旅レポ
ラッコに逢える漁業と酪農の町・北海道浜中町に行ってみた。海と陸の旬の食材を、食べて・飲んで・作って
2021年10月8日 08:00
厚岸霧多布昆布森国定公園って?
2021年3月末に、国内58か所目の国定公園に指定された「厚岸霧多布昆布森国定公園」をご存じでしょうか。
読み方は「あっけし きりたっぷ こんぶもり こくていこうえん」。北海道東部の太平洋側に位置し、総面積は約4万1000ヘクタール。横浜市ほどの広さで、釧路町、厚岸町、浜中町、標茶町の4町にまたがっています。今回私は、そのうちの浜中町が主催する2泊3日のプレスツアーに参加してきました。
大切に守られている湿原と豊かな海に囲まれた道東の町・浜中町の魅力を、2回にわたってご紹介します。
道東の玄関口・たんちょう釧路空港からレンタカーを走らせること約1時間半で浜中町管内に入りました。北海道の最東端へと続く北太平洋シーサイドラインは、北海道らしいダイナミックな風景が広がる屈指のドライブルート。ライダーの皆さんにも人気なのがうなずけます。まだまだ蒸し暑かった東京と違って、道東の空気はすでに秋! カラッとしていて過ごしやすかったです。
途中立ち寄った藻散布沼は、ジブリ映画「思い出のマーニー」の風景舞台となった場所と言われているとかいないとか。(確かに北海道が舞台の作品でしたわね~)と思いながらカメラを持ってクルマを降りると、ソッコーでヤブ蚊の襲撃にあいました(泣)。ちなみに藻散布は「もちりっぷ」と読みます。ヤブ蚊はともかく、スイーツみたいなかわいい読み方ですよね。
「ルパン三世」のまち、浜中町
北海道の東部、釧路市と根室市の中間に位置する浜中町。太平洋沿岸には美しい岬の風景が広がり、湿原は動植物の宝庫……なのですが! その前にご紹介したいのが「ルパン三世」の町だということ。というのも、浜中町は原作者であるモンキー・パンチさんの故郷なのです。
町内には多くのルパンスポットが点在しています。2012年からは「ルパン三世フェスティバル」というイベントが開催され、コロナ禍以前は北海道内はもちろん、全国から多くのファンが訪れていたそうですよ。そんなお話を聞きに、まずは浜中町役場に足を運んでみました。
野生のラッコが暮らす霧多布岬(きりたっぷみさき)
今回のプレスツアーの行程表で「ラッコ見学」の1文を見たときは「え、野生のラッコって日本にいるの!?」とびっくりしました。最近はラッコが見られる動物園も数少ないというのに!
それもそのはず、ラッコは北太平洋の冷たい海に暮らす絶滅危惧種の動物。日本では乱獲によって100年ほど前に姿を消して以来、長らく絶滅状態でした。しかし世界的な保護活動によって近年数が増え、北海道でもたびたび姿が見られるようになったのだとか。その最前線の場所が浜中町の霧多布岬。
現在10頭ほどが岬周辺で暮らしていることが確認されています。4月にNHKの動物番組「ダーウィンが来た!」で放送されて話題となったそうなので、観た方もいらっしゃるかもしれませんね。
ラッコがいるといっても、すぐ目の前で見られるわけではありません。標高約50mの岬の上から大海原を探します。運がよければ眼下の岩場近くにいることもありますが、それでも距離は数十m先。じっくり観察したい人は双眼鏡持参がお勧めです。
(ラッコちゃ~ん、どこにいるですの~?)とキョロキョロしながら歩くこと15分。太平洋に突き出した霧多布岬のどん詰まりの断崖絶壁の上から、ついにラッコの姿を確認することができました! じゃーん!
肉眼ではなんとな~く(今、左が足で頭が右かな)と推測できるくらい離れた場所でしたが、間違いなくラッコ! 足を上に上げてプカプカと浮いていました。野生の生き物なので、必ず観られる保証はありませんが、姿を確認できたときの喜びはひとしおです。
霧多布岬のラッコは7~10年前から見られるようになり、最近では繁殖も確認されているのだそう。海の幸が豊富な周辺の海は、ホッキ貝やホタテ貝、カニ、タコ、ウニなどラッコの餌がたくさん。霧多布岬は子育てしやすい環境が整っているんですね。それにしても美味しいものばかり食べていて羨ましいぞ!
一斉に出漁する昆布漁船が壮観! アゼチの岬
霧多布半島の東の端が「霧多布岬」。対して西の端は、夏場の夕陽スポットとしても有名な「アゼチの岬」です。風光明媚なこの場所は、昆布船の出漁風景が夏場の風物詩。たくさんの昆布船が漁場を目掛けて、競い合うように一斉にスタートするのだそう。
ツアー滞在中、運よく昆布漁船が出漁する日があったので(出漁するかしないかは天候による)、超早起きしてクルマで向かいました。
早朝5時過ぎ、目の前の琵琶瀬湾に続々と集まってくる数十船の昆布船。(まだかな~)とカメラを抱えて待っていると、突然それは始まり、大慌てでムービーボタンをオン! 焦りながらなんとか録れた動画をご覧ください。
浜中町で昆布漁が盛んなのは、霧多布湿原から流れ出したミネラルのおかげで良質な昆布が生育するからだと言われています。また、その昆布だけを食べて育つ養殖ウニは最高級の品質で、そのほとんどが首都圏に出荷され、高級料亭などで提供されているのだそう。一度でよいからそんなお店で「浜中町のウニ」を食べてみたいっ!
