【イベントレポート】

【APEX2016】実用化が始まった預け入れ荷物のデジタルタグ、異なるアプローチで普及を目指す2社

2016年10月24日~27日(現地時間)開催

DS TAGSの「BAGTAG」

 シンガポールのマリーナ・ベイ・サンズ・エキスポ&コンベンションセンターで開催されている「APEX EXPO 2016」の併設イベント「FTE Asia 2016(Future Travel Experience Asia EXPO 2016)」では、空港、航空会社で活用が見込まれるさまざまな次世代技術が展示されている。

 その一つが、預け入れ荷物に付けられるタグをデジタル化し、飛行機に乗る際に巻き付けられるタグを、電子表示装置に置き換えるというものだ。DS TAGSによる「BAGTAG」、RIMOWAによる「Electronic Tag」が展示されていた。いずれも電子書籍リーダーなどに使われているE Inkの電子ペーパーを用いている。電子ペーパーは表示自体に電力を必要とせず、書き換え時のみに電力を消費する仕組みなので、万が一、輸送中に電池切れなどで電力供給が途絶えても、表示したものが残る利点があるためだ。

 また、デジタルタグにすることでチェックイン窓口での作業がなくなり、預け入れの時間を短縮できることもメリットとしている。DS TAGSでは、カウンターで8秒で荷物の預け入れが終わることをデモンストレーションして、そのメリットを示した。

DS TAGSの「BAGTAG」を、ジェットスターアプリで利用しているところ。モバイルアプリでオンラインチェックしたあとに発行されるタグをBluetoothで転送する
いわばタグが取り付けられた状態で空港で預け入れるので「8秒」で手続きが終わることをデモ

 ただ、DS TAGSとRIMOWAでは、普及に向けたアプローチが異なっている。

 DS TAGSはIATA(国際航空運送協会)とも協力してこの取り組みを進めているが、航空会社が顧客に提供することを想定している点に特徴がある。すでにいくつかの航空会社で導入されているが、マイレージプログラムの上級会員などに対してBAGTAGを備えたスーツケースを提供するスタイルとなっている。

 こうした戦略を採るのは、このBAGTAGを導入するためには航空会社側のシステム、モバイルアプリなどに変更が必要となり、リテールで販売したとしても使える航空会社が制限される。よって、航空会社が主導した方がよい考えているそうだ。

 使い方は、航空会社のモバイルアプリでのオンラインチェックインを行なうことで預け入れ荷物のタグを発行。そのタグをBluetoothを介してBAGTAGに転送、表示される仕組みとなる。スマートフォンとBAGTAGはNFCによって接続を確立するとのことで、事前のペアリングなどは必要ない。発行されるバーコードなどは従来のタグと同様で、EU圏で使用されている緑色のバーが入った表示にも対応。空港側は設備の変更を行なう必要はない。

 このタグの電池交換はできないが、5年ほどは利用可能とのこと。耐久性テストも厳密に行なわれており、衝撃を加えるとBAGTAGよりも先にスーツケースの方が壊れるそうだ。また、コストは現状では高くなるそうだが、数が増えれば紙の消費がなくなってコスト削減につながることを強調していた。

スーツケースにアドオンしたもののほか、埋め込みタイプ、ベルトに固定するタイプなどさまざまなバリエーション。ベルト固定タイプはまだ開発中のもの

 一方、スーツケースメーカーとして広く知られているRIMOWAは、リテール向け製品に同様のデジタルタグを搭載して販売している。現時点ではパートナーシップを結んでいるルフトハンザドイツ航空でしか利用できないが、今後、パートナーシップを強化。現在はアジアの航空会社と交渉中とした。

 タグの転送もRIMOWAのアプリが用いられ、、航空会社のアプリと連携してタグを発行して転送する。転送にBluetoothを使う点は先述のBAGTAGと同様で、このあたりの使い勝手に相違は見られなかった。ただし、RIMOWAアプリは今後のアップデートで、電子タグ部分を写真や名前など、乗客自身が選択したコンテンツを表示する仕組みを提供するという。これはパートナー航空会社以外を利用する際にも、本機能を利用してもらうためだという。

 搭載バッグの価格は400~1000ドル程度。当面、販売するのはパートナーの航空会社のフライトがある空港内ショップが中心になるだろうとした。

RIMOWA Electronic Tagを搭載したスーツケース
仕組みは先述のBAGTAGと同じで電子ペーパーを使っているが、乾電池で駆動しているので電池交換できる
電子ペーパーにカスタマイズした情報を表示するデモ。今後のアプリアップデートで提供する予定の機能