旅レポ
JR四国「志国土佐 時代(トキ)の夜明けのものがたり」で高知・夜須・安芸・奈半利の列車旅。目と耳と舌で土佐を味わう!
2022年12月9日 06:00
自然のなかで植物に出会う喜びを体感、県立牧野植物園へ
高知が生んだ「日本の植物分類学の父」牧野富太郎の業績を顕彰するため、高知市の五台山に開園した約8ヘクタールの園地を要する「高知県立牧野植物園」から2日目がスタート。
植物に関する教育普及と研究の拠点となる「牧野富太郎記念館」も備えており、植物分類学の研究に没頭した牧野富太郎の遺志をいまも引き継いでいる。展示館内にある4K映像のシアターの映像の美しさは一見の価値あり。
また、牧野富太郎記念館を設計したのは建築家の内藤廣氏で、木のぬくもりを感じるだけでなく、景観に配慮した環境保全型建築の方向性を示している優れた建築物としての評価も高い。曲線を取り入れた美も必見だ。実はJR四国の高知駅の代名詞ともいえる木造の大屋根も、この内藤廣氏の設計ということにも注目したい。
いよいよクライマックス。「志国土佐 時代(トキ)の夜明けのものがたり 煌海の抄」に乗車!
幕末の志士たちが夢見た日本の夜明けになぞらえて、蒸気機関車やロケットエンジンデザインのダイナミズムを新たな旅への高揚感のモチーフとして、明治期の装飾表現と融合した「空」想ファンタジーデザインが特徴的な、JR四国が誇る観光列車「志国土佐 時代(トキ)の夜明けのものがたり 煌海の抄」に乗った。風光明媚な太平洋の絶景を眺めつつ自然豊かな環境に恵まれた地域を通る、土佐くろしお鉄道のごめん・なはり線区間を一部期間の金曜にだけ走行する。
昼の12時ちょうどに高知駅を出発した。志国土佐 時代の夜明けのものがたり 煌海の抄は、1号車「KUROFUNE」と2号車「SORAFUNE」の2両編成。
1号車の「KUROFUNE」は果てなき青空のもと、仲間たちと新たな時代への「志」を語りながら大海をゆく蒸気船をモチーフに、文明開花期から萌芽する19世紀末芸術を想起させるデザインがあしらわれている。BOX席と団らんシートを合わせて定員は28名。
2号車の「SORAFUNE」は、大空のその先、大気圏を突き抜けた宇宙空間までにもつながる未来への「夢」をコンセプトに、レトロSF小説で描かれる空想科学上の宇宙船をイメージしており、海側席と山側席を合わせて定員は19名となっている。
さて、1号車のBOX席の自席につくと、すでに豪華な御膳が用意されていた。10月~12月の毎週金曜の期間限定で出される料理「ひがしこうちの彩り御膳」だ。高知の老舗旅館「城西館」の和食 調理長が、東高知の旬の食材を一つ一つ吟味して、彩り鮮やかに仕上がっている。見た目の美しさだけではなく、超美味。写真に撮れば「映える」料理でもあり、気分も楽しくなること間違いない。
御膳を食べ終わるころの12時34分、夜須駅に到着した。ここでなんと13時11分まで停車し、自由に外に出ることができる。駅の目の前には「道の駅 やす」があり大海原の太平洋を望む絶景ポイントでもある。特産物の買い物も楽しむことができた。
再び出発して次に目指すは安芸駅。三菱財閥の創始者である岩崎彌太郎生誕の地であり、プロ野球球団の阪神タイガースのキャンプ地として有名だ。安芸駅に13時40分に到着し、14時12分の出発まで駅周辺の散策できる。駅には「安芸駅ぢばさん市場」が隣接しており、カツオなどの海産物や地元野菜などが豊富に売られている。また、高知県はゆずの生産量が日本一ということで、ゆずシャーベットを食べてみた。爽やかな口どけが汗ばむぐらいの陽気にちょうどよかった。
そして14時35分、ついに終点の奈半利駅に到着し、「志国土佐 時代の夜明けのものがたり 煌海の抄」の列車旅が終わった。
折り返し15時18分発は「志国土佐 時代の夜明けのものがたり 雄飛の抄」として高知駅へ向かう。ちなみに高知駅から西へ向かう高知~土佐久礼・窪川は「立志の抄」、折り返しの土佐久礼・窪川~高知は「開花の抄」として運行している。
「こころゆくまで 土佐を味わう」をコンセプトに鉄道の旅の楽しさ、そして高知の魅力を体感できる貴重なときを提供してくれるJR四国。その想いは、まさに強い志を感じるほどだ。旅は一期一会。沿線からも多くの地元の方々が手を振ってくれる心温まるおもてなしを受け、感動すら覚えた。