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KLMオランダ航空、日本就航70周年。グラス支社長「電動・水素は実用化しても短距離。SAFが果たす役割は大きい」

2021年11月30日 実施

KLMオランダ航空 日本・韓国・ニューカレドニア支社長 ギヨーム・グラス氏

 KLMオランダ航空は11月30日、駐日オランダ王国大使館で日本就航70周年について会見した。

 同社は70年前、1951年12月4日のアムステルダム発ロッキード L-749 コンステレーションで南回りにインドやタイなどを経由し、同12月7日に羽田空港への初便を到着させている。

 登壇した駐日オランダ全権大使のペーター・ファン・デル・フリート氏は、数週間前に大分県・黒島を訪れていたそうで、黒島といえば1600年にオランダ船(リーフデ号)が漂着したことから2国間の交流が始まった場所として知られている。大使は「420年の交流の歴史のなかで、その多くは船で、残り70年はKLMで結んでいるということです」とこれまでを振り返った。

 また、オランダでは企業活動がサステナブルな方針に移っており、KLMも同様という。IATA(国際航空運送協会)は2050年までにクライメイトニュートラル(気候中立)で運航する目標を立てているが、KLMは2019年の創立100周年の際に「環境保護のため500km以下の路線については鉄道の利用を促進する」という方針を打ち出しており、実際に現地の高速鉄道(タリス)とコードシェアも行なっている。

駐日オランダ全権大使 ペーター・ファン・デル・フリート氏
KLMオランダ航空の日本初就航から70年の歩み
当時の記録映像も残っている

 具体的な取り組みについては、KLMオランダ航空 日本・韓国・ニューカレドニア支社長のギヨーム・グラス氏が説明した。

 同社は30年前の1990年に最初の環境センターを開設、1999年に航空会社として初めてISO14001(環境マネジメント認証)を取得し、2011年には初めてSAF(持続可能な航空燃料)を使った商業フライト、2021年に世界で初めて合成ケロシンを使った商業フライトを成功させている。

 海運・陸運・工業生産に比べて、航空輸送の占めるCO2排出量は全体の2~3%であるものの、この15年ほどで航空由来のCO2排出量は40%増えており、KLMもさまざまな形で排出量削減に取り組んでいる。その1つが前世代機よりCO2排出量を20%削減したボーイング 787型機の導入であり、同社が10年取り組んでいるSAF使用量のさらなる増加であるという。これらを含む4つの柱で、2030年までにCO2排出量を2005年比で50%削減、長期目標として2050年までにネットゼロを目指す。

SAF使用量増など4つの柱で環境負荷低減に取り組む

 グラス氏は、「電動化または水素燃料の航空機を実現するのは、どんなに早くても2035年。実用化したとしても短距離になるので、今後SAFが果たす重要性が分かる」として、コーポレートSAFプログラムの取り組みについて触れた。これは、出張などの航空利用で排出するCO2から算出したSAF換算値の一定額をパートナー企業が投資し、それを元手に同社がSAFを購入するという仕組みで、日本ではナブテスコや旅工房など4社が参画している。

 なお、質疑応答ではSAF使用量増による航空券へのインパクトについて、「従来燃料に比べて5倍ほどかかるので、コロナ禍で厳しい航空会社だけで吸収するのは難しい。ただ、SAFの量産が進めば値下がりするのではないか」と見通しを示した。

コロナ禍での安全・衛生への取り組み
書類の事前チェックなど手続きのシンプル化にも取り組む
2022年6月までは柔軟な予約ポリシーを継続
現在は成田/関空~アムステルダム線をそれぞれ週4便で運航