ニュース

駅でスーツケースを預けて飛んだ先の空港で受け取り。名鉄名古屋&セントレアで始まった「オフエアポート・チェックイン」を見てきた

2024年2月4日~11日 実施

オフエアポート・チェックイン推進プロジェクトが取り組みを公開した

 中部国際空港ら「オフエアポート・チェックイン推進プロジェクト」は2月2日、名鉄名古屋駅と中部国際空港駅、新千歳空港で行なう実証実験の概要を公開した。

 本プロジェクトは、航空旅客の手荷物を駅周辺で預かり、輸送用カートを使って空港まで鉄道輸送したのち持ち主が搭乗予定の飛行機に搭載、目的地の空港まで届けるというもの。

 国土交通省の「共創モデル実証プロジェクト」を活用した取り組みで、同社のほかANA、JAL、北海道エアポート、名古屋鉄道、Airporter、エージーピー、次世代空港技術研究会らが参画しており、実証実験の期間は2月4日~11日を予定している。

実証実験の概要

 実証実験では、ANAのNH715便とJALのJL3117便(ともに16時55分セントレア発~新千歳行き)および、ANAのNH712便(17時00分新千歳発~セントレア行き)、ANAのNH714便とJALのJL3118便(ともに19時20分新千歳発~セントレア行き)を対象にしている。

 荷物の受け付けは、名古屋側が名鉄百貨店本店メンズ館1階「名鉄商店」(10時~12時受付)、札幌側がJR北海道 札幌駅 東コンコース北口(9時~12時受付)で、利用は無料。

 名古屋側を例に挙げると、該当便利用者が名鉄商店で預けた荷物は、名鉄名古屋駅から専用列車に積み込まれて中部国際空港駅まで輸送。利用者が搭乗予定の飛行機に積み込まれて、新千歳空港で受け取れるという仕組み。荷物は通常の預け入れ手荷物と同様に空港のバゲージクレーム(手荷物受取所)から排出される。

 駅~空港間で荷物を持ち歩く必要がなくなることで、ホテルのチェックアウト後などに手ぶらで周辺観光や買い物ができるようになり、空港では手荷物を預け入れる手間・時間を省くことができる。また、この取り組みが推進されれば、バスや鉄道車両内に持ち込まれる荷物が減るため、車両内の混雑解消にも一役買う。

 本実証実験では、各エアラインと連携するオフエアポート・チェックイン(OAC)アプリによって、預けた荷物の状況を逐一利用者にメールで通知する。OACアプリはエアライン側と情報を共有しているため、例えば荷物は空港に来ているのに利用者が来ていない、といった状況を把握できるという。利用者視点では、通常(空港)とは異なる手順で荷物を預けても、OACアプリによって荷物の現在地など把握できるため、安心して手ぶら観光していられるというわけだ。

 今回の実証実験では間に合っていないが、将来的にはOACアプリで周辺の交通・観光案内などを提供する予定で、最終的には荷物のステータスを含む機能がエアラインのアプリに組み込まれるのが理想形とのこと。

今回の実証実験では左のタグを使用するが、今後はリモワのスーツケースなどでも採用されている電子表示式のバーコードタグも用いられるとのこと
電子バーコードは利用者が自宅などで事前にスマートフォンからバーコード発行することもできる
取り組みを説明するNPO法人次世代空港技術研究会 会長 水野一男氏

実際にオフエアポート・チェックインの手順を見てみた

 2月4日~11日に行なう実証実験に先立ち、名古屋側でオフエアポート・チェックインの手順を見ることができた。

 受付は名鉄百貨店本店メンズ館1階「名鉄商店」(愛知県名古屋市中村区名駅1-2-4)のなかに設置しており、カウンターのタブレット端末を使って搭乗券や荷物の情報などを登録する。ANA/JALのアプリで搭乗券のQRコードを表示できる必要があり、手順の最後にOACアプリをダウンロードするため、スマートフォンの利用は必須だ。

JR名古屋駅のすぐ南側にある名鉄百貨店本店
メンズ館の1階にある「名鉄商店」
まずは受付でオフエアポート・チェックインを利用する旨を申し出る
手続きは受付にあるタブレットを用いる。まずは利用する出発地を選ぶ。今回は名鉄名古屋駅なので名鉄のロゴをタップ
続いて利用する航空会社を選ぶ
スマートフォンのエアラインアプリを開いて搭乗券QRコードを読み込む
するとタブレット側に便名や搭乗者の情報が渡される
荷物の重さを確認する。実証実験では規定重量を超過した手荷物は扱わない
重量とサイズが規定の数値に収まっていることを確認
危険物が含まれていないかを確認
本実証実験に同意して電子署名する
QRコードを読み込んで搭乗者と荷物タグを紐付ける
RFIDを組み込んだタグを荷物に括りつける
手荷物番号が発行される
メールアドレスと電話番号を登録する。荷物のステータスはこのアドレス宛に逐一通知される
OACアプリのダウンロードリンクが表示されるので、スマートフォンにインストールする。このアプリの位置情報はエアライン側と共有されるため、人と荷物が空港に向かっているかの判断材料になる
預かった荷物はカートへ積み込まれる
利用者とは異なる動線で空港へ向かう。今回は回送電車にカートを乗せていた
名鉄名古屋駅を出発して……
数十分後に中部国際空港駅へ
カートが列車から降りた
ホームを通って空港施設内に。このあとは各エアラインの荷物搬送ルートへ向かう

 こうしたオフエアポート・チェックインの取り組みはかつて東京シティエアターミナル(TCAT)や横浜シティエアターミナル(YCAT)で実施されていたが、テロ対策などを理由に2002年に終了している。

 今回の取り組みは前述のようなメリットのほか、現行の法規内で運用できる点が大きい。RFIDタグやスマホアプリなどによって荷物の輸送を厳密に行なえること、セキュリティ対応でTSA要件も満たしていること(米国便でも利用可能)などが本実証実験の革新的な部分といえる。