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東京メトロ、有楽町線・副都心線の新型車両「17000系」公開。2021年2月デビュー予定

2021年2月 営業運行予定

新型車両17000系とマスコットキャラクター。右は「メトポン」、左はこの日がデビューとなった「駅街かける」

 東京メトロ(東京地下鉄)は8月11日、新木場車両基地(東京都江東区)において有楽町線・副都心線向けの新型車両「17000系」を報道公開した。

17000系は2022年までに10両編成×6、8両編成×15の計180両が製造される予定となっており、有楽町線開業時にデビューした「7000系」がすべて置き換えられる。

有楽町線・副都心線に新型車両「17000系」

 有楽町線は東京メトロ6番目の路線として1974年に池袋~銀座一丁目間が開業。その後、南北への延伸が進み、1988年に和光市~新木場間28.3kmの全線が開業している。副都心線は有楽町線との接続駅となる小竹向原~渋谷間11.9kmが2008年に開業。そして、2013年には渋谷駅において東急東横線とも接続した。これにより和光市駅では東武東上線、小竹向原駅では西武有楽町線・池袋線、渋谷駅では東急東横線・横浜高速鉄道みなとみらい線と、5社7線が相互乗り入れを行ない、1日あたり約177万人(2019年度)もの乗客が利用する広域ネットワークを形成することになった。

 使用車両は有楽町線開業時にデビューした7000系を中心に、2006年には副都心線向けとなる「10000系」を追加。現在では7000系が180両(10両編成×6、8両編成×15)、10000系が360両(10両編成×36)と540両が運用されている。ただ、7000系においてはVVVFインバータ化など随時更新作業が行なわれてきたとはいえ、登場から45年あまりが経過したことで新車への置き換えが必要となった。

 新型車両の開発にあたっては同社線の特徴となる「短い駅間」「急勾配」「急曲線」への対応のほか、多くの相互直通先を持っていることから「高速性能」「機器の共通化」が要求される。これらの要求性能を踏まえた上で「沿線のお客様に親しまれる車両」をコンセプトに、「快適性の向上」「バリアフリーの促進」「省エネ性の向上」「安全・安定性の向上」を目指したのが17000系となる。

 7000系の置き換えとなるため、製造数は10両編成×6、8両編成×15の計180両。2017年8月に先行して10両編成の設計が開始され、追って2018年9月には8両編成の設計を開始。2020年1月には初編成となる17101編成が搬入されている。同2月から各種性能試験が開始されており、同9月からは乗務員訓練を実施、営業デビューは2021年2月が予定されている。その後のスケジュールは2021年4月に10両編成の搬入が完了、同5月には8両編成搬入開始され、2022年度中には全車搬入完了の予定となっている。

17000系の概要

 外観のポイントとなる前頭部は7000系からの丸目ヘッドライトを継承。ブラックアウトされた運転席まわりは10000系譲りながら、前部ドアは非対称に配置されるなど7000系を彷彿とさせる部分も。カラーリングはアルミ素地を活かしつつ有楽町線、副都心線のラインカラーとなる「ゴールド」「ブラウン」を配したものとなっている。

先頭部はこれまでの車両と同じく「く」の字型
和光市側の17001
7000系、10000系と同じく丸形のヘッドライトを採用
前部標識にはLEDを採用。主灯は拡散用4灯、集光用6灯の組み合わせ
連結部
フリースペースがある部分には車いすとベビーカーのピクトグラムを表示
正面行先表示器と側面行先表示器にはカラーLED表示器を採用。
前後に密着連結器を装備
パンタグラフはシングルアーム型。1編成に4基装備される

 開放的な車内空間を目指した内装は、モノトーンを基調に座席背もたれや吊り手などにラインカラーをアクセントとして配置。その一方で座面と床面をグレー系のカラーで統一するとともに、貫通引き戸や袖仕切り、荷棚を強化ガラス製とすることで視覚的な広さを演出。地下においても圧迫感を与えないコーディネートを目指した。快適性の面では座り心地や冷房能力を向上したほか、車内情報提供を充実。また、全車両にフリースペースを設置したほか優先席の増設、車両とホームの段差低減など、バリアフリー化が図られているのも特徴となる。

