【イベントレポート】ツーリズムEXPOジャパン2015

トルコ、伝統文化やトルコアイスとともに、“次の観光地”になりそうな新たなスポットを紹介

2015年9月24日~27日 開催

 ツーリズムEXPOジャパン2015のトルコ共和国のブースは、「Home」をテーマにしたブースで同国の伝統、文化を紹介。また、イズミル地方と、ガーズィアンテップは独立したブースを出展し、各地方の特色を伝えた。各地の担当者に話を伺い、あまり知られていないトルコの観光地について話を聞いた。

 トルコブースでは、トルコ共和国大使館 文化広報参事官室 参事官のアリ・カラクシュ氏にブースを案内いただいた。テーマである「Home」とは、バラやチューリップ、サンタクロースなど、実はトルコが起源となって現代に受け継がれたものが多いことから「起源」「ふるさと」としてのトルコを知ってもらおうとの思いがあるそうだ。

トルコブースのテーマは「Home」
トルコ共和国大使館 文化広報参事官室 参事官 アリ・カラクシュ氏
エルトゥールル号事件を描いたの映画「海難1890」が12月5日に公開されることもPR
大平清氏によるサズの演奏

 記者がブースを訪れたときには、ちょうど「サズ」と呼ばれる楽器を用いて、同国の民謡の1つである「ハルクミュージック」を演奏するステージパフォーマンスが行なわれていた。トルコではギターを弾く人はサズも弾く人も多いという。ほかにウードと呼ばれる琵琶のような楽器もあり、カルスという都市では毎年、吟遊詩人の大会も行なわれているそうだ。

 このほかトルコのブースでは、粘りがあることで有名な「トルコアイス」もふるまわれた。事前配布される引換券と交換で提供されたものだが、アイスクリームを思いっきり伸ばしながらコーンへ乗せる動きは、見ているだけでも楽しい。

 さらに、イスラム書道といえるカリグラフィ、針刺繍のイーネオヤ、水に浮かせた顔料を紙に染める「エブルアート」などのワークショップも開催。ちょうどエブルアートのワークショップが実施されており、その様子を見ることができた。

 エブルアートはいわゆる「マーブリング」のことで、イタリアの伝統工芸であるマーブル紙のルーツも、このトルコのエブルアートにあるという。水に垂らした顔料インクを、さまざな道具を使って形作っていき、最後に紙に写し取って染める。同じ模様は2度と作ることができないのが特徴で、古くは本の装丁に使われたという。ワークショップでは幾何学模様のようなデザインを製作していたが、慣れるとチューリップや一輪挿しの花の形なども作ることができるそうだ。

「ドンドゥルマ」、いわゆる「トルコアイス」を来場客にふるまった
エブルアートのワークショップ。水に垂らした顔料を、器用にデザインしていき紙へ染める。この工程で作られたデザインは2度と同じものができない

 続いては、イズミル地方の特徴について、イズミル開発機構 事務局長のムラット・ユルマスチョバン氏に話を聞いた。イズミル地方はトルコの南、エーゲ海に面した地域に位置する人口400万人ほどの地域。8500年の歴史を有し、トルコ伝統の手工芸はもちろん、古代のペルシア、ギリシア、ローマ、ビザンチン帝国、オスマン帝国といったさまざまな文明が入り交じり、宗教的にもキリスト教の教会、ユダヤ教のシナゴーグ、イスラム教のモスクが共存する、極めて多様性の高い土地であることが特徴であるという。

 また、「ベルガマ」「エフェソス」というユネスコ世界文化遺産にも登録されている2つの古代都市遺跡を観光資源として持つ。ベルガマにあるペルガモン図書館は、ヒツジの皮を紙として使用する文化があったといい、ブースではその「羊皮紙」の実物も展示されていた。

 このほか、美しい伝統衣装の風俗が残るティレ、イーネオヤ(針刺繍)の産地の1つであるオデミシュ、オスマン帝国時代に宮廷の花を供給していたバユンドュルといった都市も見所。ケマルパシャ地区は、メデューサの目玉を象ることで、ねたみや嫉妬を跳ね返すという意味を持つトルコのお守りで「ナザール・ボンジュウ」の産地として有名で、さまざまな形のナザール・ボンジュウが作られているという。

