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観光庁など、インバウンド戦略を紹介する「観光立国推進セミナー in 神戸」を開催
訪日外国人旅行客2000万人時代へ、どう取り組むのか
(2015/6/23 13:22)
- 2015年6月20日 開催
観光庁、国土交通省近畿運輸局、神戸市が主催する「観光立国推進セミナー in 神戸」が6月20日、神戸商工会議所で開催された。
このセミナーは、政府が目標とする「訪日外国人旅行客2000万人時代へ、どのように取り組んで行くべきか」をテーマとして講演が行なわれた。プログラムは下記のとおり。
・基調講演 観光庁長官 久保成人氏
「観光立国の実現に向けて」
・特別講演 衆議院議員 盛山正仁氏
「国際観光と地域活性化」
・講演 神戸市長 久元喜造氏
「神戸の観光について」
・講演 トリップアドバイザー株式会社 代表取締役 原田 劉 静織氏
「地域の魅力を外国人旅行者に知ってもらうために」
いずれも興味深いものだったが、基本的に撮影禁止となっていたため、官公庁の講演である久保観光庁長官のセッションを公開扱い資料とともに紹介する。
基調講演 観光庁長官 久保成人氏 「観光立国の実現に向けて」
久保観光庁長官の基調講演は、観光の現状や観光庁が推進している「アクション・プログラム2015」、そして6月12日に発表されたばかりの「広域観光周遊ルート」計画に関するものだった。
観光の現状については、予測を超えて増え続ける訪日外国人旅行者数について紹介。政府は2020年の東京オリンピック・パラリンピックの年までに2000万人という数字を目標として掲げていたが、2012年が836万人、2013年が1036万人、2014年が1341万人を達成。2015年は5月の時点で753.8万人と、2014年より44.9%増であるという。
数字的に伸びているのがアジアの国々で、国別で唯一マイナスとなっているのがロシア。このことから、ロシアの経済の調子が今ひとつであることも分かるという。
この訪日外国人旅行消費額は統計上輸出と同じ扱いとなり、2014年度で2兆円を突破。観光庁の属する国交省の所管産業である造船・船用品の1兆5000万円をすでに超えているという。訪日外国人旅行消費額の増加により、国際旅行収支も黒字(日本人が海外で消費する金額より、訪日外国人が日本で消費する金額が上回る状態)に。これは、1959年度(昭和34年度)以来55年振りの黒字とのことだ。
一般に訪日外国人の消費というと、ニュースなどによる中国人の“爆買い”が話題となるが、実は国によって消費する傾向が異なっている。訪日動機としては、「日本食を食べること」「ショッピング」「日本の歴史・伝統文化体験」が大きな理由として挙げられ、それぞれ国別に消費額の傾向が異なる。アジア諸国はショッピングが強く、欧米は日本の歴史・伝統文化体験が強くなっているという。
実際に、久保長官自身も高野山を訪ねた際に、その主要な交通機関となっている南海電鉄の特急「こうや」を利用。その際のアナウンスが、日本語→英語→仏語の順に流れ、中国語や韓国語が流れなかったという。これは、南海電鉄自身のマーケティングの結果だろうとのことだ。
一般に訪日外国人の増加というと、アジア諸国からとくに増え、中国・韓国・台湾の人の購買意欲という形で捉えがちだが、細かく見るとそれだけではない動向がある。たとえば購買では、電気製品は中国、ベトナム、インドの順で、医薬品・化粧品は台湾、中国、香港の順。そして和服・民芸品はフランス、カナダ、英国の順となっている。一般にニュースで報道されることは間違いではないが、それだけでない傾向を把握することも大切だと気が付かされる内容だった。
アクション・プログラム2015については、政府の取り組みを詳細に説明。広域観光周遊ルートについては、神戸にかかわる「美の伝説」と「せとうち・海の道」形成計画概要を紹介するものだった。詳細などについては、資料画面を見ていただきたい。
盛山正仁衆議院議員は、観光庁の元となった議員立法の提唱者で、これからの観光について示唆に富む講演を行なった。久元神戸市長は、神戸の観光の実体をビジュアライズしたビッグデータで説明。トリップアドバイザー代表取締役 原田 劉 静織氏は、トリップアドバイザーの口コミデータ分析結果を説明。訪日外国人にとって、どのような施設が人気になるのかなどのアドバイスが行なわれた。
この観光セミナーは、久保観光庁長官、盛山議員、久元神戸市長、トリップアドバイザー代表取締役 原田 劉 静織氏とも、データや事実に基づいた分析が提示されたほか、その分析結果も意外性のあるものが多かった。セミナー受講者にとっても、有意義な時間を過ごすことができたと思われる。