旅レポ

道後温泉に癒されて、お遍路体験で徳を積む。愛媛の湯・道・食の魅力を全身で楽しんできました!

 JR四国は、愛媛県の観光地や、観光列車「伊予灘ものがたり」を体験する1泊2日のプレスツアーを開催しました。今回は、後半として2日目の様子を紹介します。

人気ホテル「道後やや」に宿泊

 今回は1泊2日の日程でした。その1泊は松山での宿泊となりましたが、利用したホテルは、道後温泉に位置するJR四国系列の「道後やや」でした。

今回のツアーで宿泊した、道後温泉のホテル「道後やや」

 道後温泉は、言わずと知れた愛媛・松山の温泉です。数ある日本の温泉地のなかでも非常に歴史が古く、日本三古湯にも数えられています。夏目漱石の小説「坊ちゃん」にも登場しますし、全国的にも非常に有名な温泉となっています。

 道後ややの特徴は、一般的な温泉地のホテルとは異なり、宴会場や大浴場を備えない、宿泊に特化したホテルという点にあります。これは、道後温泉の中心施設である、道後温泉本館から徒歩数分という立地が大きな理由ですが、温泉地のホテルとしては比較的リーズナブルに宿泊できるということもあって、かなり人気のホテルとなっています。

 今回は、ダブルベッド1台のシングルタイプの部屋に宿泊しました。こちらの部屋はシャワーブースのみでしたが、道後温泉本館などに徒歩でアクセスできることから、まったく気になりませんでした。もちろん、内風呂付きで家族やグループで宿泊可能な、ツインやデラックスツインといった部屋もありますので、内風呂が必要という場合でも安心です。

今回宿泊したダブルベッド1台のシングルタイプの部屋。こぢんまりしてシンプルな作りだが、ベッドは2人でもゆったり過ごせそう
道後温泉本館へ徒歩数分ということもあって、バスタブはなくシャワーブースのみとなっている
こちらはツインルーム。シングルよりさらにゆったり過ごせそうだ
ツインルームもシャワーブースのみのシンプルな作りとなっている
デラックスツインルームはベッドルームと和室の2部屋構成で、4人まで宿泊できる
こちらはベッドルーム。モダンな作りとなっている
デラックスツインルームのバスルームにはバスタブを用意

 道後ややの大きな魅力は、やはり道後温泉へのアクセスのよさですが、そのためのサービスも充実しています。

 温泉宿に欠かせない浴衣は4色のバリエーションで、それぞれM/L/LLの3サイズを用意しています。もちろん、この浴衣を羽織って道後温泉本館へ入浴に出掛けられますが、デザインやカラーを自由に選べる点は、特に女性にとってうれしいサービスと言えます。

 また、ロビー横には「タオルバー」があります。こちらは、道後温泉本館などへ入浴に行く場合に利用できるバスタオルですが、肌触りやサイズの違うバスタオルがなんと10種類も用意されています。このバスタオルは、日本でも有数のタオルの産地である今治で製造された、いわゆる「今治タオル」で、実際に使うことで品質の高さや肌触りのよさを強く実感できます。

ロビー横には、アメニティグッズとともに、カラーの異なる4種類の浴衣を用意。好きな浴衣を選んで道後温泉本館に足を運べる
外出用のバスタオルを選べるタオルバーも用意
タオルはそれぞれ肌触りが異なるが、スタッフの寸評が書かれていて参考になる

 入浴から帰ってきたら、ロビーの「みかん蛇口」でみかんジュースが楽しめます。全国的に有名な、蛇口からみかんジュースが出てくるという愛媛の都市伝説を体現したものです。蛇口は全部で3つで、それぞれから異なるみかんジュースが出てきます。

 今回の宿泊時には、温州みかんを絞った「温州」、温州みかんとトロビタオレンジのミックス「清見」、清見とポンカンのミックス「不知火」の3種類でした。それぞれ甘さや酸味の違いがあって、どれもとても美味しく楽しめましたし、温泉に入って乾いた喉を潤すのにぴったりでした。このみかん蛇口のジュースは季節ごとに入れ替えているそうなので、泊まるたびに違う味わいが楽しめそうです。