 一方で、セフェリヒサルという都市は、1999年に生まれたスローシティ「チッタスロー」に認定されており、このあたりも同地の多様性を物語る一面といえるだろう。

 ちなみにトルコというと「ケバブ」の影響もあって肉料理のイメージを強く持っている人も多いと思うが、イズミルはエーゲ海に面していることからシーフード料理や、ハーブ料理などもお勧めだという。

 イズミル地方は日本であまり知られていないことが観光地としての現在の課題とのことだが、イスタンブール空港から国内線で1日10本程度運航されており、およそ1時間ほどで到着するという。また、イズミル国際空港は約30都市と国際線でも結ばれており、交通の便は良好とのことだ。

 一方で、イズミルを訪問する旅行商品はまだまだ不十分であるという認識で、今回のツーリズムEXPOジャパンへの出展も、日本人へ広く同地の周知を図り、興味を持ってもらい、そうした旅行商品開発に繋げたいという意欲をもってのことだという。

イズミル開発機構 事務局長のムラット・ユルマスチョバン氏
メデューサの目玉をモチーフにしたトルコのお守り「ナザール・ボンジュウ」
ベルガマ市長のメフメト・ギョネンチ市長も来日。脇にあるのは展示されていた羊皮紙
ガーズィアンテップ市役所 副事務局長 セルダル・トライ氏。ブースデザインはモザイク画の「ジプシーの少女」

 次に話を聞いたのは、ガーズィアンテップ市役所の副事務局長 セルダル・トライ氏だ。ガーズィアンテップはトルコの南東に位置する古都で、ローマ時代のころからのさまざまな史跡があり、これらが近年急速に発掘が進められている。こうした観光資源で日本人の観光客を呼び込みたい考えだ。

 ガーズィアンテップはユーフラテス川の流域にあり、同地のゼウグマ・モザイク博物館に展示されちえる「ジプシーの少女」(ロマの少女)と呼ばれる有名なモザイクは、ユーフラテス川の小石を使い、太陽の光でさまざまな光に映るのだという。近年では「カルカムシュ」と呼ばれる遺跡でもモザイクの発掘が進められており、これらの遺跡は、ユネスコ世界文化遺産への申請も進めている。

 市内には、ゼウグマ・モザイク博物館のほかにも、テーマ性を持った16カ所の博物館を有するほか、面積、飼育頭数、飼育種類でヨーロッパ3位、世界4位に位置する大規模な動物園もあるという。

 さらに同地は、「ガストロノミーシティ」でもあるとし、特にオーブン料理が有名で3000種類ほどの料理があるほか、「ヴァクラバ」と呼ばれるパイ菓子でも同地の生産品は好評を博しているという。さらに、トルコのピスタチオ生産の7~8割は同地といった特徴もあり、このピスタチオを使った香りを楽しめるメネンギチコーヒーも有名。現在8都市が指定されているユネスコが認定するガストロノミーシティにも申請しているそうだ。

 こうした新しい観光地の不安材料といえばホテルの需要と供給のバランスが挙げられるが、ベッド数は現時点で約1万床と十分に観光客を迎えられ、ホテルも観光地の近くに数多くあることから不便はないとする。先述のゼウグマ・モザイク博物館の近くには、ガーズィアンテップ城といったほかの観光地も近く、観光スポットがまとまっている点も特徴としてアピールしていた。同市では日本国内の都市との友好都市協定も望んでおり、今回のツーリズムEXPOジャパンもそうした機会の1つにしたいとしている。

 このほかトルコブースには、トルコの航空会社であるターキッシュエアラインズも参加。CSR活動の一環として、ピアスを500円で販売したほか、同航空会社のロゴをデザインしたネイルアートを100円で実施。売り上げはすべて「いわての学び希望基金」へ寄付される。また、同社では10月15日から1年間、三陸鉄道北リアス線でラッピング列車を運行する予定だ。

飛行機とターキッシュエアラインズのロゴをモチーフにしたピアス
同社エアラインのロゴマークのネイルアート
(編集部:多和田新也/Photo:小山安博)