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新しくなる東西線 南砂町駅、どう変わる? ホーム拡張+線路増設で乗り降りしやすくなる現場を見てきた

2024年5月7日 公開

5月11~12日にかけて行なわれる工事運休の告知。当日に東西線を利用する予定がある方は、迂回が必要だ。

 すでに告知されているように、東京メトロは5月11~12日にかけて、東西線の東陽町~西葛西間を終日運休として、南砂町駅の前後で線路切り替え工事を実施する。

 これは、同駅で行なわれている大規模改良工事に伴って実施する、線路切り替えの第一陣となるものだ。それに先立ち5月7日に、南砂町駅が報道公開された。

大規模改良工事が進行中の南砂町駅。地上は工事現場や工事ヤードなどがあり、その間を縫うようにして仮通路が設けられている
現行の改札口と出口は5月10日まで。13日から全面的に新しい改札口と出口に切り替わる

南砂町駅の大規模改良工事とは

 東西線は東京メトロのみならず、首都圏全体で見ても混雑度の高い路線であり、当然ながらラッシュ時の運転間隔は短い。

 また、南砂町駅自体、2000年代に入ってから利用が大きく伸びている。1990~2000年にかけての伸びは1割増程度だが、2000~2019年にかけての伸びは5割増ぐらいになっている。これは、駅の近隣が工場地帯から住宅地帯に変わったことによるもの。2022年度の数字で、1日の利用者は5万4000人にのぼる。

 利用者が増えれば乗降にかかる時間も延びるが、それによって停車時間が長くなると、後続の列車が頭を押さえられてしまう。それでは遅延が玉突き式に波及することになってしまい、安定輸送の観点からすると具合がわるい。また、手狭なコンコースや改札に多くの利用者が集中すると、人の流れも滞る。

 そこで、中野方面に向かう線路(B線)について、ホームと線路を増設する工事を実施することになった(都心を貫通する地下鉄では、一般的な「上り線」「下り線」という呼称はピンとこない。そこで帝都高速度交通営団の時代から、「A線」「B線」の語を用いている)。

 ホームと線路が1本しかない場合、順番に1本ずつ発着させるしかない。しかし2本あれば、片方のホームで客扱いを行なって発車する横で、もう1本の線路に後続の列車を入れることができる。これがいわゆる交互発着で、JR中央快速線の新宿駅や、東海道新幹線の主要駅で日常的に行なわれている手法だ。

 南砂町駅の改良工事では、線路とホームの増設にあわせて、既存のホームも拡幅する。また、現在は改札が駅の両端にあるが、これを中央に移設・集約するとともに広いコンコースを確保する。これにより、南砂町駅で乗降する利用者の流れも円滑になる。自動改札機の通路数は、現在は中野方が3通路、西船橋方が5通路だが、新駅では7通路となる。

 次の第2回切り替え工事では、A線を今のB線につなぎ替える工事を行なう。これで今のA線が空くので、トンネルを拡張してA線を北側に移設するとともに、ホームの拡幅(6m→9m)を実施する。

 そして最後の線路切り替え工事で、A線をもとの位置に戻して最終形態を完成させる。この大規模改良工事は、2027年度の完了を予定している。改良工事が完成すると、駅構造は島式1面2線から島式2面3線になる。このうち中間の線路(今のB線)は前後とも、A線・B線の両方から出入りできるようになる。

東西線の主力・15000系電車は、一般的な1300mmよりも幅が広い1800mmの開口幅を持つ、いわゆるワイドドア車。これは乗降の迅速化が狙い
現在の南砂町駅は、いわゆる島式1面2線の構成(報道公開用の資料より。以下2点も同様)
改良工事のおおまかな流れ。今回の線路切り替えにより、B線を既存線の南側に新設された線路につなぎ替えるとともに、今のB線との間に新設したホームについて、供用を開始する
交互発着のイメージ。左右の線路で交互に発着を行なうと、後続列車を待たせずに駅に入れることができる

 この南砂町駅の工事で興味深いのは、既存のトンネル躯体を取り囲むようにして新たなトンネル躯体を構築していること。これは、列車の運行を継続しながら工事を行ない、かつ、ホーム拡張や線路の移設を可能とするため。ただし現場の地盤は強固ではないため、既存トンネル躯体の変状防止などに、ひときわ注意を払う必要があっただろう。

切替前のB線ホーム。手前側は鉄骨だけで区切られているため、向こう側にできた新しいホームと線路が見える
これは2019年6月の撮影。トンネル躯体の線路側に囲いを設けて安全を確保したうえで、その向こう側で境界部分にある既存トンネル躯体の撤去、掘削と新たなトンネル躯体の構築、ホームなどの構造物設置などを行なった