ロビーには、蛇口からみかんジュースが出てくる「みかん蛇口」を設置
みかん蛇口は3つあり、それぞれ違うみかんジュースが出てくる。それぞれ味わいが異なっているので、全部楽しみたい

 そして、もう1つの道後ややの魅力が、朝食です。提供しているのはビュッフェ形式の朝食ですが、地元愛媛産の食材を使った料理がずらっと並びます。新鮮なサラダバーや定番のおかず、愛媛の郷土料理に加えて、愛媛県北条市の郷土料理「北條鯛めし」もありました。フルーツとして12種類のみかんが用意されているとろも、さすが愛媛といった印象です。

 また、ビュッフェ形式ではありますが、フレンチトーストやじゃこ天など、できたてを提供してくれるオーダーメニューもあります。目移りするほどの豊富なメニューで、朝から食べ過ぎてしまうこと必至です。とはいえ、これも旅の醍醐味です。私も、朝から心ゆくまで朝食を楽しみました。

ホテルのお楽しみの朝食。道後ややでは地元食材を使ったビュッフェ形式の朝食を提供している
食材はそのほとんどが地元愛媛産の食材を利用。地元ならではのメニューも多く取り揃えている
取材当日は、白いごはんだけでなく、愛媛県北条市の郷土料理「北條鯛めし」も並んでいて、朝からとても豪華な食事を楽しめた
フルーツコーナーにはみかんが12種類も並んでいた
みかんを使ったデザートあり、愛媛色満載だ
基本はビュッフェスタイルだが、テーブルでオーダーしてサーブしてくれるオーダーメニューも用意
オーダーメニューは、どれもできたてアツアツで提供される
オーダーメニューのフレンチトーストは自信作とのことで、特に人気を集めていた
豊富で目移りする料理の数々で、やっぱり食べ過ぎてしまった

ガイドと一緒にお遍路体験

 2日目は、専属のガイドさんに案内してもらいながらお遍路や町歩きが体験できる「石手寺お遍路体験」からスタートしました。

 石手寺お遍路体験は、松山の町歩き観光ツアーを提供している「松山はいく事務局」の人気観光ツアーで、道後温泉周辺を散策するとともに、四国八十八箇所霊場の1つ、第51番札所石手寺を参拝します。お遍路体験と銘打っていることもあって、参加者は白衣、輪袈裟、遍路笠をまとい、金剛杖を手にして、まさしくお遍路さんになりきれる点も魅力の1つです。

ツアー2日目は「石手寺お遍路体験」からスタート。実際にお遍路さんの装束をまとってのツアーとなる

 ツアーは、道後温泉駅前にあるからくり時計前からスタートします。スタート時間が9時ということもあって、からくり時計が動作するところも楽しめます。

 からくり時計を楽しんだら、歩いて「道後公園」へと向かいます。この道後公園は、日本百名城の1つでもある「湯築城跡」でもあります。ツアーでは、石手寺方面に向かってお堀沿いを歩いて通るだけでしたが、伊予国の守護、河野氏によって1300年代に築かれた、天守閣のないシンプルなお城だったことや、桜やツツジのスポットで松山市民の憩いの場になっていることなどが紹介されて、道後の歴史に触れられました。

 公園を抜けると住宅街を歩きます。あまり道幅に広くない道を歩いたのですが、そこで感銘したのが、地域のクルマがお遍路さんの通行を優先してくれる、という点です。四国では、お遍路さんをお接待するおもてなしの文化が根付いていますが、行き交うクルマからもおもてなしの心が伝わってきて、とても感動的でした。

 スタートから石手寺までは1.5kmほどの距離で、ツアーでは20~30分ほどかけてゆっくり歩いて行きます。その間、ガイドさんが軽妙なトークで地域の見どころ、お遍路の成り立ちや魅力などを軽妙なトークで解説してくれます。普段歩き慣れない人にはちょっとしんどい距離ではありますが、そのトークのおかげで、楽しく歩ける印象です。

