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東急目黒線・新横浜線に3000系リニューアル車がまもなく投入。どこが変わった? 内外装の変化を詳しく見てきた
2025年9月29日 20:00
- 2025年9月29日 公開
東急電鉄は目黒線・新横浜線(目黒~多摩川~日吉~新横浜)において、3000系、5080系、3020系と3系列の車両を使用している。このうち最古参が3000系で、営業運転を開始したのは1999年4月のこと。もう四半世紀も前の話になる。
その3000系に対して内外装のリニューアルを行なうことになり、9月29日に現車の報道公開を実施した。営業運行開始は10月2日から。
お披露目と今後の計画
3000系は目黒線において、6両編成で営業運行を開始。現在は13編成を配備している。その後、2022年8月から翌年3月にかけて新造の4・5号車を増結して、8両編成となった。この2両は、外観は3000系に揃えているが、内装は5000系に準じたものとなっており、ほかの6両とは相違がある。
今回の報道公開は、検修庫におけるお披露目からスタートした。まず、東急電鉄 取締役 専務執行役員 鉄道事業本部長の伊藤篤志氏があいさつで登壇。そのあとで除幕式を行なって、ここで初めて現車が姿を現わした。
続いて、外装デザイン提案に応募して採用された鉄道事業本部 運輸部の嵯峨野正人氏(長津田駅勤務)に対する表彰状や記念品の贈呈を実施。社内公募で選定された案をベースとして、2020系シリーズの車両デザインを手がけた丹青社によるデザイン監修を経て決定したのが、新しい外装デザインである。
目黒線・新横浜線では、まず3000系がリニューアルの対象になったが、5080系もこれからリニューアルを受ける計画と発表されている。
なお、このリニューアルは内外装だけで機器類に手をつけていないため、作業は(大規模検査を実施している長津田の車両工場ではなく)元住吉の車庫で行なわれたとのこと。
リニューアルのポイント(外装)
従来の3000系は腰部に赤・白・濃い青の帯を通したデザインだったが、リニューアルでは最新の3020系に近いイメージとなった。基調となる白色は、「INCUBATION WHITE(美しい時代へ孵化する色)」と称する。
ただし、そもそものカタチが異なるから、単純に同じ塗り分けにしてもマッチしない。3020系に近付けつつも3000系の形に合わせた仕上がりとされている。
「街を表わす白に、ラインカラーの水色が溶け込んでいく」(嵯峨野氏)という狙いから、前面でグラデーションを取り入れた点が目を引く。ラッピングが広く使われるようになったからこそ、実現可能になったといえるだろう。塗装でグラデーションは、あまりやりたくない。
コロナ禍に見舞われたあとで、リニューアルに際してのデザインを決める過程で「ちょっと盛り上げようよ、ということで」(門田氏)社内公募を行なうことになった。そして、3000系の分だけで40件、5080系と3000系の合計で86件の案が社内から寄せられたという。
東急目黒線・新横浜線に限ったことではないが、最近の車両ではカラー帯などのデザイン要素を側面の高い位置に配するものが多い。これにはちゃんとした理由がある。
東急では、目黒線・新横浜線は青色、田園都市線は緑色、東横線は桜色、と異なるラインカラーを取り入れている。同じホームの左右に異なる路線の車両が並ぶ場面もあるため、誤乗防止のために色による識別を取り入れたわけだ。
ところが、そのラインカラーの帯を高い位置に配しておかないと、可動式ホーム柵の影に隠れてしまう。路線識別の手段となるカラー帯が見えないのでは意味がない。そこで、視認しやすいように高い位置に配するわけである。
リニューアルのポイント(内装)
内装リニューアルの土台となった考え方は、「2020系シリーズに引き続き、沿線の風景をイメージした、落ち着きのある色合いを採用して、心地よい空間を目指した」(伊藤氏)。では、具体的に何がどう変わったのか。写真で解説していこう。
車椅子スペース・フリースペースの増強
もともと、東急3000系では2号車の日吉寄りと7号車の目黒寄りに、暖房器、手すり、非常通報器を備えた車椅子スペースが設けられていた。そして今回のリニューアルで、フリースペースの増設が行なわれた。「各車両にフリースペース・車椅子スペースを設置する」というガイドラインに対応するためだ。
まず、2・3・6号車で車端部の腰掛のうち片側を撤去、フリースペース化した。また、既存のスペースについては手摺の増設(1段から2段に)を行なった。
ちなみに、「車椅子スペース」と「フリースペース」という用語が混在しているのは、相互直通を行なっている各社局で車両の仕様を揃える際に、「車椅子スペースは○号車」と定めているためとのこと。その定めに対応するものは「車椅子スペース」と案内するが、そのほかの号車では「フリースペース」と案内する。機能的な差異はない。
なぜリニューアルを行なうのか(接客設備の場合)
さて、こうした車両のリニューアルは東急3000系に限らず、各社で行なわれている。社局によっては、リニューアルする代わりに新造車両で置き換えを行なう場面もあるが、どちらかというと寿命中途でリニューアルを行なう事例の方が多い。
今の鉄道車両はステンレス車体(業界では構体という)やアルミ合金構体のものが多く、これらは炭素鋼の構体と比べると腐食に強い。だからこそ、無塗装で使われることが多いわけだ。
すると、四半世紀やそこらの経年であれば、構体の傷みが原因で寿命が来ることは考えにくい。しかし、構体が長持ちするからといって、デビュー当初の状態で使い続けると、それはそれで問題が生じることがある。
例えば、あとから新型車両が戦列に加わったときに、新旧の車両が共存するため、古い車両が見劣りする可能性が出てくる。ことに乗客の立場から見ると、車内外の意匠デザインの面で、それが顕著に出る。
また、近年ではバリアフリー関連設備のレベルアップが求められている。新しい車両は当初から最新のガイドラインに沿う形で設計されているが、古い車両はそうはいかない。車椅子スペースや優先席だけてなく、非常通報装置や車内情報表示装置まで含めての話である。
そこで、内装を新型車両に合わせてレベルアップするとか、バリアフリー関連設備を充実させるとか、外装を新型車両と似たイメージのものに一新するとかいう話が出てくるわけである。
事業者によっては、内装のリニューアルによって部材を統一して、維持管理の合理化を図る事例もある。ときには、新型車両の内装を、既存車両のリニューアルに際して先行適用した事例もある。といっても、完全に統一するとは限らず、細かい相違が残ることは間々あるようだ。
なぜリニューアルを行なうのか(各種機器の場合)
車両を維持管理する立場からすると、構体が「まだまだ使える」状態であっても、機器類は事情が異なる。
ことに、いまどきのVVVF(Variable Voltage Variable Frequency)インバータ制御の電車は、そのインバータ装置で使用するパワー半導体素子、あるいはインバータを制御する電子回路部品や基板の経年劣化が問題になりやすい。
だから、車両の寿命中途でインバータ装置を取り替える事例は多い。インバータ装置の違いは乗客からは見えない部分だが、走行時に発する音が変化することはある。
ただし東急3000系の場合、今回は内外装だけの変更で、機器更新は実施していない。今後、必要に応じて実施することになると思われる。
また、機器更新というほど大掛かりな作業でなくても、LED行先表示器が3色LEDからカラーLEDに交換されたり、前部標識灯(前照灯)がLEDに交換されたり、といった事例は多い。東急3000系でも、リニューアル前からこうした改修は行なわれていた。
日常的に利用している普段使いの電車でも、細かいところでいろいろ変化が起きているものなのである。




















































