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「紫翠 ラグジュアリーコレクションホテル 奈良」開業。露天付きスイートなど全43室のラグジュアリーホテル見てきた

2023年8月29日 開業

「紫翠 ラグジュアリーコレクションホテル 奈良」が8月29日に開業する

 森トラストとマリオット・インターナショナルは、奈良公園内で「紫翠 ラグジュアリーコレクションホテル 奈良」(奈良県奈良市登大路町62)を8月29日に開業する。

 2016年に奈良県が公舎・吉城園などがある付近一帯をホテル用地として貸し出す方針を発表。森トラストグループのホテルブランド「翠 SUI」と、マリオット・インターナショナルが展開するホテルブランド「The Luxury Collection」のダブルブランドホテル「紫翠 ラグジュアリーコレクションホテル 奈良」として開業することとなった。

紫翠 ラグジュアリーコレクションホテル 奈良の入口。一見してホテルとは思えない歴史ある寺院のような重厚な佇まいの門構え
ホテルエントランス。旧奈良県知事公舎の入口をそのままリノベーションして利用。こちらも歴史を感じさせる佇まいが目を引く
建物のなかに入るとまず最初に目に入る「盆栽」。一般的な宿と違い、レセプションカウンターはなく、そのままラウンジに通される

 近鉄奈良駅から徒歩10分ほど、世界遺産「東大寺」や「春日大社」「興福寺」などを有する奈良公園の西側に立地。古都奈良の有数な文化財の多くが徒歩圏内にあり、観光資源には事欠かない。

 また、宿泊客が最初に足を踏み入れるホテルのメイン棟は大正時代に建造された木造平屋建ての旧奈良県知事公舎をリノベーションしたもので、かつて昭和天皇がサンフランシスコ講和条約批准書に署名した「御認証の間」が現存しており、宿泊しながらも日本の歴史の一端を垣間見ることができる貴重なものとなっている。

昭和天皇がサンフランシスコ講和条約批准書に署名した「御認証の間」。当時のまま残されており、宿泊客のみ見学することができる

 施設はホテルメイン棟と小道を挟んだ向かい、吉城園の一角に新築された地上2階建ての宿泊棟からなる。メイン棟はホテルのレセプションを兼ねるラウンジと、かつての客間をリノベーションしたレストラン「翠葉」(計54席)、知事公舎の蔵をリノベーションした鮨&BAR「正倉」(計8席)が用意されている。

 レストラン「翠葉」では眼前に自然豊かな日本庭園が広がり、食事をしながら四季折々の景色を楽しむことができるようになっており、地元奈良の食材、そして和とフレンチが融合した創作料理を堪能できる。また、鮨&BAR「正倉」では、カウンター8席のみのプレミアムな空間で、奈良の歴史と日本の鮨を融合させた鮨のコース料理を堪能できる。

宿泊客が最初に案内されるラウンジ。ここでチェックインの手続きなどを行なう
旧公舎の客間をリノベーションしたレストラン「翠葉」。全54席で、ダイニング32席(写真)。半個室6席×2室。個室10席×1室となっている
ガラス越しに自然豊かな日本庭園が広がり、四季折々の景色を楽しみながら食事ができる
朝食の一例
夕食の一例
ダイニングフロアの奥、長い廊下の先には完全個室(10席)も用意されている
大正期の趣が随所に残る個室。いまとなってはめずらしくなった日本伝統の雪見障子が目を引く
伊万里をはじめとした調度品も一級品。奈良の灯籠をイメージした照明を取り入れるなど、和モダンな空間に仕立てられている
知事公舎の蔵を鮨レストランとして再生した鮨&BAR「正倉」。茨垂木をモチーフにした入口。ホテル全体、施設の随所に茨垂木のデザインが用いられている
全8席のプレミアム名空間。鮨をメインとしたコース料理が楽しめる

 宿泊棟は今回新たに建造され、メイン棟のある敷地から小道を挟んだ向かい側に位置。全43室を備え、うち23室は専用の温泉風呂や露天風呂付きの客室となっている。

 客室タイプは「スタンダード・スーペリアルーム」が全20室。「デラックスルーム」は全室温泉露天風呂および温泉露天風呂付きで全15室。

「スイートルーム」はジュニアスイートが5室(うち1室は温泉露天風呂付き)、スイートルームが2室、最上級のプレジデンシャルスイートルームが1室で、全8室すべて温泉風呂付きとなる。