ツアーは道後温泉駅前のからくり時計前からスタートする
ツアーのスタート時刻がちょうど9時ということで、実際にからくり時計も楽しめる
ツアーには専属のガイドさんがついて、名所や所縁などを軽妙なトークで解説してくれる
道後温泉駅から石手寺方面へと歩き出し、道後公園に到着
日本百名城の1つでもある「湯築城跡」の道後公園は、桜やツツジが楽しめる市民の憩いの場にもなっているそうだ
ツアーは、道後公園を通り、住宅街を抜けつつ石手寺へと歩いて行く。道中、いたるところで猫を見かけるのも楽しい
石手寺までの道中は、このような住宅街の路地を進むが、行き交うクルマも我々の通行を優先してくれるなど、お遍路さんへのおもてなしの心が伝わってくる
道中には、遍路道を示す江戸時代の道しるべなど、いろいろな見どころがある
ゆっくり30分ほどかけて石手寺に到着
石手寺でも猫ちゃんが出迎えてくれた

 石手寺は、先に紹介したように、四国八十八箇所の第51番札所で、729年に建立されました。建立当初は「安養寺」と呼ばれていましたが、892年に、河野氏に生まれた子供の手から「衛門三郎再来」と書かれた石が現われたという、四国遍路の開祖と言われる衛門三郎にまつわる説話をもとに「石手寺」に改名したそうです。

 このツアーはお遍路体験ツアーですから、もちろん実際のお遍路と同じ作法で石手寺を参拝します。手水場での清め方や、本堂、大師堂での参拝方法なども教えてもらえます。通常のお遍路では、納め札を収め、般若心経、ご本尊の真言、ご宝号などを唱えますが、ツアーでは時間が限られることもあって、収め札を収め、真言を3回唱える短めの参拝でした。もちろんそれでも、お遍路体験としては十分実感できました。

 お遍路として石手寺を参拝するという体験は貴重でしたが、石手寺にはそれ以外にもたくさんの見どころがあります。例えは、国宝の仁王門、重要文化財の本堂、護摩堂、三重塔、鐘楼、訶梨帝母天堂など、多くの文化財です。その荘厳な姿を見るだけでも、訪れる価値があると感じます。また、三重塔には「お砂撫で」というスポットもあります。四国八十八箇所霊場全札所の土を入れた袋が置かれていて、その袋をなでるだけで八十八箇所を巡ったのと同じ徳を積める、とされています。

石手寺の見どころ、その1、国宝に指定されている「仁王門」。さすが国宝、その威厳のある姿に圧倒される
こちらは重要文化財の「三重塔」。後方の緑とのコントラストがまた格別な印象だ
こちらも重要文化財の「護摩堂」。本堂も含め、石手寺には文化財が多くある
まずはじめに、手水場で手と口を清めて境内へと進む
参拝者は、鐘楼堂の「仕合せの鐘」を突くことが可能だ
最初に本堂で参拝
通常のお遍路と同じように、収め札を収める
ツアーは時間の関係で真言を3回唱える短めの参拝だった
同じ要領で太子堂も参拝
石手寺の見どころの1つ「お砂撫で」
袋には四国八十八箇所霊場全札所の土が入れられ、これをなでるだけで八十八箇所を巡ったのと同じ徳を積める、とされている

 そして、もう1つ石手寺ならではの見どころがあります。それがマントラ洞窟です。

 全長200mほどの洞窟には、多くの仏像やお地蔵様が祀られています。薄暗い内部は恐いということはありませんが、かなり独特な雰囲気で、不思議な世界に迷い込んだような感覚です。こちらも石手寺の参拝時には見逃せないスポットと感じました。

石手寺のもう1つの見どころ、マントラ洞窟
マントラ洞窟内部は薄暗く、多くの仏像やお地蔵様が祀られた独特な雰囲気だ
マントラ洞窟出口。ほかにはない貴重な体験ができるスポットだ

