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ソラシドエア、12月1日より新社名で出発。キャッチコピーは「メイク・ワンダー!」

首都圏での認知向上へ取り組み強化

2015年12月1日 社名変更

 ソラシドエアは12月1日、スカイネットアジア航空株式会社から株式会社ソラシドエア(Solaseed Air Inc.)に社名を変更した。これに合わせて、社名変更の目的や新たなプロモーション戦略を説明する記者会見が実施された。

 ソラシドエア代表取締役社長の高橋洋氏は冒頭の挨拶で、「私は4年半前に当社に入ったが、その時がちょうど新しいブランド“ソラシドエア”を導入するスタートのタイミングだった。ソラシドエアとして4年半やってきたことを再度整理し、この会社に足りない部分をもう1度練り直して、新しい部分を付け加えることで、文字どおり“空から笑顔の種をまく”ソラシドエアの第2のスタートをしたいと思っている」と社名変更に対する意気込みを述べたあと、同社の沿革と、そのなかで生まれた「ソラシドエア」のブランドや、社名変更に至る経緯を説明した。

 同社は1997年に設立されたパンアジア航空に端を発し、1999年に「陸の孤島・宮崎に一番大事なのはエアラインである」と宮崎県の人達が中心となってスカイネットアジア航空を立ち上げ、ボーイング 737-400型機の中古機材やスタッフを集めて事業を行なったが、3年で経営が行き詰まることになった。その後、ANA(全日本空輸)や日本政策投資銀行(政投銀)らの支援で再建。2007年に黒字化した。

ソラシドエア株式会社 代表取締役社長 高橋洋氏

 高橋氏が社長に就任した2011年は4期連続の黒字決算中である一方、累積債務の残りもあり、機材も初期に導入したボーイング 737-400型機を使っていた。そこで、「エアラインは安全第一なので、経営のベースは高い品質の確保であるということで思い切って機材を更新して、2014年10月までに3年半をかけて最新鋭のボーイング 737-800型機に切り替えた。これによってハード面はよくなった」と新たな都仕組みを開始。その後も社員750名の“地元に文字どおりのローカルエアラインを作ろう”との想いからの努力が実り、2014年まで8期連続黒字決算、3年前に累積損失を解消、2年前に配当を開始と順調に経営を続けている。

 2011年にスタートした機材更新と併せてイメージ転換も行ない、「空から笑顔の種をまく」との想いを込めた「ソラシドエア」のブランドをスタート。チームカラーを緑にし、制服も変えてスタートし、高橋社長によれば「4年で当初のステージの課題をおおむね解決でき、政投銀からの優先株も解消できた」とする。

 その際にも行なわれなかった新社名への変更だが、今回は「今までのように大手でもLCCでもない、どっちつかずの少し控えめなエアラインから一歩飛躍し、むしろ我々が中心となって、大手の信頼感、LCCのお値打ち感に変わる第3の価値を積極的に作っていく」との考えから決断したものであるという。「安心はANAやJAL(日本航空)のようなレガシーが最も誇る部分、そしてLCCが追求している価格の安さ、この間のどっちつかずのいいとこ取りをやっている限り、いずれは埋没してしまう危機感がある」とし、ファッションの世界におけるハイブランドとファストファッションに対するセレクトショップ、クルマの世界におけるセダンとコンパクトカーに対するSUVといった例を挙げ、既存のエアラインとは違う第3の価値やポジションを積極的に追い求めていくとした。

 現在のソラシドエアの魅力として、高橋社長は「評判がよいのは空港カウンターやCA(客室乗務員)。接触が多いお年寄り、そしてお子様連れのお母さんが非常に多く、夏休みシーズンでは174席のうち3分の1ぐらいがお子さんということもあるなかで、ニコニコと、まさに小さな託児所を再現したような状態になる。当社のCAのホスピタリティの高さは素晴らしいと思っている」と誇るほか、「ローカルエアラインということで、機体に自治体の名前をもらって、一緒に地域のPRをする『空恋プロジェクト』や、女性だけのチームで女性のお客様にどのようなサービスを提供するか考える『ソラ女子』。ローカルエアラインならではのチャレンジで個性を作りつつある」と紹介。新社名となった同社では「空から笑顔と言ったときにソラシドエアが目指す笑顔はこうである」というものを、新しいこと/ものを構築することはもちろん、すでに魅力として受け止められているものや実施しているものについても分かりやすい形で示していくという。