 宿泊棟のある敷地内には宿泊客のみが利用できる天然温泉露天風呂付きのプライベートスパ「SUI スパ」もあり、オリジナルトリートメントを受けることができる。

メイン棟のある敷地から小道を挟んだ向かい側にある宿泊棟の入口
門をくぐって最初に目に入るのはプライベートスパのある建物
スパ棟には2名2組まで利用可能なプライベートスパ「SUI スパ」
「SUI スパ」には天然温泉露天風呂が備え付けられている
宿泊棟の入口
向かって右側が「鳳凰」左側が「花鹿」。両棟あわせて全43室
スタンダード・スーペリアルーム(写真はスタンダードキング)は4タイプ全20室
開放感のある大きな窓からは自然豊かな日本庭園を見ることができる
スタンダード・スーペリアルームは通常のバスルームとなる
デラックスルーム(写真はデラックスキング)は4タイプ全15室
デラックスルームは全室に温泉風呂・温泉露天風呂付。檜の湯船に浸かりながら木々を愛でる極上の癒やし空間
ジュニアスイートルームは2タイプ全5室
窓の外には灯籠と日本庭園の木々。ゆったりとした時間を感じる空間
ベッドルームとリビングルームの境には茨垂木のモチーフで区切られている
スイートルームも全室に温泉風呂・温泉露天風呂がある。なお温泉の湯は敷地内から湧き出たものではなく、奈良市内からの運び湯となる
檜の浴槽に浸かり、檜の香り、温泉の湯、そして景色。この3つが旅の疲れを癒してくれる
スイートルームは1タイプ全2室
広々とした空間のリビングスペース。奥にはベッドルーム
リビングスペース奥のベッドルーム
もちろんこの部屋にも大きな窓がしつらえられており、眼前には日本庭園を臨むことができる
スイートルームにしつらえられた温泉風呂。こちらは露天ではない
施設最上級のプレジデンシャルスイートルーム。こちらは1室のみ
2面ガラス張りの角部屋となっており、カーテンをあけると豊かな自然が目に飛び込んでくる
プレジデンシャルスイートの内風呂。もちろん温泉風呂で浴槽は総檜。ガラス戸を開けると檜の香りが浴室いっぱいに広がっている

客室料金例

スタンダード: 12万6500円~
スーペリア: 13万2825円~
デラックス(内風呂): 15万1800円~
ジュニアスイート(内風呂・2名分朝食付き): 32万8900円~
スイート(2名分朝食付き): 44万2750円~
プレジデンシャルスイート(2名分朝食付き): 82万2250円~

 ホテルの敷地横には、旧興福寺子院「世尊院」を改修した茶寮「世世(ぜぜ)」が同じく8月29日に開業する。こちらは森トラスト・ホテル&リゾーツがテナント型式で運営する施設で、ホテルの敷地内からも直接アクセスできる。ただしこちらは宿泊客のみならず、一般にも利用が可能となっている。

 室町時代に建立された旧興福寺子院「世尊院」の特徴的寺院建築を大切に保存活用した茶寮で、気軽に楽しめる本格和食や伝統的な茶菓子、こだわりの飲み物を提供する。客席からは四季折々の草花が楽しめる庭を眺めることができ、旅の疲れを癒す、ゆったりとした時間が流れる空間となっている。

茶寮「世世(ぜぜ)」の宿泊客専用入り口
鬱蒼と広がる木々の間の小道が趣深い
小道を抜けると旧興福寺子院「世尊院」を改修した茶寮が現われる
一見“茶寮”には見えない玄関口。田舎のお寺にお参りに来たかのような錯覚を覚える
店内はモダンなしつらえに改装されており明るい雰囲気
窓辺の席に座ると、世尊院の庭を眺めながら一服することができる
茶寮「世世(ぜぜ)」は一般客も利用可能。表門は大宮通りに面しており、一般客はこちらから入店する。門下の柵は奈良ならではの鹿よけの柵

 過去には客室提供数が全国最下位だった奈良県。神戸・大阪・京都と並んでインバウンドにも人気の観光地である奈良だが、主立った観光地が奈良公園近隣に集中し、4~5時間もあれば事足りる。そのため宿泊は長期滞在型の近隣他府県のホテルに泊まり、奈良へは日帰り旅行するという旅行客が大半を占めていた。

 実際に奈良市の発表でも、観光客の約90%が日帰り旅行需要で、宿泊にはつながっておらず、観光客の滞在時間の短さや、宿泊者数・観光消費の少なさが課題とされていた。昨今ではその打開策として、奈良を旅の最終目的地として観光客を誘致する取り組みがされている。

「紫翠 ラグジュアリーコレクションホテル 奈良」のような富裕層をターゲットにした旅の目的地に立地するホテルは、観光客の滞在時間を延ばし観光地での消費拡大に期待がもてるとし、今後も官民一体となってさらなる誘致が進むと思われる。