 石手寺お遍路体験は、このあと出発した道後温泉駅前のからくり時計前まで戻って終了となります。全行程約1時間半のツアーですが、道後の町歩きとお遍路体験を同時に楽しめるという点はとても貴重でしたし、なにより専属のガイドさんの軽妙な解説を聞きながら巡れますので、お勧めです。ツアーは2025年3月31日まで、2名以上の申し込みでほぼ毎日催行しています(3日前までの申し込み必須)。詳しくは、松山はいく事務局のWebサイトを参照してください。

7月11日に全館営業を再開する「道後温泉本館」

 続いて、道後温泉本館を見学しました。

 道後温泉本館は、日本最古の温泉の1つとして有名な道後温泉の最初の源泉の上に建てられています。現在その源泉は稼働していないそうですが、道後温泉全体では全部で29本の源泉が開発されてきて、現在ではそのうち18本の源泉から湧く温泉をブレンドして温泉施設に送っているのだそうです。道後温泉本館もそのうちの1つの温泉施設ですが、今でも無加水無加温の源泉を掛け流しで利用している、という点が大きな特徴となっています。

 道後温泉本館は18904年に建てられたものですが、老朽化が進んだことから、2019年より改修工事が行なわれていました。その改修工事のため、本館は大きな屋根と幕で覆われていました。しかしその工事も大詰めとなり、ツアーが開催された4月末には一部外構を残して改修工事がほぼ完了し、屋根や幕が取り払われた状態でした。そして7月11日に本館の全面営業再開が予定されています。

 ツアーの段階では、まだ工事が完了していなかったこともあって、内部の見学はできませんでしたが、皇族専用浴室の玄関となっている「御成門」をはじめ、その荘厳な姿は外から十分に堪能できました。今回のツアーの段階では、改修工事は完了していませんでしたが、7月11日の全館営業再開後に再度訪れてみたいと強く感じました。

道後温泉本館。2019年から行なわれてきた改修工事も完了し、7月11日より全面営業再開される予定
こちらは、2023年10月に訪れたときの写真。このときはまだ本館は屋根と壁で覆われていた
工事の壁にはアートが施されていて、これはこれで趣があった
とはいえ、やはり屋根や壁がない方が本来の荘厳さが感じられてとても印象深い
全面営業再開後は、2階や3階の休憩スペースの利用も再開される
本館の最も高い「三層楼」の屋根の上には白鷺が飾られている

 ところで、道後温泉本館には、三層楼と呼ばれる最も高い屋根の上や本館を囲む柵の欄干など、いたるところに白鷺が飾られています。これは、道後温泉の白鷺伝説によるものです。その昔、脚にケガをした白鷺が温泉を見つけ、その温泉に毎日のように脚を浸けていたら、ケガが全快して元気よく飛び去ったのだそうです。その温泉が道後温泉だという伝説から、道後温泉には白鷺が欠かせないのです。

本館周囲の柵の欄干にも白鷺が。これは道後温泉の白鷺伝説をモチーフとしたものだ
本館ではこのようにいたるところで白鷺の装飾が見られるので、探してみるのも楽しそうだ

本館の味わいを活かしたモダンな温泉施設「道後温泉別館 飛鳥乃湯泉」

 今回のツアーでは道後温泉本館は見学できませんでしたが、道後温泉別館の「飛鳥乃湯泉(あすかのゆ)」は見学できました。

 飛鳥乃湯泉は、本館、1953年に作られた「椿の湯」に続く、第3の道後温泉の施設です。オープンは2017年9月と、比較的新しい施設です。道後温泉本館は2019年より改修工事が始まりましたが、その間は本館の2階と3階の休憩スペースが使えなくなるということで、全国から訪れるお客さまを、本館同様におもてなしできるようにと飛鳥乃湯泉が作られたそうです。実際、飛鳥乃湯泉には、本館の伝統を受け継いで、2階に60畳の大広間、3階に個室の休憩スペースが用意されています。

本館、1953年に作られた「椿の湯」に続く、第3の道後温泉の施設「道後温泉別館 飛鳥乃湯泉」
夜はこのようにライトアップされ、また違った印象となる(2023年10月撮影)
取材時点では、入り口前の広場床に、蜷川実花氏の写真が散りばめられていたが、こちらは本館の営業再開となる7月11日までとなるそうだ