 省エネ性では加減速などスペック面では従来車両を踏襲しつつ、高効率な永久磁石同期電動機、フルSiC素子の採用などにより、スイッチングロスの削減による実効電力量の削減、回生領域の拡大よる回生電力量の増大を図った。これにより、消費電力量は10000系より約20%削減される見込みだという。

 安全・安定性の面では乗客向けとしてセキュリティカメラ(4台/1両)を配置。車格なく社内全体を把握可能とすることで安心感を提供。車両側では「車両情報監視・分析システム(TIMA)」を導入。車両とデータセンターを無線で接続し営業線走行中の車両機器の動作データを蓄積、司令所や車両基地からはインターネット経由で確認可能とすることで、故障時の迅速な対応および発生の減少を目指している。

有楽町線・副都心線に新型車両「17000系」

営業運行時期: 2021年2月~
編成形態: 10両編成(4M6T)、8両編成(4M4T)
加速度: 3.3km/h/s
減速度(常用): 3.5km/h/s
減速度(非常): 4.5km/h/s
最高運転速度: 110km/h
設計最高速度: 120km/h
構体: オールアルミニウム製ダブルスキン
車体寸法: 20000(20470)×2800×3635mm
底面高さ: 1140mm
定員/座席定員: 143人/45人(中間車154人/51人)

ボルスタ付台車を採用。東京メトロ線内での曲線通過性能と相互直通先での高速性能を両立させている
VVVFインバータ
パンタグラフ昇降などに利用するバッテリー(125Ah)が1編成に2台搭載されている
相互直通他社と共通化が図られた運転台。モニターが3台用意され通常は2台使用し1台はバックアップとなる
開放感のある車内はラインカラーがアクセント
メインのシートは7名掛け。座席幅は460mm
ヒーターがあるもののシート下はスッキリ
シート表皮にはアラミド繊維を採用することで耐久性を向上
窓はここまで開けることが可能
シェードは下部に若干隙間が残る
荷棚部分は透明の強化ガラスを採用
袖仕切りも同様に強化ガラス
フリースペース部
左右逆のパターン
両側座席となる場所もある
車端部
優先席は3名掛け
通常のドアレール
フリースペース横のドアレールは切り欠きを2か所に施すことで車いすやベビーカーの通過に配慮
ドアレールは車端部に向かって10度傾斜している。車端部では床面より約10mm低くなっており車両とホームの段差を低減
メインの吊り手は副都心線のテーマカラーとなるブラウン
優先席前の吊り手はイエロー
フリースペース部はブラウンとイエローのコンビネーションになる
貫通引戸の有効開口幅は800mm。大型の耐熱強化ガラスを採用することで開放感をアップ
客室内に非常通報装置を用意
消火器も用意される
ドア上の車内情報表示器。17インチワイド液晶を2画面採用し右側には運行情報、左側には広告などを表示する
行き先や駅名の表示
車内情報表示器横に防犯カメラを配置。1車両に4台設置される
スピーカーはステレオ対応

 最後に囲み取材に応じた東京地下鉄 車両部設計課 課長 荻野智久氏は、同車両について「東洋初の地下鉄として90年以上ノウハウと技術を積み上げてきた。その技術を結集したハイスペックな車両となっている」と説明。首都圏のような大容量で高頻度な輸送を担うためには「安全、安定はもちろん、快適、省エネに成し遂げていくことが重要」であるとして、同車両においても「長年をかけて信頼性、有益性を評価してきた技術を統合」してきた機器を搭載していると述べ、「お客様の日常をさりげなくしっかりと支え、末永く愛される電車になってくれれば一番いいと考えている」と締めくくった。

東京地下鉄 車両部設計課 課長 荻野智久氏