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日本旅行業協会、会長に東武トップツアーズ坂巻社長が就任。JTB髙橋社長が副会長に新任

田川前会長は特別顧問へ。第64回定時総会

2020年6月22日 開催

一般社団法人日本旅行業協会の会長職を田川博己(たがわ ひろみ)氏(左)から坂巻伸昭(さかまき のぶあき)氏(右)へバトンタッチ

 JATA(日本旅行業協会)は6月22日、東京・霞が関の本部において第64回定時総会/理事会を開催した。

 会の進行を務めた会長の田川博己(たがわ ひろみ)氏は、新型コロナウイルス感染症について「旅行業界に50年いますが、前例のない影響を受けている」とし、業界団体としての取り組みについて紹介した。

真に業界団体として認められるようになった

この総会で任期を全うした田川前会長
新型コロナウイルス感染症対策として、JATAが政府へ働きかけた項目

1. 雇用調整助成金の助成率の引き上げ、支給限度日数の延長
2. 感染予防策を業界で共有することを条件とした自粛の緩和
3. 修学旅行の延期での実施や取消料の補填
4. 前例のない大規模な観光需要喚起キャンペーンの実施
5. 出国時の検温、健康チェック体制など国際交流復活への仕組み作り

 田川氏は上記の項目について「5」はこれからという段階だが、雇用調整助成金は引き上げられ、需要回復のためのキャンペーン「Go Toキャンペーン(Go To トラベル事業)」も1兆3000億円規模の予算で進むことになるなど、「1~4」の項目を達成できたと評価。日本経済において観光の基幹産業化が進んだこと、そしてJATAの実行力がついてきたことで、「真に業界団体として認められるようになった」と振り返った。そして「5」については各国の状況などを踏まえた多方面での調整が必要になるが、「あらゆる力を結集して相互交流の復活に尽力していきたい」と呼びかけた。

 この総会で任期を全うする田川氏だが、このコロナ禍において「人は喜怒哀楽を経験しながら成長する」ことをあらためて感じ、その価値観を提供しているのが観光業界であるとし、「この仕事は交流の力、旅の力を再認識した」と話した。そして「多くの仲間に恵まれて職責を全うできた」と感謝を述べた。

「共に歩む『協調』、共に作る『共創』」をテーマに、一人一人としっかり向き合う協会運営を

左から髙橋広行副会長、菊間潤吾副会長、坂巻伸昭会長、堀坂明弘副会長
日本旅行業協会 新役員体制

会長:
坂巻伸昭氏(東武トップツアーズ株式会社 代表取締役 社長執行役員)
副会長:
菊間潤吾氏(株式会社ワールド航空サービス 代表取締役会長)
堀坂明弘氏(株式会社日本旅行 代表取締役社長)
髙橋広行氏(株式会社JTB 代表取締役 社長執行役員)

 新役員体制では、これまで副会長を務めてきた東武トップツアーズ 代表取締役 社長執行役員の坂巻伸昭氏が第11代会長に就任。副会長はワールド航空サービス 代表取締役会長の菊間潤吾氏と日本旅行 代表取締役社長の堀坂明弘氏が引き続き務めるほか、JTB 代表取締役 社長執行役員の髙橋広行氏が新任として入った。前会長の田川氏は特別顧問に就任する。

新会長としてあいさつする坂巻氏

 新会長に就任した坂巻氏は、あらためてコロナ禍において「旅行業はかつて経験したことがない厳しい局面」にあるとし、この難局に「旅行業の原点である人にしっかり対面していきたい」と述べた。

 それは総会に集まった一人一人、所属する企業の従業員一人一人、旅行を楽しむ一人一人、パートナー企業・関係団体の一人一人、送客する地域の関係者一人一人のことであり、「共に歩む『協調』、共に作る『共創』」をテーマに、一人一人としっかり向き合う協会運営をしていきたいと決意を語った。

海外渡航者2000万人を達成したがコロナ禍で「甚大な被害」

理事・ 事務局長 越智良典氏

 総会では2019年度事業や2020年度業計画などが、理事・ 事務局長の越智良典氏から報告・説明された。JATAの実務面を長年支えてきた越智氏もこの総会で退任し、参与に就任となる。

 2019年度は旅行需要はさらに伸び、12月には海外渡航者2000万人を達成したが、年明けからの新型コロナウイルス感染症の影響で「甚大な被害」が発生。業界団体として事業継続の支援、需要復活キャンペーンを柱とする陳情を政府に行ない、大きな成果をあげることができたとした。

 2019年度の収支決算では、資産合計は167億5500万円で、負債の合計は129億7900万円となり、正味財産は37億7500万円となる。供託している国債の年度末評価額が下がったことにより、前年度より正味財産が3億円ほど減少している。

 経常収益が20億5700万円で、主な内容は入会金が4720万円、会費が5億60万円、事業収入が13億1149万円、弁済保証金の運用収入が1億6792万円となった。経常費用は21億3100万円で、主な内容は事業費が17億7882万円、管理費が3億5210万円となった。これにより差し引きの評価損益等調整前の当期経常増減額は7400万円のマイナスとなり、弁済等で保有している国債の評価損益等2億400万円のマイナスで、当期一般正味財産増減額はマイナス2億7800万円となった。

 一般会計では、当期収入合計は10億8600万円、当期の支出の合計は10億9600万円、差し引きの差額は1000万円のマイナスに。特別会計では、国家試験の当期収入合計が3100万円、当期の支出合計が7900万円となり、差額は4800万円のマイナス。これは10月の台風で東京・仙台の試験が実施できず、再設定の再試験が3月で新型コロナウイルス感染症の影響で実施できず。これで全体の半数以上が受験できず、受験料収入が大きく減少した。支出も再試験の問題作成・実施費用がかさみ、4800万円のマイナスとなった。繰り越しの受験者、収支の改善を進めることなどで5年ほどでこのマイナスを解消していく。ツーリズムEXPOジャパンは、当期収入合計は9億4800万円。支出は9億3800万円で差額収支は1000万円のプラス。前年度からの繰越と合わせて2020年度への繰越合計は6700万円となる。トータルでは当期収入合計は32億3800万円、支出は33億700万円で、次期繰越収支差額は22億1700万円となった。

2019年度収支決算

 2020年度事業計画・予算は「非常事態編成」となり、総額1億円の減収を見込んだ収支計画となった。事業全体の見直し、絞り込みを行ないつつ、国家試験・法定研修、消費者相談、人材育成などは現状を維持。海外旅行、国内旅行、訪日旅行事業は、「需要回復を第一」とし、ほかの事業は実施時期を市況の回復に応じて実施していく。

 日本最大の総合観光イベント「ツーリズムEXPOジャパン」は、需要回復に向けてイベント名を「リゾート展」から「旅の祭典」に変更し沖縄で開催。時期をずらして東京では商談会を開催する。