旅レポ
霧多布湿原で早朝のカヌー体験してみた! 北海道浜中町で楽しむ舟・馬・自転車の旅
2021年10月15日 07:00
※旅の初日はこちら。
オーナーのファンも多いペンション
北海道東部の太平洋側に位置する酪農と漁業のまち、浜中町。その中央に広がるのが霧多布(きりたっぷ)湿原です。広さは約3000m 2 、日本の三大湿原にも数えられ、3月に新しく指定された「厚岸霧多布昆布森国定公園」では、別寒辺牛湿原と並んで重要な景観要素となっています。
春から秋にかけてはさまざまな種類の花が彩り、“花の湿原”との別名も。特に6月末のワタスゲ、7月のエゾカンゾウのシーズンには多くの観光客が訪れます。そんな霧多布湿原のすぐ脇に建つ「ペンション・ポーチ」をご紹介します。
オーナーの瓜田勝也さんは地元浜中町の出身。家業の漁師をしていましたが、20代のころ、東京から移住してきたとある男性との出会いで人生が変わったといいます。それまでは湿原を見ても「当たり前過ぎてなんとも思わなかった」そうですが、その男性は「目の前にあるのはここの宝物ですよ」と、瓜田さんに湿原の素晴らしさを伝えました。
移住者からの言葉で、当たり前にあった湿原の大切さに気づいた瓜田さんは、その後、霧多布湿原のよさを地域の人たちに伝える「かわら版」作りや、湿原を取り囲む約1200ヘクタールの民有地を保全のために買い取る活動をスタートします。地道な努力はついに認定NPO法人霧多布湿原ナショナルトラストが立ち上げるまでに。その後、漁師を辞めペンション・ポーチをオープンしたのが1986年のこと。今では日本全国からゲストが訪れるようになりました。
現在、瓜田さんは「湿原を身近に感じてほしい」と、霧多布湿原カヌーツアーや無人島探検ツアーなどオプショナルツアーを開催しています。それらは以前ヨーロッパを訪れた際に参加した“ありのままの自然を楽しむ”エコツアーがベースになっているといいます。そんな瓜田さんが営むペンション・ポーチの客室にテレビはありません。その代わりに、季節ごとに咲く花、湿原を訪れる野鳥の姿を見ることができる窓があります。
毎晩、夕食後に30分ほどのスライド上映会が開催されます。浜中町の紹介や霧多布湿原の保全状況、ペンション・ポーチの歩みや80年代の若かりしころの瓜田さんの写真も登場するなど、興味深い内容。夜のひとときはゲスト同士の語らいの場にもなっているようです。
静寂な空気のなかで早朝の湿原カヌー体験
今回の浜中町観光のハイライトともいえるアクティビティが、霧多布湿原でのカヌー体験です。もちろん参加したのはペンション・ポーチのツアー。予定では10時スタートだったのですが、水位がちょうど干潮時と重なってしまうため、急きょ朝6時スタートに変更。おかげで美しい朝焼けと、霧が漂う幻想的な湿原を見ることができました。
カヌーのスタート地点はペンション・ポーチからクルマで5分ほどのところにあるMGロード駐車場です。「MGロード」というのは霧多布湿原を南北に貫く約2kmの道で、左右に湿原を見ることができる絶景ロード。日本語に直訳すると「湿原」を意味する「Marshy Grassland」の頭文字をとって名付けられています。
タンチョウの繁殖時期を外した6月~10月に開催しているこのカヌー体験。料金はペンション・ポーチの宿泊者が6600円、宿泊者以外は7700円となっています。霧多布湿原を知り尽くしたガイド瓜田さんから、野鳥や植物などのいろいろな話を聞くことができますよ。
ペンション・ポーチのすぐ隣には、霧多布湿原ナショナルトラストが運営する「やちぼうずカフェ」があります。残念ながら緊急事態宣言に伴う臨時休業で中に入ることはできませんでしたが、抜群のロケーションで休憩できるスポット。湿原のなかには、気軽に入って親しめるよう木道が整備されています。
外には開放的なテラスもあって、ここでノートPCを広げてワーケーションする人もいるのだとか。霧多布湿原を背景にオンライン会議なんていかが?
