【イベントレポート】ファンボロー国際航空ショー2016

「油分散剤」散布用のボーイング 727や就航50周年を迎えた名機「ツインオッター」など展示機紹介

2016年7月11日~17日(現地時間)開催

貨物機専用の展示ゾーン「カーゴ・ヴィレッジ」

 これまでにもいくつか紹介してきたとおり、7月11日~17日(現地時間)に英国で開催された「ファンボロー国際航空ショー(Farnborough International Airshow)2016」では、新・旧、民・軍問わず、多数の航空機が地上展示や飛行展示を行なっている。本稿ではそんな展示機から、商用向けの主な現役飛行機を紹介したい。

貨物機の展示ゾーン「カーゴ・ヴィレッジ」

 今回のファンボロー国際航空ショーでは、「カーゴ・ヴィレッジ」と名付けられた貨物機専用の展示エリアが設けられた。ここには、ヴォルガ・ドニエプル航空(ロシア)の「ボーイング 747-8F」型機と、アントノフ An-124型機が展示された。

 ボーイング 747-8F型機は、ヴォルガ・ドニエプル航空傘下の英カーゴロジックエアの塗装が施された機体で、期間中の7月12日(現地時間)には、ヴォルガ・ドニエプル航空が、現在受領している4機を含め計20機のボーイング 747-8Fを購入する契約を結んだことを発表。カーゴロジックエアとエアブリッジ・カーゴ(ロシア)が運用する。

英カーゴロジックエア塗装のボーイング 747-8F型機

 一方、アントノフ An-124型機はヴォルガ・ドニエプル航空の主力機材で、本機でしか輸送できないような大型の貨物のために、日本へもたびたびチャーターされていることで知られる。

 展示機では前方のカーゴドアが開けられており、内部を見学することができた。1階に相当するデッキには客席などはなく、すべてカーゴスペースとして利用される。コックピットはこのカーゴエリアの上部にあり、折りたたみ式のハシゴを使って上がる仕組みになっている。

ヴォルガ・ドニエプル航空のアントノフ An-124型機
片側だけで10本のタイヤを装備するメインギア
前部カーゴスペース
コックピットへ上がるためのハシゴ
前部カーゴドアの内側
コックピットの窓
カーゴスペースの内部
ヴォルガ・ドニエプル航空で運用する機材ということで、操作盤などもロシア語表記

原油流出事故などに対応する「油分散剤」散布用のボーイング 727型機

 原油流出事故などに対応する業界組織「Oil Spill Response」は、ファンボロー国際航空ショーに、油分散剤を散布するために改造したボーイング 727-2S2F(RE)型機を展示。実際に飛行してのデモンストレーションも実施した。

 原油流出事故などの際に、油を分解するための薬剤として散布される「油分解剤」。これを散布するために、同機関ではこれまでプロペラ輸送機のC-130型機「ハーキュリーズ」を用いていたが、より広範囲に、より高速に対応するため、新たな航空機の導入に踏み切ったという。

 そこで導入されたのが同機で、最新の機体ではないことから低コストである一方、エンジンはプラット&ホイットニーの「JT-8D」のより新しい世代を用いることで低騒音化しているという。

 油分散剤は、機体後部に取り付けられたノズルから散布。水を使用したデモ飛行が実施された。型式証明は今回のデモでも使われた1号機を利用して取得済み。2号機を現在準備中とのことだ。

油分散剤散布用のボーイング 727型機
地上展示中のボーイング 727型機
機内は貨物仕様。タンクが見える
ボーイング 727型機の特徴でもあるT字型の垂直尾翼と3発エンジン
機体の後部下部に、ノズルを備えたパーツを取り付けている
ノズル
デモフライトも実施
ボーイング 727型機は世界でも数を減らしており、空を飛ぶ姿が貴重になりつつある
滑走路の上を、水を散布しながらフライパスした
散布中のノズル

トルコで製造を開始した旧「ドルニエ Do328」こと「TRJ328」型機

 日本では調布飛行場を拠点とする新中央航空がドルニエ Do228型機を運用することで知られるドルニエ製航空機。ドルニエ社を買収したフェアチャイルド社が破綻後、最新機種だった「ドルニエ Do328」「ドルニエ Do328JET」はいくつかの企業の手を経て、2015年にトルコの航空産業団体「TAI(Turkish Aerospace Industries)」が近代化モデルを製造することで合意。「TRJ 328」「TRJ 328JET」として、このファンボロー国際航空ショー2016に展示された。

 現時点では照明のLED化やペイロード増強など、ドルニエ Do328シリーズのマイナーチェンジに留まっているが、TAIでは本機で経験を積み、将来的には独自の「TRJ」を開発する意欲を示している。

トルコで製造したドルニエ Do328こと「TRJ328」

ビジネスジェットや名機「ツインオッター」など、そのほかの展示機

 このほか、商用向け飛行機の展示エリアには、ビジネスジェットを展示するエリアには本田技研工業の子会社であるホンダ エアクラフト カンパニーが開発・製造する小型ジェット機「HondaJet」の姿もあった。

 また、1966年の就航から50年を迎えたいまも現役で運航する会社がある「ツインオッター」こと「DHC-6」型機の姿もあった。カナダのバイキングエアが製造する機体で、カナダ製の機体であることを誇るかのように、垂直尾翼には赤いカエデの葉と「Made in Canada」の文字が描かれている。

HondaJet
展示を終え、帰国のために離陸したHondaJet
初就航から50周年を迎えたツインオッターことDHC-6-400型機
ビジネスジェット機メーカーとしておなじみのGulfstreamもラインアップを展示した
カタール航空がカタール・エグゼクティブのブランドで展開するプライベートジェットのサービス。GulfstreamのG650ER型機を使い、中東から北米などの長距離をノンストップで運航する
フランスのダッソーが製造する「Falcon 7X」
スウェーデンの「BRA(Braathens Regional Airlines)」塗装が施されたATR 72-600型機
ロシアのスホーイが製造する「SSJ 100(Sukhoi Superjet 100)」型機。SSJ 100をベースにスポーツチームの移動に特化したプライベートジェット仕立て「Sukhoi Sports Jet」も、本イベント期間中にアナウンスした