【イベントレポート】
【ツーリズムEXPO 2017】田村明比古観光庁長官も登壇した基調講演・観光大臣会合レポート
グローバルに持続可能な観光産業を成長を目指すことが重要
2017年9月23日 17:13
- 2017年9月21日~24日 開催
世界最大級の旅イベント「ツーリズムEXPOジャパン2017」が、日観振(日本観光振興協会)、JATA(日本旅行業協会)、JNTO(日本政府観光局)の共催で、9月21日~24日(一般日は23日~24日)に東京・有明の東京ビッグサイトで開催されている。
初日の21日は、「ツーリズムEXPOジャパンフォーラム」と呼ばれる公式イベントが行なわれ、その後半では基調講演と、世界各国から参加している観光大臣や政府高官によるラウンドテーブル「観光大臣会合」が行なわれた。
メキシコ観光大臣の講演は19日の大地震の影響で代読に、代読前に関係者全員で黙祷が捧げられる
「ツーリズムEXPOジャパンフォーラム」の基調講演と観光大臣会合は、UNWTO(国連世界観光機関)のアニータ・メンディラッタ氏の司会で進められた。メンディラッタ氏は「観光とは、異なる考え方や文化を持つ人たちが1つになること。今年は国連が設定した『持続可能な観光国際年』に当たっており、その考え方にもとづいてどう観光業界を発展していくべきかということを議論するために、各国からリーダーに集まってもらった」と趣旨を説明した。
その基調講演として、メキシコ 観光大臣のエンリケ・デ・ラ・マドリード・コルデロ氏、マレーシア 観光大臣のダト・スリ・モハメッド・ナズリ・ビン・アブドゥル・アジズ氏の2人が登壇し、それぞれ両国の観光政策などについて語る予定になっていた。しかし、メキシコのコルデロ大臣は9月19日にメキシコでマグニチュード7.1の地震が発生したことを受け、急遽予定を変更して帰国したため、今回は代理によりスピーチの内容を読み上げる形となった。今回のフォーラムでも、基調講演の前にメキシコの大地震での犠牲者に黙祷が捧げられた。
コルデロ大臣はその代読されたメッセージのなかで、「メキシコは民主主義が普及し政治的にも大きく変わった。1980年代の経済は石油の輸出に依存していたが、そこから徐々に脱却するべく変革を続けてきた。現在は自動車、アボカド、ビールなど複数の産品の輸出ができるようになるなど変わっている。観光もその変革の柱の1つで、GDPの7.8%を占めている。観光は2000万人のメキシコ人の雇用を生んでおり、非常に重要な輸出産業だ」と述べ、政治的にも安定してきたメキシコが観光を成長戦略の柱に据えており、それが成功しているとアピールした。
そのうえで、「現在メキシコ政府は新しいプログラムを立ち上げ、予算を使って観光を持続可能な形で成長できるようにしている。歴史的遺産、メキシコ料理といったさまざまな観光資源があるので、さらに開発してお客さまに提供していきたい」と述べ、日本の業界に対してメキシコの観光商品の開発などを訴えた。
エコな観光産業を実現することで、文化・歴史・環境を守りながら持続可能な観光産業を実現する
続いて講演したのはマレーシア 観光大臣のアジズ氏。アジズ大臣は「発展途上国にとって観光は重要な産業で、経済成長の推進剤となり得る。このため、持続可能な形で観光産業を発展させていくことが重要だ」と述べ、マレーシアも観光産業の育成に力を入れることで、2020年に50万人の新しい雇用を生むなどのプランを持って政策を推進していると述べた。
「われわれはいくつかのイニチアシブにより、環境に配慮した持続可能な観光政策を続けていく。それにより、きちんとした責任を持ったエコな観光産業を実現していく。エコな観光産業を実現していくことで、文化・歴史・環境などを守りながら観光産業を発展させていくことができる」と述べ、観光客にとっても優れた観光地となり、結果的にマレーシアの観光産業が発展することになるというビジョンを説明した。
地球規模で観光の持続的成長を目指していくことが大事、と田村観光庁長官
基調講演終了後には、今回のフォーラムに参加している13カ国(実際にはメキシコのコルデロ氏は早期に帰国したため12カ国、すでに講演しているマレーシアの大臣は登壇のみ)の大臣や政府高官、そして日本の観光庁長官、経団連(日本経済団体連合会)観光委員会委員長、UNWTO、世界旅行ツーリズム協会会長、太平洋アジア観光協会会長などの17人がステージに登壇した。登壇者の持ち時間は3分だけで、その短い時間を使ってそれぞれに観光産業の発展についてのビジョンを語った。
観光庁 長官の田村明比古氏は「今回のフォーラムは各国の知見を共有するという意味で意義深い。観光は新たなビジネスの機会を生むチャンスだが、その一方で自然や生活環境保護、地域伝統の維持といった観光地本来の姿を持続的に維持することが重要。今後世界的に観光需要が増えていくと考えられており、地球規模で観光の持続的成長を目指さないといけない。
日本は観光を成長戦略と地方創生の柱として取り組んでおり、量の拡大だけでなく質を追い求めていく。一部の自治体では観光客がきすぎて住民との間で問題が発生しており、そうしたことにきちんと取り組んでいくことが大事。今後も各国と協調して、アウトバンド、インバウンドの促進を進めていきたい」と述べた。
経団連 観光委員会委員長の冨田哲朗氏は「(各国の観光産業関係者に)今回の訪日に合わせて日本の鉄道を利用して味わってほしい。また(経団連の)観光委員会委員長として、田村観光庁長官と一緒になって観光産業を少子高齢化が進むの日本の基幹産業にしていきたい。
JR東日本は鉄道事業者として、官民一体になった取り組みを行なってきた。われわれが行なってきたデスティネーションキャンペーンでは、開催する地域と連携し、地域にある資源を紹介することで、新しい旅客需要を作り出すという取り組みで、40年にわたりやってきている。2011年以降は6年連続して東北地方を対象にして多くの旅客需要を作り出してきて、東北の復興にも一役買ってきた。
大事なことは観光流動を作り出すことで、地方の特産物を大都市圏で販売して、新しい流動を作り出していくことが大事。今後も鉄道事業者として、鉄道サービスだけでなく地域作りにコミットメントし、おもてなしや心地よさに磨きをかけていきたい」と語った。
UNWTO 総会・執行理事会担当部長 兼 アジア太平洋地域部部長のスー・ジン氏は、「世界的に観光産業は約4%の成長率を実現し、毎日300万~400万人の旅客が移動しており、われわれの産業はそこは自賛していいと思う。重要なことは観光業界だけでなく、国際的に持続可能な観光を実現していくことだ。成長のためには持続可能でなければならず、社会的な受容性を高めていく必要がある。バランスに優れたアプローチが大事だ」とした。
世界ツーリズム協会 会長のジェラルド・ローレス氏は「未来に向けて旅客の不安を取り除いていかないといけない。現在年間で12億人の人が国際的に旅行しており、それはグローバルGDPに大きく貢献している。例えばバルセロナではテロが起き、観光への大きな脅威になっている。観光にとって何よりも大事なことは平和であって、平和だから旅行が増えるのではなく、旅行が平和を実現するのだ」と述べた。