 この飛鳥乃湯泉は、いろいろなこだわりが詰まっています。まず、木材や石などすべて愛媛県産の材料を使っているそうです。また、入り口を入ってロビーの天井には、神社仏閣の屋根の形を摸したゼオライト和紙の飾りがありますが、ここが神聖な場所への入り口で、身を清めるイメージを込めたものだそうです。2階に続く階段の壁面は、松山城の再建などにも用いられた伝統の和釘で打ち込んだ道後温泉のシンボルマークがかたどられています。このほか、風呂場では和歌の世界観を表現したプロジェクションマッピングが行なわれているそうです。

ロビーの天井には、神聖な場所への入り口で、身を清めるイメージを込めた神社仏閣の屋根の形を摸したゼオライト和紙の装飾があり、雰囲気を醸し出している
2階に続く階段の壁面は、和釘で打ち込んだ道後温泉のシンボルマークがかたどられている

 2階の大広間は、道後温泉の伝統を引き継いでいる場所です。こちらでは湯上がりにお茶をいただいたりしてくつろげます。こちらにも、天井や照明に、椿などのデザインが施された、大洲市の和紙と金属箔を組み合わせたギルディング和紙による装飾が施されていて、とても落ち着いた印象の広間となっています。そして、この大広間を利用する人は、BEAMSがデザインした浴衣が着用できるそうです。

2階の60畳の大広間
大広間ではお茶のサービスなどもあって、湯上がりにゆったりとくつろげる
天井には大洲市の和紙と金属箔を組み合わせたギルディング和紙による装飾が施され、落ち着いた雰囲気だ
大広間の利用者は、BEAMSデザインの浴衣を着用できる
縁側に出て外を眺めながら涼むことも可能だ

 そして、2階に用意されている「特別浴室」も見学できました。

 この特別浴室は、本館にある皇族専用浴室を再現したもので、完全予約制、1日8組限定の、文字どおり特別な浴室となっています。1組が利用するごとに湯を捨てて入れ替ているそうで、その湯量は1組あたり約5トンと、非常に贅沢な浴室となっています。

 特別浴室の入り口には、本館の御成門を忠実に再現。利用客は、その門をくぐって特別浴室へと入っていくことになります。

 今回見学したのは、2室ある特別浴室のうちの一方でしたが、そちらは本館の皇族専用浴室にはない雅な装飾が施されているとのことでした。浴場は、とても大きな石造りで、壁や天井は神社仏閣を彷彿とさせる雅な創りとなっています。隣接の休憩室も広くて、確かに特別という名前にふさわしいとても豪華な雰囲気です。

 今回は見学だけで、実際に特別浴室で入浴はできませんでしたが、これはいつか体験してみたいと強く感じました。

本館の皇族専用浴室を再現した「特別浴室」。完全予約制で1日8組限定の特別な浴室で、2室ある
入り口は、本館の御成門を忠実に再現している
こちらが本館の御成門。本館の御成門は皇族しか通れないが、飛鳥乃湯泉の特別浴室のレプリカは誰でも通れる
こちらが特別浴室。本館の皇族専用浴室を再現しながら、よりモダンな装飾を施しているという
天井や壁に神社仏閣を彷彿とさせる雅な創りを施すことで、特別感がより高められている
休憩室も広々しており、時間を忘れてくつろげそうだ

道後温泉の源泉施設

 先ほど、道後温泉では18本の源泉から湧く温泉をブレンドして温泉施設に送っている、と紹介しました。その、源泉をブレンドして温泉施設に送る施設のことを「分湯場」と言います。現在道後温泉には4か所の分湯場から温泉施設に温泉が送られているそうですが、そのうちの1つ「道後温泉第4分湯場」は道後温泉駅のすぐそばにあって、誰でも自由に見学できます。

 第4分湯場には、敷地内にある4本と、近くにある2本、合計6本の源泉から温泉を引きこんでブレンドし、周辺の温泉施設へと送っています。分湯場内には、実際に6本の源泉から温泉が引きこまれてブレンドしている様子を間近に見られます。

