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菊陽町とJALが手を組んで台湾おもてなしセミナーを開催。台湾人の「ハァ?」には怒らないで接してもらいたいとアドバイス

TSMC熊本工場が建設中

2023年6月29日 実施

熊本県菊陽町で台湾文化に関するセミナーを開催。講師は「JALふるさとアンバサダーGLOBAL」のチャン・エンユ(ジェイド)さん

 熊本県の中部にある菊陽町において6月29日、台湾の文化やおもてなしなどをJALの客室乗務員から学ぶ、町職員向けの研修会が開催された。

 現在、菊陽町には台湾の大手半導体メーカーであるTSMC(台湾積体電路製造)の子会社であるJASM(Japan Advanced Semiconductor Manufacturing)が新工場を建設中であり、今後ますます交流人口の増加が見込まれている。

2024年末の生産開始を目指して建設中の熊本工場

 研修会は午前と午後に開かれ、多様な部署から150名以上が参加した。90分ほどの研修会は、チャンさんが用意した資料をもとに日本語で行なわれた。冒頭では台湾の面積や人口などの基本情報に触れ、古くからの歴史、日本統治時代、現在までの流れを説明。気候は日本よりも暑くて湿度が高く、台風の上陸が予想されるときは政府が「台風休み」を発令し、企業や学校なども一斉休みになることも紹介した。祝日の代表例では、長期間におよぶ1月20日~1月29日までの春節(旧正月)、先祖の墓参りや家族と過ごす4月4日~4月5日の清明節があることを伝えた。

 使われている言語は中国語で、書くときは画数の多い繁体字を用いているのが特徴だか、簡体字もほとんどの人が読めるそうだ。ただし、文字の発音や意味が台湾ならではのものがあるとし、例えばジャガイモは中国では「土豆」、台湾では「馬鈴薯」と呼んでいることも説明した。

 台湾ならではの食事メニューについては、ルーローハン(魯肉飯)など多くの日本人にもなじみやすい食べ物があるとしながらも、臭豆腐やジューシュエ(豬血)のスープなど、チャレンジしてもらいたいメニューもいろいろとあるそうだ。

 台湾から訪日する旅行客も多く、およそ3割の人が目的地を日本としており、多くの人が日本食を楽しみに訪れているそうだ。好きなメニューでは寿司や刺身を上げる人も多いが、台湾でも生魚を敬遠する人は一定数おり、その点は食事に誘う場合は事前に確認した方がよいとアドバイスした。加えて、熊本名産の馬刺しなど、馬肉料理についても台湾では食べる習慣がないので、こちらも要注意とのことだ。また、「お通し」も台湾にはないので、事前に有料であることを伝えておいた方がよいと話した。

 コミュニケーションの面では、まず台湾人の気質について説明した。性格は人それぞれとしつつも、「おおらか」「時間にルーズ」「成果主義」「家族優先」「コスパ重視」をキーワードとして上げた。コストパフォーマンスを重視するあまり、現地で「鮭の乱」と報道された回転寿司店の割引キャンペーンに合わせて本名を改称した人が続出したおもしろエピソードを紹介した際は参加者から笑いが漏れた。ちなみに台湾では3回まで本名を変えることができるそうだ。

 応対した際に日本語が伝わらない場合は漢字を使う、もしくは簡単な英語で伝えるのがよいとし、台湾人が使う「ハイ」はあまり信用せずに理解しているか確認することも重要だとしている。また、台湾人がよく使う「ハァ?」は日本人にとっては不快に感じるかもしれないが、日本語で「え?」「はい?」と聞き直しているものなので、気をわるくしないでもう一度話しかけてもらいたいとアドバイスした。

多くの町職員が聴講し、熱心にメモを取っていた

 今回の研修会には副町長の小牧裕明氏も参加しており、「9月からは台湾から熊本への直行便も飛び、日本と台湾の文化の違いを私たちが知っておくことは、来ていただいた方のおもてなしに十分に役立つということで町職員が率先してまずやるというのが今回の研修の目的だったわけです。生の声というか、経験からの声を聞かせていただけたのはすごく貴重な経験になりました。この先、町民の方々にも機会を設けるのがやはり必要だなというところを感じたところです」と話してくれた。

 ほかの職員の方にも話を聞いたところ、「おおらかな人柄だったり、時間にルーズだったり、そういった何かちょっと自分と似てるなって感じがして、親近感が湧きました」「一生懸命伝えようとすれば、台湾の方も汲み取ってくださるのかなと感じたので、積極的にコミュニケーションをとりたいなと思いました。また、こういうことをするとタブーですよとか、こういうことをすると喜ばれますよっていうことを具体的にお話しいただいたので、もっと自分でも調べてみたいなと思いました」と答えてくれた。

 今回、講師を担当したチャンさんは日本各地へのインバウンド誘致を目指し、地域の魅力を世界へ発信することを目的に設置された「JALふるさとアンバサダーGLOBAL」のメンバーとして活動している。感想を聞くと「最初は緊張しましたが、『鮭の乱』など台湾のおもしろエピソードではよい反応もいただけました。また、『台湾人を怖がらないように接したい』という感想もいただけたので、ありがたく思っています」とホッとした様子だった。

今回の講師を務めるにあたり、両親や地元の友人に今の台湾をヒアリングしたというチャン・エンユさん。ニックネームはジェイド