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国内で75年ぶりの路面電車「芳賀・宇都宮LRT」が8月26日にいよいよ運行開始! 街でも人気の車両に試乗してきた

2023年8月26日 開業

8月26日から運行を開始する「芳賀・宇都宮LRT」。LRTは「Light Rail Transit(ライト・レール・トランジット)」の略称で、次世代型の路面電車

 宇都宮市と芳賀町が新しい輸送システムとして進めてきた「芳賀・宇都宮LRT」が8月26日に開業する。

 区間はJR宇都宮駅東口から芳賀・高根沢工業団地までの約14.6km(複線)で、停留所は19か所に設けられており、通勤・通学や観光など、住民や来訪者の新しい足として期待されている。

 開業に先立ち、車内の様子や試乗する機会を得られたので、その模様をお伝えする。

宇都宮市街地から東側の工業団地までを結ぶ主要交通インフラとして期待

 芳賀・宇都宮LRTは新規開業としてはとてもめずらしい路面電車。ルートは宇都宮駅東口を出ると鬼怒通りを東に向かい、新4号国道の手前で専用軌道に入る。そして専用橋で鬼怒川を渡ったあとは一般道と合流し、栃木県グリーンスタジアムの横を北に向かい、ゆいの杜付近で東に折れ、芳賀町に入ってからは工業団地に向かって、再度北進する道のりだ。

 特徴的なのは、「トランジットセンター」と呼ばれる乗換施設をいくつかの停留所に設けていることだ。トランジットセンターには、駐輪場、バス停留所、駐車場、地域内交通乗降所などを設置し、利用者のニーズに応えるとしている。宇都宮市のWebでは芳賀・宇都宮LRTを「魚の背骨」と例えており、主要部分はLRTが担い、そのほかの骨に該当する部分はバスや地域内交通が対応することで、より効率的な交通インフラになるとしている。

運行ルートには19か所の停留所が設けられている。今回はJR宇都宮駅東側の開業だが、西側の大谷観光エリアまでについても導入が検討されている

初乗り150円で、ピーク時は6分間隔で運行する

 運転時間は6時台~23時台で、JR宇都宮駅の新幹線の始発と終電に対応する。運転間隔はピーク時は6分間隔、オフピーク時は10分間隔で運行する。所要時間は宇都宮駅東口を出発地とすると、宇都宮大学陽東キャンパスまでなら約11分、グリーンスタジアム前までなら約27分、終点の芳賀・高根沢工業団地までなら約44分(快速なら約37分)となっている。

 料金は初乗りは150円で、そのあとは乗った距離に応じて加算される。乗車から3kmまでなら150円、3~7kmまでは2kmごとに50円の加算、7kmからは3kmごとに50円加算される。例えば、宇都宮駅東口から宇都宮大学陽東キャンパスまでなら150円、グリーンスタジアム前までなら300円、芳賀・高根沢工業団地までなら400円だ。

駅東側区間の事業概要

愛称のライトラインは雷都からの命名でカラーも映える黄色に

 芳賀・宇都宮LRTは車体にも記されているとおり、愛称は「ライトライン」と名付けられている。芳賀と宇都宮は雷が多いことから「雷都」と呼ばれているが、恐ろしいだけではなく、稲作に欠かせない多くの雨を降らせる恵の象徴にもなっている。その雷の稲光をモチーフに、雷を受けて豊かに実った稲をイメージさせる黄色をメインカラーに採用している。

 車両は3両編成で、全長は29.52m。乗車定員は約160人で、座席は50席用意されている。乗降口は停留所と同じ、高さ30cmになっており、スムーズな乗り降りができる。料金の支払いは交通ICカードをメインとしているが、現金にも対応する。

ライトラインには「(未来への)光の道筋」といったメッセージも込められている
ICカード利用時は乗車時と降車時にタッチする。現金の場合は停留所にある整理券を取って乗車し、先頭車両で料金を払って降車する
対距離制のバスと同様、距離に応じた料金体系。子供は半額(10円単位切り上げ)なので、大人150円の場合は80円になる
乗降口が高さ30cmと低床式なのもLRTの特徴。停留所にはスロープが設けられており、ベビーカーや車いすでも利用しやすいようになっている

街中から郊外まで定時どおりの運行で景色も堪能できる

 今回の試乗会では、車両基地のある平石から宇都宮駅東口に向かい、そのまま折り返して芳賀・高根沢工業団地に到着。再びダイヤどおりに出発し、平石までのおよそ1往復の行程を体験した。平石から西に向かうとまずは高架を通って鬼怒通りに合流する。市内の目抜き通りとして交通量の多い場所だが、営業開始前からたびたび習熟運転を実施しており、8月8日からは導入時のダイヤどおりに運行しているそうなので、車を運転する市民の方もすでに慣れている印象を受けた。

 また、道路の信号機にはLRT専用の信号が脇に設けられており、両者が誤認しないようになっていた。交差点においては右折する車と直進するLRTが衝突しないように「右直分離方式」が採用されており、同時表示(車は右折可・LRTは直進可)されない点なども寄与しているのだろう。

並走区間ではLRT用の信号が設けられている

 新しい車内は空調が完備されており、快適な空間になっている。座席はライトライン同様のカラーリングを採用しており、違和感のない統一されたデザインは洗練された印象で、一言でいうと「カッコイイ!」と感じた。丸みを帯びたシートの座り心地もよかった。走行中の騒音もほとんど気にならず、最新の路面電車らしい完成度の高さを感じた。

 乗車して気づいたのは、意外と勾配差があるルートであることだ。高架や橋の上からは水量豊かな鬼怒川や収穫間近のたなびく稲穂が広がる田園風景も見ることができ、観光列車に乗った気分にもさせてくれる。来訪者はもとより、普段使う人にとっても季節の移ろいなどを感じさせてくれそうだ。運行時間もキッチリと正確だったので、心強い足になることだろう。

LRTの車内
清潔感のあるシートは座り心地もグッド!
最高時速40kmとはいえ、安全のため吊り革も用意されている
料金表示は英語でも表記されるようだ
停車時は手動で開け閉めできるドア
運転席の後方からみた進行方向の景色
時にはこんな急勾配も駆け上がる
釣り人に人気の鬼怒川の上を通過
もうすぐ金色に染まる田園風景

開業初日は特別ダイヤなので要注意

 開業は8月26日だが、当日は各種イベント開催などを行なうことから特別ダイヤでの運行となり、一般利用は15時台からとなる。加えて、当日は大変な混雑が見込まれることから、宇都宮駅東口発の乗車に関しては時間指定の整理券を朝8時から配布し(ライトキューブとヨークベニマルの間の通路)、通常より少ない1編成当たり約120人で運行するとしている。当日に乗車したい方は、芳賀・宇都宮LRTの公式Webや特設ページをチェックしてもらいたい。

ライトラインを歓迎する横断幕
車内から見えるHonda Cars 栃木中央のゆいの杜店前には、ライトライン仕様のN-VANが展示されていた

 なお、開業後は運賃収受に時間を要すると予想されることから、一定期間はピーク時は8分間隔、オフピーク時は12分間隔の全車普通運行の特別ダイヤとなる。快速運行については、利用実績などを踏まえて翌年以降のダイヤ改正において実施される予定だ。