井上孝司の「鉄道旅行のヒント」

時刻表で乗り継ぎ列車を探す際には左右を広く見る

東海道新幹線・東京駅の発車標。当然ながら、ここでは出発する順番どおりに並んでいるが、途中で追い越し・待避が多発すると順番は大きく入れ替わる

 紙の時刻表といえば「JR時刻表」と「JTB時刻表」が双璧だが、どちらも基本的なフォーマットは同じだ。つまり、路線または系統別に「列車を1列ずつ横に並べる」「駅を縦方向に並べる」という体裁である。そして、右に向かうほど時間が遅くなる。

時刻表のフォーマットは1列車1列

 さて。速達列車で出発して、途中の駅で各駅停車に乗り継ぐ場面を想定してみよう。速達列車の通過する駅が目的地になる場合、こういう場面は必ず発生する。

 例えば、東海道新幹線で東京駅から「のぞみ」に乗って西に向かい、名古屋駅で「こだま」に乗り換えて岐阜羽島駅に向かうのであれば、以下のような流れで列車を決めることになるだろうか。

・東京駅の時間帯を見ながら、最初に乗る「のぞみ」を探す
・その「のぞみ」が名古屋駅に到着する時刻を確認する
・確認した到着時刻よりもあとに名古屋駅を出る「こだま」を、時刻表の「名古屋駅」の行で探す

 先にも書いたように、時刻表のフォーマットでは「右に向かうほど時間が遅くなる」。だから、最初に乗ると決めた「のぞみ」の名古屋駅到着時刻よりも右を見ればよい……とはならない。なぜか。

東海道新幹線の東京駅に掲出されている時刻表の例。紙の時刻表と同様に、「1列車につき1列」のフォーマット
こちらは東北新幹線の東京駅に掲出されている時刻表の例。会社が違っていても、時刻表のフォーマットは基本的に同じ

抜いたり抜かれたりで順番が入り乱れ

「こだま」に乗っていれば容易に理解できるが、「こだま」は東京~名古屋間だけでも、何回も「のぞみ」や「ひかり」に追い抜かれる。追い抜かれれば、抜いた列車は抜かれた列車よりも先行する。

小田原駅で、待避している「こだま」を追い越す「のぞみ」。今のダイヤでは「のぞみ」が毎時最大12本走るから、そうなると「こだま」は停車駅ごとに待避する……どころか、一度に2本を待避することもある

 ところが時刻表のフォーマットは「1列車ごとに1列」が基本だから、途中でどれだけ追い抜かれようが、同じ列のままである。すると、次々に追い抜かれている間に「後のカラスが先になり」という事態が起きる。本稿を記している2023年3月初頭現在の時刻表を使って、具体例を見てみよう。

 東京駅を7時57分に出発する「こだま707号」は、名古屋駅に10時37分に到着する。この2時間40分の間に、あとから東京駅を出発した「のぞみ」や「ひかり」が次々に先行してしまう。だから、時刻表で「名古屋」の行を見ると、「こだま707号」の名古屋駅到着よりも早く到着する列車が右側に並んでしまうのだ。

 そこで、「こだま707号」よりあとに東京駅を出て、かつ、名古屋駅に「こだま707号」よりも早く到着する列車を、臨時列車も含めて列挙した結果が以下のものだ(カッコ内は名古屋駅の到着時刻)。なお、最後の「のぞみ213号」は「こだま707号」との直接の接続列車ということで、対象に加えた。

・のぞみ207号(9:39)
・ひかり503号(10:01)
・のぞみ 15号(9:45)
・のぞみ129号(9:49)
・のぞみ295号(9:54)
・のぞみ209号/131号(9:56)
・のぞみ297号(10:04)
・こだま709号(11:06)
・のぞみ 17号(10:09)
・ひかり635号(10:14)
・のぞみ211号(10:16)
・のぞみ133号/299号(10:22)
・のぞみ301号(10:23)
・のぞみ 83号(10:31)
・のぞみ303号(10:33)
・こだま711号(11:37)
・のぞみ213号(10:39)

 これらの列車は、紙の時刻表では東京駅を出発する順番に並んでいるから、「こだま707号」よりも右側の列になる。ところがそのあとの追い越し・待避によって順番が入れ替わり、「こだま707号」よりも早く名古屋駅に着いてしまう。また、2本の「のぞみ」の間に、それらよりも遅い時間の「ひかり」が挟まっている場面もある。

フリーソフトの「OuDiaSecondV2」を使い、上記の列車群をダイヤグラムに直したもの。黒の太線が「こだま707号」で、赤線は「のぞみ」、青線は「ひかり」。途中駅での追い越し・待避の関係がよく分かる

速達列車と各駅停車に乗り継ぐ場合の注意点

 名古屋駅で「こだま707号」にちょうど接続する「のぞみ」は、あとを追うようにして2分後に名古屋駅に着く「のぞみ213号」である。ところが、「のぞみ213号」の名古屋駅到着時刻を時刻表の該当ページで拾い出して、そこから右手を見ても、乗り換え相手の「こだま707号」は出てこない。「こだま707号」が先に東京駅を出発している関係で、はるか左手に載っているからだ。

 つまり、「のぞみ」から「こだま」に途中駅で乗り換えようと考えた場合、乗り換える駅の行で左右両方を見ないと、接続する列車を見落とす可能性が出てくる。逆に、「こだま」から「のぞみ」に乗り換える場合には、乗り換える駅の時刻を基準にして、右側だけを調べればよい。「こだま」が先行列車を追い越すことはないからだ。

 ただし、ちょうど接続のよい列車が近傍にあるとは限らず、場合によっては隣のページになってしまう可能性はある。例えば先の例で、名古屋駅に11時06分に到着する「こだま709号」から後続の「のぞみ」に乗り換える場合。先に列挙したなかには、11時06分よりあとの列車が1つもない。もっとあとの時間帯に出てくるからだ。

 到着駅を基準にして、そこから遡る形で列車を決めていく場合にも事情は似ている。例えば、「11時に岐阜羽島に着いていたい」なら、先の「こだま707号」が10時58分着だから、ちょうどよい。

 ところが、その「こだま707号」に名古屋駅で接続する下りの「のぞみ」を探すときには、名古屋駅の行で「こだま707号」左の列を見ても、接続列車は出てこない。先に列挙したとおりで、ちょうど接続する「のぞみ213号」は、はるか右手にいる。

 ここでは東海道新幹線という、かなり極端な例を取り上げた。しかし、速達列車と各駅停車が入り乱れていれば、程度の差はあれ、似たような事態になる可能性はある。「紙の時刻表で乗り換え相手を探すときには、左右両方を幅広く確認」と心得ておきたい。