 一方、ブランド認知度については「九州では2人に1人が知り、3人に1人は乗っていただいているイメージ」とある程度の浸透を見せているそうだが、首都圏では認知度が低く、「首都圏に対してソラシドエアが作ってきているブランドをどう浸透させるか」が課題になっているという。高橋社長は「社名変更は、改めて企業としての認知、ブランディングをもう1度やり直す、最大のチャンスではないかと思っている。これまでは再建モードが強くて、お金もエネルギーもあまりかけてこなかった。社名変更は我々にとって唯一最大のチャンスということで、人もお金もかけて、正面から取り組みたい。これをやり抜くことで、ややもすると安全第一で、慎重になりがちな当社社員のマインドを、思い切り前に、外に向けたい。その面ではインナーの改革でもあると思っている」と述べ、首都圏に対してのブランド確立や社員の意識改革を、社名変更の大きな目的として挙げた。

 この首都圏でのブランド確立を狙う背景は、搭乗率の問題などもある。以前は64~65%程度の搭乗率であった東京~九州5県間の路線は、現在平均で61%程度になっているという。これは、北陸新幹線の開通で大手が北陸から九州へ路線を切り替えたことやLCCの台頭などで競争が激化し、(需要減ではなく)供給過剰になっていることが原因であるとする。同社としては、これを「一刻も早く」65%へ回復したいとの意向を持っている。そこで、人口規模で九州の就航地5県(約700万人)の6~7倍の規模を持つ首都圏でソラシドエアのブランドを周知し、高橋社長曰く「玄関に入っていただく努力」をすることで、顧客獲得に繋げたい考えだ。

2011年7月に「ソラシドエア」のブランドを立ち上げ、ある程度は浸透
「空から笑顔の種をまく」を基本コンセプトに、さまざまなサービスを提供
課題は首都圏での認知度。同じく羽田発着便を運航するスカイマーク、AIR DO、スターフライヤーに比べると、経営は順調な一方で、ブランド認知度が格段に低いという
社名変更を、企業認知向上、ブランディングのチャンスと位置付ける
社名変更後の短期間ではなく継続的にブランド蓄積を図るなどのポイントを紹介
ソラシドエアの新たな方向性は「新しい笑顔を生む価値」の追求
レガシーの安心感、LCCの低価格とは違う、「第3の価値」を創造する

新たなキャッチコピーは「メイク・ワンダー!」

新たなキャッチコピーは「メイク・ワンダー! 今までにない、新しい笑顔のために。」

 高橋社長は、このような社名変更の経緯や目的を紹介したうえで、「そのなかで我々は『メイク・ワンダー!』という言葉を選んだ。ワンダーという言葉に込めた想いは、安心ともお得とも違う新しい笑顔、期待を遥かに超えた驚き、感動、ワクワク感をソラシドエアが提供できればよいと思っている」と説明。

 さらに、虹のマークを付与しており、「お年寄りも若い人も虹を見ると心が晴れて、胸が躍って、まさにワンダーな気分になるのではないかと。このモチーフをアグレッシブでスピード感のあるシンボルへと昇華させたい」と語った。

 先にも少し言及があったが、こうした驚きや感動、ワクワク感に繋がる魅力について、同社がこれまでに実施してきたことを、いま整理しているところであるという。その例として「機齢が2.5歳と若い」「座席がゆったりしている」「機内照明がLEDのおだやかな明かりで居心地がよい」「ホスピタリティの高いCA、空港カウンターのスタッフ」などを列挙。

 さらに、地元である九州の魅力を伝える取り組みとして、トビウオ(あご)に柚子を加えて作られた「あごだしスープ」を取り上げ、「ソラシドエアらしい暖かい取り組みだと喜んでもらえている。ポイントは、地元のよさを、地元企業と一緒に、我々の機内を使って提供して、九州の魅力を感じてもらうこと」と説明した。

 もう1点、「ソラ女子」の取り組みについても紹介。一番人気は国際線ファーストクラスで使われるような素材で作ったクッションで、販売できないかという意見をもらうほどであるという。また、年配の人や妊婦にはクッションのサービスも好評とのことだ。一方で、女性用トイレについては、特にビジネス客からの厳しい意見もあり、試行錯誤を繰り返しながら取り組んでいきたいとした。

 こうした従来の取り組みについて整理し、「今まで普通にやっているサービスでも、うまく整理してメッセージの仕方を工夫すれば、それ自体が一定の価値を生み出す」(高橋社長)とし、新たな価値として示していく。

