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新しくなる東西線 南砂町駅、どう変わる? ホーム拡張+線路増設で乗り降りしやすくなる現場を見てきた
2024年5月7日 17:30
- 2024年5月7日 公開
すでに告知されているように、東京メトロは5月11~12日にかけて、東西線の東陽町~西葛西間を終日運休として、南砂町駅の前後で線路切り替え工事を実施する。
これは、同駅で行なわれている大規模改良工事に伴って実施する、線路切り替えの第一陣となるものだ。それに先立ち5月7日に、南砂町駅が報道公開された。
南砂町駅の大規模改良工事とは
東西線は東京メトロのみならず、首都圏全体で見ても混雑度の高い路線であり、当然ながらラッシュ時の運転間隔は短い。
また、南砂町駅自体、2000年代に入ってから利用が大きく伸びている。1990~2000年にかけての伸びは1割増程度だが、2000~2019年にかけての伸びは5割増ぐらいになっている。これは、駅の近隣が工場地帯から住宅地帯に変わったことによるもの。2022年度の数字で、1日の利用者は5万4000人にのぼる。
利用者が増えれば乗降にかかる時間も延びるが、それによって停車時間が長くなると、後続の列車が頭を押さえられてしまう。それでは遅延が玉突き式に波及することになってしまい、安定輸送の観点からすると具合がわるい。また、手狭なコンコースや改札に多くの利用者が集中すると、人の流れも滞る。
そこで、中野方面に向かう線路(B線)について、ホームと線路を増設する工事を実施することになった(都心を貫通する地下鉄では、一般的な「上り線」「下り線」という呼称はピンとこない。そこで帝都高速度交通営団の時代から、「A線」「B線」の語を用いている)。
ホームと線路が1本しかない場合、順番に1本ずつ発着させるしかない。しかし2本あれば、片方のホームで客扱いを行なって発車する横で、もう1本の線路に後続の列車を入れることができる。これがいわゆる交互発着で、JR中央快速線の新宿駅や、東海道新幹線の主要駅で日常的に行なわれている手法だ。
南砂町駅の改良工事では、線路とホームの増設にあわせて、既存のホームも拡幅する。また、現在は改札が駅の両端にあるが、これを中央に移設・集約するとともに広いコンコースを確保する。これにより、南砂町駅で乗降する利用者の流れも円滑になる。自動改札機の通路数は、現在は中野方が3通路、西船橋方が5通路だが、新駅では7通路となる。
次の第2回切り替え工事では、A線を今のB線につなぎ替える工事を行なう。これで今のA線が空くので、トンネルを拡張してA線を北側に移設するとともに、ホームの拡幅(6m→9m)を実施する。
そして最後の線路切り替え工事で、A線をもとの位置に戻して最終形態を完成させる。この大規模改良工事は、2027年度の完了を予定している。改良工事が完成すると、駅構造は島式1面2線から島式2面3線になる。このうち中間の線路(今のB線)は前後とも、A線・B線の両方から出入りできるようになる。
この南砂町駅の工事で興味深いのは、既存のトンネル躯体を取り囲むようにして新たなトンネル躯体を構築していること。これは、列車の運行を継続しながら工事を行ない、かつ、ホーム拡張や線路の移設を可能とするため。ただし現場の地盤は強固ではないため、既存トンネル躯体の変状防止などに、ひときわ注意を払う必要があっただろう。
なお、東西線では南砂町駅だけでなく、飯田橋駅~九段下駅間の折り返し設備整備や、茅場町駅のホーム延伸と停止位置の変更・階段およびエスカレーターの増設といった改良工事も進められている。
東西線ならではの特徴
東西線のうち江東区内を走る区間は、地上の海抜が低い。そのため建設当初から、駅構内への浸水を防ぐための工夫がなされている。出口からの水の侵入を防ぐ防潮板が用意されている駅はめずらしくないが、東西線はさらに厳重だ。
おわりに
どうして、線路をつなぎ変える工事に2日もかかるのか。実は、単に線路をつなぎ変えるだけでなく、分岐器(ポイント)を追加する作業が行なわれる。
分岐器を追加するためには、まず分岐器を現場まで搬入しなければならない。そして既存のレールを切断して取り外したうえで、そこに分岐器を設置してレールをつなぎ直すのだ。相応の手間がかかるのはムリもない。また、線路に手が加われば、それと連動する形で信号・通信関連設備にも変更が必要になる。
そのほか、前述したように出改札設備の移設が行なわれる。さらに、旧B線の線路をまたぐ通路を設置したり、必要に応じて仮囲いを撤去したりといった作業も必要になる。やることは案外と多いのだ。