 また、建物の入り口横には、組み上げた源泉に実際に触れられる「手湯」も用意されています。実際に手湯で源泉に触れてみましたが、触れられないほど熱いわけではないですが、結構な温度でした。道後温泉の源泉を実際に体感できるという意味でも、道後温泉に訪れた際にはぜひとも訪れるべき場所と言えます。

道後温泉駅のそばにある「道後温泉第4分湯場」。ここで源泉がブレンドされ、温泉施設に送られている
道後温泉第4分湯場の敷地内には4つの源泉があり、道後温泉第4分湯場ではさらに近くの2つの源泉を加えた6本の源泉をブレンドしている
施設内では、源泉から湧き出す温泉をブレンドしている様子が見られる
施設横には、源泉に触れられる「手湯」がある。源泉をそのまま体感できる貴重な施設だ

宇和島式の鯛飯に舌つづみ

 お遍路体験や道後温泉を見学して、ちょうどお昼時となりましたので、昼食へと移動することになりました。今回の昼食も、愛媛の郷土料理をいただくことになっています。

 おジャマしたのは、松山の中心的な繁華街、大街道に位置している「かどや 大街道店」です。

昼食は、大街道に位置している「かどや 大街道店」でいただいた

 かどやは、愛媛県の東に位置する宇和島市に本店を構え、宇和島の郷土料理を提供している料理店です。そして、かどやが提供している料理のなかでも、特に名物となっているのが「鯛めし」です。

 初日の昼ご飯では、松山式の鯛飯をいただきましたが、かどやが提供しているのは、宇和島式の鯛めしです。

 愛媛の各地で名物となっている鯛めしは、実は地域によってかなり違いが見られます。松山を中心に愛媛の中央から東側の地域の鯛めしは、焼いた鯛を入れて昆布出汁でご飯を炊いた、炊き込みタイプの鯛めしです。

 それに対して、宇和島を中心とした愛媛の南側の地域の鯛めしは、鯛のお刺身を、生卵の入っただし汁にくぐらせてアツアツのご飯に盛り、その上からだし汁をかけていただくスタイルです。同じ鯛めしといっても、まったく違うスタイルで提供されるというのは、非常に興味深いところです。もちろん、双方の味の違いも気になるところです。

かどやは宇和島市に本店を構えており、宇和島式の鯛めしを提供することで有名
宇和島式の鯛めしは、生卵を説いただし汁にくぐらせた鯛の刺身をご飯に盛り、だし汁をかけていただくスタイル

 初日にいただいた松山式の鯛めしは、香ばしくホクホクとした鯛の身の味わいと、鯛の風味が染み渡ったご飯のいい香りの双方で鯛の風味を同時に楽しめる点が大きな魅力と感じました。

 それに対して、かどやでいただいた宇和島式の鯛めしは、鯛の身が刺身ということもあって、歯応えのある鯛の食感がまず最初に強く感じられます。松山式に比べると鯛の香りはあまり感じられませんが、コリコリとした鯛の刺身の食感と、脂の乗った鯛の刺身独特の甘みの強い味わいでダイレクトに楽しむといった印象です。

 そこに、卵が加わってコクが増した、やや甘みの強いタレがガツンと追ってきます。醤油と違って角が少なく、鯛の風味を増すとともに、優しく包み込んでくれるといった感じです。しかもこのタレがご飯との相性も抜群です。

 見た目や味は、松山式とはまったく異なりますが、どちらも甲乙付けがたいほどの味わいです。愛媛の鯛めしの奥深さに脱帽です。

 そのほか、添え物の愛媛名物のじゃこ天やそぼろなども、鯛めしの味わいをさらに高めてくれます。気が付いたら、アッという間に平らげてしまっていたほどで、とにかく大満足の昼食でした。