期待を超えた驚き、感動、ワクワク感……「ワンダー」を提供するエアラインを目指す
新生したソラシドエアのメッセージ
メイクワンダー!のマークにある虹に込めた想い
既存の「ワンダー!」を、飛行機の機体や機内サービス、ソラ女子の観点で紹介

 一方、メイク・ワンダー!の新たなサービスとして、3つの“ワンダー!”も提供する。

 1つ目が、11月30日に発表された、三井住友カードとの提携による「Solaseed Air カード」の提供。具体的なサービス内容などについては当該ニュース記事を参照されたい。

 高橋社長は「ソラシド スマイルクラブというマイレージシステムがあったが、カードという具体的な形にすることで知名度も上がり、使い勝手もよくなる。今回ボーナスポイントも提供するし、“三井住友VISAカード”の威力もお借りして会員数を増やし、使い勝手を高めていきたい」と説明。

 併せて、「マイルが効率よく貯まり、クレジットのカードのポイントをソラシドエアのマイルとして換算もできる。大手に比べてマイレージの効率がよく、7000マイルで九州~羽田間の航空券と交換できる。買い物をして、マイルを貯めて、チケットを入手していただければありがたい」とアピールした。

 なお、現在、マイルプレゼントや、毎月抽選で10名(計40名)に往復航空券をプレゼントするキャンペーンを実施している。今後の同カードのサービスについては、「現時点では具体的な予定はない」と念押しがあったうえで、「まずはカードを作ってお客様のニーズを掴み、そこで我々ができることはなにかを考える。例えば、提携先などの検討にしても、現状のマイルを貯めたい、買い物をしたい、(ゴールドカードなら)空港ラウンジも使えるといったところからはじめて、お客様のニーズを見極めてどこかと組んでサービスの魅力を拡げるのが、さらなる展開に繋がるのであれば前向きに考えたい」とした。

 また、記者会見には三井住友カード代表取締役 専務執行役員の松田祐一氏も同席し、「私どももコーポレートカラーがフレッシュグリーンという、グリーンを使っているので相性のよい会社だと思っている。提携カードについては、ぜひソラシドエアのファンを、一緒に、たくさん募集させていただき、そのカードを使った履歴からワン・ツー・ワンのサービスを実現させて、なおかつそれを高橋社長が目指している新しいサービスとして実現することで、他社との差別化に繋げていっていただければと思っている。カード会社としての縁の下の力持ちになれればと思っている」と挨拶した。

Solaseed Air カードの説明をする高橋社長
三井住友カード株式会社 代表取締役 専務執行役員 松田祐一氏

 2つ目は機内販売のサービス向上で、これまで地域に根ざした商品として8種類を機内限定販売してきたが、現金での決済にのみ対応していた。今回新たに機内販売用のハンディターミナルを導入し、クレジットカード決済に対応。先述のSolaseed Air カードを利用すれば10%割り引きで購入できる。

 3つ目はWebサイトのリニューアルで、PC版、スマホ版ともにリニューアルし、領収書もWeb上で発行できるようになった。加えて、「Webサイトの用途も含めて拡大したい」とし、例えば外国語対応などの、Webサイト機能のさらなる拡充を図る考えを示している。

 高橋社長は「12月1日の(メイク・ワンダー!の)中身はこの3つだが、これから第2弾、第3弾とさまざまに中身を充実させながら、文字どおり『あっこんなこともできるんだ』と首都圏のお客様に感じていただける取り組みをしていきたいと考えている。12月1日には新聞と雑誌、インターネットで首都圏を含めた全国にメッセージを発信し、これからも例えば電車の中吊り広告やデジタルサイネージなども活用しながら、首都圏に集中的に情報発信する。まずはソラシドエアという会社の存在、そして我々がなにを追求しているのか、そのメリットはなんなのかを発信し、首都圏をターゲットに、全国に名の知れたエアラインになるよう努力していきたい」とまとめた。

ハンディターミナルを導入し、機内販売でクレジット決済に対応
手前は好評のブランケットやクッション。奥は機内販売品などのオリジナル商品
12月1日から機内販売する新商品。マリークヮントで人気を集めるフレンドシップネックレスの機内販売限定デザイン「ソラシドエア × マリークヮントフレンドシップ ネックレス」(2000円、メッセージカード付き)
同じく12月1日からの機内販売新商品。はるさめを、熊本で親しまれる「太平燕(タイピーエン)」と、長崎で親しまれる「ちゃんぽん」の風味で食べられる「ソラシドはるさめ」(1000円、太平燕風味×4食、ちゃんぽん風味×4食入り)

(編集部:多和田新也)