旅レポ
グルメ、景色、歴史をまとめて味わう山口県1泊2日の旅(その6)
海の幸に竹の家具、地元産品を活用した萩の新たな魅力
(2016/1/18 00:00)
山口県が同県の魅力を伝えるべく実施したプレスツアーのレポート。前回、前々回と、筆者の趣味もあって萩の歴史についてちょっと厚めに紹介してきた。そして、今回の舞台はというと、やはり萩市。同市には歴史や街並み以外にも面白いところがある。
最初に訪れたのは「萩しーまーと」。前回紹介した萩反射炉へのアクセスで、バス停の名前として登場したが、これは道の駅の名前だ。公募によりリクルート出身の中澤さかな氏を駅長に迎え、さまざまな取り組みを進めた結果、2015年1月には国土交通省により地方創生の拠点モデル駅の1つに指定された。
道の駅というと、駐車場やトイレ、休憩所などのドライバー向けの休憩施設のほか、“地元産品を並べたお土産屋さん”を併設していることも多いが、いずれにしても旅をする人や観光客のための機能を持たせた施設が目立つ。萩しーまーとは、“地域に対してなにをするか”という発想からスタートし、地元水産品の地産地消の拠点としての機能を重視しているところがポイントだ。地域の団体・機関とも連携し、水産品のブランド化や商品の開発、全国発信へ繋げている。
萩しーまーとの施設上の大きな特徴は、漁港の隣にあることだ。この立地を活かして、カートで運ばれた水産品を道の駅で販売している。道の駅では年間5億円程度を仕入れ、同地の水産品の買い支えをしているというが、購入する人にとっても中間マージンなしで新鮮な魚を手に入れられるメリットがある。
また、地元の人向けには、毎週金曜日に水揚げした水産品をトロ箱に入れたまま販売する朝市や、毎週第2日曜日を“お魚の日”として水産品を使った無償の試食品を提供するなどして盛り上げている。
これらのブランド化にも積極的だ。網にかかるが売れない、いわゆる“雑魚”だった「ヒメジ」や「オキヒイラギ」を、地元での呼称「金太郎」「平太郎」としてブランド化し、単価アップに繋げた。さらに、これらを使った加工商品として「OIL ROUGE」「OIL PONYFISH」といったオイル漬け商品を開発し、観光庁による「世界にも通用する究極のお土産」にも選定された。
こうして地域貢献の取り組みと、地元産品の発信、価値向上をうまくリンクさせている萩しーまーと。もちろん観光客にとっても見どころもある。よくある道の駅同様に地元産品を使ったレストランや売店があるのはもちろん、興味深いのは隣の漁港で水揚げされたばかりの水産品を対面販売していることだ。大型スーパーなどでの買い物に慣れてしまった身には、“大将”や“女将さん”と会話できる光景がどこか懐かしく思える。
観光で訪れて鮮魚売り場と言われても……と思われるかも知れないが、萩しーまーと内の海鮮料理店「がんがん」では、この鮮魚売り場で購入した魚介類を持ち込んで、お好みに調理してくれる「勝手御膳」というメニューを用意し、3種類までの魚介類を1名あたり500円で調理してくれる(料理方法によっては追加料金が必要なこともある)。例えば、魚屋さんの大将に旬の魚のお勧めの調理法を聞いて購入し、その場で新鮮なまま調理してもらうといったことができる。単に新鮮な魚介を楽しむだけではない、少し贅沢な気分を味わえるユニークなメニューだ。
“曲線美”を楽しめる竹製家具を製作する「TAKE Create Hagi」
もう1つ、萩の町でユニークな取り組みを進めている企業の紹介があった。それが竹製の家具や小物を製作、販売する「TAKE Create Hagi(タケクリエイト萩)」だ。山口県は全国有数の竹の産地で、なかでも萩市周辺は広大な竹林を有している。そこに目を付けた萩市の商工会議所が中心となって製品への展開を検討。フィンランドからの受託生産が安定したことで、TAKE Create Hagiとして事業化した。フィンランドなどの北欧には竹がなく、しなやかで軽く、抗菌性にも優れていることから注目されたそうだ。
日本で「竹」というと、ほかの木材に比べると安っぽいイメージがあり、成長の早さもあって竹林被害という言葉も耳にするほどだが、それを資源として捉え、地元の産業にしているのが面白い。通常の木材と比べた場合に同じ肉厚でより強度を高められ、さらに軽い、といった実用面でのメリットもあるそうだ。
TAKE Create Hagiは特に「曲げ加工」にこだわっており、その曲線を活かしたデザインは、木材を削ったものとはひと味違う美しさがある。萩は寒暖の差が激しく、特に寒さが厳しいことから身が詰まった竹という特性があって曲げ加工に向いているという。
その工場も見学させてもらった。竹は萩の孟宗竹を使っており、直径10cm、厚み1cm程度まで育つ6年モノが多い。これを徹底的に乾燥させ、防虫性を高め、反りなどが出ないようにするのがポイントだ。
そして、湾曲部をなくすために切り出した竹を貼り合わせてブロック化し、それをスライスしたものを使って厚さ2mmのシートを作る。このシートがいわば“竹の板”で、独自の曲げ加工を行なって製品へと作り上げていく。ここで仕入れた竹の素材化から製品化までを一貫して行なっている。
こうしたことから先のショールームで展示している製品だけでなく、オーダーメイドの注文も多い。事業化のきっかけがフィンランドにあったように海外からの評価も高く、アカデミー賞やエミー賞の椅子に使われたこともあるというほど。事業化は2006年と新しいが、今後ますます目にする機会が増えるかも知れない。
さて、3回にわたってお伝えした萩の話題は今回で最後。次回は、9月に日本ジオパークにも認定された、このツアー最後の目的地、秋吉台で自然の躍動を味わうことにする。