こちらが鯛めしとしていただく鯛の刺身。新鮮で歯応えがあり、脂が乗って甘みの強い味わいだ
こちらが、生卵の入っただし汁
箸で生卵を溶きほぐして準備する
続いて鯛の刺身をだし汁にくぐらせて、ご飯に盛り付ける
鯛の刺身を盛り付けたら、その上からだし汁を注いで完成
松山式の鯛めしとはまったく見た目、味わいとも異なるが、宇和島式はコリコリとした鯛の刺身の食感を直接的に味わえ、これもとても美味しい
食べ方のガイドも添えられるので、迷わず楽しめる
そぼろやじゃこ天、煮付けなどの添え物も、鯛めしの味わいを高めてくれる

高松に移動して、最新施設「TAKAMATSU ORNE(高松オルネ)」を見学

 かどやでの昼食後、ツアー一行は愛媛県を離れ、一路香川県の高松駅へと移動しました。その目的は、JR高松駅に2024年3月22日にオープンした商業施設「TAKAMATSU ORNE(高松オルネ)」の見学です。

 TAKAMATSU ORNEは、「ひと・もの・まちをつなぎ、新しい出会いを皆さまへ。」をコンセプトに、旅行者だけでなく地元の人もターゲットとして、香川はもちろん四国の魅力を感じ取ってもらい、新たな発見や旅立ちの場にしてもらいたい、という想いを込めた商業施設となっています。4階建ての建物は、瀬戸内海をイメージして、高松の海と陸のつながりを表現していているそうです。

JR高松駅に2024年3月22日にオープンした商業施設「TAKAMATSU ORNE(高松オルネ)」(2024年3月に撮影)
建物は、瀬戸内海をイメージし、高松の海と陸のつながりを表現していている

 館内は、1階がお土産物や食品の販売店、フードコートなどが並びます。なかでも「シコクグルメマルシェ」では、四国で厳選したお土産物などが数多く並んでいますので、旅行者の利用はもちろんですが、地元の人も、これまで触れたことのなかった四国の名産品に触れられるという意味で、普段使いでも非常に活躍しそうな印象です。

1階はお土産物や食品の販売店、フードコートなどが並んでいる
シコクグルメマルシェには、四国で厳選したお土産物などが数多く並んでいる
バイヤーが見つけてきた食品や雑貨などの銘品がたくさん並んでおり、旅行客はもちろん地元民も新しい発見ができる
フードコートでは、地元香川の有名店舗を中心とした食事や軽食が楽しめる

 2階と3階は、お土産物ではなくて、普段使いのお店が並びます。そのなかで3階の「TSUTAYA BOOKSTORE TAKAMATSU ORNE」には、中国四国エリアで初出店となった、シェアラウンジを併設。時間貸しで利用できるシェアラウンジですが、60分880円でフリードリンクやフリースナックも付いてきます。また、アルコール類もフリーとなるプランもありますので、ちょっとした休憩などにも便利に利用できそうです。

3階の「TSUTAYA BOOKSTORE TAKAMATSU ORNE」には中四国エリア初出店のシェアラウンジを併設
シェアオフィスとしての利用はもちろん、フリードリンク・フリースナックが付くので休憩スペースとしても重宝する
プランによってはアルコールも楽しめるので、グループで軽く飲みたいときにも便利そうだ

 そして4階はイベントスペースとなります。屋外には芝生が敷き詰められ、イベント開催や、子供連れで休憩する場所として利用できる「ORNE PARK」を用意。また、小さな子供に最適なのが「高松アンパンマン列車ひろば」です。こちらには、アンパンマンなどの人気キャラクターと一緒に座れるベンチや、四国の特急車両として人気のアンパンマン列車を模した列車ベンチなどが置かれていて、いつも子供たちでにぎわうスペースとなっています。

4階には、芝生を敷き詰めたイベントスペース「ORNE PARK」がある。イベントがないときには、休憩スペースとしても利用可能だ
子供たちに大人気のアンパンマンをモチーフとした「アンパンマン列車ひろば」
アンパンマン列車ひろばからは、高松駅を出入りする列車を眺めて楽しめる
高松沖の瀬戸内海も一望できる

