荒木麻美のパリ生活

パリから南に180km、ソローニュ地方で伝統的囲い込み漁を見学

 フランス中部、パリから180kmほどのところにあるソローニュ(Sologne)に行きました。この地域は自然が豊かで、広大な森林と、大小さまざま3000ほどの池(フランス語でÉtangと言います)があります。城や伝統的な村落のほか、ジビエ料理や黒トリュフ、キャビアといった食文化が豊かな地域でもあります。ここには数年前に一度行っているのですが、そのときは伝統の囲い込み漁を見られなかったので、10月末に再訪しました。

 ソローニュで人工池を作って囲い込み漁が始まったのは中世のこと。現在では無形文化遺産として、秋から冬にかけて、いくつかの池で漁の様子を見ることができます。私が見学に行った池、Étang de la Villeに着いたのは朝の9時ごろでしたが、もう水止めの柵が抜かれ、水位がかなり下がっていました。池の周辺ではホットワインや手作りケーキ、ブーダンノワールという、豚の血を主な材料としたソーセージをパンにはさんだものなどが売られており、これらを飲んだり食べたり、地元の人たちは話に花を咲かせたりしながら、さらに水位が落ちるのを待ちます。

普段の池(左)と、柵を抜いたあとの水位がだいぶ下がった池
地元の人たちが飲み物や食べ物を売っていました

 しばらくすると漁師たちが網を持って水の中に入り、魚を囲い込んでいきます。さらにもう一つの網で陸近くまで囲いこんだら、どんどんすくっていきます。大きなバケツが、大小さまざまな魚であっという間に一杯になっていきます。

抜群のチームワークで魚を囲んで捕っていく漁師たち

 バケツに入った魚は、大きさと種類別に選別され、売られて行きます。選別作業には地元の子供たちも参加し、跳びはねる魚たちの飛ばす水しぶきに濡れながらも、慣れた様子で楽しそうに作業をしていました。

選別中の様子を見ている私も結構濡れました
選別後の魚を買うと、魚屋で買うのとは違い、中型魚以上は頭に衝撃を与えて締めてはくれるものの、あとは自分で処理をします。小さな魚を買った人たちは、持参したバケツに水と一緒に入れていました

 池にはいろいろな淡水魚がいるのですが、私が買ったのはパイクパーチという魚です。売られていた魚のなかでは一番値段が高かったのですが、地元の人が天然のパイクパーチは貴重で美味しいと熱心に勧めてくれるので、3kgほどのものを購入しました。家で不慣れながらも鱗と内臓を取り、シンプルにオーブン焼きにしましたが、臭みのない柔らかな白身で、家族にも大好評!

鱗と内臓を取るのはなかなか大変でしたが、そのかいは十分にありました
池の近くでは小さなお祭りをしていました

 漁の見学後は、そこからクルマで15分ほどのところにあるラモット=ブヴロン(Lamotte-Beuvron)という町に移動しました。タルト・タタン発祥の地ということで、一度行ってみたかったのです。

 19世紀後半にホテルで働くタタン姉妹がアップルタルトをうっかりひっくり返して焼いてしまったことでできたのがタルト・タタンです。現在も同じ場所にあるホテル・レストラン「La Maison Tatin」で元祖レシピのタルト・タタンを食べられます。実際に出されたものはごくごく普通のタルト・タタンだったので驚きはありませんでしたが、大好きなタルト・タタンを発祥の地で食べられて満足でした。

普通のタルト・タタンですが、発祥の地で味わうのはまた格別
荒木麻美

東京での出版社勤務などを経て、2003年よりパリ在住。2011年にNaturopathie(自然療法)の専門学校に入学、2015年に卒業。パリでNaturopathe(自然療法士)として働いています。Webサイトはhttp://mami.naturo.free.fr/