 なお、東西線では南砂町駅だけでなく、飯田橋駅~九段下駅間の折り返し設備整備や、茅場町駅のホーム延伸と停止位置の変更・階段およびエスカレーターの増設といった改良工事も進められている。

新たに加わる施設を見る

 報道公開の対象となったのは、(新しい)1番出入口、コンコース、B線ホーム、改札。

新しい1番出口。まだサイン類は裏返しになっており、切替工事の当日に付け替えることになっている。駅事務室は旧1番出口の下の改札口から、ここに移る
1番出口から地下に降りて改札に向かう通路。本線がカーブしているため、その上に設けられた通路もカーブしている。実は、カーブした本線のトンネル躯体と、駅施設を構成する直方体の躯体が噛み合った複雑な形状になっている。地下のことなので外からは見えないが
その反対側には、地上に出るためのエレベーターの1つがある。天井に大きな張り出しがあるのは、ほかの地下構造物との兼ね合いと思われる
通路の左右両端に排水溝が設けられているが、その上に壁が張り出している構造がおもしろい
新しい改札口・券売機設置エリア。左手に自動券売機が並ぶ。ここの天井には、地上から光が入る天窓を設けてあり、これをトップライトという。自動改札機は7通路となる
まだ自動改札機と自動券売機は設置されていない。これは、切替工事の際に今の駅から移設するため。現行の改札口は東西両方とも閉鎖になるので、機器がごっそり移動することになる
こちらは切替工事前の中野方改札口(旧1番出口に通じる)。自動改札機は3通路(反対側の西船橋方にある改札は5通路)
ラチ内コンコース。切替工事前と比較すると、とても広々している様子が分かる
新しいB線ホームの中野方
新しいB線ホームの西船橋方。切替の時点では可動柵は設置されず、後日の設置となる
レールはコンクリート枕木に取り付けてあり、それを防振ゴムを介してトンネル躯体に固定している。これを弾性枕木直結軌道といい、保守負担の軽減と騒音・振動の抑制を両立させている
新しいB線ホームと既存ホームの間にいくつか通路を設けて、行き来を可能にする。そのため、仮囲いに設けられた開口がこれ。向こう側を電車が通過しているのが分かる。切替工事のあとは、ここに線路をまたぐ通路ができる
別の場所で。防護ネットの向こう側に既存ホームが見える
ホームと改札を結ぶ階段・エスカレーターの上がガラス張りになっていて、その向こう側に改札が見える。地下駅について回る、閉塞感を緩和するための工夫か
こちらは改札を出たところの天井にあるトップライト。暗さや閉塞感を抑えられるだけでなく、照明の節電にもつながるかもしれない

東西線ならではの特徴

 東西線のうち江東区内を走る区間は、地上の海抜が低い。そのため建設当初から、駅構内への浸水を防ぐための工夫がなされている。出口からの水の侵入を防ぐ防潮板が用意されている駅はめずらしくないが、東西線はさらに厳重だ。

旧1番出口。看板にあるように、現場の標高は1.2mと低い。周囲の地面よりも少し高い位置に開口がある様子が見て取れるが、工事が始まる前はもっと段差があったかもしれない
隣の東陽町駅。古くからある出口では、このように開口の位置を高めて、浸水防止の一助としている。ただし、こうした段差はバリアフリー化に逆行するため、近年にできた出口には段差はない。代わりに扉や防潮板で対処する
これも東陽町駅。浸水を防止するための頑丈な扉があり、その内側には駅構内への浸水を防ぐため、防潮板を設置するための溝がある
こちらは南砂町駅の新しい1番出口。東陽町駅と同様に、防潮板をはめ込むための溝がある
さらに、スライド式の頑丈な扉が設けられている
扉を開閉する際には、この「走行装置」にハンドルを突っ込んでグルグル回す仕組み

おわりに

 どうして、線路をつなぎ変える工事に2日もかかるのか。実は、単に線路をつなぎ変えるだけでなく、分岐器(ポイント)を追加する作業が行なわれる。

 分岐器を追加するためには、まず分岐器を現場まで搬入しなければならない。そして既存のレールを切断して取り外したうえで、そこに分岐器を設置してレールをつなぎ直すのだ。相応の手間がかかるのはムリもない。また、線路に手が加われば、それと連動する形で信号・通信関連設備にも変更が必要になる。

 そのほか、前述したように出改札設備の移設が行なわれる。さらに、旧B線の線路をまたぐ通路を設置したり、必要に応じて仮囲いを撤去したりといった作業も必要になる。やることは案外と多いのだ。

新しいB線ホームに設置される出口案内の一例。右の構内図にあるように、5月13日から改札口が1か所に集約される