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水害の放置車両はその後どうなる? JAF×警視庁の排除訓練を見てきた

2026年9月17日 実施
警視庁と連携したJAFロードサービス特別支援隊研修をJAF中央研修センターで開催

 JAF(日本自動車連盟)は9月17日、JAF中央研修センター(東京都多摩市)において「JAFロードサービス特別支援隊研修」を開催した。

 本研修は災害発生時における警察との連携強化や被災地支援体制の向上を目的としたもので、警視庁から多摩中央署をはじめとする周辺警察署および災害対策課特殊救助隊指導班、第4機動隊機動救助隊(機動救助隊)が、JAFからはロードサービス特別支援隊員40名らが参加しての合同訓練となった。

 JAFロードサービス特別支援隊は2004年に発足したもので、全国のロードサービス隊員のなかから、技術力・運転技量・忍耐力・協調性に優れた隊員を選抜。災害発生時には警察や自治体など関係機関と連携しながら救援活動にあたる文字どおり特別なチームで、2026年8月に発生した千葉豪雨においても派遣されている。

 さらに今回は2026年4月に新設された災害即応チーム「JAF-FAST(JAF-First Action Support Team:ジャフファスト)」も参加。現場の状況を迅速に把握するとともに、必要な作業車両や資機材の選定、優先的に実施すべき作業の判断を行なうことで、後続部隊の円滑な活動をサポートするという。

 今回の訓練は、昨今増えつつある水害を想定したもので、「災害発生時における放置車両等排除活動訓練」として2パターンのシチュエーションを用意。実際の災害現場で求められる迅速かつ的確な連携を確認する実践的な内容となっている。

パターン1:横転車両の引き起こしと取り残された運転手の救助

パターン1の現場を設営中
車両を横倒しするのも訓練の一環
訓練パターン1

 2026年9月17日15時00分ごろ、台風1号による集中豪雨のため、警視庁多摩中央警察署管内の各所で洪水、道路冠水等が発生した。

 地域住民からの通報によると、多摩市唐木田尾根幹線道路上において土砂の影響によるものと思われる事故車両が放置され、そのなかには運転者が取り残されている。

 現場に急行したパトカーが確認したところ、運転者の意識はあるが負傷しており自力での歩行が困難のため、警察のレスキュー隊、救急車を要請した。また、現場は緊急交通路であることから、JAFを要請しそれぞれが現場へ向かった(救急車は仮想とし訓練には参加しない)。

 警視庁からの要請で出動したJAFロードサービス特別支援隊は、到着後、多摩中央警察署警備課長の指揮の下、レスキュー隊が安全に救助活動を行なうためのサポートとして、横転車両を固定する作業を開始し、レスキュー隊は車両内から運転者を救出した。JAFロードサービス特別支援隊は運転者の救出後に、横転車両の引き起こしと車両を引き出し、この2台をレッカー車で排除して緊急交通路を確保した。

パターン1の現場。横転車両と放置車両が道路をふさいでいる
警察官が現場に到着
取り残されているドライバーを発見
先行して現場の状況を確認するためのJAF-FAST車両。車両移動などの機材とともに隊員が仮眠できる装備も用意しているという。全国に配備予定だが現在はこの1台のみとのこと
警察官と情報を共有
車両の状態をチェック
レッカー車
レッカー車が現場に到着
JAF-FAST隊員から現場の状況を伝達。JAF-FAST隊員は実際の作業を行なわず次の現場へ向かうことで迅速化を図っている
特別支援隊が横転車両の固定作業を実施。タイヤにロープをかけるとともに下側に流れ留めの角材を配置
レッカー車を横づけ
レッカー装置を使用して倒れないように固定
レスキュー隊がドライバーの様子をチェック
施錠されていたためウィンドウを割る
車内へ
ドライバーの容態を確認
ドライバーを救出
横転車両を引き起こす
路肩へ移動
レッカー車を前に
車両をけん引するためのアームを設置
脱落防止のためにホイールストラップやチェーンを装着
現場から排除
黒色のクルマは4WD車。後輪にレッカー装置を使用してけん引準備
前輪に移動のための車輪を設置
タイヤの両側に車輪を配置し、タイヤの前後をバーで固定。その後、左右それぞれの車輪を操作してタイヤを持ち上げる
割れた窓はフィルムで養生
こちらも排除完了

