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JAL516便、「接地後に突然の衝撃があった」。18分間の脱出の詳細を公開

2024年1月2日 発生

JALが516便と海保機との衝突事故について会見した(写真は同型の14号機JA14XJ)

 JALは、1月2日に羽田空港で発生したJL516便と海上保安庁機の衝突事故について、会見を行なった。説明したのは常務執行役員の堤正行氏と青木紀将氏。

 本件は、1月2日17時47分ごろ、新千歳発のJL516便が羽田のC滑走路に着陸したところ、滑走路上の海上保安庁機と接触、機体が炎上したというもの。JAL側の機材はエアバス A350-900型機(登録記号:JA13XJ)。

 この事故により、機体は全損。516便の379名(乗員12名、乗客367名)は全員脱出しているが、海上保安庁の乗員6名のうち5名が死亡、1名が負傷している。また、JALによると、516便の乗客のうち打撲が1名、捻挫が1名、体調不良が13名いるという。

 なお、国交省が3日午後に公開した管制塔と516便・海保機の交信記録では、海保機に離陸許可は出ておらず、停止位置までの地上走行許可が出ているのみ。

脱出の経緯

 JALによると、516便が羽田空港のC滑走路へ17時47分に着陸したところ、「接地後に突然の衝撃があった」(運航乗務員)という。続いて機体が完全停止したあと、コクピットでは火災の発生はすぐ確認できなかったものの、客室乗務員からの報告で脱出の要ありと認識。乗客の脱出、コクピットからの持ち出し物などチェックリストを確認後、運航乗務員3名もコクピット外へ。

 このとき、すでにL1ドア、R1ドアからの乗客の脱出が始まっており、運航乗務員が逃げ遅れの確認でキャビン後方まで移動したところ乗客を発見。最終的に逃げ遅れのないことを確認してL4ドアから脱出したという。全員の脱出完了は、着陸から18分後の18時05分だった。

 一方、客室乗務員は衝突発生後、乗客に対して大声でパニックコントロールを実施。左側のエンジンから火が見えるとの報告を受けてチーフパーサーが視認、コクピットへ報告した。この際、キャビン後方(39列名より後ろ)はインターフォンが動作しなくなっており、衝突時のダメージでキャビンに煙が充満していたこともあり、後方ドア(L4)については客室乗務員が自己判断で脱出誘導を開始している。

 一部SNSなどで「ドアが開かないと言われた」との報告が挙がっている件については、訓練に「開けてよいドア、開けていけないドアの判断」も含まれており、非常時に開けられないドアについては「強い口調でこのドアはダメ」と伝える社内規定があるため、これが口頭で伝わるなかでそうした認識になったのではないかという。

 また、客室乗務員の指示、乗客の協力もあり、「脱出時に手荷物を持たないことが徹底された」ことが乗客乗員全員の速やかな脱出につながったと説明している。

 その後、脱出した乗客は複数のリムジンバスでターミナルビルへ搬送(18時40分ごろ)、その場で状況の説明を行なった。20時40分ごろには1名ずつヒアリングを開始、早い人は21時過ぎには開放されたとのこと。機体全損のため、預け入れを含む手荷物は回収が困難であり、こうした補償については個別の対応を進めているという。また、当該機には2頭のペット預かりがあったとしている。

着陸の状態

 516便の機材の不具合はなかった。ランディングギアも正常に動作しており、一部で言われているような胴体着陸ではなく、同社は通常の着陸手順が踏まれたことを確認している。エアバス A350は1000フィート以下でランディングギアが出ていないと警告が出る仕組みだが、警告はなかったとのこと。

3名の運航乗務員の役割

 A350は通常2名の運航乗務員で運航可能だが、516便ではOJTのため3名が乗務しており、着陸時に操縦桿を握っていたのはOJT中の副操縦士だったという。ただし、すでに国家資格を取得済みであり、社内規定に基づくOJTであること、その後方にセーフティパイロットと呼ばれる副操縦士がサポートに入っていたことを説明している。

JALのA350-900型機シートマップ。インターフォンが動作しなかったという「後方」は、この39列目より後ろを指す
脱出に使われたR1ドア(写真は同型機)
脱出に使われたL1ドア(写真は同型機)
脱出に使われたL4ドア(写真は同型機)

 羽田空港では一部便で欠航が発生しているため、最新状況は羽田空港のWebサイトで確認していただきたい。