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東急の定額宿泊サービス「TsugiTsugi」に西鉄ホテルズが加わり計127施設に。月2泊は2万3980円で初月無料、30連泊は約30万円

2023年9月7日 実施

東急のTsugiTsugiに西鉄ホテルズの18か所が加わる

 東急は9月7日、定額制回遊型宿泊サービス「TsugiTsugi(ツギツギ)」に西鉄ホテルズの運営する18か所が加わることを発表した。9月15日から予約を受け付ける。

TsugiTsugiとは

 TsugiTsugiは、月々一定額を支払うことで、選択しているプランに応じた日数だけ対象宿泊施設を利用できるサブスクリプションサービスだ。現時点の会員数は約3万名で、2027年度には10万人/1000施設を目指す。

 TsugiTsugiは東急のサービスだが、JR北海道ホテルズをはじめとして、東急グループ以外の提携宿泊施設がいくつかある。提携先は西鉄ホテルズが26法人目とのこと。西鉄グループの施設18か所が加わることで、利用可能な宿泊施設は127か所になる。西鉄といっても九州だけでなく、意外と広いエリアに施設がある。

TsugiTsugiの提携施設例(提供:東急)
今回の提携により、西鉄ホテルズの18施設が加わり、特に九州エリアのラインアップを強化した

 では、どうしてこのようなサービスが始まったのか。説明に立った東急 ホスピタリティ事業部 事業戦略グループ主査の川元一峰氏によると、狙いの1つに、旅行の手配をする際のハードルを低くすることがあるという。

説明に登壇した東急株式会社 ホスピタリティ事業部 事業戦略グループ主査 川元一峰氏

利用者を迷わせないことでハードルを下げる

 例えば宿泊手配であれば、宿泊予約ができるWebサイト(OTA)がいくつもある。それを利用すれば検索はできるが、いきなり大量の宿泊施設が表示されて、しかも多数のプラン設定がある。そのなかから自分に合ったものを選び出すには、相応の知識を要する。

 TsugiTsugiでは毎月、定額の支払を行なっているから、費用はいちいち気にする必要がない。また、エリアごとの提携宿泊施設があまり多くならないようにして、利用者を迷わせないように配慮している。今後の対象施設拡大に際しても、そこはポイントになるという。

定額サービスだから個別の支払は不要。かつ選択肢を絞り込み、利用者を迷わせない工夫をアピールしている(提供:東急)
宿泊体験のハードルを下げることで、リピートを誘発する狙い(提供:東急)

 さらに、AIチャットを利用する「旅先こんしぇるじゅ」で対話式に選択肢を提示する仕掛けがある。ただし、AIチャットが適当な学習をして、いいかげんな提案をしたのでは具合がわるいから、正しいデータを参照して、適切な提案を行なうようにしている。おもしろいのは、この仕組みを開発したのがTsugiTsugiのユーザーであったことだ。

 例えば、方面・人数・目的といった、ざっくりした意図を示すと、AIが提案を出してくれる。ワーケーションをしたいのなら、リモートワーク向きの設備を整えているホテルを提案してくるし、露天風呂でのんびりしたいのなら、露天風呂の設備がある宿泊施設を提案してくる、というイメージ。

 この取材は福岡市で行なわれた。取材に行くと決めたとたんに筆者は「足」と「宿」をパッと手配してしまった。これができるのは、筆者がこの手の話に習熟しており、自分にとって何が必要か、何が必要でないかを承知しているからだ。しかし、旅行が「年に一度の大イベント」という方だと、そう簡単にはいかない。川元氏は「手配そのものが1つの壁になっている」という。

 なお、TsugiTsugiには個人だけでなく法人の契約もある。社員の出張が多い会社であれば、定額支払とすることで出張旅費の削減を期待できるし、自社で保養所を持つ代わりの福利厚生の手段にできる。

TsugiTsugiの個人向けプラン。「えらべる2」と「えらべる5」は日曜~木曜の利用に限定される(提供:東急)
法人向けプランでは、企業が契約して社員に使わせる形になる(提供:東急)