 現場は片側3.5mの2車線道路。ドライバーが取り残された車両(黒色)と横転した車両(銀色)が放置されている。まっ先に現場に到着した警察官が状況を確認後、レスキュー隊の出動とともにJAFに車両の撤去などを要請。先着したJAF-FAST隊員が施錠の有無、シフトポジション、車両の特徴、オイル漏れなどを確認後、到着した特別支援隊に作業を引き継いだ。

 この際、車両の特徴を電動車/エンジン車、2WD/4WD、電動パーキングブレーキか否か、など細かく伝えていたのが印象的だった。というのも、例えば電気自動車では専用の手袋を使用してバッテリーコネクタを引き抜く、電動パーキングブレーキ車では専用器具を利用するといった作業が必要になるためとのこと。

 特別支援隊が横転車を固定して安全確保を行なったあと、レスキュー隊によりドライバーの救助作業を実施。その後、2台の放置車両を移動して作業は終了となった。

パターン2:積み重なった車両の排除と開かないドアの切断

パターン2の現場
訓練パターン2

 現場は、多摩中央署管内多摩市唐木田尾根幹線道路上とする。走行していた車両2台が、冠水した場所を走行した際に、エンジンが停止した。水流により押し流された2台の冠水車両は、2台が重なる形で尾根幹線道路の片側車線を完全にふさいで停車しており、下側の車内には運転者が閉じ込められ、気を失っていた。また、鍵のない車両が道をふさいでいて車両が通れない状態となっている(水は引いた)。

 この状況に関する地域住民からの通報を受けて、現場に急行したパトカーが確認したところ、下側の車両はドアが開かない状況であるため、救助は困難と判断。レスキュー隊、救急車、JAFを要請しそれぞれが現場へ向かった(救急車は仮想とし訓練には参加しない)。

 警視庁からの要請で出動したJAFロードサービス特別支援隊は、到着後、多摩中央警察署警備課長の指揮の下、レスキュー隊・機動救助隊が安全に救助活動を行なうためのサポートとして作業を開始した。レスキュー隊・機動救助隊が冠水車両内から運転者を救出後、道をふさいでいた冠水車両3台をレッカー車で排除し緊急交通路を確保した。

警察官が現場に到着
特別支援隊に状況を説明
指揮者が隊員指示
鍵がかかっている車両のチェック
電動パーキングブレーキ車だったため専用ツールでブレーキを解除
積み重なっている2台は下のクルマから安全に救助するための準備
リアタイヤにウインチワイヤーをかける
動かないように固定
機動救助隊が到着
フロントドアが開かないためリアガラスを割って車内へ
1名が車内へ
バールで隙間を開ける
スプレッダーで隙間を広げていく
ハーネスを切断
それでも開かないため後ろ側にもスプレッダーを投入
ドアを排除
ドライバーを救出
下側のクルマを排除
続いて上側も
排除完了

 現場はパターン1と同様の2車線道路。冠水により3台の放置車両があり、うち2台は重なり下側の車両にはドライバーが閉じ込められている。少し離れた位置にある車両は鍵がなく、電動パーキングブレーキの車両ですぐには移動できない状況になる。

 ここでもまず警察官が現場に到着し状況を確認し、レスキュー隊とJAFの出動を要請。下側の車両が(物理的な破損などで)ドアが開けられない状態のため、救助作業の前に特別支援隊が上の車両をレッカー車で固定し安全を確保。並行して鍵のない車両を排除することで救助活動の円滑化をサポートする。一方で機動救助隊はバールやスプレッダーを使いドアをこじ開けてドライバーを救助。救助作業完了後に2台の車両を排除して作業は終了となった。

一般社団法人日本自動車連盟 ロードサービス部長 武田高泰氏

 閉会式ではJAFロードサービス部長 武田高泰氏が登壇。持っている資機材、能力、そして人的な資本を使って迅速に作業を行なっていると講評。今回は訓練と前置きしつつ、不断の努力とこういった訓練を積み重ねながら今後起こり得る災害に対応できるようにしたいとコメントした。

訓練参加者による記念撮影