浜中町の海の幸をいただく
さて、漁業のまち・浜中町でのランチは、新鮮な旬のネタがリーズナブルにいただける「食事処ひらの」で。見た目のインパクト大の「旬の豪華海鮮丼」は、3~4時間ほど煮て甘辛く味付けされている昆布を器にした人気メニューです。大将いわく「昆布はやわらかく煮ているので、ぜひ残さず食べてみて」とのことでした。
私がいただいたのは、秋限定のサンマ丼。“庶民の秋の味覚”の代表格サンマですが、近年の高騰でスーパーでも以前のように気軽に買えなくなっていますよね。そんなサンマがこれでもかっ!と盛られたどんぶりは特製醤油でいただきます。脂がのったサンマは軽く炙っているので、さらに旨味が凝縮されていてとっても美味しい! 毎年9~10月ごろ限定の人気メニューで、これを目当てに来店するライダーのお客さんが多いそうですよ。
ハーゲンダッツを支えるまち・浜中町は酪農王国
浜中町は漁業だけではなく、酪農も盛んなまち。夏場に発生する海霧が海のミネラルを牧草へと運び、その牧草を食べて育った牛から美味しい牛乳が絞られます。そんな恵まれた気候と環境で作られる浜中の生乳は、バターやチーズ、生クリームなどさまざまな乳製品に加工されています。
なかでも浜中町で生産される牛乳は、あのハーゲンダッツアイスクリームの原料に使われているというからびっくり! 今回の旅では美味しい乳製品をたくさん味わうことができました。
そんな酪農のまち・浜中町で、町内でしか飲めない牛乳があると聞き、直売所を訪ねてみました。その名も「小松牧場」。牛乳、コーヒー牛乳、フルーツ牛乳の3種類があり、その場で飲んで瓶を返せば100円、持ち帰りたい場合は150円になります。
まずビン牛乳というだけで、そのノスタルジックなたたずまいが新鮮! 味はすっきり飲みやすく、でもしっかりコクというか甘みが感じられました。ちなみにフルーツ牛乳はりんご味だそうですよ。
実はこの小松牛乳、浜中町役場の1階入り口にも置いてあって、なんと無料! 「ご自由にお飲みください」とあったので、遠慮なく役場でも1本飲んだのでした。
浜中町の乳製品を極めたいなら、ぜひとも「コープはまなか」へ。北海道ではここではしか手に入らないタカナシ乳業の乳製品が並んでいます。なかでも人気なのはプレミアム牛乳「タカナシ4.0牛乳」。この牛乳こそがハーゲンダッツアイスクリームの原料に使われているもの。そして、その「タカナシ4.0牛乳」を使った業務用サイズのタカナシ2Lアイスという魅惑スイーツも!
どうしても食べてみたくてほかの記者さんと共同購入したのですが、ハーゲンダッツと比べても遜色ないレベルの美味しさに感動でした。クール便で地方発送も可能なので、お土産用に送るのもよいですね。
コープはまなかでは、このタカナシ4.0牛乳を使った通称「ヨンゼロソフトクリーム」が大人気らしいのことですが、残念ながらこのときは緊急事態宣言下で提供ストップ中。毎年4月下旬~10月下旬の販売ということです。
牧場でチーズ作りに挑戦
牛乳、アイスクリームときたらやっぱりチーズ! 最後は牧場でのチーズ作り体験をご紹介しましょう。訪ねたのは浜中町の内陸部に位置する松岡牧場「グレイトフル ファーム」です。
作るチーズはカチョカバロという、モッツァレラチーズに似た丸いタイプです。机の上に用意されたのは、お湯の入った大きなボウルと、チーズになる一歩手間の「チーズカード」というもの。熱湯のなかにチーズカードをひとつかみ入れてハシで練っていくと、次第にチーズらしい滑らかさが出てきます。
次にお椀を使ってすくい、ひとかたまりになったところで手でムギュムギュっとお団子を丸めるように生地をひっくり返しながら形を整えます。ツヤツヤの表面になったところでぎゅっとちぎって完成。あっという間にお店で売っているような、まあるいチーズのできあがりです。これは楽しい!
次々と作られるカチョカバロ。それを厨房でスライスして、松岡さんがピザ生地の上にトッピングします。オーブンで次から次へと焼かれるピザはひとり1枚。最後にコーヒーが付いて4500円。楽しくて美味しいチーズ作り体験でした。
次回は霧多布湿原でのカヌー体験や、海辺での乗馬などのアクティビティ、泊まったお宿などをご紹介します