霧多布湿原の情報発信地、霧多布湿原センターは必訪! 展望カフェも
浜中町に来たら、最初に行くべき場所が「霧多布湿原センター」かもしれません。旬の自然情報がゲットできるほか、霧多布湿原のなりたちや湿原に暮らす動物たちの生態などが学べるビジターセンターでもあります。ミュージアムショップでは浜中町特産のお土産なども置いてありますよ。
2階はさらに眺望のよい展望ホールになっていて、こちらにはカフェも併設。浜中町の食材を使った軽食がいただけます。タカナシ乳業の牛乳とアイスクリームだけで作ったという濃厚な「HAMANAKAシェイク」が人気とのこと。
この日は丘の下にある一周500mの「やちぼうず木道」をガイドさんと一緒に散策しました。青紫色のきれいな花が猛毒のトリカブトだということや、やちぼうずの正体(湿原に自生するスゲ植物が株状に生えて、冬の凍結で株ごと丸く持ち上げられたもの)など、小一時間のガイドウォークでしたが、湿原への理解が深まりました。
北太平洋シーサイドライン乗馬クラブで非日常を体験! 馬との触れあいが温かい
浜中町では乗馬も体験できます。向かったのは町の中心部から根室方面に20kmほどのところにある「北太平洋シーサイドライン乗馬クラブ」。今回は「ビーチトレッキング体験コース」(5500円)に挑戦しました。
受付が済んだら、乗馬キャップとブーツを受け取ります(料金に含まれます)。馬の乗り方、降り方、右・左の指示の仕方などのレクチャーを受けて、運動場で少し慣らしたら、いよいよ浜辺にGo! 波打ち際を乗馬するなんて初めての体験でドキドキしましたが、とっても気持ちよかったです。
あとで安藤さんに聞くと、馬たちは基本的に脚が汚れる(濡れる)のを嫌うので、意識して波打ち際から離れないように手綱で指示するのがコツなのだとか。「馬は生きものです。そのぬくもりを感じながら乗馬を楽しんでみてください」というアドバイスどおり、太ももから伝わる馬のぬくもりが心に沁みて、目頭がじ~んと熱くなるほど! おおげさかもしれませんが、コロナ禍で人と人の接触が減ってしまった昨今、今回の馬との触れあいは感動的ですらありました。浜辺の乗馬、本当にお勧めです。
今回のビーチコースのほかに、放牧場の丘を巡る「丘のコース」(7500円)も。こちらは所要時間約1時間で、丘から太平洋を見下ろしながら乗馬を楽しめます。春には生まれたばかりの仔馬にも会えるそうですよ。冬期間(1~3月)は中止になる場合があるので、くれぐれも事前確認を。
e-bikeをモニター体験! 浜中町をスローに楽しむ
今回のプレスツアーでは浜中町観光協会から特別に新しいe-bike(スポーツ用電動アシスト自転車)をお借りして、1~2時間ほどサイクリングを楽しみました。
公共交通機関が整っているとはいえないエリアなので、クルマ以外の選択肢での観光ができるようになるのは朗報です。このe-bikeを使って霧多布岬やアゼチの岬をぐるりと巡れば、また違った目線での楽しみ方ができるはず! 最新のe-bikeのおかげで、少しでこぼこした道も安定して走ることができました。
北海道らしい旬の料理を堪能、旅館くりもと
最後は、今回の滞在で泊まったもう一軒のお宿をご紹介します。町中心部の便利な場所にある「旅館くりもと」は、全15室を備える浜中町で一番収容人数の多い老舗旅館。和室と洋室があり、私は洋室のシングルルームを利用しました。
旅館くりもとは、1泊2食付きで1万4300円~。素泊まりプランもありますが、夕朝食付きが断然オススメ! 北海道のお米「ゆめぴりか」がすすむ、美味しい旬の料理が盛りだくさんです。鮭時鮭(ときしらず)のあんかけや、イカゴロ、ミンク鯨のお造り、紅鮭の酢漬けなど、北海道らしい“ザ・酒の肴”のオンパレードでした。
以上、2回にわたってお伝えした北海道浜中町プレスツアーのリポートでした。道東への旅を計画してみようと思っている方、ぜひ浜中町を訪れて、とっておきの体験をしてみてくださいね。