系。もっとも、車両が変わっても石北本線における最高速度は95km/hのままだ

 全国ネットのダイヤ改正とは別に、ローカルなダイヤ改正が発生することがある。例えば2023年5月20日から、室蘭本線のうち室蘭~東室蘭~苫小牧間で、これまで使用していた気動車が新型電車の737系に置き換わる。その関係で、スピードアップに伴う時刻変更がかかる。

臨時列車を割り込ませるための時刻変更も

 交換可能駅が少なく、かつ観光利用がある単線区間では、観光客向けの臨時列車を割り込ませた結果として、普通列車の時刻変更をかけることがある。だいぶ以前の話だが、釧網本線で「SL冬の湿原号」運行のために、定期運転する普通列車に時刻変更がかかった事例がある。

 変わったところでは、一時的な時刻変更の事例もある。それが、すっかり恒例行事と化した、盆暮れ正月・ゴールデンウィークの北海道新幹線。青函トンネル内で始発から15時ぐらいまでの列車について最高速度を引き上げて、所要時間の短縮を図っている。すると速達効果を維持するために、新函館北斗~函館間を連絡する「はこだてライナー」にも時刻変更がかかる。

 注意を要するのは、この時刻変更は盆暮れ正月・ゴールデンウィーク「だけ」の実施で、その前後は変わらないことだ。もちろん、実施するその都度、JR北海道は時刻変更に関するプレスリリースを出しているのだが。

盆暮れ正月・ゴールデンウィークの、青函トンネル内に限定した北海道新幹線の最高速度引き上げは恒例となった

 また、沿線で行なわれる大きなイベントに合わせて、最寄り駅に臨時停車をかける事例もある。停車駅が1つ増えれば、それだけで所要時間が数分程度は増えるから、そのあとの時刻が玉突き式に繰り下がることがある。また、この記事が載るのと同じタイミングになるが、津軽鉄道が芦野公園駅構内のさくら開花に合わせて、2023年4月22~30日にかけて臨時ダイヤを設定している。

 ひところは「コロナ減便」でダイヤを見直す事例もあった。利用が激減したのに合わせて本数を減らしたわけだ。また、毎日運転の定期列車を季節列車に改めて、利用が少ない時期や曜日には運行しなくなった事例もある。先に挙げた「大雪」がそれだ。

「コロナ減便」の置き土産なのか、山形新幹線「つばさ」は「やまびこ」と併結しない単独運転列車が増えた。相棒の「やまびこ」が減ったためだ

 鉄道以外では、航空ダイヤでは多少の繰り上げ・繰り下げは日常茶飯事だ。すると、連動して空港連絡バスの時刻も変わることがある。さらに、バス会社は最近、乗務員不足に悩む事例が増えているので、それに起因するダイヤ見直しや減便がかかる事例も出ている。

では、どう対処すればよいか

 こうした状況にどう対処するか。それはやはり、「事前にスケジュールを立案してあっても、出発が近くなったら改めて確認すること」に尽きる。昔なら、最新の情報を知るためにいちいち紙の時刻表を買い直したところだが、今は幸いにもネット上で提供されている情報が多いから、そちらで確認する方法もある。

 問題は、最新の状況を確認した結果として、成り立つはずだった旅程が崩壊するケースがあり得ることだ。交通機関同士の接続がきわどいと、ほんの数分の繰り上げ、あるいは繰り下げだけで接続が成り立たなくなることがある。そうなると、スケジュールの再構築は不可避だ。現場に行ってみてから慌てるよりはマシだが。