 利用者代表として、花月諒氏は「東京と福岡で会社員をしていたが、ライフスタイルを変えたいと思っていた。そこに『TsugiTsugi』の存在を知って利用するようになった。普段と違う場所で仕事をすることで集中力を発揮できる」と語る。PCを持ち込んで仕事をするには、大きなテーブルと快適な椅子が欲しいが、そうした「仕事向きかどうか」の情報も宿泊先を選択する際に得られる。

 また、「月間の利用可能日数を使いきれなければ、近場で家族や親族を呼んで非日常的な時間を過ごせる」とも。これは、TsugiTsugiが同伴者1名を無料、かつ事前登録不要としている点を活かしたものだ。

宿泊事業者の立場と交通事業者の立場

 では、こうしたサービスを宿泊事業者の立場から見るとどうなるか。季節・曜日による変動は不可避だから、時季や曜日によっては未稼働の客室が増えてしまう。そこでTsugiTsugiでは「えらべる14」以外のプランについて、利用を日曜~木曜に限定している。稼働率が下がりやすい平日の送客を促進すれば、利用の平準化につながる。

 TsugiTsugiは宿泊の用途を限っていないから、個人が仕事に使っても、法人が福利厚生に使ってもいい。いちいち経費を気にすることなく各地の宿泊施設を利用して、休息したり仕事をしたり、取引先や家族、友人を訪れたりする。それが「定額制回遊型」の意図するところだ。

宿泊施設とそれが立地する地域、そして利用者のそれぞれにメリットをもたらすことができれば理想的である(提供:東急)

 宿泊事業者だけでなく交通事業者にも似た傾向があるが、個人の観光旅行と比べると、ビジネス利用がコロナ以前の水準に戻りきっていない。「もうもとには戻らないという見方もあるが、さまざまなカテゴリー間のバランスをとることで、また何か危機が起きても稼働を維持できるようにしたい。また、新たな客層の開拓につながるとの考えもある」(西鉄ホテルズ 副社長 加藤正幸氏)

 なお、TsugiTsugiは宿泊施設が対象であり、「足」の手配は別になっている。しかし、すでにANAやピーチとは提携しており、例えばピーチの割引クーポンを設定している。また、そのほかの交通事業者とも話を進めているという。TsugiTsugiで宿泊予約をとれば、日程と行先が確定するから、それを利用して足の手配までできると理想的であろう。

左から順に、利用者代表の花月諒氏、西鉄ホテルズの加藤正幸氏、東急の川元一峰氏

西鉄ホテルグループの紹介

 最後に、今回の提携によってTsugiTsugiの利用対象に加わる西鉄ホテルズの宿泊施設を2つ紹介する。1つは記者会見場ともなった西鉄グランドホテル、もう1つは延伸なったばかりの地下鉄七隈線・櫛田神社前駅の頭上にある西鉄ホテルクルーム博多祇園 櫛田神社前だ。

西鉄グランドホテルのスタンダードツイン。TsugiTsugiの定額料金で利用できる
西鉄グランドホテルのロビー
西鉄ホテルクルーム博多祇園 櫛田神社前のエントランス
1階には、宿泊客以外でも利用できる「CROOM STAND」というカフェスペースがある
「CROOM STAND」のテラス席。気候がよい時期なら、こういう場所で仕事をするのも気持ちいいだろう
客室だけでなく、2階のコミュニティスペースで仕事をする使い方もある。電源コンセントの備えもある
女性用大浴場。男性用より少し広いとのこと
この辺りのあつらえは女性用らしいところ
通常仕様のダブルルーム。なんと窓際にあるのはトイレ・洗面所・バスルームで、ベッドルームは通路側。TsugiTsugiの定額料金で利用できる
こちらは長期滞在者向けのステイタイプ。客室内に流し台、ドラム型洗濯機、電子レンジ、IHクッキングヒーターの備えがある。TsugiTsugiの定額料金で利用できる
TsugiTsugiでも、追加料金を支払うと利用できるフォース。上下のベッドを足元で交差させているので、頭上の圧迫感が少ない
最寄りの櫛田神社前駅に広告が出ていた