 実は筆者は、この5月まで高松市在住でしたので、このTAKAMATSU ORNEにもオープン以来かなりの頻度で通っていました。特に1階のシコクグルメマルシェは、筆者も知らなかった四国の銘品がたくさん置かれていますので、日々新しい発見ができています。これから高松に訪れたときには、このTAKAMATSU ORNEにもぜひとも足を運んでもらって、四国や香川の新しい魅力に触れてもらいたいと思います。

最後は夕刻の「快速マリンライナー」グリーン車で瀬戸内海の絶景を堪能

 今回のツアーの最後は、高松と岡山を結ぶ「快速マリンライナー」乗車です。

 快速マリンライナーは、1988年の瀬戸大橋開通より運転を開始した、岡山と高松間を結ぶJR四国のなかでも特にに重要な列車の1つです。また、今年2024年春に瀬戸大橋線の利用客が3億人を突破したことを記念して、12月31日までの期間限定「瀬戸大橋線ご利用 3億人キャンペーン」を実施中で、快速マリンライナーには「3億人ロゴ」のヘッドマークを掲出しています。

 現在運行している快速マリンライナーは、1号車に2階建て車両を採用した5000系電車を利用しています。そして、1号車の2階はグリーン車となっていて、今回のツアーの最後は、その快速マリンライナーのグリーン車に乗って、瀬戸大橋から夕日に輝く瀬戸内海を堪能する、という趣向でした。

高松と岡山を結ぶ、快速マリンライナー。現在は、1号車に2階建て車両を採用した5000系電車を利用
瀬戸大橋線の利用客が3億人を突破したことを記念し、「3億人ロゴ」のヘッドマークを掲出中
グリーン車の車内の様子

 乗車したのは、高松駅を18時10分に出発する、快速マリンライナー54号でした。当日の高松の日の入りの時刻は18時44分。瀬戸大橋を渡りきったあとに日没を迎える、なかなかのグッドタイミングではありました。ただ当日は曇天だったので、そこが少々気がかりではありました。

 高松駅を出発してまず感じたのは、グリーン車の見晴らしのよさです。筆者は快速マリンライナーで2階建て車両のグリーン車に乗車するのはこれが初めてでしたが、高さがあることで障害物にジャマされず景色を楽しめることもあって、一般車両にはない開放感が味わえました。

 そして瀬戸大橋にさしかかりました。気になる天候は、まだ雲が広がる状況ではありましたが、ちょうど西の空は雲に隙間ができ、そこからオレンジ色の夕日が差し込むという、これはこれで風情が感じられるものとなりました。晴れ渡る空と夕日とは異なる雰囲気ではありましたが、それでもオレンジ色に染まる空と、その光が反射してキラキラと輝く瀬戸内海の水面、そして逆光の中浮かび上がる島々のコントラストは、とても美しく、感動ものでした。筆者自身、快速マリンライナーは幾度となく乗車していますが、2階建て車両のグリーン車からの眺めは、これまでとは違った印象で、とてもいい体験となりました。

当日は曇天だったが、瀬戸大橋にさしかかる頃には、西の空に雲の隙間ができ、夕日が差し込むようになってきた
瀬戸大橋からの眺め。もう少し晴れているとよかったが、これでも夕日と水面のきらめき、島々のコントラストを十分に楽しめた
途中の与島付近の風景。雲間から夕日が差し込んで印象的な雰囲気だった
次は、よく晴れた日の夕方の景色も楽しんでみたい

 今回のツアーでは、愛媛県を中心に、伊予灘ものがたりに乗車したり、各地の名物を堪能してきました。香川県在住の筆者ではありますが、これまでまだ体験できていなかったことや場所に訪れることができて、四国、愛媛の魅力を再認識できました。皆さんも、ぜひ四国に足を運んで、その魅力を実際に体感してもらいたいと思います。

空室・料金チェック
平澤寿康

うどん県生まれ。僚誌PC Watchなど、IT系の執筆を中心に活動。旅&乗りもの&おいしいもの好きで、特に旅先でおいしいものを食べるのに目がない。ただし、うどんにはかなりうるさい。