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ANAとトヨタ紡績が国内線普通席のシートを共同発表
スキージャンプ選手の高梨沙羅さん登場、新シートは膝腰の負担が軽減されて感動
(2015/4/21 20:31)
- 2015年4月21日発表
ANA(全日本空輸)とトヨタ紡績は4月21日、国内線普通席のシートを共同開発したと発表した。
自動車のシートではスポーティーなモデルからラグジュアリーなモデルまで様々なシートを開発、製造してきたトヨタ紡績だが、航空機用シートの開発、製造は初となる。開発にあたっては、ANAのエアラインとしてのノウハウやニーズを学び1年間の検討、準備、研究期間を経てから開発に2年間、計3年の期間を要した。2012年より国内線に薄型軽量シートをボーイング777やボーイング787に導入してきたANAは、この新型シートをボーイング767-300に導入し、国内線普通席の快適性をさらに向上させる。導入時期は2015年6月~2016年度で、同型機6機(座席数合計1560席)への装着を予定する。
なお、トヨタ紡績は、2014年にJR東日本、JR西日本と共同開発したシートをE7系、W7系のグランクラスへ導入したのに続き、さらに航空機と製品が採用されるジャンルを拡大した。
発表会では、ANA 代表取締役社長 篠辺 修氏の挨拶から始まり「ボーイング767のシート交換を考える時期になっていて、この機会により快適な新しいシートの導入にチャレンジしたいと考え、自動車の世界で高い技術力と経験を持つトヨタ紡織様のお願いをしたところ、快諾を頂き今日に至った」と、このプロジェクトが生まれた背景を語った。またトヨタ紡織 代表取締役社長 豊田周平氏は「長年、自動車シートの快適性、安全性を追求してきましたが、今回初めて航空機のシートにチャレンジすることになり、航空機のシートに求められるものを考え抜きました。そして胸を張って誇れるシートができたと思っています。また今回こういうチャレンジの機会を与えてくれて、様々なノウハウを指導してくださった全日本空輸さんに心から感謝します」と語り新しい挑戦ができた喜び、感謝と製品に対する自信を語った。
ユーザーアンケートで集まる改善の要望の4割が座席に関するもの。また、短距離飛行を頻繁に繰り返す国内線の整備性や清掃のしやすさという観点でもシートは重要な要素だ。
トヨタ紡織 ACT部長 傍嶋政道氏は、自動車でも求められる限られた空間での「人をしっかり座らせる(支える)」「快適な座り心地」というノウハウと、様々な飛行機産業における許認可の取得の大変さを語った。なおトヨタ紡織は、今回の設計における「仕様承認」と製造における「装備品製造検査認定事業場」を取得している。
続いて発表会には、スキージャンプ選手の高梨沙羅さんも登場。今回発表された新しいシートを早速体験した。身長152cmと小柄な沙羅さんは「すごいびっくりしたんですけど、足がちゃんとついているのが感動!」と語った。世界で戦う彼女は飛行機に乗る機会が多いが、多くの飛行機は座っても足が床に着かず膝や腰の負担がかかっていてそうだ。時には競技にも支障が出てしまう事もあったとのことで、こうして足がつくことに感動したそうだ。今まではずっと座っていられなかったので廊下を行ったり来たりして負担を軽減していたこともあったが、このようなシートならずっと読書したり、寝ることができて快適に過ごせそうと笑顔で語った。ちなみに、現在運行されているANA国内線シートの平均的高さより、新型シートは5cmほど座面が下げられている。
欧州勢のシェアが高い航空機のシートにおいて、日本のメーカーとの共同開発は、長期的運用における整備部品の調達コストなどの経済的メリットのほか、開発時においても日本語でコミュニケーションをとることにより微妙なニュアンスの説明を伝えやすかったとのこと。
ANA代表取締役社長 篠辺 修氏は「飛行機そのもののMRJも含め、技術や品質についての日本製への期待は大きく意思疎通もしやすい。日本においてこれだけたくさんの自動車産業があり、たくさんシートを作っているのだから航空機用の国産シートがあってもおかしくないだろうとの想いは常にあった。だから今回の取り組みを嬉しく思うと同時に、これがきっかけでANAのみならず世界の航空機に採用されると我々も嬉しく思う」と今回のプロジェクトについての想いを語った。